• 更新日 : 2025年2月20日

配信者が法人化すべきケースは?個人事業主との違いやメリットを解説

配信者とは、ライブストリーミングなどで配信する活動者のことです。配信者は、年間の所得が800万円以上になったら法人化したほうがよいとされています。

本記事では、配信者が法人化すべきケースや法人化するメリット・デメリットなどについて解説します。法人化する手順や法人化する際の注意点も紹介するので、参考にしてください。

配信者が法人化すべきケースは?

そもそも配信者とは、ライブストリーミングなどで配信する活動者のことです。ライバーとも呼ばれます。

配信者としては、以下のような方々が含まれます。

  • VTuber
  • eスポーツ選手といったプロゲーマー
  • YouTubeで配信する配信者 など

配信者が法人化すべきタイミングは、年間の所得によって決まります。一般的に年間の所得が800万円以上になったら法人化したほうが適切といわれています。

  • 個人事業主:所得税が適用され、所得が増加するほど高い割合の税率(5~45%)が適用される
  • 法人化した場合:法人税が適用され、一定以上の所得があれば法人のほうが負担は軽減される(最高23.2%)

また、法人化すると自宅兼事務所の購入費や家賃、給与なども経費として計上できるようになります。

配信者を法人化するメリット

配信者を法人化するメリットについて解説します。主なメリットは、以下の4つです。

  • 経費にできる幅が広がる
  • 社会的信用を得られやすい
  • 事業を大きくしやすい
  • 融資を受けやすい

それぞれ詳しく見ていきましょう。

経費にできる幅が広がる

法人化すると、経費として適用できる範囲が広がります。家賃(事務所と兼用)や通信費交通費役員報酬、退職金なども経費として計上可能です。

経費計上できる範囲が広がると税負担の軽減につながります。

社会的信用を得られやすい

法人化することで取引先や金融機関からの信用度が高くなる点もメリットです。配信者のようなビジネスは収入が不安定になりがちであり、社会的信用を得るのが難しくなります。しかし、法人化することで信用度を高められるため、以降で解説する事業の拡大や融資の受けやすさに好影響が出てくる点はメリットといえるでしょう。

事業を大きくしやすい

法人化することで取引先や金融機関からの信用度が高まるため、事業を拡大しやすくなります。また、社会的信用が高まることで大手企業とのコラボレーションやスポンサー契約を獲得できる可能性が高まります。

法人化は自社のイメージをプラスにしてくれるため、仕事の規模を拡大させるきっかけとして有効な手段です。

融資を受けやすい

社会的信用度が高くなると、資金調達がしやすくなる点もメリットです。法人としての信用があるため、金融機関から融資を受けやすくなります。

融資を受けられれば、より大きな規模のビジネスに挑戦したり、質の高い動画制作に挑戦したりすることが可能です。法人のほうが個人事業主よりも多くの融資を受けやすいため、事業の拡大や融資調達を検討しているのであれば、法人化を検討しましょう。

配信者を法人化するデメリットやリスク

配信者を法人化するデメリットやリスクについて解説します。主なデメリットやリスクは、以下のとおりです。

  • 会社設立の手続きが複雑
  • 赤字でも法人税がかかる
  • 会計処理が難しい
  • 社会保険への加入が必要

デメリットや注意点をあらかじめ理解して、法人化するかどうか検討しましょう。

会社設立の手続きが複雑

会社設立のデメリットは、設立までの手間とコストがかかる点です。会社設立には、定款の作成や会社の登記などが必要になります。たとえば、登録免許税には株式会社であれば15万円程度、合同会社でも6万円前後が必要です。

また、会社設立には資本金も必要になります。法律上、資本金1円以上であれば会社設立自体は可能ですが、会社の信用などを考えると数百万円程度の資本金を持っていることが望ましいでしょう。

さらに、会社設立にあたって司法書士や税理士などに業務を依頼する場合は、さらに依頼費用がかかります。

赤字でも法人税がかかる

法人化すると、赤字でも法人税がかかる点には注意しましょう。個人事業主の場合は、赤字であれば税金を支払う必要はありません。しかし、法人になると会社の利益が赤字になっても、法人税が一律7万円必要です。

法人住民税は均等割と呼ばれるもので、利益に関係なく法人の規模に応じて一定の金額が課せられます。そのため、活動初期で収益が出ていない配信者や、収益が安定しない配信者にとっては大きな負担になるかもしれません。

会計処理が難しい

法人化すると、個人事業主の場合と比較して法的手続きや会計処理がより複雑になります。法人化すると決算報告や税務申告でも複雑な作業が必要です。

収支を正しく会計帳簿に記載するなどして、漏れのないようにしなければなりません。そのため、法人化した場合の会計処理は、会計士や税理士に依頼することが一般的です。

社会保険への加入が必要

法人化すると社会保険への加入が必要です。法人を設立した場合、社会保険への加入は義務となるため、必ず加入しなければなりません。

なお、社会保険は会社と社員が半分ずつ支払う仕組みです。役員が1人だけであれば、すべて1人で社会保険を負担することになります。

社会保険の支払額は、役員報酬金額の約20%になるため、大きな負担割合となることはあらかじめ理解しておきましょう。

配信者を法人化するには?

配信者を法人化する流れについて解説します。流れは、以下のとおりです。

  1. 法人の形態を決める(株式会社・合同会社)
  2. 定款を作成し認証を受ける
  3. 法人登記を行う
  4. 銀行口座を開設する
  5. 個人事業の廃業手続き
  6. 法人設立届出書を提出する

1. 法人の形態を決める(株式会社・合同会社)

まずは、設立する法人の形態についての検討が必要です。法人種別には株式会社や合同会社、一般社団法人、NPO法人などがあります。

そして、法人種別を決めたら、法人の基本情報を決定していくことになります。法人の基本情報として決める主な項目は、以下のとおりです。

  • 商号(会社名)
  • 資本金
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 決算期
  • 発起人
  • 公告方法
  • 取締役および監査役、発行可能株式総数、発行済株式の総数、株式の譲渡制限の定め(株式会社の場合)
  • 社員および業務執行社員(合同会社の場合)

これらの事項は後述する定款に記載するため、あらかじめ決定しておくようにしましょう。

2. 定款を作成し認証を受ける

法人登記に必要な書類として、定款があります。定款とは、会社の基本規則や基本規約などをまとめた書類のことです。記載事項は会社法によって定められています。

記載項目は、以下の3つです。

  • 絶対的記載事項:必ず記載が必要なのも
  • 相対的記載事項:記載しなければ効力を生じない
  • 任意的記載事項:記載してもしなくてもよい

定款作成後は、公証役場で定款の証明を受けましょう(定款の認証)。その後、定款に記載した出資金を払い込みます。

なお、会社設立の手続きが完了していない時点では法人口座が存在しません。そのため、出資金の振込先は発起人が定めた個人名義の口座になることが一般的です。

その際は、預け入れではなく、出資金として振り込むようにしてください。

3. 法人登記を行う

続いて、会社の設立登記を行います。登記する際には、登記申請書を作成し必要書類を添付して法務局へ提出します。

なお、登記申請書の記載事項は商業登記法で定められているため、法令に従って作成されないと却下されるため注意しましょう。

必要書類は、以下のとおりです。

  • 登記申請書
  • 登録免許税の収入印紙を貼付した台紙
  • 登記すべき事項
  • 定款(紙または電子定款
  • 取締役の就任承諾書
  • 払込証明書
  • 印鑑(改印)届出書

場合によって必要となる書類は、以下のとおりです。

  • 発起人の決定書
  • 代表取締役の就任承諾書
  • 監査役の就任承諾書
  • 取締役全員の印鑑証明書

登記が完了すれば、登記完了証が交付されます。登記完了証交付後、登記事項証明書や印鑑証明書、印鑑カードができるまでには、約1〜2週間ほどかかります。

4. 銀行口座を開設する

代表者の個人口座で会社資金を管理することも可能です。しかし、法人口座を開設したほうが社会的信用度は向上するため、法人口座の作成も行いましょう。

法人口座開設時には、金融機関側で審査を行うため、個人口座の場合と比較して時間がかかる傾向にあります。開設を検討している場合は、早めに申込は行っておくとよいでしょう。

5. 個人事業の廃業手続き

さらに、個人事業の廃業手続きも必要です。事業を廃止する際には、以下の書類を税務署へ提出しなければなりません。

  • 個人事業主廃業の届出書
  • 青色申告の取りやめ手続き
  • 消費税の事業廃止届出書
  • 給与支払事務所等の廃止届出書
  • 所得税および復興特別税の予定納税額の減額申請書

6. 法人設立届出書を提出する

最後に、法人設立届出書を税務署・都道府県税事務所・市区町村役場に提出します。この書類は、会社設立から2ヶ月以内に提出する必要があるため、注意しましょう。

配信者が法人化する際の注意点

配信者が法人化する際の注意点について解説します。主な注意点は、以下の3つです。

  • 著作権を確認する
  • 適切な額の役員報酬にする
  • 資本金の設定を高くしすぎない

著作権を確認する

配信事業では、著作権の問題がつきものです。法人化することでより著作権管理が厳しく行わなければならなくなるため、動画内で使用する音楽・映像の著作権についてはしっかり確認するようにしてください。

適切な額の役員報酬にする

適切な役員報酬額を設定することも重要です。設定した役員報酬は1年間変更できません。そのため、経営状況に応じた報酬額を設定する必要があります。

役員報酬を過大/過小に設定すると、税務上の問題が発生するリスクが生じるため、注意しましょう。

資本金の設定を高くしすぎない

資本金が高すぎると設立時の費用負担が大きくなるほか、法人住民税の均等割も高くなるため、注意が必要です。

対策としては、最初は必要最低限の資本金にしておき、事業拡大にともなって増資を検討するとよいでしょう。

配信者の法人化に役立つテンプレート

マネーフォワード クラウドでは、配信業の会社設立に役立つひな形やテンプレートを提供しています。下記リンクから無料でダウンロードできますので、自社に合わせてカスタマイズしながらご活用ください。

ユーチューバーの定款(事業目的)ひな形・テンプレートはこちら

配信者の法人化にはメリットがたくさんある

配信者も法人化することで多くのメリットがあります。経費にできる幅が広がるほか、社会的信用を得られることで事業拡大しやすくなったり、融資を受けやすくなったりする点がメリットです。法人化は、年間の所得が800万円以上になったタイミングで検討するとよいでしょう。

一方で、法人化することで会計処理が煩雑になったり、赤字でも法人税が必要になったりする点はデメリットです。また、法人化にあたっては、信用を失わないためにも著作権の管理も欠かせません。

配信事業における開業届の必要性などについては以下の記事で詳しく解説しています。そちらもあわせて参考にしてください。


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