• 作成日 : 2025年2月20日

【2025年改定】有料職業紹介の許認可ガイド!要件や費用など紹介

有料職業紹介事業を始めるには、厚生労働省の許可が必要です。2025年1月からは新たな許可条件も追加されるなど、規制が強化されています。

本記事では、有料職業紹介事業の許可に関する最新の情報をわかりやすく解説します。許可申請の要件や手続き、費用、さらには2025年からの新規制についても見ていきましょう。

有料職業紹介業の許認可とは?

有料職業紹介業を営むためには、厚生労働省の許可が必要不可欠です。この許可制度は、求職者と求人者の利益を保護し、適正な職業紹介サービスを確保することを目的としています。

以下で詳しく説明します。

厚生労働省の許可が必要

有料職業紹介事業を行うには、職業安定法に基づき、厚生労働大臣の許可を受けなければなりません。この許可は、事業を行う事業所ごとに必要となります。許可を受けずに有料職業紹介事業を行うと、罰則の対象となる可能性があるため、注意が必要です。

許可を受けるためには、後述する要件を満たし、必要な書類を提出しなければなりません。また、許可を受けた後も、定期的な報告や更新手続きが求められます。

有料職業紹介であっせんしてはいけない業種

有料職業紹介事業では、以下の業種についての紹介は禁止されています。

  • 港湾運送業務
  • 建設業務
  • 有料職業紹介事業においてその職業のあっせんを行うことが当該職業に就く労働者の保護に支障を及ぼすおそれがあるもの

ただし、最後の項目については、2025年1月時点では該当する職業はありません。

有料職業紹介業の許可に必要な5つの要件

有料職業紹介業の許可を取得するためには、以下の5つの要件を満たす必要があります。

  • 財産・資産の基準
  • 個人情報の管理体制
  • 職業紹介責任者の配置
  • 事務所・オフィス
  • 手数料に関する要件

それぞれ、詳しく見ていきましょう。

1. 財産・資産の基準

財産・資産の基準は、事業の安定性と継続性を担保するために設けられており、以下の2点を満たす必要があります。

  • 資産(繰延資産及び営業権を除く)から負債を引いた額が500万円以上であること。複数の事業所がある場合は、事業所数に500万円を乗じた額以上が必要
  • 自己名義の現金・預貯金が150万円以上あること。事業所が2ヶ所以上ある場合は、1事業所増えるごとに60万円を加算した額以上が必要

この基準は事業者が財政的に安定していることを示し、突発的な経済変動や事業リスクに対応できる能力を有していることを確認するためのものです。

2. 個人情報の管理体制

有料職業紹介事業における個人情報の適切な管理においては、以下の2点を満たさなければなりません。

  • 個人情報適正管理規程を作成し、遵守すること
  • 求職者等の個人情報を適正に管理するための措置を講じていること

この条件を満たすには、個人情報を取り扱う従業員の範囲を定め、情報管理責任者を選任するのが望ましいでしょう。

さらに、個人情報の漏洩や不正利用を防ぐためのセキュリティ対策も必要です。例えば、パスワード管理、アクセス制限、暗号化などの技術的対策や、書類の施錠保管などの物理的対策を講じる必要があります。

3. 職業紹介責任者の配置

職業紹介責任者は、事業所ごとに1名以上配置する必要があります。また、職業紹介に従事する者が50人を超える場合は、50人ごとに1名追加で配置しなければなりません。

また職業紹介責任者は、以下の条件を満たした者でなければなりません。

  • 成人で、3年以上の職業経験を有すること
  • 厚生労働大臣の指定する講習(職業紹介責任者講習)を受講していること
  • 欠格事由に該当しないこと

欠格事由の例としては、破産者で復権を得ない者、禁錮以上の刑に処せられた者、または職業安定法、労働基準法、労働者派遣法等の規定に違反する等して罰金刑を受け5年を経過していない者などが挙げられます。

4. 事務所・オフィス

事務所・オフィスに関する要件は、以下のとおりです。

  • 事業の運営に適した場所に設置されていること
  • 求職者のプライバシーを保護できる構造であること

事務所の周辺には、風俗営業等が行われている建物などがないことが求められます。また、事務所内は個室やパーティションを設置するなど、求職者との面談時にプライバシーが確保できる環境が必要です。

事務所の面積に関する具体的な基準は2017年の職業安定法によってなくなりましたが、適切な職業紹介サービスを提供できる広さが求められます。ただし、インターネットを通じてのみ職業紹介を行う場合は、上記の要件の一部が緩和されることがあります。

その場合は対面での職業紹介を行わないことを条件に許可が与えられるため、注意しましょう。なお、公的機関であるような誤解を招く可能性があるものは禁止など、事務所の名称にも一定の要件があります。

5. 手数料に関する要件

手数料に関しては、法令で定められた上限を超えない範囲で設定することや手数料表を作成し事務所内に明示することが求められます。

参考:厚生労働省 第3 許可基準

2025年1月~有料職業紹介業の許可条件の追加

2025年1月1日より、以下の2点が、有料職業紹介事業の許可条件に追加されました。

就職から2年間は転職を推奨しない

新しく適用された許可条件では、有料職業紹介事業者はその紹介により就職した者(期間の定めのない労働契約を締結した者に限る)に対し、就職した日から2年間、転職の勧奨を行ってはならないとされています。

これは労働者の安定的な雇用を促進することや企業の人材育成投資の保護、短期的な転職による労働市場の混乱を防ぐことを目的としています。ただし、自発的な転職を妨げるものではありません。あくまで、紹介事業者からの積極的な転職勧奨を禁止するための条件です。

お祝い金などの提供の禁止

もうひとつの新しい許可条件は、求職の申込みの勧奨について、お祝い金などの名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて求職者に金銭などの提供をしてはならないというものです。

ただし、転職フェアの来場者に対する500円程度のギフトカードの提供などは、労働市場における適正な需給調整機能の発揮に支障をきたさない例として規制の対象外とされています。

参考:厚生労働省 職業紹介事業の許可条件が追加されます

有料職業紹介業の許可に必要な書類

有料職業紹介業の許可を取得するためには、法人と個人で若干異なりますが、多くの書類を準備する必要があります。

法人の場合

法人が有料職業紹介業の許可を申請する場合、以下の書類が必要です。

  1. 有料職業紹介事業許可申請書(様式第1号)
    • 正本1部、副本2部を用意
    • 会社の基本情報や事業計画を正確に記入
  2. 有料職業紹介事業計画書(様式第2号)
    • 正本1部、副本2部を用意
    • 事業の具体的な内容や運営方法を詳細に記載
  3. 定款
    • 事業目的に「有料職業紹介事業」または「職業紹介事業」の文言を含める
    • 最新の内容であることを確認
  4. 登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
    • 発行後3ヶ月以内のものを用意
    • 定款の内容と一致していることを確認
  5. 代表者及び役員の住民票の写し
    • 本籍地の記載があり、個人番号(マイナンバー)の記載がないもの
    • 発行後3ヶ月以内のものを用意
  6. 代表者及び役員の履歴書
    • 最終学歴以降の経歴を漏れなく記載
    • 本人の署名または押印が必要
  7. 財産的基礎に関する資料
  8. 納税証明書(法人税
  9. 個人情報適正管理規程
    • 個人情報保護法に準拠した内容であることを確認
  10. 業務の運営に関する規程
    • 求職者や求人者への対応方法などを具体的に記載
  11. 手数料表
    • 届出制手数料を選択した場合のみ必要
    • 法令で定められた上限を超えていないか確認
  12. 事業所の使用権を証する書類
    • 賃貸借契約書のコピーや不動産登記簿謄本など
    • 事業所として適切な環境であることを示す
  13. 事業所のレイアウト図
    • 求職者のプライバシーが確保できる構造であることを示す
  14. 職業紹介責任者の住民票の写し、履歴書、講習受講証明書
    • 職業紹介責任者の要件を満たしていることを証明

個人の場合

個人事業主として申請する場合、法人の場合とほぼ同じ書類が必要ですが、以下の点が異なります。

  • 定款や登記事項証明書の代わりに、代表者・職業紹介責任者の住民票の写しが必要
  • 所得税の確定申告書と納税証明書が必要

法人での申請および個人での申請における書類作成のポイントとして、すべての書類は最新のものを使用し、記載内容に矛盾がないよう注意することや、財務関係の書類は、基準資産額500万円以上、事業資金額150万円以上を満たしていることを示すことなどが挙げられます。

また、職業紹介責任者は、必要な講習を受講し、その証明書を添付することも忘れないようにしましょう。

有料職業紹介業の申請から許可の流れ・費用・期間

有料職業紹介事業を始めるには、厚生労働大臣の許可を得る必要があります。ここでは、申請から許可取得までの流れや費用、期間について解説します。

申請の流れ

一般的な有料職業紹介事業の申請の流れは、以下のとおりです。

  1. 許可要件の確認
  2. 職業紹介責任者講習の受講
  3. 申請書類の準備
  4. 労働局への提出
  5. 審査・実地調査
  6. 許可証交付

書類は、本店所在地を管轄する労働局へ提出します。提出前には、事前相談を実施しておくと安心でしょう。書類提出後は労働局によって書類審査と事業所の実地調査が行われ、審査に合格すると厚生労働大臣名で許可証が交付され、一連の流れは完了です。

申請にかかる費用

有料職業紹介事業の許可申請には、以下の費用がかかります。

  • 登録免許税:9万円
  • 申請手数料(収入印紙):5万円 +1万8千円 × (事業所数-1)
  • 職業紹介責任者講習受講料:約1万円

申請手数料は、1事務所に付き5万円かかります。ただし申請時に同時に複数事務所を申請するときは追加する事務所1ヶ所につき1万8千円の追加です。

申請から許可までの期間

標準的な許可取得までの所要期間は3~4ヶ月程度です。そのため事業開始を予定している日の3~4ヶ月前までに申請を行うようにしましょう。

許可日は毎月1日付となり、申請後最短でも翌々月1日からの許可になります。申請書類に不備がある場合や、審査過程で追加の確認事項が発生した場合は、さらに時間を要する場合もあるため、ある程度の余裕を見ておくことをおすすめします。

有料職業紹介業は更新許可が必要

有料職業紹介業の許認可は一度取得したら永続的に行えるというわけではなく、一定の期間で更新が必要です。

以下で、許可の有効期限や申請期間、更新の要件などについて見ていきましょう。

許可の有効期限

有料職業紹介業は、新規許可の場合3年が有効期限です。なお、更新許可の場合は更新前の許可の有効期間が満了する日の翌日から起算して5年が有効期限になります。

更新を怠ると事業を継続できなくなるため、有効期限の管理は確実に行いましょう。

申請時期

更新申請は、許可の有効期間が満了する3ヶ月前までに行う必要があります。例えば、12月31日が有効期限の場合、9月30日までに更新申請を行わなければなりません。

更新時に求められる要件

許可の更新時に求められる要件は、基準資産額が350万円×事業所数以上であること、職業紹介責任者講習会を申請受理の日から5年以内に受講していることの2点です。

必要書類・手数料

更新申請時に必要な主な書類は、以下のとおりです。

  1. 職業紹介事業許可有効期間更新申請書(様式第1号)
  2. 事業計画書(様式第2号)
  3. 添付書類(登記事項証明書、財務諸表、納税証明書など)

手数料は、収入印紙18,000円×事業所数が必要です。

有料職業紹介業の設立に役立つひな形・テンプレート

マネーフォワード クラウドでは、会社設立に役立つひな形やテンプレートを提供しています。下記リンクから無料でダウンロードできますので、自社に合わせてカスタマイズしながらご活用ください。

人材紹介業の事業計画書・創業計画書のテンプレートはこちら

有料職業紹介の定款テンプレートはこちら

有料職業紹介の許認可を受けるにはさまざまな要件を満たす必要がある

有料職業紹介事業の許可を取得するには、財産的基礎、個人情報管理体制、職業紹介責任者の選任など、多くの要件を満たす必要があります。これらの要件を満たし、適切に事業を運営することで、求職者と求人者の利益を保護し、健全な労働市場の発展に貢献することができるでしょう。

許可申請や更新の際は、最新の法令や規制を確認し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事