- 作成日 : 2022年11月4日
起業のメリット・デメリットとは?
起業するメリットは、やりたいことが自由にできる点です。ただし、失敗するリスクがある点や収入が保証されない点などがデメリットとして挙げられます。
本記事では、起業のメリットとデメリットを比較した上で、個人事業主として起業(開業)するケースと法人として会社設立するケースの違いも紹介します。
目次
起業のメリットは?
起業とは、個人事業主や株式会社などの事業形態で、新たにビジネスをはじめることです。起業することにより、以下のメリットを期待できます。
- やりたいことが自由にできる
- 今より高い収入が得られる可能性がある
- 税金の優遇が受けられる場合がある
- 定年がなく働き続けられる
それぞれ確認していきましょう。
やりたいことが自由にできる
起業すれば、自分自身で事業の方向性を決めることになるため、やりたいことが自由にできる点がメリットです。それに対し、会社員として働き続ける場合、拒否することに正当な理由がない限り、基本的に会社の事業方針や上司の命令に従わなければなりません。
起業で自由度が高くなることにより、仕事に対するモチベーションも高まります。また、休みを取るタイミングを決めるのも自分自身のため、集中しやすい時や仕事が多く入っているときに長く働き、仕事が少ない時期に休むなど、メリハリをつけやすくなるでしょう。
今より高い収入が得られる可能性がある
利益を出せば出した分だけ上限なく高収入につながりうる点も起業のメリットです。会社員の場合、個人の成績や会社の業績などによってある程度の向上は期待できるといえども、一般的にある程度給料の上限が決まっています。
なお、起業で会社を設立する場合、役員に対して支給される報酬(役員報酬)は、定款または株主総会の決議で決めなければなりません(会社法第361条)。
税金の優遇が受けられる場合がある
起業で税金の優遇を受けられる場合がある点もメリットです。
税金優遇の例として、青色申告が挙げられます。青色申告の承認申請書を提出した上で確定申告をすれば、赤字の分を翌期以降に繰り越し可能、個人事業主であれば所得から最大65万円の控除(青色申告特別控除)などの特典を受けられます。
なお、起業してからかかる主な税金は、法人の所得に課される法人税(法人設立した場合)、個人の所得に課される所得税、商品やサービスの消費に課される消費税、契約書や領収書を発行する際にかかる印紙税、法人・個人の所得に課される住民税、事業の所得に対して都道府県から課される事業税、所有する固定資産に対する固定資産税などです。
定年がなく働き続けられる
起業した場合、事業を継続する限り引き際を自分で決められるため、定年がなく働き続けられる点がメリットです。
一方、会社員として働く場合は、どこかのタイミングでリタイアも検討しなければなりません。国は「生涯現役社会の実現」を目指しており、各企業も「定年の引上げ」や「継続雇用制度の導入」を進めていますが、定年制廃止にまでいたった企業はまだ全体の4.0%に過ぎません。(2021年6月1日現在)
2021年の発表によると、65歳男性の平均余命は19.85年、女性は24.73年であることから、65歳で会社を定年退職しても、20年前後の時間が残されていることになります。起業で定年関係なしに働き続ければ、生きがいも得られるでしょう。
参考:令和3年「高年齢者雇用状況等報告」の集計結果を公表します|厚生労働省
参考:令和3年簡易生命表の概況|厚生労働省
起業のデメリットは?
起業にはさまざまなメリットがある一方で、いくつかデメリットも存在します。主なデメリットは以下のとおりです。
- 失敗するリスクがある
- 収入が保証されない
- 開業にかかる費用を調達する必要がある
- 税金対策や社会保険手続きなどを自分で行う必要がある
- 会社の信頼を一から築く必要がある
各デメリットを解説します。
失敗するリスクがある
自由度が高い分、起業には責任が伴います。会社員時代と異なり、基本的にすべて自己責任になるため、失敗するリスクも考慮しなければなりません。
個人事業主として借金する場合や、会社が借入れをする際に代表者として個人保証する場合、事業に失敗すると負債を負うことになります。結果的に、家族にも迷惑をかけかねない点に注意しましょう。
収入が保証されない
起業により上限なしで高収入を期待できる一方で、売り上げや利益が出なければ収入がゼロになる可能性もありえます。つまり、収入が保証されない点は起業のデメリットです。
自分自身や家族が安定して生活を送れるように、起業時にはある程度の資金を蓄えておくようにしましょう。また、すぐに会社を退職せず兼業や副業からはじめて成功の可能性を探る方法もあります。
開業にかかる費用を調達する必要がある
起業で会社を設立する場合、収入印紙代・認証手数料・謄本手数料・登録免許税や、備品購入費など、さまざまな開業費用がかかります。開業費用を自己資金でまかなえない場合、資金の調達手段を検討しなければならない点がデメリットです。
日本政策金融公庫の調査によると、2021年度における開業費用の平均値は941万円でした。自己資金以外の資金調達方法としては、家族や親戚、金融機関からの借入れや他企業からの出資受け入れなどの方法があります。
同じく日本政策金融公庫の2021年度調査によると、開業時の平均資金調達額は1,177万円のうち金融機関等からの借入が占める割合は高く、平均803万円(68.3%)でした。関連して、自己資金の平均額は282万円で全体の23.9%を占めています。
参考:「2021年度新規開業実態調査」〜アンケート結果の概要〜|日本政策金融公庫
税金対策や社会保険手続きなどを自分で行う必要がある
起業すると、適切な税額を納めるための税金対策を含め、税金関連手続きを自分で行わなければならない点がデメリットです。会社員時代は、勤務先の人事や総務といった部署が年末調整などで税金関連の手続きをしてもらえましたが、その作業を自分で行うため負担が増えます。
また、起業すると社会保険の手続きも自分で行わなければなりません。具体的に手続きが必要なものとして、医療保険制度、年金制度、労働保険制度が挙げられます。
いずれの制度も、起業の形態が個人事業主か法人か、従業員はいるかなど要件によって手続き方法が異なるため注意しましょう。
会社の信頼を一から築く必要がある
起業してからは、自分で一から信頼を築き上げなければならない点がデメリットです。
一方、会社員の場合、会社の知名度や上司の人脈を生かしながら営業できます。そのため、会社の看板などが大きく作用しているにもかかわらず、自分の力だけで営業成績を上げていると勘違いしてしまうこともあるでしょう。
起業で失敗しないためにも、あらかじめ自分の本当の実力を見つめなおしたり、ブランド力なしで営業する戦略を立てたりするようにしましょう。
起業する方法によってもメリット・デメリットは異なる!
起業する主な方法は、個人事業主として開業するケースと法人として会社を設立するケースです。
個人事業主の場合、税務署に「開業届」を提出すればビジネスをはじめられます。一方、会社を設立する場合は、公的に法人として認められるために法人登記などの手続きが必要です。
自分がどちらで事業を行うか決断するため、それぞれのメリットとデメリットを比較していきましょう。
個人事業主として起業する場合
個人事業主として起業する場合、法人の場合と比べて開業手続きが簡単で手間がかからない点がメリットです。「開業届」や、青色申告の承認を受けるための「青色申告承認申請書」の提出には費用がかからないため、基本的に0円で起業できます。
ただし、個人事業主は登記されないため、法人に比べると社会的信用度が低くなる点はデメリットです。
参考:[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
参考:[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁
法人として会社設立する場合
法人として会社を設立する場合、一定の所得を超えると個人事業主より税率が低くなる点はメリットです。また、業務関連で使用・利用した費用だけでなく、給与や賞与なども損金に算入できるため、節税につながります。
一方、会社設立手続きには手間や費用がかかる点はデメリットです。株式会社設立の商業登記手数料だけでも、資本金額×0.7%か、15万円のうちいずれか高いほうを支払わなければなりません。
起業のメリットとデメリットを比較してから独立しよう
起業の主なメリットは、やりたいことが自由にできる点や今より高い収入を得られる可能性がある点、定年がなく働き続けられる点です。その一方で、失敗するリスクがある点や、収入が保証されない点、会社の信頼を一から築く必要がある点などがデメリットとして指摘されます。
自分自身や家族の生活も左右するため、軽い気持ちで起業することはできません。まずは、起業のメリットとデメリットを比較した上で、自分にあった方法を選択するようにしましょう。
よくある質問
起業のメリットは?
やりたいことが自由にできる点や、定年がなく働き続けられる点などが起業のメリットです。詳しくはこちらをご覧ください。
起業のデメリットは?
失敗するリスクがある点や、会社の信頼を一から築く必要がある点などが起業のデメリットです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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