- 更新日 : 2021年7月15日
創立費・開業費とは?それぞれの違いと仕訳方法について解説
「創立費」、「開業費」という勘定科目をご存じでしょうか。会社を設立すると、当然ながら会計帳簿に日々の取引を記帳する必要があります。会社を設立して最初に記帳する(仕訳を起こす)勘定科目は、この2つのどちらかである場合が多いのではないでしょうか。今回はこの「創立費」や「開業費」について、どのような費用が該当するのか、また、その仕訳方法について解説していきます。
「創立費」、「開業費」の定義は?
創立費・開業費の定義やその範囲は、会計基準や税法で明確に定められているわけではありませんが、一般的には以下のような費用と考えていいでしょう。
創立費とは?
創立費とは、会社設立前、設立のために要した費用を言います。
例えば、以下のような支出は「創立費」として計上することになります。
- 定款の作成のための代行手数料
- 定款の認証手数料
- 印鑑証明書の発行手数料
- 認定手数料
- 設立登記時の印紙代
- 設立前の事務所賃借費用
- 設立前の社員の給料
- 銀行の口座開設手数料
- 事務用消耗品費(名刺、印鑑、封筒作成など)
- その他(打合せ会議費、交通費など)
など
上記費用については、領収書を保管しておくようにしてください。
開業費とは?
会社設立の後、開業準備のため営業開始の時までに特別に支出した費用を言います。
例えば、
- 会社のホームページ作成費用や看板などの広告費
- 事務所の敷金礼金
- 事務所の椅子・机などの事務用消耗品
- エアコン、加湿器などの備品類
など
開業準備のために特別に支出した費用が対象ですので例えば、事務所家賃や水道光熱費、社員の給料など毎月一定額発生する費用は、開業準備のために特別に支出した費用と認められないため、開業費とはなりません。
創立費・開業費の会計処理方法
創立費、開業費の会計処理について要約すると以下のようになります。
「繰延資産」として資産に計上する
創立費、開業費は原則として「繰延資産」に分類されます。繰延資産とは法人が支出する費用のうち、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものをいいます。資産計上後、支出した年度に一度に費用として計上するのではなく、支出した費用を翌期以降に繰り延べることが認められています。
翌期以降、状況に応じて費用化する
繰延資産として資産に計上後、翌期以降、数年にわたって費用化(償却)するのが一般的です。
会計上、繰延資産は毎期一定額を規則的に償却することとなっていますが、税務上、中小企業においては、「いつでも好きな事業年度に好きな金額だけ」費用化することが認められています。
したがって、設立当初の利益があまり見込まれない年度においては費用化せず、徐々に利益が増えていったタイミングで費用化することで節税対策につながります。
繰延資産の仕訳例
それでは、創立費・開業費の仕訳について、具体例を用いて見ていきましょう。
例)12月決算の会社をX1年3月に設立した。
<X1年3月>
- 資本金300万円の払い込みを行った。
(借方)預金 300万円 (貸方)資本金 300万円
- 資本金300万円の払い込みを行った。
- 定款作成費用として10万円を行政書士に支払った。
(借方)創立費 10万円(貸方)現金 10万円
- 定款作成費用として10万円を行政書士に支払った。
- 登記費用として5万円を支払った。
(借方)創立費 5万円(貸方)現金 5万円
- 登記費用として5万円を支払った。
- その他設立費用として5万円支払った。
(借方)創立費 5万円(貸方)現金 5万円
<X1年4月>
- 会社ホームページ作成費用として20万円を支払った。
(借方)開業費 20万円(貸方)現金 20万円
- 会社ホームページ作成費用として20万円を支払った。
- 事務所の椅子・机の購入費用として30万円を支払った。
(借方)開業費 30万円(貸方)現金 30万円
<X1年12月決算時>
- X1年度決算仕訳として、創立費を5万円、開業費を10万円償却する(未償却残高は翌期以降に繰り延べる)。
(借方)創立費償却 5万円 (貸方)創立費 5万円
(借方)開業費償却 10万円 (貸方)開業費 10万円
まとめ
創立費や開業費は資産に計上後、いつでも費用化することができます。会社の利益が出てからそれに合わせて費用にすることができるため、節税対策として非常に有効です。
一方で、創立費・開業費は、節税に有効であることから、粉飾決算に利用される可能性があると言えます。それゆえ、その範囲が限定されていることも注意が必要です。創立費・開業費について十分理解し、会計処理を正しく行うようにしましょう。
よくある質問
創立費とは?
創立費とは、会社設立前、設立のために要した費用のことです。詳しくはこちらをご覧ください
開業費とは?
開業費とは、会社設立の後開業準備のため営業開始の時までに特別に支出した費用を言います。詳しくはこちらをご覧ください。
創立費・開業費の会計処理方法は?
創立費、開業費は原則として「繰延資産」に分類されます。翌期以降、数年にわたって費用化(償却)するのが一般的です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会社設立の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
開業資金の関連記事
新着記事
政治団体を活用した節税の方法は?個人で設立する手順や注意点を解説
仮想通貨や高額な資産を保有する個人の間で、政治団体の設立を活用した節税が注目されています。政治団体は、一定の条件を満たすことで贈与税や相続税の課税対象とならない特例があり、資金移動を非課税で行える可能性があります。しかし、その一方で政治活動…
詳しくみる親に仕送りすると節税になる?扶養控除の条件と活用法を解説
親に仕送りをしている方の中には、「この支援が節税につながるのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。条件を満たせば仕送りは扶養控除の対象となり、所得税や住民税の軽減が期待できます。ただし、親の所得や生計状況などによって控除の適用可否…
詳しくみる小規模企業共済は節税にならない?損しないための制度活用術を解説
小規模企業共済は、個人事業主や中小企業の経営者が将来の廃業や退職に備えて資金を積み立てながら、所得控除による節税効果も得られる制度です。しかし、インターネット上では「節税にならない」といった否定的な意見も見られます。 本記事では、そうした誤…
詳しくみる所得税の節税はこうする!iDeCo・NISA・青色申告など全制度を解説
所得税の節税は、年収や働き方にかかわらず多くの人にとって実践できる対策の一つです。会社員であれば、年末調整だけでなく確定申告によって医療費控除や住宅ローン控除などの恩恵を受けることが可能です。個人事業主の場合は、経費の正確な計上や青色申告、…
詳しくみる合同会社で節税は可能?法人化で得られるメリットや注意点を解説
個人事業主として活動している中で、「節税のために法人化すべきか?」と考える場面は少なくありません。中でも合同会社は、設立費用が安く、運営も柔軟であることから、節税を目的とした法人化の選択肢として注目されています。 本記事では、合同会社の設立…
詳しくみる個人年金で節税する方法は?控除の仕組みや保険選びのポイントを解説
将来の生活に備えて老後資金を積み立てたいと考える方にとって、個人年金保険は有効な手段の一つです。なかでも、税制上の優遇措置である「個人年金保険料控除」を活用すれば、所得税や住民税の負担を軽減しながら効率よく資産形成を進めることができます。た…
詳しくみる