- 更新日 : 2025年11月6日
競馬で法人化はできる?税金や競馬予想会社・競馬投資会社についても解説
競馬収益をもとに法人化を考える場合、法令や税務上の制約や、ビジネスとして展開する際の具体的な課題や対応策を知ることが不可欠です。
本記事では、競馬収益を事業化する難しさ、払戻金にかかる税金、確定申告の重要性、そして競馬予想会社や競馬投資会社の設立可能性について解説します。
目次
競馬などのギャンブルで会社設立するのは難しい
競馬収益をもとに法人化を考える方もいますが、現実的には課税制度や収益の不安定性といった法令や税務上の課題が存在します。
競馬などのギャンブル収益は、所得税法第34条に基づき、「一時所得」として課税される場合が一般的です。一時所得は継続的な事業収益とは認められないため、法人設立に必要な事業収益の安定性や事業性の基準を満たしません。また、継続的に高額な収益を上げたとしても、税務調査においてその収益が「事業所得」とみなされる可能性は極めて低いでしょう。このため、競馬収益をもとに法人を設立するのは難しいと言えるでしょう。
また、日本の公営ギャンブル(競馬、競輪など)は、法律で認められた範囲内でのみ合法となっており、競馬法第1条に基づき営利目的で法人化することは制度上想定されていません。通常、法人は事業活動による収益をもとに法人税が課されますが、ギャンブル収益は一時的かつ偶発的な性質が強いため、安定した法人税収源とは認められません。
競馬の払戻金にかかる税金(個人の場合)
個人に対する競馬の払戻金には税金が課される場合がありますが、課税対象となる所得区分や計算方法について間違って認識されるということが少なくありません。一時所得や雑所得としての扱い、経費計上のルール、負けても課税される可能性について解説します。
競馬の払戻金は、一時所得か雑所得に該当
競馬の払戻金は通常、所得税法第34条にのっとり、「一時所得」として課税されます。一時所得は、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の、一時的に得られる所得」と定義されています。一時所得の場合、年間の収支を合算し、特別控除額(50万円)を差し引いた金額の1/2が課税対象です(所得税法第33条、第35条)。
ただし、競馬の収益を主な収入源とし、継続的かつ計画的に収益を得ている場合は「雑所得」に該当する可能性があるでしょう。この場合、所得税法第27条にのっとり、収入から必要経費を差し引いた金額がそのまま課税対象となります。雑所得の扱いとして認められるためには、営利性および反復性が認められることが条件です。
一時所得の場合、外れ馬券の購入費用を経費にできない
一時所得として競馬の払戻金が扱われる場合、経費として認められるのは、払戻金を得た当たり馬券の購入費用のみです。外れ馬券の購入費用は、所得税基本通達34-1にのっとり、「必要経費」として認められません。その具体例として、以下のケースがあります。
<経費の計算/具体例>
年間100万円の払戻金のうち、当たり馬券の購入費用が10万円、外れ馬券の購入費用が50万円だった場合。
課税対象となる一時所得は次のように計算されます。
経費として認められるのは当たり馬券分の10万円のみです。
外れ馬券を必要経費として認めるには、「雑所得」として申告しますが、継続的な営利活動と証明されなければならないため、一般的には一時所得として扱われます。
競馬に負けても税金がかかる可能性がある
競馬での損失が収益を上回った場合でも、一時所得では収益から経費(当たり馬券購入費)を差し引いた金額に対して課税され、外れ馬券分の損失は必要経費の扱いとなりません。一時所得として計算される課税対象の具体例は以下の通りです。
<具体例>
払戻金が100万円、当たり馬券の購入費用が10万円、外れ馬券の購入費用が120万円の場合
つまり、実際には損失が発生している場合でも、一時所得の課税対象となり得ます。このため、競馬で得た収益を正確に申告する際には慎重な計算が必要です。確定申告を行う場合は、税理士や専門家に相談することをおすすめします。
競馬の確定申告は税理士に依頼すべき?
税理士に依頼するべき理由
競馬の払戻金の申告は、税務上の所得区分(例:一時所得または雑所得)や計算方法が複雑なため、専門知識を要します。特に以下のケースにおいて、税理士のサポートが必要となるでしょう。
1. 正確な所得区分の判断
競馬の収益は通常、一時所得として扱われますが、職業的要素が見られる場合は雑所得として扱われる場合があります(所得税法第27条、第34条)。税理士は、収益の性質や申告方法を適切に判断し、誤った申告による追徴課税のリスクを回避します。
2. 経費の正確な計上
前述の通り、外れ馬券の購入費用は一時所得では経費にならないため、収益全体を適切に整理することが必要です(所得税基本通達34-1)。税理士は、収支の記録をもとに経費計上を行い、控除額の計算ミス防止を担います。
3. 税務調査への対応
競馬の収益は税務調査の対象となりやすい項目です。税理士が事前に正確な申告を行えば、不備による追加納税やペナルティを回避できます。また、調査が行われた場合でも専門家が対応することで安心です。
自身で申告する場合のリスク
競馬で得た収益を税理士に依頼せず自身で申告する場合、以下のようなリスクが考えられます。
1. 所得区分の誤り
収益を一時所得と雑所得で誤って区分した場合、税務署からの指摘で追徴課税が発生するでしょう。判断ミスを避けるためにも、法改正や通達を十分理解することが不可欠です。
2. 記録不備による申告漏れ
当たり馬券や払戻金の記録を詳しく、かつこまめに残していないと、正確な申告ができなくなり、場合によっては課税額が増える可能性があります。特に外れ馬券を含む大規模な収支管理は、税理士に頼らず個人で対応するのが難しい場合があるでしょう。
3. ペナルティのリスク
確定申告を怠る、または間違った内容で申告した場合、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課されます(国税通則法第65条、第66条)。税理士に依頼することで、これらのリスクを軽減できます。
税理士に依頼するメリット
税理士に依頼することで得られる主なメリットは以下の通りです。
1. 時間と労力の節約
膨大な収支データや記録を整理する作業は時間がかかります。税理士に依頼することで、申告作業を効率化し、本業や生活に専念できます。
2. 税金の最適化
税理士は控除額や課税対象の計算を正確に行い、過剰な納税を防ぎます。また、ギャンブル収益以外の所得と統合した適切な申告が可能です。
3. トラブルの回避
税務署からの指摘や調査に備えた書類を正確に作成しておくことで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。
競馬予想会社や競馬投資会社の設立はできる?
競馬の馬券購入を直接事業化することは法的制約が多いですが、競馬予想会社や競馬投資会社としての設立を検討する方もいます。その可能性や設立時の注意点についてみていきましょう。
競馬予想会社の設立は可能
競馬予想会社の場合、「情報提供サービス業」として事業化が可能です。この場合、競馬の結果予測や分析をサービスとして提供し、顧客から料金を受け取る形で収益を得られます。
1. 設立の要件
事業目的として「情報提供サービス業」を定款に明記する必要があります。日本標準産業分類(総務省)において「392 情報提供・サービス業」に分類されるため、関連する税務申告や社会保険加入が求められます。予想の精度や分析手法を説明できる資料があると、顧客からの信頼を得やすくなります。
2. 法的注意点は
景品表示法や消費者契約法を遵守することが重要です。特に予想的中率や利益率を誇張した広告は、不当表示に該当する恐れがあります(不当景品類及び不当表示防止法第5条)。
利用規約を作成し、返金ポリシーや責任範囲を明示することで、トラブルを未然に防ぐことが推奨されます。
競馬投資会社の設立は慎重に検討すべき
競馬投資会社の設立は可能ですが、競馬投資会社の設立においては、慎重な対応が必要です。
1. 金融商品取引法の適用
「投資助言業」として登録が必要となる可能性があります。金融商品取引法第29条に基づき、投資助言・代理業の登録を行う必要があります。
2. 賭博罪との関係
直接的に馬券購入を行う、または購入資金を預かるビジネスモデルは、刑法第185条の賭博罪に抵触する場合があります。賭博関連のことは、あくまでも情報提供や投資助言にとどめることが不可欠です。
3. 反社会的勢力との関係を排除
暴力団排除条例に基づき、反社会的勢力との関係を完全に排除する必要があります。
競馬関連ビジネスの法人化における経営者の傾向
競馬関連ビジネスで法人化を検討する際、実際の法人設立者がどのような経路を選んでいるのか、参考となるデータを見ていきましょう。
多くの経営者が個人事業主から段階的に法人化
マネーフォワード クラウドで実施した調査によると、会社設立者1,040名のうち57.8%が会社設立前に個人事業主として事業を行っており、法人成りの形で会社を設立していることが明らかになりました。
特に設立間もない企業ほどこの傾向が強く、設立1年以内の企業では68.5%、設立2~3年以内の企業では75.2%と、近年では個人事業主からのステップアップとして法人化を選ぶケースが主流となっています。
出典:マネーフォワード クラウド、先輩起業家が一番困ったことは?【会社設立の意思決定調査】(回答者:会社設立の経験がある方1,040名、集計期間:2024年1月)
競馬予想会社設立への段階的アプローチ
このデータは、競馬関連ビジネスの法人化を考える上でも参考になります。競馬の払戻金そのものでの法人化は困難ですが、競馬予想会社のような情報提供サービス業としての法人化は可能です。
多くの経営者が個人事業主として事業基盤を固めてから法人成りを選択しているという傾向は、競馬予想会社の設立においても有効なアプローチといえるでしょう。まず個人事業主として競馬予想の情報提供を始め、顧客基盤を構築し、安定した収益が見込めるようになってから法人化を検討することで、リスクを抑えながら事業を展開できます。特に、景品表示法や消費者契約法などの法令遵守が求められる分野だからこそ、段階的な事業拡大が賢明な選択となるでしょう。
競馬ビジネスで成功するためには、専門家のサポートと法令遵守が不可欠!
競馬ビジネスで法人化するには、法律や税制に基づく慎重な計画が必要です。馬券購入を直接事業化するのは難しいと言われていますが、競馬予想や投資を軸にした関連事業の展開においてはビジネス化の可能性はあります。
ただし、税務申告の正確性や法令遵守が不可欠です。また、確定申告や法人設立時には税理士や行政書士など専門家のサポートを活用することで、リスクを回避しながら事業をスムーズに進めることができます。本記事をご参考に競馬を楽しみつつ、合法的かつ持続可能なビジネス化を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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