• 作成日 : 2025年10月24日

学資保険で節税するには?控除のポイントや注意点を解説

子どもの将来に備える「学資保険」は、教育資金の積立だけでなく、税制上のメリットがあります。保険料の支払いによって所得控除が受けられるほか、満期金の受け取り方次第では課税を抑えることも可能です。

本記事では、学資保険の仕組みと節税ポイントを解説します。

学資保険の保険料は節税になる?

学資保険は将来の教育資金を準備するだけでなく、税金の面でも一定の優遇が受けられる制度設計がなされています。生命保険料控除」を通じて、所得税・住民税の節税効果が期待できます。ここでは、その仕組みと節税額の目安について解説します。

学資保険は「生命保険料控除」の対象になる

学資保険の保険料は、一般生命保険料控除として所得控除の対象になります。生命保険料控除とは、個人が支払った保険料の一部を、所得から差し引くことで所得税や住民税の負担を軽くする制度です。学資保険の保険料は契約内容によって一般生命保険料控除に該当し、新制度(2012年以降契約)では所得税で年間4万円、住民税で2万8千円が上限です。
但し、2026年(令和8年)分の所得税に限り、23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除の上限は6万円(通常4万円)に拡大しています。

年間の支払保険料が8万円以上であれば、最大控除額に到達します。適用を受けるためには、会社員であれば年末調整時に「生命保険料控除証明書」を提出、自営業者であれば確定申告時に申告が必要です。証明書は保険会社から毎年発行されるため、紛失しないように保管しておきましょう。

節税額は所得税率により異なる

控除額に対して適用税率を掛けた分だけ、実際の節税額が決まります。生命保険料控除による節税額は、控除された所得に対して所得税と住民税が軽減される仕組みです。たとえば、年間8万円以上の保険料を支払い、4万円の所得控除を受けた場合、所得税率10%の人は4,000円、20%の人は8,000円の税額が減ります。加えて住民税でも最大2,800円が軽減されます。

ただし、控除額には上限があるため、支払額が多ければ多いほど税金が減るわけではありません。所得税率が高い人ほど節税効果は大きくなりますが、控除の枠を超える部分には適用されない点に留意が必要です。学資保険を節税目的で活用する際は、控除上限を意識した保険料設計が有効です。

学資保険で節税するメリットは?

学資保険は教育資金の積立としてだけでなく、税負担の軽減にもつながる点が大きな利点です。以下では、節税面でのメリットを整理します。

所得控除で毎年の税負担が軽くなる

学資保険の保険料は「一般生命保険料控除」の対象となり、年間で最大4万円(所得税)・2万8千円(住民税)の所得控除が受けられます。これにより、年間数千円〜1万円程度の節税が可能になります。特に2026年分からは、23歳未満の扶養親族がいる場合に限り控除上限が6万円に引き上げられるため、子育て世帯にはさらなる恩恵があります。

満期金の非課税枠で将来の税負担も軽減

満期金は「一時所得」として扱われ、払込保険料や50万円の特別控除を差し引いた残額の半分に課税されます。利益が小さい場合は課税されないことも多いです。

これにより、受取時の手取り額が減らず、将来の教育資金にそのまま充てることができます。契約者・受取人・保険料負担者の設定によっては、贈与税や相続税の課税対象になることがありますが、適切な名義設定を行うことで不要な課税を避けられます。

学資保険で節税する注意点は?

学資保険には一定の節税効果があるものの、効果は限定的であり、契約内容や活用方法を誤ると経済的損失につながる可能性もあります。税制面の恩恵だけに着目せず、長期的な視点で総合的に検討することが大切です。

節税効果は小さく限定的

生命保険料控除による税軽減は、年間数千円〜1万円前後にとどまります。学資保険の保険料を一般生命保険料控除として申告すれば所得控除を受けられますが、その控除額には上限があり、節税効果は限定的です。高額な保険料を支払っても、超過分には控除が適用されないため、節税のためだけに加入するのは合理的とは言えません。

解約リスクとインフレへの弱さ

中途解約すれば元本割れのリスクがあり、将来的な価値も目減りします。学資保険は契約期間が10年以上に及ぶ長期商品で、途中で解約すると払い込んだ金額を下回る「元本割れ」になるケースがあります。また、利回りが低いためインフレに弱く、将来の教育費をカバーしきれない可能性もあります。

名義設定を誤ると贈与税が発生することも

契約者と受取人が異なる場合、満期金が贈与税の課税対象となる可能性があります。契約時に名義設定を誤ると、満期金が「贈与」と見なされ、高額な贈与税が課されることがあります。節税効果を最大限活かすには、契約者・保険料負担者・受取人を同一人物に設定する必要があります。

生命保険料控除に関する2025年税制改正の変更点は?

2025年の税制改正では、子育て支援策の一環として生命保険料控除の一部が見直されました。23歳未満の扶養親族がいる世帯を対象に、所得税における一般生命保険料控除の限度額が一時的に引き上げられる変更がなされました。この措置は学資保険を利用する家庭にも影響するため、内容を正確に把握しておくことが重要です。

一般生命保険料控除の上限が6万円に引き上げ

2026年分の所得税に限り、控除限度額が現行の4万円から6万円に拡大されます。この改正により、扶養する子ども(23歳未満)がいる納税者については、2026年分(令和8年分)の所得税において、一般生命保険料控除の上限が2万円引き上げられます。対象となるのは新制度(2012年以降に契約された保険)に該当する保険料です。これにより、学資保険を含む一般生命保険に支払った保険料の控除枠が拡大し、税額軽減の可能性が高まります。

住民税や他の控除枠には変更なし

所得税の一部に限定された措置であり、他の控除枠は従来どおり維持されます。今回の改正では、住民税における控除上限(2万8千円)に変更はありません。また、介護医療保険料控除や個人年金保険料控除と合わせた「生命保険料控除全体の合計限度額」(所得税で12万円、住民税で7万円)も現行のまま据え置かれます。そのため、控除上限が拡大されたのは「一般生命保険料控除(所得税)」に限定された時限的措置である点に注意が必要です。

学資保険の満期金に税金はかかる?

学資保険は教育資金の確保とあわせて、税制面での配慮も施された仕組みです。ここでは、満期金にかかる税金の有無や注意点について解説します。

契約者と受取人が同じなら、原則課税されない

満期金は「一時所得」に分類され、特別控除により非課税になる場合がほとんどです。学資保険の満期金は、契約者と受取人が同一人物である場合、「一時所得」として所得税の対象になります。ただし、一時所得には「50万円の特別控除」と「その1/2のみが課税対象」という優遇措置があります。たとえば、満期金200万円・払込保険料180万円なら、課税対象はゼロになります(200万-180万-50万=-30万)。

このように、実際には多くの場合で課税が発生しません。

一時所得には50万円の非課税枠がある

受取額から保険料総額と50万円を差し引いた残額の1/2のみが課税対象です。一時所得は「収入金額-支出(保険料)-特別控除50万円」で所得金額を計算し、その半額が課税されます。学資保険では、利益が出たとしてもまず50万円までは非課税枠で相殺されるため、満期金が保険料総額より大幅に上回らない限り税金がかかりません。さらに、他の一時所得がなければ、満期金だけで課税対象に達するケースはまれです。

受取人が子どもだと贈与税の対象になる

契約者と受取人が異なる場合、満期金は贈与とみなされ課税されます。学資保険の受取人が子どもになっている場合、保険料を払った親と受取人が異なるため、税法上は贈与と見なされます。この場合、所得税ではなく贈与税の対象となり、年間110万円の基礎控除を超える部分に最大55%の贈与税率が適用される可能性があります。そのため、契約者と受取人は同一人物に設定しておくのが原則です。

分割受取(学資年金型)は雑所得扱いに注意

祝い金や分割形式での受取は「雑所得」として扱われ、非課税枠が使えません。学資保険の中には、大学進学時などに分割で給付金を受け取れる商品もあります。これらは「学資年金」や「祝い金」といった形で支払われ、税法上は「雑所得」として扱われます。雑所得には一時所得のような50万円の特別控除がなく、受け取った金額の全額が他の所得と合算されて課税されます。節税の面では、一括で満期金として受け取る方法が有利です。

学資保険以外に教育資金で節税できる制度は?

教育資金の準備には学資保険以外にも選択肢があり、節税効果が期待できます。贈与税の特例や投資による非課税制度をうまく活用することで、より柔軟で効率的な資金形成が可能になります

教育資金一括贈与の非課税制度

祖父母などから最大1,500万円まで非課税で贈与できる制度があります。この制度では、一定の条件を満たすことで、子や孫への教育資金の贈与が非課税となります。適用上限は1人あたり1,500万円で、信託契約を結ぶなど所定の手続きが必要です。当初は2023年3月で終了予定でしたが、2026年3月末まで延長されています。まとまった資金を効率よく子どもに渡したい場合に適しています。

参考:祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし|国税庁

つみたてNISAなどの非課税制度も有効

運用益が非課税になるつみたてNISAで教育資金を形成する方法もあります。つみたてNISAは、年間一定額までの投資信託購入に対し、運用益・売却益が最長20年間非課税になる制度です。元本保証はないものの、長期投資による増加が見込め、途中換金も可能です。近年では、学資保険と併用して教育資金を準備する家庭も増えています。

参考:NISA特設ウェブサイト|金融庁

学資保険の解約返戻金に税金はかかる?

学資保険を途中で解約すると、返戻金に対して課税される場合があります。ここでは、税金がかかる条件や計算方法、注意点を解説します。

返戻金に利益があれば「一時所得」として課税対象になる

解約返戻金が払い込んだ保険料総額を上回ると、所得税がかかる可能性があります。返戻金とそれまでに払い込んだ保険料との差額に50万円の特別控除を適用し、残った金額の1/2が課税対象となります。たとえば、返戻金が200万円で、払込保険料が140万円の場合は、200万−140万−50万=10万円となり、その1/2である5万円が一時所得として課税されます。

元本割れでも非課税になるとは限らないケースに注意

返戻金が払込保険料を下回っていても、契約形態によっては贈与税の対象になることがあります。親が契約者・保険料負担者で、子どもが受取人になっている場合、返戻金は「贈与」とみなされることがあり、贈与税が課される恐れがあります。基礎控除(年110万円)を超える部分には高い税率が適用されるため、節税目的で契約していた場合でも不利になる可能性があります。

解約のタイミングや名義設定が重要

学資保険は長期契約であるため、解約時のタイミングや契約者・受取人の設定によって税務上の扱いが変わります。安易な途中解約は元本割れや予期せぬ課税の原因となるため、必ず保険会社や税理士に相談し、事前に収支と税務の影響を確認してから判断することが大切です。

学資保険の税制優遇を上手に活用しよう

学資保険には、保険料の生命保険料控除や満期金の一時所得扱いによる非課税枠など、税制上の優遇措置が備わっています。ただし、学資保険による節税効果はあくまで限定的です。教育資金の準備手段として、税制メリットも考慮しつつ、他の運用方法も含めてバランスよく検討することが大切です。


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