• 作成日 : 2025年8月19日

資金調達の手数料は?経費になる?種類・相場・節約方法を解説

資金調達を検討する際には、調達額や金利だけでなく「手数料」の存在にも十分注意を払う必要があります。手数料には、保証料、事務手数料、サービス利用料などが含まれ、調達方法によって異なるのが特徴です。これらの手数料を見落とすと、実際に使える資金が目減りし、資金計画の誤算を招くおそれもあります。

この記事では、資金調達方法ごとの手数料の違いや、コストを抑えるポイント、税務上の取り扱いについて解説します。

資金調達の手数料とは

資金調達に係る手数料とは、企業が外部から資金を得る際に発生する各種コストの総称です。たとえば、銀行融資に伴う利息や信用保証協会の保証料、融資手数料、事務処理費用などが該当します。これらは実際には「手数料」と表現されないこともありますが、資金を調達するうえで負担する手数料に相当します。借入額に対する手数料の割合が高いと、調達した資金のうち実際に事業に使える金額が目減りすることになります。

資金調達の効果を最大限に引き出すには、それぞれの方法にかかる手数料の内容と相場を事前に把握し、全体の資金計画に反映させることが重要です。起業準備や事業拡大の局面では、コスト構造への理解が調達戦略の成否を左右します。

資金調達方法ごとの手数料

資金調達にはさまざまな方法があり、それぞれ異なる手数料やコストが発生します。調達手段を選ぶ際には、単純な金利だけでなく、保証料やサービス利用料などの「目に見えにくいコスト」まで含めて検討することが重要です。ここでは金利も含め、主要な資金調達手段ごとの手数料の内容と相場を解説します。

公的融資(日本政策金融公庫など)の金利

日本政策金融公庫のような政府系金融機関では利用する融資制度や担保の有無等、申込者の状況によって異なりますが、年1.8%〜3.5%程度の低金利で融資を受けられるのが特長です。創業者向けの国民生活事業では、一定の場合には「創業支援貸付利率特例制度」により、各融資制度に定める利率から年0.65%引き下げられるケースもあります。

公的融資には、保証料が不要な制度や、所定の要件を満たすことで担保や保証人なしで借りられる制度もあり、総コストとしては抑えられています。金利の細かな設定は融資条件や申請者の信用状況によって異なりますが、全体としては最も負担の少ない調達方法の一つといえます。

参考:創業融資のご案内|日本政策金融公庫

銀行融資の金利と信用保証料

都市銀行や地方銀行、信用金庫からの融資では、企業の信用力や融資の種類、期間によって金利は大きく異なりますが、たとえば信用金庫ではおおよそ年2%〜6%程度とされています。創業間もない企業や無担保の場合はさらに高くなることがあります。

加えて、信用保証協会の保証を利用する場合には、別途保証料が発生します。保証料率は0.5%〜2%前後が一般的で、融資額や返済期間、担保の有無、企業の信用状況によって変わります。たとえば東京信用保証協会では、一般保証における最も高い区分において1,000万円以下の小口融資で1.55%、500万円以下で1.27%という上限が設けられています。これらの費用は融資実行時に一括前払いとなるのが通例です。

参考:信用保証料率の体系|東京信用保証協会、「責任共有保証料率表 (注1A)

ノンバンク(消費者金融系)の融資手数料

ノンバンクや消費者金融系のビジネスローンは、審査が早く、担保不要で借りられる反面、金利は高めに設定されています。相場は年5%〜18%ほどで、法定上限金利に近い場合もあります。契約時に印紙代などの実費が必要になる程度で、多くの場合、保証料や事務手数料は発生しないとされています。スピード重視で即日融資が可能な反面、長期的な利用では利息負担が大きくなるため、短期的かつ緊急の資金調達に適しています。

ファクタリングの手数料

ファクタリングでは、売掛債権をファクタリング会社に譲渡する代わりに、手数料を支払って即日資金を受け取れます。手数料率は2社間ファクタリングで5%〜18%、3社間ファクタリングで2%〜9%程度とされます。2社間は取引先に知られずに利用できる反面、手数料が高くなる傾向があります。契約会社によって大きな差があるため、複数社から見積もりを取り、条件を比較することがコスト削減に直結します。

なお、利息制限法により10万円以上100万円未満における金利は年18%までとなっています。

参考:利息制限法 (第1条ご参照)| e-Gov 

株式発行(増資)にかかる費用

第三者からの出資を受けて資金調達する場合、直接的な利息や手数料は発生しませんが、増資に伴う法定費用や登録免許税(増加資本金額の0.7%、最低3万円)がかかります。また、印紙代や株券発行にかかる実費、手続きにかかる専門家費用も必要になる場合があります。第三者割当増資などでは公証人による定款変更認証等が必要な場合があり、その手数料として約5万円程度かかります。加えて、株主への配当負担や経営権の希薄化という間接的なコストも念頭に置いておく必要があります。成長フェーズにある企業やIPOを視野に入れる企業にとっては有効な手段ですが、将来の事業方針に合わせて慎重に判断することが求められます。

クラウドファンディングの手数料

クラウドファンディング(CF)は、オンライン上で支援者から資金を集める仕組みで、資金調達と同時に市場テストができるメリットがあります。ただし、プラットフォームによっては手数料が高く、支援総額の10%〜20%が差し引かれるのが一般的です。たとえば「CAMPFIRE」では、決済手数料を含めて17%+税が差し引かれます。また、購入型クラウドファンディングでは返礼品の用意や発送にもコストがかかるため、手元に残る金額は意外と少なくなる可能性があります。

また、投資型クラウドファンディングでは、証券会社等への審査料や契約書類作成費用が別途必要になるケースもあります。これらの費用はプラットフォームによって大きく異なりますが、たとえば数十万円規模の費用が発生する場合があります。これに加え、資金調達額に応じた手数料(一般的に20%前後)も発生します。

資金調達手数料を抑えるポイント

資金調達を行う際には、調達にかかる手数料や金利をできるだけ抑えることが、実際に使える資金を増やすことにつながります。ここでは各手段におけるコスト削減の工夫を解説します。

公的融資は制度変更や低利枠を活用する

日本政策金融公庫などの公的融資では、定期的に制度が見直されており、創業者向けに金利引下げや自己資金要件の緩和などが行われています。たとえば「新規開業・スタートアップ支援資金」では、利率引下げ枠や無担保・無保証での利用が可能です。公的融資は条件に合えば非常に低利で資金を借りられるため、常に最新の制度をチェックし、自社が対象となる優遇制度を逃さず活用することが手数料負担の抑制につながります。

銀行融資は複数行で比較し担保活用も検討する

銀行融資では金利・保証料の負担を軽減するには、複数の金融機関から見積もりを取り、条件を比較することが基本です。さらに担保を提供できる場合は、無担保よりも金利が引き下げられることがあります。保証料も信用保証協会によって異なるため、各地域の保証料率を確認し、できるだけ低い保証料の制度を選ぶ工夫も有効です。返済期間を短く設定すれば、総支払利息も抑えられます。

ノンバンク融資は短期利用に限定する

ノンバンクからの融資は即日融資も可能な便利な手段ですが、金利が高いため、長期間の利用は避けるべきです。小口・短期の一時的な資金ニーズに絞って利用し、できる限り早期返済を目指すことで、利息負担を最小限に抑えられます。また、不要な借入を防ぐためにも、必要額を過不足なく設定することも重要です。

ファクタリングは複数社から見積もりを取る

企業が自社の売掛金をファクタリング会社に売却して、早期に資金化するのがファクタリングです。

ファクタリングを利用する場合は、ファクタリング会社の手数料率に大きな差があるため、必ず複数の業者から見積もりを取りましょう。売掛先の信用力によっても条件が変わるため、同じ売掛債権でも業者ごとに提示額が異なる可能性があります。さらに、取引先の同意が得られるのであれば、2社間ではなく3社間ファクタリングを選択することで、手数料率を抑えやすくなります。

出資では配当方針の設計で将来負担を軽減する

エクイティファイナンスは企業が新株を発行して投資家から資金を調達する方法です。したがって直接の金利は発生しませんが、出資者への配当が将来的なコストとなります。そのため、事業計画上は無配または少額配当とする方針を明確にしておくことで、出資者との合意のもと、利益の再投資が可能になります。特に成長段階の企業では、配当よりも事業拡大を優先する姿勢を伝えることが、資金の有効活用と手数料負担の回避につながります。

クラウドファンディングは手数料の安いプラットフォームを選ぶ

クラウドファンディングでは、サイトごとに手数料率が異なるため、同じ調達額でも手取り金額が大きく変わる場合があります。事前に各プラットフォームの利用条件、決済手数料、集客力を比較し、総合的に費用対効果の高いサービスを選ぶことがポイントです。また、手数料の安さに加え、支援者への返礼品にかかるコストも見落とさず、トータルでの負担を抑える工夫が求められます。

資金調達の手数料に関する注意点

資金調達に伴う手数料や利息などの費用は、契約時の内容をしっかり確認しておかないと、想定以上の負担や思わぬトラブルにつながることがあります。ここでは、資金調達に関する代表的な注意点と、コストやリスクを抑えるための対処法を解説します。

実質的な負担を把握しておく

金利や手数料は表面的な数字だけでは判断できません。たとえば、年利が低く見えても、事務手数料や保証料、印紙税などの付帯費用が合算されることで、実際の総返済額が想定より増えることがあります。特に短期借入では、手数料の占める割合が高くなりがちです。契約時には「実質年利」のシミュレーションを行い、総支払額の見通しを明確にすることが大切です。

契約内容を確認しておく

ファクタリングやクラウドファンディングなどでは、契約書の内容が不透明なまま進めてしまうと、後に不利益を被るリスクがあります。ファクタリングでは「償還請求権なし(ノンリコース)」の契約が一般的であり、原則として売掛先の倒産時に利用企業に支払義務は発生しません。ただし、債権譲渡契約の内容に不備がある場合や、不正な取引(架空債権の譲渡など)が判明した場合には、例外的に支払義務が生じる可能性もあります。

債権譲渡の条件、責任範囲、キャンセル料など、契約条項を事前に丁寧に確認しておきましょう。

信頼性の高い事業者を選ぶ

資金調達を扱う事業者の中には、過大な手数料を設定していたり、根拠の薄い条件を提示したりするところも存在します。特にオンライン取引が中心のサービスでは、相手の信頼性を十分に確認することが不可欠です。金融庁などの登録情報や、過去の実績、利用者の声などを調べ、必要に応じて専門家に契約書を見てもらうと安心です。

参考:登録貸金業者情報検索サービス| 金融庁

資金調達手数料は経費になる?

資金調達にかかる手数料や利息などは、会計上の「経費」として処理できるかどうかが気になるポイントです。ここでは、主要な支出について、税務上どのように扱われるのかを整理し、処理方法を解説します。

融資の利息・保証料は経費にできる

銀行や公的金融機関からの借入に対する利息は、法人税上の「支払利息」として損金算入できます。あわせて、信用保証協会の保証付き融資において支払う保証料も原則として、「金融費用(支払手数料、保証料など)」として経費に含められます。これらは資金調達のために必要な支出であると位置づけられており、通常は問題なく経費として処理できます。ただし、役員からの借入など特殊なケースでは、金利条件によって経費性が否認される場合もあるため注意が必要です。

発行費用等は一括経費にできない

社債の発行費用や、株式交付費用などについては「繰延資産」に該当し、税法上は支出した年度に全額を経費計上できません。社債の発行費用については原則として社債の償還期間にわたって償却することが求められます(継続適用を条件として定額法も選択可)。「繰延資産」については、会計上の取り扱いと税法上(法人税法上)の取り扱いが異なるため、計上時には注意しましょう。

長期借入に係る手数料については、原則として融資が実行された時の一括で経費にします。しかし、金額によっては、一旦「長期前払費用」として計上し、期末に発生主義に基づいて、その期に対応する部分を支払手数料として費用に振り替える場合もあります。

借入契約時の印紙税などは少額であれば即時費用処理できますが、金額や契約期間によっては資産計上(前払費用等)が必要になる場合があります。対象となる役務の提供を受けているか否か等について支出の性質ごとに経費処理か資産処理かを分ける必要があるため、勘定科目の選定と償却スケジュールに注意しましょう。

ファクタリング手数料は原則経費にできる

売掛債権を譲渡するファクタリングの手数料は、「支払手数料」または「売却損・譲渡損」として処理され、原則として損金算入が認められます。ノンリコース契約(償還請求権なし)の場合は、債権売却としての性格が強くなり、売却益・損の差額で処理する場合もありますが、税務上は実質的に経費として扱うことが可能です。契約形態によって処理が分かれるため、会計処理を行う際は税理士や会計士に確認のうえ対応するのが望ましいです。

資金調達の手数料を理解してコストを見直そう

資金調達には、利息、保証料、サービス利用料などさまざまな手数料が発生し、それらは調達先や調達方法ごとに大きく異なります。手数料を正しく把握せずに資金調達を進めると、想定以上の負担に直面するリスクもあります。調達手段の選定段階から、それぞれの手数料体系や総コストを丁寧に比較し、事業に最適な選択をすることが重要です。調達後の資金を最大限活用するために、手数料の仕組みを理解し、無駄な出費を避ける視点を持ちましょう。


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