- 更新日 : 2025年11月25日
法人化や法人登記にはいくらかかる?会社形態別の費用を解説
会社を設立して法人化するには、株式会社で約20万~25万円、合同会社なら約6万~10万円の費用がかかります。これらの金額は、ご自身で手続きを進める場合に必要となる法定費用の目安であり、司法書士などの専門家に依頼するかどうかで総額は変わります。
法人化を検討する担当者や個人事業主にとって、登記手続きの煩雑さや費用の見積もりは大きな課題になりがちです。
本記事では、法人登記にいくらかかるのか、会社形態ごとの具体的な費用内訳から、コストを抑える方法までを詳しく解説します。
目次
そもそも法人化(法人登記)とは?
法人化とは、個人事業主やこれから事業を始める方が、法律上の人格である「法人」を設立する手続きを指します。具体的には、法務局に会社の情報を登録する「法人登記」を行うことで、正式に会社として認められます。
法人化と法人成りの違い
法人化と似た言葉に「法人成り」がありますが、両者はほぼ同じ意味で使われることがほとんどです。厳密には、個人事業主が事業を法人に移管する場合を「法人成り」、全く新しい事業体として法人を設立する場合を「法人設立」と区別することがあります。しかし、どちらも法人登記の手続きとそれに伴う費用が発生する点では違いがありません。
- 法人成り:既存の個人事業を法人組織へ移行すること。
- 法人設立:新しく法人を立ち上げること。
法人化(法人登記)にかかる費用はいくら?
法人化にかかる費用は、大きく「法定費用」と「専門家への依頼費用」の2つに分けられます。ご自身で手続きを行う場合は法定費用のみ、専門家に代行を依頼する場合は法定費用に加えて代行手数料が必要です。
| 費用区分 | 概要 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 法定費用 | 会社設立のために法律で定められた必ず支払う費用 | 株式会社:約20万~25万円 合同会社:約6万~10万円 |
| 専門家への依頼費用 | 司法書士や行政書士に手続き代行を依頼する場合の手数料 | 約5万~10万円 |
【会社形態別】法人登記の費用はいくらかかる?
法人登記にかかる法定費用は、設立する会社形態が「株式会社」か「合同会社」かによって異なります。それぞれの内訳をみていきましょう。
株式会社の設立費用:約20万円~
ご自身で株式会社の設立手続きを行った場合でも、約20万~25万円の設立費用がかかります。主な内訳は、登録免許税、定款の認証手数料、定款に貼付する収入印紙代です。
株式会社の設立にかかる法定費用は、定款認証の手続きが必要であることや、登録免許税の最低額が合同会社より高く設定されているため、総額も高くなります。
| 費用項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 15万円~ | 資本金の0.7%。15万円に満たない場合は15万円。 |
| 定款認証手数料 | 3万~5万円 | 資本金の額によって変動。公証役場で認証を受けるための費用。 |
| 収入印紙代 | 4万円 | 紙の定款で作成する場合に必要。(電子定款の場合は不要。) |
| 定款謄本代 | 約2,000円 | 認証された定款の写しを発行してもらうための手数料。 |
| 合計 | 約22.2万円~ | 電子定款なら約18.2万円〜 |
参照:登録免許税の税額表|国税庁、公証事務|日本公証人連合会
合同会社の設立費用:約6万円~
合同会社は、株式会社よりも費用を抑えて設立できます。ご自身で手続きをすれば、約6万~10万円の法定費用だけで設立が可能です。
合同会社の方が費用を抑えられる理由として、株式会社で必要な「定款認証」が不要な点があげられます。また、登録免許税の最低額も株式会社より低く設定されています。
| 費用項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 6万円~ | 資本金の0.7%。6万円に満たない場合は6万円。 |
| 収入印紙代 | 4万円 | 紙の定款で作成する場合に必要。電子定款の場合は不要。 |
| 定款謄本代 | なし | 定款認証が不要なため、この費用はかからない。 |
| 合計 | 約10万円~ | 電子定款なら約6万円~ |
専門家に法人化・法人登記を依頼するといくらになる?
司法書士や税理士、行政書士などの専門家に法人登記の手続きを依頼すると、法定費用に加えて5万~10万円程度の手数料がかかります。
専門家に依頼した場合、法定費用と手数料を合わせた総額は、株式会社で約23万~29万円、合同会社で約11万~16万円が目安となるでしょう。
一見、費用が高くなるように思えますが、専門家は通常電子定款で手続きを進めるため、収入印紙代の4万円が不要になるメリットがあります。
法人設立手続きを依頼できる専門家
法人設立は相談する専門家によってサポート範囲が異なります。特に、最終的な登記申請を代理できるのは司法書士のみという点を理解しておきましょう。
- 司法書士
登記申請の専門家です。定款作成から法務局への登記申請代行まで、設立手続きの全般をワンストップで依頼できます。 - 税理士
税務の専門家です。設立後の税務顧問契約とセットで、提携している司法書士と連携して設立をサポートするケースが多くあります。節税や資金調達を見据えたアドバイスを受けられるのが利点ですが、税理士自身は登記申請を行えません。 - 行政書士
書類作成の専門家です。定款や議事録といった、設立に必要な書類作成を代行します。ただし、登記申請の代理はできないため、申請はご自身で行うか、別途司法書士に依頼する必要があります。
社会保険労務士は、労務の専門家ですので、設立後の社会保険・労働保険の手続きや就業規則の作成などを担当します。会社設立の手続きそのものである登記申請は業務範囲外のため、依頼できません。
専門家に依頼するメリット
- 手間と時間を節約できる
煩雑な書類作成や法務局とのやり取りをすべて任せられるため、設立準備の負担を大幅に減らせます。 - 電子定款で印紙代が不要になる
ご自身で電子定款を作成するには専用の機器やソフトが必要ですが、専門家は設備が整っているため、印紙代4万円を確実に節約できます。 - 手続きの不備を防げる
専門家が正確に手続きを行うため、書類の修正や再提出といったリスクを避けられます。
結果として、ご自身で紙の定款を用いて手続きを行う場合と比べても、専門家に依頼した場合の総額は大きく変わらないケースも少なくありません。
会社設立費用の比較(自分で手続き vs 専門家に依頼)
| 会社の種類 | 自分で手続き | 専門家に依頼 |
|---|---|---|
| 株式会社 | 約20万~25万円 | 約23万~29万円(法定費用+代行手数料) |
| 合同会社 | 約6万~10万円 | 約11万~16万円(法定費用+代行手数料) |
法人化や法人登記の費用を安く抑える方法はある?
法人化にかかる初期コストを少しでも抑えたい場合、いくつかの方法が考えられます。特に効果的なのが「電子定款」の活用です。
電子定款を活用して収入印紙代4万円を節約する
最も効果的な節約方法は、電子定款を利用することです。紙の定款を作成すると印紙税法に基づき4万円の収入印紙が必要ですが、PDF形式などで作成する電子定款には印紙税がかかりません。
ただし、ご自身で電子定款を作成するには、以下の準備が必要です。
- ICカードリーダライタ
- マイナンバーカード(電子署名用)
- PDF作成ソフト(Adobe Acrobatなど)
- 法務省が提供する「登記・供託オンライン申請システム」の専用ソフト(無償で入手可能)
これらの機材やソフトをそろえる費用・手間を考慮すると、前述のとおり専門家に依頼するほうが結果的に効率的で安くなる可能性があります。
合同会社を選択肢に入れる
事業内容や将来の展望にもよりますが、設立時の費用を抑えることを優先するなら、株式会社ではなく合同会社を選ぶのも一つの方法です。
合同会社は定款認証が不要で登録免許税も安いため、株式会社に比べて設立費用を約12万円以上節約できます。
法人化後に発生する年間費用はいくら?
法人化で考えるべきは設立費用だけではありません。会社を維持していくためには、年間でさまざまな費用が発生します。法人化後に後悔しないためにも、ランニングコストを把握しておくことが大切です。
1. 法人住民税(均等割)
法人が事業を行っているだけで必ず課税される税金です。赤字であっても、資本金や従業員数に応じて最低でも年間約7万円の支払い義務が生じます。
参照:法人住民税|総務省
2. 税理士への顧問料
法人の税務申告は個人事業主よりも複雑なため、多くの企業が税理士と顧問契約を結びます。顧問料の相場は、企業の規模や取引量によりますが、年間で30万~60万円程度が一般的です。
3. 社会保険料
法人になると、役員や従業員の社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務づけられます。保険料は会社と従業員で折半して負担しますが、経営者にとっては大きなコスト増となるでしょう。例えば、役員報酬が月額30万円の場合、会社の社会保険料負担は年間で約50万円以上になる可能性があります。
法人化を検討すべきタイミングはいつ?
費用をかけてでも法人化するメリットは、節税効果を含め複数あります。課税所得が900万円を超えたときや、年間売上が1,000万円を超えて将来の消費税の納税義務が見込まれるときなどは、法人化を検討するタイミングといえます。加えて事業拡大のために融資や大手企業との取引を考えている場合も、法人化した方が有利に働くでしょう。
課税所得が900万円を超えたとき
個人の所得税は累進課税で、所得が増えるほど税率が高くなります。課税所得が900万円を超えると所得税率は33%になりますが、法人税率(中小企業の場合)は年800万円以下の所得部分に軽減税率15%が適用されます(800万円超の部分は23.2%)。この所得税と法人税の税率差が大きくなる水準は、法人化による節税メリットが見込める一つの目安といえるでしょう。ただし、法人税以外の税金を加えた実際の効果は、事業規模や収益構造によって異なります。
参照:法人税の税率|国税庁
年間売上が1,000万円を超えたとき
個人事業主は、2年前の課税売上高が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生します。しかし、資本金1,000万円未満で新たに法人を設立し、基準期間がない法人として要件を満たせば、設立直後の1期目および2期目に限り消費税の納税が免除される場合があります。この制度を活用することで、納税開始までの期間を確保し、キャッシュフローの改善が期待できます。
法人化・法人登記にいくらかかるのかは、会社形態と手続き方法で決まる
本記事では、法人化や法人登記にいくらかかるのかを解説しました。株式会社を設立する場合、ご自身で手続きしても約20万円以上の法定費用が必要となり、合同会社であれば約6万円から設立が可能です。
会社の設立費用を抑える方法としては、電子定款を活用して収入印紙代4万円を節約することが有効です。手間や設備投資をふまえ、手続き全般を任せたい場合には、司法書士などの専門家に依頼する選択肢もあります。
会社の設立費用だけでなく、法人住民税や社会保険料といった年間の維持費も考慮に入れ、ご自身の事業にとって最適なタイミングで法人化を検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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