• 更新日 : 2025年8月28日

一人で会社を作る費用は?開業費や維持費も解説

一人で会社を設立する際にかかる費用は、株式会社の場合約20万円から25万円、合同会社の場合約6万円から10万円が目安となります。ただし、これは設立時の最低限の費用であり、実際には開業準備費用や設立後の維持費用も考慮する必要があります。

この記事では、一人会社設立にかかる具体的な費用から、設立後の運営コスト、費用を抑える方法などを解説します。起業を検討している方が適切な資金計画を立てられるよう、実際の金額と必要性を詳しく説明していきます。

一人で会社を作るのにかかる費用

会社設立時に必要な法定費用と実費について、株式会社と合同会社それぞれの詳細を解説します。

株式会社の場合

株式会社を一人で設立する場合、法定費用として最低でも約20万円が必要になります。これらの費用は法律で定められているため、削減することはできません。

法定費用の内訳

株式会社設立時に必ず支払う必要がある法定費用は以下の通りです。これらの費用は法律で定められているため、どこで手続きを行っても同額となります。

項目金額条件・備考
定款認証手数料3万円〜5万円資本金100万円未満:3万円

資本金100万円以上300万円未満:4万円

資本金300万円以上:5万円

登録免許税15万円資本金の0.7%または15万円の高い方

(資本金2,143万円以下は一律15万円)

定款用印紙代4万円紙の定款の場合のみ

電子定款なら0円)

定款認証手数料は資本金の額によって変動するため、資本金設定時の参考にしてください。登録免許税は多くの一人会社では最低額の15万円を想定すれば良いでしょう。

その他の実費

法定費用以外にも、設立手続きに必要な実費があります。これらの費用は比較的少額ですが、事前に予算に組み込んでおく必要があります。

項目金額
定款謄本代約2,000円
登記簿謄本600円/通
会社実印作成費5,000円〜2万円

登記簿謄本は銀行口座開設や各種契約で必要になるため、複数通取得しておくことをお勧めします。会社実印は材質やデザインによって価格が大きく変わりますが、業務に支障がない範囲で選択すれば問題ありません。

合計費用:約20万円〜25万円

合同会社の場合

合同会社の設立費用は株式会社と比較して大幅に安くなります。最低でも約6万円から設立が可能で、起業時の初期費用を抑えたい方には魅力的な選択肢となります。

法定費用の内訳

合同会社は株式会社と比較して設立手続きが簡素化されており、特に公証人による定款認証が不要なことが大きなメリットです。以下が合同会社設立時の法定費用となります。

項目金額条件・備考
登録免許税6万円資本金の0.7%または6万円の高い方

(資本金857万円以下は一律6万円)

定款用印紙代4万円紙の定款の場合のみ
(電子定款なら0円)
定款認証手数料0円合同会社は認証不要

合同会社の最大の特徴は、定款認証手数料が不要なことです。これにより株式会社と比較して3万円から5万円の費用を削減できます。

その他の実費

合同会社設立時の実費は株式会社とほぼ同様ですが、定款謄本代が不要な点が異なります。

項目金額
登記簿謄本代600円/通
会社実印作成費5,000円〜2万円

合同会社では公証人による定款認証が不要なため、定款謄本を取得する必要がありません。この点でも費用削減につながります。ただし、運用上は定款の写しが必要なこともあります。

合計費用:約6万円〜10万円

一人で会社を作った後にかかる費用【開業費】

会社設立後、実際に事業を開始するまでに必要な準備費用について詳しく解説します。

事務所・店舗関連費用

事業を行う場所の確保は、多くの業種で必要不可欠です。選択肢によって大きく費用が変わります。

事務所の種類別費用比較

事業を行う場所の選択は、初期費用と継続的な運営費用の両方に大きく影響します。以下の比較表を参考に、事業内容と予算に最適な選択肢を検討してください。

事務所タイプ初期費用月額費用
自宅兼事務所10万円〜30万円0円〜5万円
賃貸オフィス40万円〜100万円10万円〜30万円
バーチャルオフィス1万円〜3万円3,000円〜1万円
シェアオフィス3万円〜10万円2万円〜8万円

初期段階では自宅兼事務所やバーチャルオフィスで費用を抑え、事業の成長に合わせて専用オフィスに移転するという段階的なアプローチが効果的です。

設備・機器の購入費用

事業開始に必要な設備投資について、業種共通のものから専門的なものまで解説します。

基本的なオフィス設備

どの業種でも共通して必要になる基本的な設備について、費用目安と選択肢をまとめました。優先順位を考慮して段階的に投資することで、初期費用を抑えることができます。

設備・機器費用目安選択肢
パソコン・周辺機器15万円〜30万円新品購入/中古購入/リース
プリンター複合機3万円〜10万円購入/リース/外部サービス利用
通信機器(電話・FAX)1万円〜5万円固定電話/IP電話/携帯電話のみ
オフィス家具5万円〜20万円デスク、椅子、キャビネット等
インターネット環境3万円〜5万円工事費・機器代含む

パソコンは業務の中核となるため業務によって適切なデバイスを選び、その他の設備は初期段階では必要最小限に抑えることをお勧めします。事業が軌道に乗ってから徐々にグレードアップしていく方針が安全です。

業種別専門設備(参考例)

業種によっては基本設備以外に専門的な設備投資が必要になります。以下の表は主要業種での設備投資の目安を示しており、事業計画策定時の参考としてご活用ください。

業種主な設備費用目安
製造業生産設備、工具類50万円〜500万円
飲食業厨房機器、店舗設備100万円〜1,000万円
IT業開発環境、サーバー20万円〜100万円

これらの金額は事業規模や品質レベルによって大きく変動します。中古品の活用やリースを利用することで、初期投資を大幅に削減できる場合があります。

各種手続き・許認可費用

事業開始前に必要な各種手続きや許認可の取得にかかる費用を業種別に整理します。

一般的な手続き費用

すべての法人が行う必要がある基本的な手続きは、ほとんどが無料で実施できます。適切に手続きを行うことで、税制上の優遇措置を受けることも可能です。

手続き費用備考
税務署への設立届無料必須手続き
青色申告承認申請無料税制優遇のため推奨
社会保険関連届出無料〜数千円従業員雇用時必要
労働保険関連届出無料〜数千円従業員雇用時必要

青色申告承認申請は、​欠損金の​繰越控除や​欠損金の繰り戻しによる​還付などを受けるために重要な手続きです。設立から3か月以内に提出する必要があるため、忘れずに手続きを行いましょう。

主要業種の許認可費用

特定の業種では事業開始前に許認可の取得が義務付けられています。以下の表は主要業種の許認可申請手数料をまとめたもので、事業計画時の参考としてご利用ください。

業種許認可申請手数料
建設業建設業許可9万円
不動産業宅地建物取引業免許3万3,000円
飲食業飲食店営業許可1万6,000円~2万円程度
運送業一般貨物自動車運送事業許可12万円
人材派遣業労働者派遣事業許可12万円

許認可の取得には申請手数料以外にも、必要書類の準備費用や専門家への相談費用がかかる場合があります。また、審査期間も業種によって異なるため、事業開始予定日から逆算して早めに準備を始めることが重要です。

一人で会社を作った後にかかる費用【維持費】

会社設立後、継続的に発生する運営コストについて、必須の費用から任意の費用まで詳しく説明します。

税務・会計関連費用

会社を運営する上で避けることができない継続的な費用について解説します。

年間税務関連費用

項目自分で実施専門家依頼
法人税申告0円20万円〜50万円
消費税申告0円5万円〜15万円
年末調整0円3万円〜10万円
記帳代行0円12万円〜36万円

会計ソフト・システム費用

サービス月額費用年額費用
クラウド会計ソフト(基本)1,000円〜2,000円1.2万円〜2.4万円
クラウド会計ソフト(上位)3,000円〜5,000円3.6万円〜6万円
給与計算ソフト500円〜1,500円6,000円〜1万8,000円

事務所・通信費

事業継続に必要な固定費について、選択肢別に費用を整理します。

月額固定費一覧

項目費用範囲節約のポイント
事務所家賃0円〜30万円立地・広さの見直し、自宅、バーチャルオフィス活用
インターネット回線5,000円〜1万円格安プロバイダー、速度プランの見直し
固定電話3,000円〜5,000円IP電話、携帯電話への集約
携帯電話5,000円〜1万円格安SIM、法人プランの活用
電気・ガス・水道1万円〜3万円自宅兼用時は按分計算

保険・社会保険料

リスク管理と法的義務を果たすために必要な保険料について説明します。

社会保険料(役員報酬月額30万円の場合)

保険会社負担個人負担合計
健康保険約1万5,000円約1万5,000円約3万円
厚生年金約2万7,000円約2万7,000円約5万4,000円
雇用保険該当なし該当なし
労災保険数千円(特別加入時)数千円
月額合計約4万2,000円約4万2,000円約8万4,000円

事業保険(年額)

保険種類年額保険料補償内容
施設賠償責任保険2万円〜5万円事務所での事故に対する賠償
業務過誤責任保険5万円〜15万円業務上のミスによる損害賠償
火災保険3万円〜10万円事務所・設備の火災・災害補償
サイバー保険3万円〜8万円情報漏洩・サイバー攻撃対策

一人で会社を作る際のコスト削減方法

会社設立と運営にかかる費用を合理的に削減するための具体的な方法を紹介します。

1. 会社設立時の費用を賢く抑える方法

会社設立時にかかる初期費用は、工夫次第で大幅に削減できます。

電子定款の活用で印紙代4万円を節約

定款を紙で作成すると4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款を利用すればこの印紙代が不要になります。自分で作成する場合も、行政書士などに依頼する場合も、電子定款に対応することで大きな節約効果が得られます。

「合同会社」の選択で設立費用を大幅カット

会社形態を合同会社にすることで、株式会社に比べて設立費用を約15万円安く抑えることができます。初期費用を最小限にしたい場合、まずは合同会社でスタートし、将来的に株式会社へ組織変更することも可能です。

資本金設定の工夫で登録免許税を最適化

設立時の登録免許税は、資本金の額によって決まります。税額が最低額(株式会社なら15万円)を上回らない範囲で資本金を設定することで、余分な税負担を避けることができます。

2. 開業準備費用を削減する3つのポイント

事務所の契約や設備の購入など、開業準備にかかる費用も工夫次第で抑えられます。

事務所は自宅やバーチャルオフィスで固定費を削減

初期段階では、自宅の一部を事務所として活用したり、月額数千円から利用できるバーチャルオフィスを契約したりすることで、高額な賃料を大幅に削減できます。

設備投資は「必要最小限」からスタート

パソコンやプリンターなどの設備は、最初から全てを揃える必要はありません。中古品やリースを活用したり、コンビニの印刷サービスを利用したりと、事業の成長に合わせて段階的に拡充していくのが賢明です。

専門家への依頼費用は「セルフ手続き」で節約

税務署への設立届や青色申告承認申請書など、比較的簡単な手続きは自分で行うことで、専門家への依頼費用を削減できます。

3. 継続的な運営費用(ランニングコスト)を削減するコツ

会社運営において継続的に発生する費用は、定期的な見直しが重要です。

税務・会計はクラウドソフトでスリム化

事業が軌道に乗るまでは、月額数千円で利用できるクラウド会計ソフトを活用して自分で記帳することで、税理士への顧問料を抑えることができます。

通信費やITコストの定期的な見直し

スマートフォンの格安SIMへの乗り換えや、クラウドサービスの活用は、通信費やサーバー維持費などの固定費削減に直結します。定期的に契約プランを見直しましょう。

保険は「相見積もり」で無駄な支出をなくす

事業に必要な保険は、複数の保険会社から見積もりを取得(相見積もり)し、事業規模に合った最適な補償内容のプランを選ぶことが、無駄な保険料を支払わないためのポイントです。

細かな費用を理解して、一人での会社設立を成功させよう

一人で会社を設立する際の費用は、選択する会社形態や事業内容によって大きく変わりますが、適切な計画により無理のない範囲でスタートすることが可能です。

重要なのは、設立時の一時的な費用だけでなく、継続的にかかる運営費用も含めた総合的な資金計画を立てることです。税務申告費用や事務所賃料、通信費などの固定費は毎月発生するため、少なくとも6か月から1年分の運営資金を確保しておくことをお勧めします。

また、電子定款の活用や合同会社の選択、段階的な設備投資など、様々なコスト削減方法を組み合わせることで、初期費用を大幅に抑えることができます。事業の成長に合わせて必要な投資を行い、無理のない範囲で会社経営を続けることが、長期的な成功につながる重要なポイントといえるでしょう。


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