• 作成日 : 2025年10月24日

コインランドリーで節税できる?優遇制度や注意点を解説

高額な設備投資を伴うコインランドリー経営は、税制優遇制度を活用することで節税効果が期待できるビジネスモデルとして注目されています。即時償却や税額控除、固定資産税の軽減といった多様な制度に対応しやすく、収益を確保しながら税負担を抑える選択肢となり得ます。

本記事では、コインランドリー節税の仕組みと活用できる優遇制度、制度利用時の注意点などを解説します。

目次

コインランドリー節税とは?仕組みや利用できる税制優遇策

コインランドリー節税とは、コインランドリー事業に必要な高額な設備投資を通じて、税法上の特別措置を活用し、課税所得を圧縮することで税負担を軽減する方法です。業務用の洗濯機や乾燥機は法定耐用年数が13年と長く、通常は減価償却を通じて費用計上しますが、特別償却制度を利用することで、初年度から多額の費用を一括で計上することが可能となり、大幅な節税効果が見込めます。

【中小企業経営強化税制】即時償却または税額控除の選択が可能

中小企業経営強化税制は、対象となる機械設備の取得に際し、即時償却または税額控除(7%または10%)のいずれかを選べる制度です。コインランドリーに必要な機器も対象設備に含まれる場合が多く、初年度に全額を損金算入できれば、法人税率(たとえば30%程度を仮定)を考えると相当な節税効果が期待できます。

この制度を利用するためには、あらかじめ「経営力向上計画」を策定し、主務官庁の認定を受ける必要があります。設備の生産性やエネルギー効率の向上といった点が要件となるため、購入予定の機器が制度要件を満たしているかの確認が重要です。
但し、令和5年度改正で、「主要な事業でないコインランドリー業かつ、管理の『おおむね全部』を他社に委託する資産は対象外となっている点には留意が必要です。

参考:中小企業経営強化税制|中小企業庁

【中小企業投資促進税制】手続きが簡便な特別償却制度

中小企業投資促進税制は、機械装置の取得に対して、取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除が適用される制度です。経営強化税制との違いは、事前に認定計画を提出する必要がない点にあり、導入のハードルが比較的低いのが特徴です。

ただし、即時償却ではなく30%の特別償却にとどまるため、経費計上の幅はやや限定的になります。青色申告を行っている中小企業や個人事業主が対象となり、コインランドリー機器も該当設備として広く認識されています。

参考:中小企業投資促進税制|中小企業庁

【固定資産税の軽減措置】地方税の節税にも対応

生産性向上特別措置法に基づく特例により、先端設備等導入計画の認定を受けた中小企業は、対象設備に対して償却資産税(固定資産税)の課税標準を最大で1/2に軽減することが可能です。たとえば、給与総額の1.5%以上の増加を見込んだ計画を提出すれば、3年間軽減措置が適用される場合があります。

この制度は国税ではなく地方税の軽減に関するものであり、国の優遇税制と併用することで総合的な節税効果を高めることができます。コインランドリー機器が新品であることなど、具体的な条件を満たす必要があるため、計画段階での確認が重要です。

参考:先端設備等導入制度による支援|中小企業庁

【小規模宅地等の特例】相続時の節税にも効果を発揮

コインランドリーの敷地が事業用宅地として認定されれば、相続時に最大で80%の評価減が可能となる「小規模宅地等の特例」を活用することができます。この制度を活用するには、被相続人がその土地を使って事業を営んでいたこと、相続人が事業を継続することなどが要件となります。

相続財産の多くが土地で構成されるようなケースでは、評価額の大幅な圧縮により相続税の負担を軽減でき、事業承継とあわせて重要な節税手段となり得ます。コインランドリー経営を通じて事業用宅地としての位置づけを確保しておくことが、将来の相続対策として有効に機能します。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

コインランドリーが節税対策に向いている理由は?

コインランドリーは、高額な設備投資を伴う業態であることから、税制優遇との相性が非常に良いとされています。ここでは、コインランドリーがなぜ節税に向いているのか説明します。

高額な機器購入による即時償却が節税につながる

コインランドリー事業では、大型の洗濯機や乾燥機といった業務用機器の購入が必要です。これらの設備は1台あたり数十万円から数百万円にのぼることもあり、全体では数千万円規模の初期投資となる場合もあります。通常は13年の法定耐用年数に応じて少しずつ減価償却されますが、即時償却制度を活用すれば、購入した年に全額を損金として計上でき、課税所得を一気に圧縮することが可能です。

たとえば、即時償却によって5,000万円の機器を初年度に経費化すれば、30%の法人実効税率換算で1,500万円程度の税負担軽減が実現できます。利益が出ている企業ほどそのメリットは大きく、効果的な利益圧縮手段となります。

消費税の還付によりキャッシュフローも有利になる

高額な機器を導入する際には、消費税の支払いも多額になります。仮に初年度の売上が少なくても、課税事業者としてインボイス登録し、仕入税額控除の条件を満たせば消費税の還付を受けられる可能性があります。コインランドリーのような開業初期に費用が集中する業態では、還付が発生しやすい特徴があります。

還付を受けるためには、「適格請求書発行事業者(インボイス発行事業者)」として登録し、課税事業者となって申告・納税する必要があります。この点に注意しながら制度を活用すれば、節税と同時にキャッシュフローの安定化にもつながります。

無人経営により副業でも実行しやすい

コインランドリーの運営は、基本的にセルフサービス方式であるため、常駐のスタッフを配置する必要がなく、日常的な運営業務も少なくて済みます。店舗の清掃や売上金の回収、設備点検など最低限の管理業務のみで済むため、本業を持つ個人事業主や会社経営者にとっても副業として導入しやすいビジネスモデルです。

一部業務は外部委託も可能で、管理の手間をさらに削減できます。自身の関与が必要な税制優遇制度に対応しながらも、手間を抑えて効率的に節税を実現できる点は他の事業と比較しても大きな魅力です。

投資としての安定性が高く、節税効果と両立できる

節税目的で事業を始める際、「収益性が伴わない」ことは大きなリスクとなります。その点、コインランドリー事業は、地域需要や立地条件に応じて収益を安定的に確保しやすい業種です。適切な場所に出店すれば、年間で8~10%程度の投資利回りが見込めるとも言われており、節税だけでなく事業としての利益も得やすい点が評価されています。

2023年度の税制改正でコインランドリー節税はどう変わった?

2023年度の税制改正では、コインランドリー設備を活用した節税スキームの一部に対し、利用制限が加えられました。管理を丸ごと委託するような形態は優遇の対象外となるとされており、実態のある経営が求められるようになりました。

以下では、変更点を解説します。

外部委託型の「投資スキーム」は対象外に

2023年度改正により、「主要な事業でないコインランドリー業」で、「その管理の大部分を他者に委託している場合」は、中小企業経営強化税制などの即時償却や特別償却の対象外とされました。これは、高所得者が資金だけを出してフランチャイズ等に運営を任せ、税制優遇だけを享受する投資型の節税モデルの排除を目的とした措置です。

「本業ではない上に、経営の中身にも関与しない」事業者については、税制上の優遇は受けられなくなったということです。

オーナーが関与する場合は引き続き適用可能

一方で、制度の対象から完全に外されたわけではありません。たとえ副業であっても、オーナー自らが店舗の清掃、集金、顧客対応などに関与し、運営実態があると認められれば、税制優遇は従来通り適用可能です。

改正のポイントは「形式」ではなく「実質」で判断される点にあり、帳簿や業務記録を通じて、オーナー自身が経営に携わっていることを説明できるようにしておく必要があります。

制度の趣旨に沿った健全な活用が求められる

この見直しの背景には、「中小企業の生産性向上支援」という制度本来の趣旨に則った活用を促す狙いがあります。節税目的のみに偏った使い方を防ぐと同時に、真に投資・運営を行っている事業者には引き続き恩恵が残されているのが改正の特徴です。

今後は、節税だけを目的に開業するのではなく、「自ら関与して事業として成立させる意思があるか」が重要な判断基準となるでしょう。

節税目的でコインランドリーを始める際に注意しておきたいポイントは?

コインランドリーによる節税は、適切に制度を活用すれば大きな効果が得られます。しかし一方で、制度趣旨を逸脱した方法で運用した場合、優遇の対象から外れてしまうリスクもあります。ここでは、開業前に注意すべきポイントを説明します。

オーナーが実際に事業に関与している必要がある

節税目的であっても、コインランドリーの運営にオーナー自身が関与していなければ、税制優遇の対象から外れる可能性があります。清掃や売上管理、顧客対応、設備の点検など、店舗運営に必要な業務を自ら実行するか、少なくともその大部分を担っている必要があります。

一部の業務を外部委託すること自体は問題ありませんが、管理の「大部分」を他人に任せていると見なされると、即時償却や特別償却の対象から外れる恐れがあります。この点は2023年度の税制改正により明確に規定されており、制度利用にあたっては実態のある経営が求められます。

「節税ありき」の発想は事業リスクを高める

コインランドリーは初期投資が大きく、設備や内装に数百万円〜数千万円が必要になる場合も少なくありません。節税効果が高いとはいえ、税負担の軽減は投資額の一部に過ぎず、赤字経営となれば本末転倒です。

収益性を確保するには、適切な立地選定や市場調査、競合分析などを行い、事業として利益を出せる見込みがあるかを慎重に検討する必要があります。「節税のために事業を始める」のではなく、「収益性があるから節税効果も期待できる」といった考え方が現実的です。

長期的な視点でリスクと向き合うことが重要

コインランドリーは無人運営が可能で、比較的手間が少ない事業とされますが、それでも完全に放置できるわけではありません。設備の老朽化、予想外の修理費、電気代の高騰など、見落としがちなコスト要因にも備える必要があります。

また、制度そのものも将来的に見直される可能性があるため、目先の節税効果だけでなく、5年・10年といったスパンでの収支シミュレーションを行い、堅実な経営を前提に事業判断を行うべきです。

コインランドリーで節税効果を得るために必要な手続きは?

コインランドリー節税を最大限に活かすためには、制度ごとに定められた手続きを正確に行うことが前提となります。以下では、主な税制に対応する必要な手続きを解説します。

【中小企業経営強化税制】経営力向上計画の認定を受ける

中小企業経営強化税制を活用して即時償却や10%の税額控除を受けるためには、事前に「経営力向上計画」の認定を受ける必要があります。これは、事業の生産性を向上させる目的で設備投資を行うことを記載した計画書で、主務官庁に提出して認定を受けます。

この認定を受けずに機器を購入してしまうと、たとえ要件を満たしていても制度の適用は受けられません。開業前の段階から準備を進め、認定取得後に設備を導入するタイミング管理も重要です。

【中小企業投資促進税制】青色申告の承認が前提となる

中小企業投資促進税制は、30%の特別償却または7%の税額控除が受けられる制度です。この制度の特徴は経営計画の認定が不要である一方、青色申告をしている中小企業者または個人事業主であることが条件となっている点です。

そのため、開業前に「青色申告承認申請書」を税務署へ提出しておく必要があります。青色申告は帳簿の作成や申告の手間がかかりますが、節税効果を得るためには不可欠な準備といえるでしょう。

【消費税還付】課税事業者の選択が必須

初年度に高額な設備投資を行う場合、消費税の還付を受けられる可能性があります。通常、年間売上が1,000万円以下の事業者は免税事業者として扱われますが、あえて課税事業者を選択し、「課税事業者選択届出書」と「適格請求書発行事業者の登録申請書(インボイス制度)」を提出する必要があります。

これにより、仕入税額控除を活用して設備投資にかかった消費税を還付として受け取ることが可能になります。ただし、課税事業者となった場合、翌年以降も消費税の納税義務が続く点には注意が必要です。状況に応じて、簡易課税制度の利用や課税事業者の取りやめなどの対応も検討する必要があります。

節税と収益の両立を目指してコインランドリー経営を始めよう

コインランドリーは、設備投資の大きさを活かして複数の税制優遇を受けられる、節税に適した事業です。即時償却や固定資産税の軽減、相続税対策まで多角的に活用できます。ただし、制度適用には事前手続きや経営への関与が必須であり、収益性を伴わなければ節税効果も限定的です。制度を正しく理解し、実行可能な事業計画をもとに進めることで、節税と安定収入の両方を実現しましょう。


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