- 作成日 : 2025年11月13日
株にかかる税金はいくら?知らないと損する節税方法を解説
株式投資で得た利益には税金がかかります。売却益や配当金には約20%超の課税がされるのが原則ですが、制度の理解と活用次第で、負担を減らすことが可能です。
本記事では、株式投資に関わる税金の仕組みから、NISA・iDeCoなどの非課税制度、確定申告による控除や損失の繰越制度などを解説します。
目次
株式投資にかかる税金とは?
株式投資で利益を得た場合、主に「売却益(譲渡益)」と「配当金」に課税されます。どちらも上場株式の場合20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)が基本税率で、申告分離課税の仕組みによって計算されます。ここでは、株の売却益と配当金それぞれにかかる税金の内容を整理します。
株の売却益には一律20.315%の税金がかかる
株式を売却して得た利益には、一律20.315%の税金がかかります。これは所得税・住民税・復興特別所得税を合計した税率で、2014年以降、上場株式の譲渡益に対する標準税率として定着しています。特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、売却時に自動で税金が差し引かれるため、基本的に確定申告は不要です。
ただし、損失がある場合や他の口座との損益通算を行いたい場合には、確定申告を行うことで税金の還付を受けることが可能です。一方、一般口座や特定口座(源泉徴収なし)を利用している場合は、自分で確定申告を行い、売却益に対する税金を納める必要があります。
また、2025年からは「日本型ミニマムタックス」という制度が導入されました。これは年間所得が極めて高いごく一部の個人(年収約30億円規模)を対象に、金融所得を含む税負担率を実質22.5%以上に引き上げる仕組みです。対象者は全国でも数百人に限られ、一般の個人投資家には影響しないため、引き続き20.315%の税率が適用されます。
配当金にも約20.315%の税金がかかるが、申告方法で税負担が変わる
株式の配当金にも、売却益と同様に20.315%(未上場株式の場合20.42%)の税金が源泉徴収されます。支払時に自動で差し引かれるため、手続きをしなくても課税が完結しますが、確定申告を行えば節税につながる可能性があります。
配当金の課税方法は3種類あり、「申告不要」「申告分離課税」「総合課税」から選択できます。申告分離課税を選ぶと、配当を他の所得と分けて申告し、税率20.315%で計算します。この方法を選ぶと、株式の譲渡損失や繰越損失と配当金を損益通算できるため、還付を受けられる場合があります。
一方、総合課税を選択すると、配当金を給与所得などと合算し、累進税率で課税されます。この場合、「配当控除」が適用されるため、所得が少ない人ほど有利になります。高所得者が総合課税を選ぶと税率が上がり、控除効果も薄れるため、税負担が増えることもあります。
このように、配当金は源泉徴収で完結させるか、申告によって節税するかを選べます。自身の所得状況や損失の有無に応じて、最も有利な課税方法を検討することが重要です。また、住民税の税率は申告分離課税の場合5%、総合課税の場合10%となる点も押さえておく必要があります。
株の利益にかかる税金を節税する方法は?
株式投資の利益には原則20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)の税金が課されます。しかし、非課税制度を上手に活用すれば、この税金を合法的に抑えることができます。ここでは、代表的な制度であるNISAとiDeCoを中心に、利益を非課税にする方法を解説します。
NISAを活用すれば利益に税金がかからない
株の利益を非課税にする最も効果的な方法がNISA(少額投資非課税制度)の利用です。NISA口座で購入した株式や投資信託の売却益・配当金は、一定の投資枠内であれば非課税となります。2024年から始まった新NISA制度では、年間360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)まで非課税で投資でき、生涯の非課税限度額は1,800万円に拡大されました。
さらに、新制度では非課税で保有できる期間が「無期限」となり、売却後も枠を再利用できるようになりました。たとえばNISA口座で100万円の利益が出ても、通常であれば約20万円かかる税金は一切不要です。また、夫婦や家族でそれぞれNISA口座を開設すれば、世帯単位で非課税枠をさらに広げられます。NISAは長期運用と節税を両立できる制度として、個人投資家にとって有利な仕組みです。
iDeCoで所得控除と非課税運用の両方を実現する
もう一つの有効な節税手段がiDeCo(個人型確定拠出年金)です。iDeCoでは、拠出した掛金が全額所得控除の対象となり、運用中の利益にも課税されません。つまり、運用益が非課税になるだけでなく、掛金を支払う段階でも所得税と住民税の節税効果を得られるのです。
たとえば年間24万円を拠出している場合、所得税率20%・住民税10%の人であれば、年間約7万円の節税効果があります。さらに、iDeCoで得た利益はすべて非課税で再投資されるため、複利効果も高まります。ただし、原則60歳まで引き出すことができないという制約があるため、短期的な資金運用には向きません。
NISAが「投資の利益を非課税にする制度」であるのに対し、iDeCoは「所得控除と非課税運用の両方で節税できる制度」と言えます。目的やライフステージに合わせて併用することで、株式投資の税負担を最小限に抑えることができます。
参考:iDeCo公式サイト
株で損失が出た場合にできる節税対策は?
株の売買で損失が出た場合、その年に直接税金が戻ることは基本的にありません。しかし、正しく確定申告を行うことで、その損失を将来の利益と相殺し、結果として支払う税金を減らせる「繰越控除」という制度があります。ここでは、その活用方法と注意点を解説します。
繰越控除を使えば将来の利益から税金を差し引ける
株式取引で損失が出た場合でも、確定申告を行えばその損失を翌年以降の利益と相殺(損益通算)できます。これを「譲渡損失の繰越控除」といい、最大3年間にわたり、株式や投資信託などの譲渡益・配当所得から損失分を差し引くことが可能です。
たとえば2025年に100万円の損失が出たとします。確定申告をしておけば、2026〜2028年の間に得た株の売却益や配当金からその損失を控除でき、利益が損失額を上回るまで新たな課税は発生しません。翌年に50万円の利益が出れば税金はゼロに、残り50万円の損失はさらに翌年に繰り越せます。
申告の継続が繰越控除の条件になる
この制度を利用するには、損失が発生した年に確定申告を行い、「損失の申告」と「繰越控除の適用」を申請する必要があります。そのうえで、翌年以降も3年間は毎年確定申告を継続しなければなりません。
たとえ繰越期間中に株の売買がなくても、申告を忘れるとその年以降の繰越控除が無効になるため注意が必要です。申告の継続が制度の前提となっている点は重要です。
なお、繰越控除の対象は上場株式などに限られ、非上場株式の損失や、他の所得(給与・不動産など)とは通算できません。あくまで金融商品に関する利益とのみ相殺できる仕組みです。
配当控除の活用方法は?
上場株式などの配当金には約20.315%の税金が源泉徴収されますが、確定申告で課税方式を選択することで税負担を軽減できる可能性があります。所得が一定以下であれば「配当控除」によって実質的な税率を下げることが可能です。ここでは、配当控除の仕組みと適用時の注意点について解説します。
配当控除を使えば税率が下がる場合がある
株式の配当金は、確定申告を行うことで「申告分離課税」または「総合課税」を選ぶことができます。総合課税を選択した場合、配当金は給与などの他の所得と合算されて累進課税の対象となりますが、その代わり「配当控除」を受けられます。
配当控除は、所得税で10%(課税所得1,000万円以下の場合)、住民税で2.8%が控除される制度です。たとえば課税所得が695万円未満の人が総合課税を選んだ場合、配当金に対する所得税の実効税率は約17%程度にまで軽減されることがあります。これは申告分離課税(約20%)より有利になる可能性があるため、所得水準が中程度以下の方には節税効果が期待できます。
配当控除の適用には総合課税を選ぶ必要がある
配当控除は「申告分離課税」では適用されないため、これを活用するには「総合課税」を選ぶ必要があります。ただし、総合課税を選択すると、給与所得などと合算されて適用税率が高くなる可能性もあるため注意が必要です。
たとえば、課税所得が900万円を超えるような高所得者が総合課税を選ぶと、所得税率が33%や40%に達することがあり、配当控除を受けても結果的に税負担が重くなる場合があります。したがって、総合課税による申告が有利かどうかは、年収や他の所得とのバランスを見て判断する必要があります。
法人が株式投資で節税するのは有効?
法人による株式投資は、節税という観点で見ると一部に効果がありますが、個人と比較して税率が高くなるケースが多く、慎重な検討が必要です。節税目的だけで行うのは基本的に非効率であり、目的に応じた活用が求められます。
法人税率は高く、単純な節税目的では不利になる
法人が株式運用で得た利益には、法人税・地方法人税・住民税などを含めた実効税率が約30%課されます。これは、個人の株式譲渡益にかかる20.315%と比べて高く、税率面では明らかに不利です。さらに法人にはNISAのような非課税制度が存在しないため、売却益も配当金もすべて課税対象です。
また、法人で得た利益を経営者個人に移す場合、役員報酬や配当金という形になり、法人段階での課税に加えて個人側でも所得税・住民税が発生します。いわゆる「二重課税」の状態となり、全体の税負担が増えることも珍しくありません。
法人には損益通算・損失繰越・経費計上の利点がある
法人で株式投資を行うメリットも存在します。法人税は所得の種類を問わないため、株式の損失を本業の利益と通算して課税所得を圧縮できます。事業利益が出ていても、株式運用で損失が出れば法人全体の課税所得を減らせる仕組みです。
さらに、法人の譲渡損失は最大10年間繰り越すことができ、将来の利益と相殺することも可能です。これは、個人の繰越期間(3年)と比べて大きな優位点です。ただし、この制度を利用するには青色申告が前提となります。
また、投資関連の支出(書籍、セミナー、通信費、端末購入など)を必要経費として計上できる可能性があり、税務上の経費として扱える点も法人ならではの利点です。
節税目的だけで法人化するのは避けるべき
総合的に見て、法人による株式投資は「本業の利益圧縮」「将来の資産形成」「退職金や承継資金の準備」など明確な目的がある場合には有効です。しかし、単に税金を減らしたいという理由で法人化したり、投資に手を出したりするのは、税率や管理負担を考慮すると現実的ではありません。
証券会社の特定口座(源泉徴収あり)が法人では利用できず、自社で損益管理と確定申告を行う必要がある点も留意が必要です。税制上のルールや実務的な手間を含めて、慎重に運用方針を決めることが重要です。
譲渡益税の課税タイミングと年末調整の活用方法は?
株式の譲渡益(売却益)は、売却した年の所得として課税されます。タイミング次第で課税額が変わるため、年末の売却判断は節税において重要です。「損出し」や「年内売却の判断」によって、課税所得を調整しやすくなります。
株を売却した年に課税が確定する
株式の譲渡益は「売却した日」の属する年に税金が確定します。2025年12月に株を売却した場合、その利益は2025年分の所得として申告され、同年の所得税・住民税の対象となります。
そのため、年末の売却タイミングを調整することで、課税対象となる年をずらすことが可能です。たとえば、年内にすでに大きな利益が出ている場合、利益確定を翌年に先送りすることで、当年の課税所得を抑えられます。反対に、繰越損失がある年にあえて利益を確定すれば、その損失と相殺して税金をゼロにすることもできます。
このように、譲渡益税は「含み益」ではなく「実現益」に課税されるため、売却のタイミングが納税額に直接影響するのです。
年末の“損出し”で課税対象の利益を減らす
年末に株式を意図的に売却して損失を確定させる「損出し」は、よく使われる節税テクニックのひとつです。損出しとは、含み損のある銘柄を年内に一度売却し、損失を実現させて他の利益と損益通算する方法です。
たとえば、A株で50万円の利益が出ており、B株に50万円の含み損がある場合、年内にB株を売却すれば課税対象額が±0になり、利益にかかる税金(約10万円)を回避できます。
さらに、売却したB株を年明けに買い戻すことで、保有ポジションを維持しつつ損失だけを確定することも可能です。ただし、同一銘柄をすぐに買い戻すと「損失の否認」対象になる場合があるため、一定期間を空けて再取得するなどの注意が必要です。
株式投資の税金は制度理解と活用で大きく差がつく
株式投資にかかる税金は一律20.315%が基本ですが、申告方法や非課税制度の活用次第で負担は大きく変わります。NISA・iDeCoといった制度を使えば利益を非課税にでき、損失が出た年には繰越控除によって将来の節税にもつなげられます。配当金についても課税方法を選ぶことで、配当控除の恩恵を受けられる場合があります。売却のタイミングや申告内容を戦略的に調整することが、資産を守り増やすためのポイントになります。
節税効果を最大化するには、制度の仕組みを正確に理解したうえで、自分の収支や目的に合った方法を選ぶことが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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