• 作成日 : 2025年9月16日

親に仕送りすると節税になる?扶養控除の条件と活用法を解説

親に仕送りをしている方の中には、「この支援が節税につながるのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。条件を満たせば仕送りは扶養控除の対象となり、所得税や住民税の軽減が期待できます。ただし、親の所得や生計状況などによって控除の適用可否が変わるため、正確な理解が必要です。

本記事では、扶養控除の制度や申請方法、仕送りとの関係について解説します。

親に仕送りすると節税になる?

親に仕送りをしている場合、その支援が税制上の「扶養控除」の対象となる可能性があります。制度の条件を満たせば、所得税や住民税の負担が軽減されるため、家計全体にとっても大きなメリットとなります。ここでは、扶養控除の基本と控除額の違いについて整理します。

条件を満たせば扶養控除の対象になる

親への仕送りが「扶養控除」の対象となる条件を満たしていれば、所得税・住民税の課税所得を減らすことができます。つまり、仕送りによって実質的に節税が可能になります。ただし、親の所得や生計状況によって適用可否が分かれるため、事前に確認することが大切です。

控除額は親の年齢と同居状況で変わる

扶養控除の金額は、親の年齢と同居しているかどうかによって異なります。16歳以上69歳以下の親なら所得税で38万円(住民税は33万円)、70歳以上の親であれば、別居で48万円、同居で58万円(住民税はそれぞれ38万円、45万円)の控除が受けられます。

親を扶養控除に入れるための条件

親に仕送りをしているだけで自動的に扶養控除が受けられるわけではありません。税務上で扶養控除を適用するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。ここでは、「親の範囲」「所得の制限」「生計を一にするかどうか」という三つの条件について解説します。

扶養控除の対象になる親の範囲

扶養控除の対象となる親族は、配偶者を除いた6親等以内の血族および3親等以内の姻族とされています。したがって、自分の両親や配偶者の両親(義父母)、祖父母なども控除の対象となる扶養親族に含まれます。ただし、その年の12月31日時点で16歳未満の親族は扶養控除の対象外となります。

また、同一人物に対して扶養控除を受けられるのは一人のみです。たとえば、兄弟姉妹でそれぞれ父に仕送りをしている場合、どちらか一方しか扶養控除を適用できません。家族間で事前に話し合い、父と母を分けて申告するなどの調整が必要です。

親の年間所得が48万円以下である

親を扶養控除の対象とするには、親の年間合計所得金額が48万円以下でなければなりません。これは、給与収入のみの場合で年収約103万円以下に相当します。年金収入しかない場合でも、65歳以上であれば公的年金控除の適用により、年金収入が約158万円までであれば所得48万円以下となります。

なお、令和7年税制改正により、扶養基準が見直しとなりました。これに伴い、親を扶養控除の対象とする場合の基準は、年間合計所得金額58万円以下となります。これは、給与収入のみの場合で年収123万円以下に相当します。

さらに、年金と給与の両方の収入がある場合でも、「所得金額調整控除」という制度を使えば、控除後の所得が基準内に収まるケースもあります。ただし、青色申告の事業専従者給与を受け取っていたり、白色申告で事業専従者となっている親は控除対象外です。これは、家族に支払った給与を経費とする場合に、同時に扶養控除まで認めると税負担が過度に軽くなるためです。

別居でも「生計を一にしている」

扶養控除を受けるためには、親が納税者と「生計を一にしている」と認められる必要があります。生計を一にするとは、必ずしも同居している必要はなく、仕送りなどを通じて生活費や療養費の援助が行われていれば要件を満たします。

たとえば、地方に住む親に対して定期的に銀行振込で仕送りをしている場合、その記録が残っていれば、生計一と判断されやすくなります。税務署からの問い合わせに備えて、仕送りの記録(振込明細や送金履歴など)を保管しておくことが大切です。こうした実態を示すことができれば、別居であっても問題なく扶養控除の対象とすることができます。

扶養控除を受ける場合、仕送りの額に制限はある?

扶養控除を受けるための仕送りに、税法上の明確な上限額や下限額は設けられていません。ただし、親の生活を実質的に支えている実態が必要とされており、金額が極端に少ない場合は「生計を一にしている」と判断されないこともあります。たとえば、月に数千円程度では生活支援として不十分とされる可能性があります。

一方で、高額な仕送りであっても、それが生活費や医療費など実際に必要な支出に使われていれば、扶養控除の対象となります。仕送り額がいくらであっても、重要なのは「生活費としての支援が継続的に行われているかどうか」です。税務署から問われた際に説明できるよう、仕送りの目的や金額、頻度などの記録を残しておくと安心です。

扶養控除を受ける場合、仕送りの頻度は関係ある?

扶養控除を受けるためには、親との「生計を一にしている」実態が必要です。この判断において、仕送りの金額だけでなく“頻度”も重要とされています。税務上では、親に対して一時的に多額の支援をするよりも、定期的に生活費を送っていることが生計を共にしていると認められやすくなります。

たとえば、年に1回まとめて100万円を仕送りするよりも、月5万円を12回送るほうが、生活費支援としての実態があると判断されやすくなります。これは、仕送りが親の生活の維持に直接充てられているかどうかを示す指標として、継続性が重視されるためです。

銀行振込など記録が残る形で毎月仕送りを行い、その履歴を保管しておけば、万一税務署から確認を求められた際にも、生計一の関係を裏付ける証拠になります。

税務署は仕送りの実態をどのように確認する?

扶養控除を適用する際、税務署は「生計を一にしているか」を重視し、その実態があるかどうかを確認することがあります。別居している親を扶養に入れる場合は、定期的に生活費や療養費を仕送りしていることを客観的に証明する必要があります。

確認手段として一般的なのが、銀行振込の履歴や現金書留の受領証などの記録です。毎月一定額を振り込んでいる通帳の明細や振込控えがあれば、仕送りの継続性と具体的な金額が確認できます。また万が一税務調査などで送金の性質について問われた際には、親の医療費の領収書など、生活費に使われたことを示す資料が、主張を補強する材料となり得ます。

一時的・断続的な支援ではなく、継続的に経済的援助を行っていることが示されることが重要です。税務調査時のトラブルを避けるためにも、仕送りに関する証拠は日常的に保管しておきましょう。

扶養控除を申請するタイミング

扶養控除の申請タイミングは、給与所得者か個人事業主かによって異なります。

会社員の場合

会社員などの給与所得者は、年末調整の際に勤務先へ「扶養控除等(異動)申告書」を提出することで申請します。通常は年末(11月〜12月頃)に書類が配布されるため、その時点で親の扶養状況を記入し提出します。

個人事業主の場合

個人事業主やフリーランスなど確定申告を行う人は、毎年2月16日から3月15日までの確定申告期間中に、所得税の申告書に扶養親族として親の情報を記載します。加えて、親の所得が48万円以下であることや、生計を一にしていることを示す送金記録なども用意しておくと安心です。

仕送りと贈与税の関係

親への仕送りをしていると、「贈与税がかかるのでは」と不安に感じる人もいるかもしれません。税法では一定の条件を満たす生活支援について非課税とされており、正しい運用をすれば贈与税の心配は不要です。以下で判断基準を解説します。

生活費としての仕送りは非課税

子から親への仕送りであっても、その目的が生活費・医療費・介護費など「通常必要と認められる支援」であれば贈与税はかかりません。扶養義務のある親族間における必要な援助は、税法上で非課税扱いとされています。したがって、毎月の生活費を仕送りする限りでは、税務上の問題になることは基本的にありません。

注意すべきは仕送り金の使いみち

名目上は生活費でも、親が仕送りを貯蓄に回したり、資産購入に使った場合には「贈与」と見なされる可能性があります。税務上は「生活費として必要な都度、直接充てられること」が非課税の条件とされており、まとめて高額を送金して使い切らずに残していると課税対象になる恐れがあります。

基礎控除の範囲内でも合計に注意する

年間110万円までの贈与であれば、贈与税の基礎控除内に収まり税金はかかりません。ただし、贈与税の基礎控除(年間110万円)は、財産をもらった人(受贈者)を基準に計算されます。つまり、親が1年間に他の人から受け取った贈与の合計額が110万円を超える場合に贈与税の対象となるので、年間を通じた受取金額の合計に留意しましょう。

個人事業主が親に給与を支払うと節税になる?

親に仕送りをする代わりに、実際の労働に対して給与を支払う方法を取れば、事業の経費として処理できる可能性があります。ただし、親との生計状況によって税務上の扱いが異なるため、注意が必要です。以下では「生計が別の場合」と「生計を一にしている場合」に分けて節税効果と留意点を解説します。

親と生計を一にしている場合

親と生計を一にしている場合は、その親に支払う給与を「青色事業専従者給与」として経費に計上できます。ここでいう「生計を一にする」とは、必ずしも同居を意味せず、別居していても生活費の送金などがあれば該当します。

ただし、事前に税務署へ届出を行い、あらかじめ定めた範囲内の金額しか経費にできません。白色申告者の場合はさらに制限があり、一定の控除額までしか認められていません。

この制度を適用することで、親への給与が適正であれば節税効果が得られますが、届出をしていないと経費に認められない点には注意が必要です。さらに、親の所得が増えることで扶養控除の対象外になる可能性もあるため、給与額の調整が必要です。全体としての収支と家族全体の負担を見ながら、制度を活用することが求められます。

親と生計が別の場合

親と別居しており、生計が独立している場合は、親は他人と同じ扱いとなり、給与の全額を必要経費として計上できます。この方法であれば、支払った給与分だけ事業所得を圧縮でき、結果的に所得税・住民税の軽減につながります。ただし、給与の額が過大であると税務署から否認される可能性があるため、仕事内容に応じた適正な金額を支給することが重要です。

また、親にとってはその給与が新たな課税所得となり、一定額を超えると社会保険への加入や保険料の支払いが発生します。節税だけで判断せず、親の税・保険負担も考慮しましょう。

親への仕送りを正しい知識で節税につなげよう

親に仕送りをしている場合でも、制度を正しく理解すれば扶養控除などを通じて節税につなげることが可能です。親の年齢や所得、生計状況に応じて条件を満たしていれば、所得税や住民税の負担を軽減できます。仕送りの金額や頻度にも注意を払い、記録を残しておくことで、税務上の証明にも備えられます。また、事業主であれば給与支給による節税方法も選択肢となりますが、家族全体の税・保険負担を考慮したうえでの判断が大切です。制度を正しく活用し、無理のない形での節税を目指しましょう。


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