- 更新日 : 2025年6月2日
【2025年最新】会社設立時に利用できる助成金・補助金まとめ|東京都の創業助成金も解説
業種によっても異なりますが、事務所を用意したり、機械や備品を購入したり、販売するための商品を仕入れたり、会社設立から営業開始までにはまとまった資金が必要になります。
会社設立や運営に関わる費用の一部をサポートしてくれる助成金や補助金は、特に開業を考えている起業家にとって恩恵の多い制度と言えるでしょう。
今回は、会社設立時にも活用できる助成金や補助金の種類、申請方法、相談窓口や利用時の注意点を紹介していきます。
目次
そもそも助成金・補助金とは?
補助金や助成金は、国や地方自治体などが、技術開発や事業の発展などを目的に、事業者などの特定の支出を補助する制度です。補助金も助成金も、どちらも基本的に返済不要ですが、対象となる費用や受給のハードルなどの面で違いがあります。
助成金とは?
助成金には、主に雇用関係の助成金と研究開発に関する助成金があり、どちらも返却不要の資金です。一般に、助成金は要件を満たせば受給できるものが多く、要件を満たし、かつ、指定された様式に従って申請する事業者には原則として給付されます。
助成金の1回あたりの助成金額は、助成金の内容や会社の規模などにもよりますが10万円前後から100万円前後が多いです。多額ではないものの、要件を満たして申請すれば受給できることがほとんどです。
補助金とは?
補助金は、国や地方自治体による政策目的のための制度です。補助金には非常に多くの種類があり、市区町村や都道府県の実施する補助金や、経済産業省の実施する補助金などがあります。
補助金額もさまざまであり、補助率が高いものもありますが、受給ハードルは高めと言えます。理由は、予算や採択件数があらかじめ決まっている補助金が多いため、しっかりとした事業計画が求められるからです。補助金は、要件を満たして申請していても審査が通らず受けられないことも多いです。
【2025年最新】会社設立時に活用できる助成金・補助金一覧
会社設立時に活用できる助成金や補助金の種類をいくつか取り上げます。
【助成金】地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)は、中小機構と都道府県、金融機関などが共同で出資して組織されたファンドの運用益により支援する制度のことです。
このファンドは次の2種類からなり、都道府県の状況に応じて組成されています。
- 地域中小企業応援ファンド
- 農商工連携型地域中小企業応援ファンド
地域中小企業応援ファンドの概要と対象者
地域中小企業応援ファンドは、企業の商品開発や需要開拓などの支援を目的に、各都道府県で中小企業を助成金によって支援しています。助成金の対象は、中小企業者や創業者、NPO法人などです。創業に重点を置いたファンドもあります。
具体的な支援対象者や支援対象分野、助成金の上限額や助成期間はファンドによってさまざまです。助成額が高く、複数年にわたって助成を受けられるものもありますので、まずは自治体に地域中小企業応援ファンドがないか確認してみると良いでしょう。
地域中小企業応援ファンドの一覧は以下中小機構のサイトより確認できます。
地域中小企業応援ファンドの申請方法
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)への申請手続きについては、それぞれの都道府県のサイトなどで確認しましょう。
例えば「山梨みらいファンド」は、募集期間内に申請書と必要書類を事務局に提出し、審査委員会においてプレゼンを元に審査し、採択を決定するフローとなっています。募集期間に注意しましょう。
【助成金】雇用調整助成金
雇用調整助成金は、景気の変動、産業構造の変化などの経済的な理由で事業活動が縮小された事業主に対し、雇用維持を図るための休業や教育訓練等に要した費用を助成する制度です。
2025年度助成の内容
2024年4月に変更された「教育訓練実施率」による助成率の区分が2025年も継続されます。一定の要件を満たす雇用保険の適用事業主は、負担した賃金に次の助成率を乗じた額が受給でき、教育訓練を行った場合は加算があります。
- 中小企業:助成率 2/3
- 大企業:助成率 1/2
なお、累計の支給日数が30日に達した期間においては助成率が変わります。
当助成金では、一定期間の売上高が10%以上減少するなどの要件のほか、雇用調整(休業・教育訓練・出向)の実施について「事前に」労使間で協定し、雇用調整を実施したこと等が支給要件となっています。
参考:雇用調整助成金 |厚生労働省、「雇用調整助成金 ガイドブック」
雇用調整助成金の申請方法
新たに雇用調整助成金を申請するには、まず休業や教育訓練、出向などの雇用調整の具体的な計画(休業、教育訓練、出向)を立て、労使協定を締結します。
次に雇用調整を開始する前日までに「計画届」を都道府県労働局またはハローワークへ提出します。
その後、実際に雇用調整を実施し、休業手当や教育訓練の実施状況などを証明する必要書類を準備して、支給対象期間の末日の翌日から2か月以内に「支給申請書」とともに管轄の労働局またはハローワークへ提出します。
最終的に、審査を経て支給が決定すれば指定口座に助成金が振り込まれます。
【助成金】働き方改革推進支援助成金
働き方改革推進支援助成金は、中小企業が労働時間短縮及び年次有給休暇の取得促進、生産性向上などを目指し、「働きやすい職場」の環境整備にあたり、費用の一部を国が助成する制度です。当助成金は次のようなコースに分かれ、助成額の上限はコースによって異なるものの、対象となった経費等相当額が助成されます。
- 業種別課題対応コース
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 団体推進コース
それぞれのうち、どの支給対象となるのかをよくご確認ください。
参考:労働時間等の設定の改善(働き方改革推進支援助成金ご参照) |厚生労働省
働き方改革推進支援助成金の申請方法
働き方改革推進支援助成金には上記4つのコースがありますが、これらに共通する申請の流れについて解説します。
まず、自社の課題や取り組み内容を整理し、必要書類(交付申請書、事業実施計画書、見積書、就業規則や36協定届の写しなど)を準備し、管轄の都道府県労働局に申請します。
次に、書類審査を経て交付決定通知を受けた後に、当初の取組計画に沿って事業を実施し、事業が完了したら、成果や経費の証拠書類を添付して支給申請書を提出します。審査の結果、要件を満たしていれば助成金が指定口座に振り込まれます。
支給申請は郵送・電子申請いずれかにより、事業の実施は必ず「交付決定後」に行う必要があります。各コースにおける細かな要件は異なりますが、申請から受給までの基本的な流れは共通しています。
参考:各種助成金・奨励金等の制度|厚生労働省、雇用関係助成金の申請にあたって|厚生労働省
【補助金】事業承継・M&A補助金
これまでの事業承継・引継ぎ補助金は、2025年度より「事業承継・M&A補助金」として、中小企業、個人事業主の事業承継や合併、買収を支援することを目的とした制度となりました。
従来の「経営革新枠」「専門家活用枠」「廃業・再チャレンジ枠」の3つのタイプから、次の4つの支援枠に変更されました。
- 事業承継促進枠
- 専門家活用枠
- PMI推進枠
- 廃業・再チャレンジ枠
ここではまず、新設されたPMI推進枠について見ていきましょう。
M&A後に活用できるPMI推進枠
M&A後の経営統合(PMI:Post Merger Integration)を支援するのがPMI推進枠です。
計画したM&A後において、その効果を最大化するためのプロセスがPMIであり、対象範囲としては、経営や業務だけでなく意識などの統合も含むすべてのプロセスに及びます。
2025年のPMI推進枠においては、PMIの専門家活用類型と事業統合投資類型の2つがあり、設備費、外注費、委託費等に対して補助率2分の1から3分の2となっています。
参考:事業承継・M&A補助金|中小企業庁、「事業承継・M&A補助金チラシ」
2025年度の事業承継促進枠の補助概要
従来の経営革新枠は、事業承継促進枠と改められました。この補助対象は、5年以内に親族内での事業承継または従業員承継を予定している者です。設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費等などの費用が対象となります。800万円から1,000万円を上限に、費用の2分の1、または、3分の2まで補助されます。
参考:事業承継・M&A補助金|中小企業庁、「事業承継・M&A補助金チラシ」
事業承継促進枠の申請方法
事業承継促進枠の申請手続きの概要は次の通りです。
- 電子申請システムであるgBizIDプライムアカウントを取得する
- 公募要領等を確認し、必要書類を準備する
- 必要に応じ認定経営革新等支援機関から確認書を取得する
国の公式電子申請システムであるjGrantsを利用し、事業承継・M&A補助金(事業承継促進枠)に必要事項を記入し必要書類を添付したうえで交付申請をする - 交付決定通知を受ける
- 補助対象事業を実施し実績報告を行う
- 実績報告などをもとに確定検査が行われ補助金が交付される
- 後年報告を行う
2025年の申請は6月30日まででしたが、今後の予定などにつきましては事業承継・M&A補助金事務局等にお問合せください。
参考:
事業承継・M&A補助金|中小企業庁
事業承継・M&A補助金のご案内|中小企業整備基盤機構、「事業承継・M&A補助金チラシ」
【補助金】小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者に対し持続的に計画に基づく販路開拓の取組などと併せて業務効率化を支援するために、経費の一部を補助する制度です。
2025年度は4つの類型に
小規模事業者持続化補助金には「一般型(通常枠)」「創業型」「共同・協業型」「ビジネスコミニュティ型」の4類型があります。補助上限額はそれぞれの類型により異なりますが、補助率は3分の2などです。
例えば一般型においては、特例として「インボイス特例(50万円上乗せ)」「賃金引上げ特例(150万円上乗せ)」などの制度も設けられており、特例の要件を両方満たせば200万円の上乗せも可能となります。
参考:規模事業者持続化補助金一般型 通常枠|小規模事業者持続化補助金事務局、「小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠> 第 18 回公募 公募要領」
創業枠の概要と補助内容
会社設立時の補助金に関連性が高いのが、創業後3年以内の事業者の支援を目的として設けられた「創業枠」です。過去3年間に「認定市区町村」または「認定市区町村」と連携する「認定連携創業支援等事業者」が実施した「特定創業支援等事業」による支援を受けたことが補助の要件になります。
補助上限は200万円、補助率3分の2までで、通常枠よりも充実した補助が受けられます。補助対象になる経費は、機械装置の購入費用、新サービスの広報費、ウェブサイト開発費などです。
なお、申請先は商工会の管轄地域、商工会議所の管轄地域で異なりますのでご注意ください。
参考:小規模事業者持続化補助金<創業型>|小規模事業者持続化補助金事務局、「小規模事業者持続化補助金<創業型> 第2回 公募要領」
小規模事業者持続化補助金の申請方法
小規模事業者持続化補助金は、以下のような流れで申請手続きを行います。ただし、それぞれの枠における申請手続きをよく確認しましょう。
- 経営計画書や補助事業計画書などの必要書類を準備し作成する
(※創業枠申請の場合は共通の書類に加え、特定創業支援等事業の支援を受けたことを証明する書類の写し、法人の場合は現在事項全部証明書か履歴事項全部証明書、個人事業主の場合は開業届が必要) - 商工会、商工会議所に必要書類を提出する
(※電子申請の場合はgBizIDプライムアカウントを取得し、小規模事業者持続化補助金専用の電子申請システムを利用して申請する) - 審査と採択・交付決定の通知
- 補助事業を実施し実績報告書を提出する
- 確定検査と補助金額の決定
- 事務局に補助金の請求を行う
- 補助金の入金を受ける
- 補助事業完了から1年後に事業効果報告を行う
参考:小規模事業者持続化補助金|全国商工会連合会、小規模事業者持続化補助金|全国商工連合会、中小企業生産性革命推進事業
【補助金】ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、中小企業・小規模事業者等が直面する働き方改革、賃上げ、インボイス導入等の制度変更に対応するため、革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセス等の省力化のための設備投資等を支援する制度です。
ものづくり補助金と言われることもあります。
小規模事業者持続化補助金とものづくり補助金の違いは、ものづくり補助金のほうが補助対象の範囲が広く、補助額も高額に設定されていることです。小規模事業者持続化補助金は少数の従業員で事業を営んでいる事業者のみが対象ですが、ものづくり補助金は小規模事業者だけでなく中小企業者まで範囲が拡大されています。
2025年度のものづくり補助金の特徴
ものづくり補助金は、「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」の2つに区分されます。
基本的な要件として次の3要件のすべてを満たす3〜5年の事業計画を作成する必要があります。
- 事業者全体の付加価値額の年平均成長率3%以上増
- 給与支給総額の年平均成長率2.0%以上増など
- 事業所内最低賃金が地域別最低賃金プラス30円以上
また、従業員が21名以上の場合には、「従業員の仕事・子育て両立要件」を満たす必要もあります。さらに、特例措置の適用があり、一定の要件を満たすことにより補助上限額の上乗せがあります。
ただし申請時点で、賃上げ計画がない場合、事業計画終了時点で目標値未達の場合には支給された補助金の一定額を返還することになります。
参考:ものづくり補助金総合サイト|ものづくり補助事業公式ホームページ、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 (第20次公募)」、ものづくり補助金のご案内|中小企業基盤整備機構
ものづくり補助金の申請方法
ものづくり補助金の申請手順は以下の通りです。事業承継・M&A補助金や小規模事業者持続化補助金と同じ中小企業庁による中小企業生産性革命推進事業に分類されるため、基本的な申請の流れは同じです。
- 応募要項を確認して事業計画書などの必要な書類を準備する
- gBizIDプライムアカウントを取得する
- 申請受付期間内にものづくり補助金の電子申請システムにログインし、オンライン申請フォームに必要事項を記入し、必要書類を添付したうえで電子申請を行う
- 採択可否の通知が届く
- 補助対象経費を精査して補助金の交付申請を行う
- 補助事業の実施
- 交付額を確定するための確定検査が行われる
- 補助金を請求する
- 補助金の受取り
- 事業化状況報告・知的財産権等報告を行う
参考:ものづくり補助金|ものづくり補助事業公式ホームページ、中小企業生産性革命推進事業|中小企業基盤整備機構
【補助金】IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の生産性向上を目的として、業務効率化やDX等に向けたITツール(ソフトウェア・サービスなど)の導入を支援する補助金です。
補助対象となるITツールは、事務局の審査を事前に受け、補助金HPに登録されているものに限られます。
補助金の申請者は、予め当補助金の事務局に登録されている「IT導入支援事業者」と協力して申請します。会社設立に伴い、ITツールの導入を考えている事業者におすすめの補助金です。
2025年度のIT導入補助金の特徴
2025年度のIT導入補助金については下記の表の計5枠が準備されています。
IT補助金 | 対象となるITツール等 |
---|---|
通常枠 | ITツールを導入し、業務効率化やDXを推進 |
インボイス枠 インボイス対応類型 | インボイス制度対応の会計ソフト、受発注ソフト、PC・ハードウェア等を導入 |
インボイス枠 電子取引類型 | ITツールを受注者に促し取引先のインボイス対応を促進 |
セキュリティ対策推進枠 | サイバー攻撃の増加に伴う潜在的なリスク低減策に対応 |
複数社連携IT導入枠 | 商店街など複数の中小企業等が連携してITツールを導入 |
通常枠
IT導入補助金の一例として通常枠を取り上げます。通常枠の申請要件としては、中小企業・小規模事業者で申請時点においてすでに事業を営んでおり、労働生産性に係る一定の要件を満たす3年間の事業計画を策定し、実行することなどがあります。
例えば、1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請する場合は、補助申請額が5万円〜150万円、補助率は原則2分の1となります。また、4種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請する場合は、補助申請額が150万円〜450万円、補助率は原則2分の1となるように、ITツールの導入状況によって補助額が変わります。
参考:資料ダウンロード | IT導入補助金2025、「IT導入補助金2025案内チラシ」、「IT導入補助金2025 公募要領 (通常枠)」
IT導入補助金の申請方法
IT導入補助金の申請手続きは次のような流れで行います。IT導入補助金の申請にあたっては、IT導入支援事業者であるベンダーなどとの共同での作業が必要になりますので確認しておきましょう。
- 公募要領などから補助事業や申請要件について確認しておく
- gBizIDプライムアカウントを取得する
- IPAが実施するSECURITY ACTIONの宣言を行う
- 導入するITツールやIT導入支援事業者を選択、見積依頼をする
- IT導入支援事業者と必要書類を共同で作成する
- 募集期間内にIT導入支援事業者から申請マイページに招待してもらい交付申請を行う
- 交付決定の通知を受ける
- 交付申請したITツールの発注や契約、支払いを行い、補助事業を実施する
- 事業実績報告を行う(ITツールの契約や支払いに関する証憑を提出)
- 補助金額が確定する
- 申請マイページで補助金の額を確認後補助金が交付される
- 事業実施効果報告を行う
【助成金】キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金は、厚生労働省による事業主向けの雇用関係助成金の一つです。
非正規雇用からの正社員化や処遇改善の促進を目的としたもので、正社員化支援と処遇改善支援の2つの支援に区分されます。
会社設立後に活用できる正社員化コース
キャリアアップ助成金の中でも、会社設立から経営が安定してきた段階で活用できるのが正社員化コースです。有期雇用労働者など(契約社員、パート社員、派遣社員など)を正規雇用の労働者に転用したとき、または直接雇用したときに助成金を受けられます。設立時の社員を正規雇用にする場合などに活用できるでしょう。
中小企業の場合、有期雇用から正規雇用にした場合、重点支援対象者であれば1人あたりの助成額は80万円であり、例えば派遣先で派遣労働者を正社員として直接雇用することになった場合では、これに加算額が20万円あります。
参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省、「キャリアアップ助成金のご案内(令和7年度版)」
正社員化コースの申請方法
キャリアアップ助成金の正社員化コースは、以下のような流れで支給申請を行います。
- キャリアアップ計画書の作成を行う
- 取り組みの前日までに労働局にキャリアアップ計画書を提出する
- 正社員への転換規定など就業規則などの改定を行う
- 就業規則に基づいて正社員への転換や直接雇用を行う
- 転換後、継続して6ヵ月賃金の支払いを行う
(※転換前と比べ3%以上賃金が増額している必要がある) - 転換後6ヵ月の賃金を支払った翌日から2ヵ月以内に支給申請書などの必要書類を準備して支給申請を行う
- 支給審査が行われる
- 支給が決定し支払われる
【助成金】地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)も、キャリアアップ助成金と同じく厚生労働省による事業主向けの雇用関係助成金のひとつです。
雇用機会が特に不足しているとされる地域で、事業所の設置や整備を行い、その地域に居住する人を雇い入れた場合に最大3年間、助成が行われます。地域での雇用を促進するための制度で、雇用機会が不足しているとされる地方での会社設立に活用できます。
対象になる地域
対象となる地域の事業期間は複数年にわたります。2025年において対象となる地域については下記のプロジェクト実施地域一覧をご参照ください。
参考:地域活性化雇用創造プロジェクト実施地域一覧|厚生労働省、「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業実施地域一覧」
助成の対象と条件
地域雇用開発助成金を受給するためには、まず、対象の地域に事業所を設置して、そのエリアに居住する求職者を雇い入れるほか、計画期間内に施設・設備を整備するなどの必要があります。
設置設備や整備費用、労働者の増加数に応じて助成金が支給される仕組みです。対象労働者や被保険者数などの維持など要件を満たせば、2回目、3回目と助成金を受給できます。
特例が適用される場合等
地域活性化雇用創造プロジェクト実施地域において一定の条件にて従業員を雇い入れる場合、最初の助成金支給時に対象となる従業員1人につき50万円が上乗せ支給されます。
また、認定地域再生計画に記載されているまち・ひと・しごと創生寄附活用事業に関連する寄付を行い、一定要件のもと従業員を雇い入れる場合にも一定の助成加算があります。
地域雇用開発助成金の申請方法
地域雇用開発助成金の申請手続きの流れは次の通りです。2回目と3回目の支給申請は、1回目から1年経過ごとに申請を行います。
- 計画書を作成する
- 計画書のほか、事業所状況等申立書、事業所概要が分かる資料、申請事業主の職歴書(※創業の場合)を添付して労働局に提出する
- 計画書に従って雇用計画を実施する(※最長18ヵ月)
- 完了後に1回目支給申請書を労働局に提出する
- 事務所の実地調査が行われる
- 助成金が支給される
- 2回目支給申請書を労働局に提出する
- 助成金が支給される
- 3回目支給申請書を労働局に提出する
- 助成金が支給される
参考:地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)|厚生労働省、「地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)支給申請の手引き」
【助成金】東京都中小企業振興公社の創業助成金
東京都中小企業振興公社の創業助成金は、都内で創業予定の個人や創業から5年に満たない中小企業者等に対し、賃借料、広告費、人件費等の創業初期に必要な経費の一部を助成する助成制度です。2025年度の概要について見てみましょう。
創業助成金の上限は400万円
創業助成金は、指定された20の創業支援事業のいずれかを利用した等一定の要件を満たす創業予定者や中小企業者等に適用されます。
助成対象となる経費としては、賃借料、広告費、器具備品購入費、産業財産権出願・導入費、専門家指導費、人件費、市場調査・分析費等創業に必要なものが含まれています。
助成限度額は400万円、下限額も100万円と定められています。
参考:創業助成事業|TOKYO創業ステーション、「令和 7年度 第2回創業助成事業 【募集要項】」
創業助成金の申請方法
創業助成金の申請方法の主な流れは次のとおりです。
- 応募要項を確認して事業計画書などの必要な書類を準備する
- gBizIDプライムアカウントを取得する
- 申請受付期間内にjGrantsにログインし、必要事項を記入し、必要書類を添付したうえで電子申請を行う
- 書類審査に続き、面接審査を経て、総合審査会にて総合的な判断を行いjGrantsにて審査結果が通知される
- 助成対象事業の実施
- 事業実績報告(中間の実績報告による中間払もあり)を実施する
- 実績報告書の内容に基づき、事業の完了状況等についての確認が行われる
- 助成金が確定する(助成金確定通知書による通知)
- 助成金請求書の提出
- 助成金の受取り
参考:創業助成事業|TOKYO創業ステーション、「令和 7 年度 第2回創業助成事業 【募集要項】」
その他の補助金の例
補助金は各省庁や地方自治体で実施しており、最近では喫緊の課題であるエネルギーや資源、安全に関するものなど特定の目的に沿った制度も多数あります。これらのうち、一例として2025年に公募等があったものを掲載します。
省エネ・非化石化転換補助金
国内で事業を営む法人や個人事業主を対象として、省エネルギー設備への更新や非化石エネルギーへの転換を支援する事業に対する補助金制度です。
特に、エネルギー価格高騰対策や生産性向上を目的としており、事業所の照明・空調・ボイラー等の省エネ機器導入費用が補助対象とされます。大規模な補助事業であり補助金の上限額はいずれも億単位となります。
参考:省エネ設備への更新支援(省エネ・非化石転換補助金)2025年版|環境共創イニシアチブ、「省エネ・非化石転換補助金」
トラック輸送省エネ化推進事業(デジタコ導入等)
省エネ運転の促進や運行管理の効率化・燃費改善を目的として、貨物自動車運送事業者や運送業の個人事業主が、デジタルタコグラフ(デジタコ)や省エネ機器を導入する際の費用を補助する制度です。デジタコとは、車両の運行情報をデジタルデータとして記録・管理する装置であり、運行を管理し、安全運転を推進するものです。
デジタコ1台につき上限額80万円、導入費用の最大2分の1等が補助内容となっています。参考:運行管理の高度化に対する支援|令和6年度補正予算被害者保護増進等事業費補助金ホームページ
その他の補助金については下記のサイトなどでも紹介されています。
参考:ミラサポPlus|経済産業省、J-Net21|中小企業基盤整備機構
会社設立時に最適な助成金・補助金の選び方は?
多くの助成金や補助金の中から、自分に最適なものを見つけ出すのは難しいものです。要件や手続きを読み解くには時間がかかる上、選択したものが必ずしも支給されるわけでもありません。いくつかのケースについて補助金の選び方について考えてみました。
これから起業・開業して会社設立する場合
これから創業する場合は、最も幅広い選択肢から助成金・補助金を選ぶことができます。
中でも、「小規模事業者持続化補助金」は創業直後の申請も可能であり、販路開拓や設備投資に活用できる代表的な制度と言えます。また、東京都で創業する場合は創業助成金(上限400万円)が有力な選択肢となり得ます。
選択のポイントとしては、まず「事業計画書」を明確にし、その目的に合致する制度を選択することです。創業融資と組み合わせて申請要件を満たす戦略も有効と言えます。
申請時期については、多くの制度が年2回程度の公募を行っているため、事業開始スケジュールと公募時期の調整が重要です。
個人事業から法人化(法人成り)する場合
個人事業主からの法人成りにおいては、今までの事業実績を活かした制度選択が重要です。事業の状況にもよりますが、法人成り後に「中小企業新事業進出補助金」や「事業再構築補助金」などの申請も可能です。
法人成りの場合、個人事業での営業年数も法人設立後の申請要件に影響するため、事前の制度理解が必要です。「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」は、既存事業の生産性向上や新たな設備投資に適しており、法人成り後の事業拡大に有効と言えます。「雇用関係助成金」も、従業員雇用の際に活用できる重要な選択肢と考えられます。
女性起業家を支援する制度を活用したい場合
2025年度において女性起業家を対象とした制度を考える上においては、経済産業省の「GIRAFFES JAPAN」プログラムが注目されます。従来の資金提供型支援とは異なり、女性起業家のネットワーク構築とビジネスモデルのブラッシュアップに焦点を当てた包括的支援制度です。
GIRAFFES JAPANに参加することで、各地域の支援機関や同じ志を持つ女性起業家とのネットワーク構築が可能になります。このような関係性の中から、具体的な補助金情報などを探ることも可能です。
また、補助金等へのエントリーにおいては、事業の規模・内容、所在地、成長段階を総合的に考慮し、「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」等の国の補助金をはじめ、各種自治体の制度をよく調べましょう。
会社設立時に助成金・補助金を利用する際の注意点は?
会社設立時に助成金や補助金を利用する際、注意しておきたい6つのポイントを紹介します。
今後も実施されるとは限らない
国が実施している補助金などに関しては、年度ごとの補正予算案等によって予算が決定します。割り振られた予算、政策によって補助金や助成金の内容は変更されることもありますので、前年にあったものが翌年以降も継続するとは限りません。補助金や助成金については、常に新しい情報を取得するようにしましょう。
要件をクリアすることと必要書類の準備が必要
補助金や助成金は、その制度ごとに細かく要件が定められています。申請するには、まず必要な要件をすべて満たさなければなりません。また、申請にあたっては、事業計画書などさまざまな書類の提出が求められます。一つひとつ確認して申請を行うには手間も時間もかかりますので、申請可能期間から遡ってできるだけ早い段階で準備を進めておくと良いでしょう。
申請しても必ずしも受給できないものもある
必要要件をすべてクリアして、苦労して必要書類を集めて作成したとしても、必ずしもその申請が通るとは限りません。助成金や補助金の違いでも触れたように、特に補助金は申請しても採択されない可能性があります。はじめから助成金や補助金をあてにするのではなく、会社設立後の資金繰りにも余裕を持たせたうえで申請することをおすすめします。
受給までに時間がかかる
助成金の振込は申請から数ヵ月後であり、補助金が支払われるのも要件に沿った費用の支出など取り組みが行われた後です。また、補助金では取り組みを行い、支給申請を行った後にさらに確定検査などが行われるため、受給までに時間がかかることがあります。採択を受けても受給までに時間がかかることを考慮して資金繰りなどの事業計画を立てる必要があります。
あくまでもサポートという位置付け
キャリアアップ助成金や地域雇用開発助成金などのように、正社員化した従業員の数や雇用した従業員数などに応じて支給される助成金もありますが、補助金の場合は、支出した費用に対しての「補助」であり、満額を支給するようなものは少ないです。多くは、支出した費用のうちの半分や3分の2などの一部補助になります。
すべてをカバーしてもらえるわけではないため、位置付けとしてはあくまでもサポートです。助成金や補助金を受給したいあまりに、関連する費用の支出が資金繰りを悪くしてしまっては本末転倒です。必要に応じて助成金や補助金を活用するようにしましょう。
種類が多いため公的窓口や専門家に相談したほうが良い
会社設立時に活用できる補助金や助成金を紹介してきましたが、今回取り上げた補助金や助成金のほかにもさまざまなものが存在しています。種類が多く、すべてを検索して適したものを探すのは大変ですので、公的な窓口や専門家などに相談するのがおすすめです。
代表的なのが、中小機構の経営相談、認定経営革新等支援機関(税理士や公認会計士、商工会など国が認定した機関)です。経済産業省のミラサポplusのサイトなどで、補助金や助成金の相談を受け付けている支援機関を確認できます。補助金や助成金の利用を考えているなら、まずは支援機関とコンタクトをとってみると良いでしょう。
参考:ミラサポPlus|経済産業省、認定経営革新等支援機関|中小企業庁
会社設立時に使える助成金・補助金の最新情報をチェックしましょう
上記注意点のとおり、助成金や補助金については年ごとに内容が変更されることが多いため、常に最新情報を取得することが大切です。募集期間が短いものもありますので、募集時期には注意してください。
また、必要とされる事業計画書などの準備には難易度の高いものも考えられますので、早い段階で準備を始めましょう。
当記事では国の助成金・補助金を多く取り上げましたが、各地方自治体の助成金や補助金の制度にも目を向けると選択肢がさらに広がります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
助成金・補助金の関連記事
新着記事
創業融資を成功させる役員報酬の決め方は?金額や審査のポイント、届出の流れも解説
創業融資の審査において、役員報酬の設定は非常に重要な要素です。単に経営者の生活費を決めるというだけでなく、融資の可否、借入可能額、さらには設立後のキャッシュフロー、税負担、そして経営者自身の生活設計にまで影響を及ぼします。 本記事では、創業…
詳しくみる役員変更の法人登記ガイド|必要書類・役員変更登記申請書のテンプレート・費用も解説
会社の運営において、役員の変更は事業の成長や組織体制の変化に伴い、避けて通れない事象の一つです。そして、役員に変更があった場合、法務局への法人登記申請が法律で義務付けられています。この手続きを怠ると、過料の制裁を受ける可能性があるだけでなく…
詳しくみる創業融資の返済期間は何年がベスト?日本政策金融公庫の制度や返済方法についても解説
創業融資は、事業を軌道に乗せるための重要な選択肢です。創業融資の返済期間を適切に設定することは、事業のキャッシュフローを安定させ、健全な経営を持続させるための鍵となります。 この記事では、創業融資の返済期間に関するあらゆる疑問を解消し、あな…
詳しくみる買取資金調達ガイド|M&Aの株式買取や、事業承継の自社株買取などのポイントを解説
円滑な事業承継、M&Aにおいて、株式買取をはじめとする買取は避けて通れない重要なプロセスです。しかし、多くの場合は買取に多額の資金が必要となるため、資金調達が成功の鍵を握ります。 本記事では、M&Aや事業承継における株式買取…
詳しくみる自己破産後も創業融資は可能?日本政策金融公庫の再チャレンジ支援融資についても解説
「自己破産したら、もう二度と事業は起こせないのだろうか…」過去に自己破産を経験された方にとって、再び起業し、創業融資を受けることは非常に高いハードルに感じられるかもしれません。 しかし、自己破産後であっても、創業融資を受けられる可能性はあり…
詳しくみる創業融資の審査に年収は影響する?種類別の審査ポイントや年収が低い場合の対策も解説
創業融資を申し込むにあたり、「年収は審査にどう影響するのか?」「年収が低いと融資は受けられないのか?」といった不安や疑問を抱く方は少なくありません。 本記事では、創業融資における申込者個人の年収の位置づけ、審査で重視されるポイント、そして年…
詳しくみる