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  • 更新日 : 2020年11月12日

個人事業主として開業しながら扶養に入る際の注意点

テレワークの認知も広がり、さまざまな働き方が可能になりました。主婦(主夫)として家庭にいるけれど、空いた時間を生かして開業したいと考えている人もいるのではないでしょうか。ここで問題となるのが、「扶養」についてです。

この記事では、個人事業主として開業したら扶養から外れなければならないのか、扶養に入り続けることはできるのか、開業と扶養の関係について解説します。

扶養に入ることのメリット

主婦(主夫)の場合、配偶者の扶養に入っているケースが多いと思いますが、そもそも扶養に入ることのメリットとは何でしょうか。

主婦が旦那の扶養に入る場合での所得税・住民税のメリット

主婦が旦那の扶養に入るメリットは、旦那の所得税や住民税計算時に、「配偶者控除」などが適用された場合、所得税や住民税の負担が減ることです。配偶者控除は、妻が年間の所得合計額48万円以下、かつ旦那の所得合計額1,000万円以下のときに適用できます。

なお、妻の年間所得合計額が48万円を超えた場合は、年間所得合計額133万円以下のときまで、所得額に応じて1~38万円(住民税は1~33万円)の「配偶者特別控除」を適用できます。

【配偶者控除の額】2020年(令和2年)時点

 旦那の所得合計額一般の配偶者70歳以上の配偶者
所得税900万円以下38万円48万円
900万円超950万円以下26万円32万円
950万円超1000万円以下13万円16万円
住民税900万円以下33万円38万円
900万円超950万円以下22万円26万円
950万円超1000万円以下11万円13万円

出典:
国税庁|No.1191 配偶者控除
東京都主税局|個人住民税

主夫が妻の扶養に入る場合での所得税・住民税のメリット

配偶者控除や配偶者特別控除に、性別による制限はありません。主夫が妻の扶養に入る場合であっても、妻が所得の上限である1,000万円を超えないときは、配偶者控除や配偶者特別控除を適用できます。これにより、妻の所得税や住民税の負担を軽減することが可能です。

子が親の扶養に入る場合での所得税・住民税のメリット

子が親の扶養に入る場合、親は所得税や住民税の申告、あるいは年末調整時に、「扶養控除」の適用を受けることができます。

扶養控除は、対象年度の12月31日時点で16歳以上の対象親族1人につき38万円(住民税は33万円)、対象年度の12月31日時点で19歳以上23歳未満の場合は1人につき63万円(住民税は45万円)です。親の所得税や住民税の負担を減らせます。

親が子の扶養に入る場合での所得税・住民税のメリット

扶養控除は、親が子の扶養に入る場合も適用できます。基本的な控除額は38万円(住民税は33万円)です。対象年度の12月31日時点で親が70歳以上の場合、同居しているときで58万円(住民税は45万円)、同居していないときで48万円(住民税は38万円)の扶養控除が受けられます。これにより、子は所得税や住民税の負担を減らせます。

健康保険や年金など社会保険の面でのメリット

扶養に入ることは、税金面だけでなく、健康保険や年金などの社会保険の面でもメリットがあります。

健康保険については、追加の負担なしに、扶養に入る人も保険の給付が受けられるためです。年金についても、扶養に入ることで配偶者は国民年金の第3号被保険者になり、扶養者の加入する厚生年金が保険料を負担します。ただし、国民年金や国民健康保険の配偶者の扶養には入れません。

扶養に入っていても開業できるのか?

次に、扶養に入っている状態で開業できるのかという点について見てみましょう。

扶養されていても開業はできる

開業届は、事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかが生じる事業を開始したときに必要な届出です。扶養と開業に関係はありませんので、扶養に入っていても開業届は提出できますし、開業にあたる場合は開業届を出さなくてはなりません。開業届の提出時期は、開業から1カ月以内です。

扶養については、事業をはじめたからといって、どこかに申請義務があるわけではありません。開業したときに、開業届を出せば所得税法上は問題ないです。

青色事業専従者給与との関係

青色申告の場合、青色事業専従者給与といって、家族に支払う給与を経費に算入できます(事前に税務署への届出が必要)。開業にともない、家族を専従者として雇用したい場合は活用できる制度でしょう。また、白色申告でも事業専従者分の給与は一定額まで所得から控除できます。

ただし、青色申告者の事業専従者として給与の支払を受ける人や白色申告者の事業専従者である人は、控除対象配偶者や扶養親族にはなれません。

開業しても扶養に入れるケースは、次で説明します。

個人事業主でも扶養範囲内になるケース

個人事業主、つまり開業しても、税法上の扶養に入れるケースについて説明します。

扶養者が配偶者の場合

上述した通り、旦那(または妻)の扶養に入っていて、個人事業主として開業した場合、所得合計額の条件を満たせば、所得税と住民税については、配偶者控除または配偶者特別控除の適用があります。開業した人の年間合計所得が48万円以下であれば配偶者控除、133万円以下であれば配偶者特別控除の範囲になります。

ただし、配偶者控除と配偶者特別控除を両方適用すること、旦那と妻がお互いに控除枠を利用することは認められていません。

扶養者が親族の場合

親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)の扶養に入っていた人の場合、個人事業主になっても、年間所得合計額が48万円以下であれば、引き続き親族の扶養控除の対象に含まれます。扶養控除については、配偶者のような扶養者の所得制限はないため、扶養者の年間合計所得が1,000万円を超えていても適用できます。

開業しながら扶養に入るのは得なのか

開業しながら扶養に入ることが必ずしも得とは限りません。開業前、扶養者の立場にあった配偶者(夫)の給与所得が500万円で社会保険料控除が100万円だったとします。このケースで、開業した人(妻)が配偶者控除内の48万円に所得を抑えた場合(所得は48万円とする)、事業所得が150万円だった場合とで夫婦の手取り額の変化を比較してみましょう。

例1:配偶者控除内に所得を抑えた場合
・所得税の計算
500万円(給与所得)-{100万円(社会保険料控除)+38万円(配偶者控除)+48万円(基礎控除)}=314万円(課税所得金額)
314万円×20%(所得税率)-427,500円(控除額)=200,500円
・住民税の計算
500万円-(100万円+33万円+33万円)=334万円(課税所得金額)
334万円×10%=334,000円
・所得税と住民税、社会保険料を差し引いた手取り
(500万円+48万円)-(20.05万円+33.4万円)-100万円=3,945,500円

例2:事業所得が150万円で配偶者控除を外れた場合
(扶養を外れたことで社会保険料20万円を妻が支払ったとする)
・所得税の計算
500万円-(100万円+48万円)=352万円
352万円×20%-427,500円=276,500円
150万円-(20万円+48万円)=82万円
82万円×5%=41,000円
所得税額の合計 276,500円+41,000円=317,500円
・住民税の計算
500万円-(100万円+33万円)=367万円
150万円-(20万円+33万円)=97万円
(367万円+97万円)×10%=464,000円
・所得税と住民税、社会保険料を差し引いた手取り
(500万円+150万円)-(31.75万円+46.4万円)-(100万円+20万円)=4,518,500円

※そのほかの所得や所得控除なし、住民税額は10%、復興特別所得税、均等割りや調整控除などは考慮しない、簡易的な計算で比較しています。

上記の計算例のように手取りベースで考えると、扶養に入るのが良いとは限りません。所得が少ない場合は扶養に入るメリットがありますが、個人事業主としての所得が高くなる見込みがある場合は、扶養範囲内にとどめずに考えたほうがよさそうです。

103万円の壁?パート収入との違いに注意

所得税や住民税の扶養範囲に関連して、「103万円の壁」「150万円の壁」などと言われることがあります。ここでは、個人事業主ではなく、給与所得を受け取ったときの配偶者(特別)控除について簡単に説明します。

給与所得の壁103万円と150万円

パートなど、給与所得者は経費を差し引けない代わりに、給与収入に応じた給与所得控除があります。給与収入162.5万円までの給与所得控除は55万円です。103万円から55万円を差し引いたら48万円で、配偶者控除適用の48万円以下になるため、103万円の壁といわれます。

また、配偶者特別控除については、合計所得95万円までなら38万円の控除が受けられます(扶養者の合計所得金額が900万円以下の場合)。「150万円の壁」と言われるのは、55万円を差し引いた95万円から所得が上がると、配偶者特別控除の額が減額していくためです。

個人事業主(開業者)に103万円の壁はない

103万円の壁というのは、会社に雇われている給与所得者に該当するケースであって、個人事業主に103万円の壁はありません。個人事業主が配偶者控除の対象になるかどうかは、合計所得が48万円を超えるかどうかだけです。

扶養されていても住民税が発生することもある

所得税の配偶者(特別)控除や扶養控除の対象となる合計所得額と、住民税の非課税の対象となる合計所得額は異なります。所得税の計算で扶養に入っていても、住民税が発生することもありますので注意しましょう。

社会保険の扶養範囲の違いと注意点

最後に、社会保険の扶養範囲と所得税計算時の扶養範囲の違いについて触れます。

社会保険は年間収入130万円を超えるかどうかで判断

扶養について話をややこしくするのが、所得税法と社会保険での扶養対象の合計所得額の違いです。例えば、配偶者が配偶者特別控除を受けられるのは年間の合計所得133万円までと説明しましたが、社会保険の場合、配偶者の扶養から外れるのは130万円を超えた場合です。

個人事業主は年間収入の計算に注意

個人事業主が扶養に入る場合は、年間の収入や最終的な所得について注意する必要があります。特に社会保険については、扶養から外れると、健康保険や公的年金を自身で支払わなければならないので、社会保険も考慮した計画が必要です。

なお、配偶者の社会保険の扶養から抜ける場合は、配偶者の勤める会社に速やかに届け出ましょう。扶養削除の手続きは、会社で行われます。

開業しても扶養を外れるとは限らない!バランスを考えて選択しよう

開業した場合、扶養を外れなければならないのではと考える人もいるかもしれませんが、扶養を外れるかどうかは、開業した人の合計所得額次第です。

扶養については、所得税や住民税の計算の範囲と社会保険の範囲とで異なります。扶養のメリットだけにとらわれず、手取り額や社会保険の負担など、バランスを考えて扶養内で働くかどうか考える必要があります。※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

開業届の提出はお済みですか?

監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。

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