• 更新日 : 2024年4月12日

会社設立時の資金調達方法とメリット・デメリットを解説

会社設立時の資金調達方法とメリット・デメリットを解説

起業する際には、資金が必要です。自己資金で賄えない場合は、外部から資金調達を行う必要があります。この記事では、出資や融資、補助金など、設立時に使える資金調達方法の概要とそれぞれのメリット・デメリットを解説しています。また、創業時に使える補助金・助成金や融資制度、融資を受ける準備や流れも紹介しているため、ぜひご覧ください。

自己資本と他人資本とは

会社が資金調達をする方法は、金融機関からの借入や公的援助、投資家からの出資や新株の発行など、さまざまです。

資金調達方法は、大きくデットファイナンスとエクイティファイナンスの2種類に分けられます。

デットファイナンスとは、公的機関や銀行などからの借入、社債の発行などの方法で資金を調達することです。デットファイナンスで調達した資本のことを、他人資本と呼びます。他人資本は、文字どおり金融機関や公的機関などの他人から借りた資本です。そのため、返済義務があり、貸借対照表上負債に分類されます。

一方、エクイティファイナンスは、主に株式を発行して資金を調達する方法のことです。エクイティファイナンスで調達した資本のことを、自己資本と呼びます。自己資本は、貸借対照表上「純資産の部」に掲載されるのが特徴です。

参考:デット・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの違いについて教えてください。|J-Net21

会社設立時に使える資金調達の方法

会社設立時には、以下のような方法を使って資金調達を実行できます。

  • 投資家やベンチャーキャピタルからの出資
  • 公的機関や金融機関からの借入・融資
  • 国や自治体が行う補助金・助成金制度の利用
  • クラウドファンディングの利用

特に返済が不要な補助金・助成金制度の利用がおすすめです。また、クラウドファンディングは、近年注目を集めている新しい資金調達方法です。

ここでは、主となる資金調達方法について、それぞれの特徴を解説します。

出資

出資とは、出資者から投資してもらう方法です。具体的には、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家からの出資が挙げられます。

ベンチャーキャピタルは、あるベンチャー企業に出資し、成長後にM&Aで売却・あるいは上場などのエグジットを行った際に利益を得る会社のことです。ベンチャーキャピタルは、確実にキャピタルゲインを得るため、将来性のあるベンチャー企業のみに出資を行います。そのため、出資を受ける際の審査は厳しいのが特徴です。

エンジェル投資家は、起業する前や起業直後の会社に投資を行う個人投資家のことです。ベンチャーキャピタルと同様、エグジットの際にキャピタルゲインを得ることを目的に出資を行います。事業への思いや事業計画などについてエンジェル投資家からの賛同が得られれば、過去の実績がなくて金融機関や公的機関などから資金調達が行えない場合でも、出資を受けられる可能性があるのは特徴です。

借入・融資

借入・融資とは、デットファイナンスの1つであり、金融機関や公的機関などから資金を調達することです。期限つきで借入を行い、期日までに元本と利息を返済します。具体的には、銀行や政府系金融機関、地方公共団体からの融資などが挙げられます。調達先の選択肢が多く、資金調達しやすいのが特徴です。一方、金利がかかる点や、金融機関によっては審査が厳しく、希望額を調達できないリスクがある点に注意しましょう。

補助金・助成金の利用

国や地方自治体などが実施する補助金や助成金の利用も資金調達の1つです。審査に通ることで利用でき、原則返済は不要である点が特徴です。

補助金と助成金は財源が異なります。補助金の財源は税金、助成金の税金は雇用保険料です。そのため、受給できるハードルの高さにも違いがあります。補助金には審査が必要で、申請数が多い補助金については倍率も高いです。一方、助成金は、申請すれば受給できるケースが多く、比較的ハードルが低い資金調達方法と言えます。

クラウドファンディングの利用

クラウドファンディングは、近年注目されている資金調達方法です。インターネット上でプロジェクトの概要や事業計画を公表し、共感してくれる人々から資金を集めます。クラウドファンディングにはさまざまなパターンがありますが、代表的なのは購入型と寄付型です。

購入型では、支援者はお金を支援した対価として、商品やサービスの利用権といったリターンを受け取る方式です。一方、寄付型では金銭的なリターンではなく、支援者はお金を寄付することになります。そのため、寄付型は、被災地の支援といった社会貢献性が高いプロジェクトで多く用いられている方式です。このほか、融資型や株式投資型、ファンド型などの種類があります。

各資金調達方法のメリット・デメリット

上記で紹介した資金調達方法には、それぞれメリット・デメリットがあります。資金調達方法によっては、審査が厳しく希望どおりの金額を調達できない場合や、金利が高く資金繰りを悪化させる場合があるため、注意しましょう。メリット・デメリットを勘案し、適切な方法で資金調達を行うことが大切です。ここでは、各資金調達方法のメリット・デメリットについて解説します。

YouTubeチャンネル 5分でわかるバックオフィス by マネーフォワード クラウド にて【会社設立時の資金調達】を解説しています。こちらもご参考ください。

出資を募るメリット・デメリット

ベンチャーキャピタルからの出資を募るメリットは、無担保でかなりの資金を調達できる点です。また、上場やM&Aなどのエグジットに向けてさまざまな経営支援を受けられるため、短期間で事業を成長させられる可能性も十分にあります。

一方、エグジットを検討していない経営者には不向きであること、ベンチャーキャピタルが経営に関与するため、経営の自由度が低下する点はデメリットです。また、事業が成長しないと判断された場合、M&Aを利用して資金の早期回収が行われる可能性もあります。基本的には、ベンチャーキャピタルが掲げた方針に従う必要がある点には注意が必要です。

エンジェル投資家からの出資を募るメリットは、返済義務不要で資金を調達できる点です。また、ベンチャーキャピタルと同様に、エンジェル投資家が持つ経営ノウハウや豊富なネットワークを活用し、短期間で事業を成長させられる可能性もあります。さらに、個人が出資するため、資金調達にかかる期間が短いのもメリットです。

一方、事業の可能性や経営者の熱量に賭けて出資する場合もあり、過去に事績がなくても資金調達を受けられる可能性があります。これは、エンジェル投資家からの出資ならではのメリットです。

一方、デメリットとしては、経営の自由度が低下する点や、個人投資家であるため多額の資金を調達することは難しい点が挙げられます。

借入・融資のメリット・デメリット

金融機関や公的機関からの借入・融資のメリットは、きちんと返済すれば経営に介入されない点や、利息を損金に計上できるため、正しく会計処理すれば節税につながる点です。

一方、デメリットとしては、借入金が負債になるため自己資本比率が下がる点や、元本と利息を月々返済する必要があり、資金繰りに注意が必要である点が挙げられます。また、金融機関によっては審査が厳しく、資金調達を実施できないケースも多いです。

補助金・助成金のメリット・デメリット

国や地方自治体が運用する補助金や助成金制度を利用するメリットは、返済が不要なため、資金繰りを圧迫しないことです。また、特に助成金の場合は、受給要件さえ満たせば利用できる可能性が高く、比較的ハードルが低い資金調達方法と言えます。

一方、対象となる物品の購入や行動を行った後に支給されるため、申請から資金調達まで一定のタイムラグがある点に注意が必要です。そのため、創業時にすぐ資金が必要な場合にはあまり向いていません。また、倍率が高い補助金は、申請しても受給できない可能性があります。

クラウドファンディングのメリット・デメリット

クラウドファンディングのメリットは、金融機関や公的機関からの資金調達が難しいプロジェクトであっても、共感者がいれば資金調達が可能である点です。また、現在ではさまざまなクラウドファウンディング専用のプラットフォームが存在しており、気軽に始められます。

デメリットは、目標金額に達成せず資金調達できない場合がある点です。特に、目標金額に達しないとプロジェクトが成立しないAll-or-Nothing型の場合、期間内に目標に達しないと資金調達が不可能に終わってしまいます。

会社設立時に使える助成金・補助金一覧

ここでは、会社設立時に使える以下の助成金と補助金を一覧で解説します。

【助成金】

【補助金】

  • ものづくり補助金
  • 事業再構築補助金
  • IT導入補助金
  • 小規模事業者持続化補助金

補助金については、具体的な補助率・金額も紹介しているため、ぜひ参考にしてください。なお、実施の有無や要件などは年度によって異なるため、必ず最新情報をチェックしましょう。

【助成金】地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)

地域中小企業応援ファンドは、中小機構や地方自治体、金融機関などが出資して設立したファンドであり、中小企業者や創業者を対象に助成を行う機関です。具体的には、以下の2つがあります。

  • 地域中小企業応援ファンド
  • 農商工連携型地域中小企業応援ファンド

ファンドではありますが、地域中小企業応援ファンドから調達した金額には返済義務がありません。そのため、助成金と言えます。ファンドによって対象者や支援分野、上限額などは異なるため、詳しくは公式サイトを参考にしてください。

参考:地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)|中小機構

【助成金】キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者など、非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するための助成金です。社員の労働意欲や能力向上、事業の生産性アップを目的とし、非正規雇用労働者の正社員化・処遇改善などの取り組みを実施した事業主を対象としています。

助成内容により、以下の7つのコースが用意されています。

  • 正社員化コース
  • 障害者正社員化コース
  • 賃金規定等改定コース
  • 賃金規定等共通化コース
  • 賞与・退職金制度導入コース
  • 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
  • 短時間労働者労働時間延長コース

受給のためには、労働局・ハローワークの援助のもとキャリアアップ計画を作成し、認定されることが必要です。

参考:キャリアアップ助成金|厚生労働省

【補助金】ものづくり補助金

ものづくり補助金の正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上支援補助金」です。ものづくりをする中小企業や小規模事業者に対して、サービスや試作品の開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資などを支援する補助金制度です。

「一般型」と「グローバル展開型」があり、一般型にはさらに4つの枠が設けられています。それぞれ補助金・補助上限額・補助率が異なり、補助金額と補助率は、従業員規模等の基準によって異なります。以下の表を参考にしてください。

事業の型
【一般型】
【グローバル展開型】
通常枠
回復型賃上げ・雇用拡大枠
デジタル枠
グリーン枠
補助上限額
750万~
1,250万円
750万~
1,250万円
750万~
1,250万円
1,000万~
2,000万円
3,000万円
補助率
1/2
小規模事業者等は2/3
2/3
2/3
2/3
1/2
小規模事業者等は 2/3

ものづくり補助金では、補助金の対象となる経費が厳密に定められているのが特徴です。交付決定以降に発注を行い、補助実施期間以内に支払いを完了したものでなければ対象にならないため、利用する際は注意しましょう。

参考:ものづくり補助金総合サイト|ものづくり補助事業公式ホームページ

【補助金】事業再構築補助金

事業再構築補助金は、コロナ禍における経済環境の変化に対応するために、新分野展開や事業・業種・業態転換、事業再編などに積極的な中小企業の挑戦を支援する制度です。補助金は、新規出店や設備の購入などに利用できます。

種類
通常枠
大規模賃金引上枠
回復・再生応援枠
最低賃金枠
グリーン成長枠
緊急対策枠
補助金額
100万~
8,000万円
8,000万~
1億円
100万~
1,500万円
100万~
1,500万円
100万~
1億5,000万円
100万〜
4,000万円
補助率
中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3)

中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2)
中堅企業等 1/2 (4,000万円を超える部分は1/3)

中小企業者等 2/3 (6,000万円を超える部分は1/2)
中堅企業等2/3

中小企業者等3/4
中堅企業等2/3

中小企業者等3/4
中堅企業等1/2

中小企業者等1/3
中堅企業等2/3

中小企業者等3/4

グリーン成長枠は、過去にこの補助金を利用した事業者も申請でき、最大2回まで支援を受けられるのが特徴です。

参考:事業再構築補助金|中小企業庁

【補助金】IT導入補助金

IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が生産性向上のためにITツールを導入する際、費用の一部を補助する制度のことです。ソフトウェアの購入やクラウドツールの利用などに活用できます。

会社設立時は、通常枠とデジタル化基盤導入類型が利用可能です。

種類
A類型
B類型
デジタル化基盤導入類型
補助上限額
30万~
150万円未満
150万~
450万円以下
5万円~
50万円以下
50万円超~
350万円
補助率
1/2以内
3/4以内
2/3以内
補助対象
ソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大1年分)・導入関連費などソフトウェア購入費・クラウド利用料(最大2年分)・導入関連費 など

参考:IT導入補助金について|IT導入補助金2022

【補助金】小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者が販路開拓に取り組む際にかかる費用の一部を補助する制度です。日本商工会議所が管轄し、各商工会議所によって条件が異なります。各商工会議所の管轄地域内で事業を営む小規模事業者および、一定の要件を満たした特定非営利活動法人が対象です。

一例として、東京商工会議所の条件を掲載します。

補助上限額
50万円(通常枠)
100万円(インボイス枠)
200万円(賃金引上げ枠・卒業枠・後継者支援枠・創業枠)
補助率
補助対象経費の2/3 
※賃金引上げ枠のうち赤字事業者については3/4

参考:令和元年度補正予算・令和3年度補正予算 小規模事業者持続化補助金(一般型)|商工会議所地区

会社設立時に使える創業融資制度

ここでは、会社設立時に使える創業融資制度として、以下の2つを紹介します。

  • 新創業融資制度
  • 女性・若者/シニア起業家資金

融資には返済義務があるため、利用する際は資金繰りに注意することが必要です。また、融資を受けるにあたって自己資金についての要件がある場合も多いため、一定の資金を用意したうえで利用しましょう。

新創業融資制度

新創業融資制度は、日本政策金融公庫が提供する、創業者を対象にした融資制度です。融資限度額は3000万円、うち運転資金1500万円であり、事業開始または事業開始後に必要となる設備資金および運転資金に充てる必要があります。原則、無担保・無保証人で資金を調達できるのが特徴です。

新創業融資制度を利用するためには、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要である点に注意しましょう。また、新創業融資制度単独で使用することはできず、ほかの融資制度と組み合わせて使う必要があります。

参考:新創業融資制度|日本政策金融公庫

女性・若者/シニア起業家資金

女性・若者/シニア起業家資金は、女性や、35歳未満あるいは55歳以上の男性の創業を支援する創業関連融資です。特に、女性なら年齢制限なく利用できます。新たに事業を開始する方、または事業開始から7年以内の方が対象で、金融業や投機的事業、一部の遊興娯楽業等以外の業種で利用可能です。

資金は、事業開始にあたって必要な設備資金や、開業後の運転資金として利用できます。

参考:新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)/ 女性、若者/シニア起業家支援資金|日本政策金融公庫

融資を受けるために準備が必要なもの

最後に、融資を受けるために準備する必要がある書類と、手続きを紹介します。融資は、補助金や助成金と異なり、返済義務があります。そのため、融資を利用する際は資金繰りに注意してください。

また、審査に通過するためには、創業計画書や資金繰り計画書などの書類を用意し、ビジネスモデルの安定性や事業の魅力をアピールする必要があります。融資を受ける際は、念入りに準備しましょう。

融資に向けて準備が必要なもの

金融機関から融資を受けるためには、以下のような書類が必要です。

  • 創業計画書
  • 資金繰り計画書
  • 銀行取引一覧表
  • 納税証明書
  • (法人の場合)商業登記簿謄本
  • 個人事業主の場合)本人確認書類

特に、創業計画書は入念に作成しましょう。「その事業は問題なく利益を得られるのか」をアピールできないと、融資は受けられません。具体的に取引先が決まっていればかなり有利なアピールポイントになるため、創業前から営業をかけておくことも重要です。

また、資金繰り計画書は、3年分ほど用意しましょう。

融資を受けるための手続き

融資を受けるためには、以下のようなステップを踏みます。

  1. 申込
  2. 必要書類の作成・提出
  3. 融資担当者との面談
  4. 審査
  5. 融資実行

面談では、自己資金の額や資金の使い道、返済計画などが質問されます。事業プランについても質問されるため、事業計画書をもとにわかりやすく説明できるよう準備することが必要です。

審査には2週間〜1ヶ月程度要することが多いです。そのため、申し込んでから融資が実行されるまで、ある程度の時間がかかります。余裕を持って準備を進めましょう。

融資や補助金制度などを活用し、会社設立時の資金調達に活かす

今回は、会社設立時に使える資金調達方法を紹介し、なかでも設立時に使える補助金・助成金制度や、融資制度について解説しました。

設立時は、出資や融資・クラウドファンディングなどさまざまな手段で資金を調達できます。特に、補助金・助成金制度は返済不要で利用できるため、おすすめの手段です。各手段のメリット・デメリットを勘案し、ニーズに沿った資金調達方法を選びましょう。

よくある質問

資金調達の方法は?

ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家などからの出資、金融機関や公的機関からの借入・融資、補助金・助成金やクラウドファンディングの活用などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。

創業時に使える補助金・助成金は?

地域中小企業応援ファンド、キャリアアップ助成金、ものづくり補助金、事業再構築補助金、IT導入補助金、小規模事業者持続化補助金などです。実施の有無や要件などは年度によって異なります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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