• 作成日 : 2025年9月3日

法人成りの相談はどこにすべき?12の目的別無料・有料の相談先を比較

個人事業主として事業が軌道に乗り、次のステップとして「法人成り(法人化)」を考え始めたとき、多くの方が「誰に、何を相談すればいいのだろう?」という疑問に直面します。法人成りの相談先は、税理士などの専門家から商工会議所のような公的機関までさまざまです。相談内容やご自身の状況によって最適な相手は異なります。

この記事では、法人成りに関する多様な相談先の特徴や費用、相談できる内容をわかりやすく整理し、後悔しない法人化の進め方を解説します。

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法人成りの相談先とそれぞれの役割

法人成りを検討する際の相談先は、大きく分けて「民間の専門家」と「公的機関」の2つがあります。それぞれに特徴があり、相談できる範囲や費用も異なります。

まず、主な相談先とそれぞれの役割を一覧で見てみましょう。ご自身の状況や相談したい内容に合わせて、どこが最適か考えてください。

相談先相談できる内容の例費用の目安
税理士節税シミュレーション、役員報酬設定、資金調達、設立後の顧問契約相談料:
無料~5,000円/30分設立代行:5万円~
司法書士会社設立の登記手続き全般、定款の作成・認証相談料:
無料~5,000円/30分設立代行:5万円~
行政書士定款作成、事業に関する許認可の申請手続き、補助金の申請相談料:
無料~5,000円/30分設立代行:5万円~
社会保険労務士社会保険・労働保険の手続き、就業規則の作成、助成金申請相談料:
無料~1万円/30分
中小企業診断士事業計画の策定支援、経営戦略の相談、補助金の活用相談料:
無料~2万円/1時間
弁護士契約書のリーガルチェック、潜在的な法的リスクの洗い出し相談料:
5,000円~/30分
商工会議所

よろず支援拠点

創業全般の相談、事業計画の策定支援、専門家の紹介無料
金融機関

(日本政策金融公庫、銀行など)

創業融資、運転資金の調達に関する相談無料
市役所・区役所地域の創業支援制度の案内、専門機関への橋渡し無料
税務署税金に関する一般的な手続きの質問、届出書類の書き方無料
法務局登記に関する手続きの一般的な質問無料

公的機関は、まず何から始めればよいかわからない方や、自分で手続きを進めるうえでの不明点を確認したい場合に適しています。

専門家への相談は、設立後の経営サポートまで見据えたい方や、税金面で損をしたくない方におすすめです。

無料で法人成りの相談ができる窓口

法人成りの相談先は、何を目的とするかによって異なります。費用をかけずに基本的な疑問を解消したいのか、専門的なアドバイスや手続きの代行まで依頼したいのか、自社のニーズに合わせて相談先を選びましょう。

商工会議所・商工会

地域の事業者を支える商工会議所や商工会では、経営に関するさまざまな相談に応じており、法人成りもその一つです。メリットは、創業全般に関する幅広い相談が無料でできる点や、地域のネットワークを活用できる点にあります。

ただし、具体的な手続きの代行は行っておらず、相談員が必ずしも専門家ではない点には留意しましょう。

出典:日本商工会議所|日本商工会議所

よろず支援拠点

国が全国に設置している無料の経営相談所で、中小企業や小規模事業者のあらゆる悩みに対応しています。法人成りに関しても、さまざまな分野の専門家から多角的なアドバイスを無料で受けられるのが魅力です。

こちらも手続きの代行ではなく、アドバイスや情報提供が中心となります。

出典:よろず支援拠点 全国本部|中小企業基盤整備機構

税務署

法人を設立すると、税務署へ「法人設立届出書」や「青色申告の承認申請書」などを提出する必要があります。税務署では、これらの書類の書き方や提出方法といった、税務に関する一般的な手続きについて無料で相談に乗ってくれます。

電話相談センターも設置されており、気軽に質問することが可能です。

出典:税についての相談窓口|国税庁

法務局

会社の設立には、法務局で設立登記を行う必要があります。法務局の「登記相談(登記手続案内)」では、この登記申請の手続きに関する一般的な質問や、申請書の様式について相談できます。

ただし、あくまで手続き案内が中心であり、個別の会社に応じた定款内容のアドバイスや、書類作成の代行は行っていません。

出典:登記手続案内|法務局

市役所・区役所

法人設立の専門的な相談は直接行っていませんが、多くの自治体では「創業支援窓口」などを設置しています。起業に関する情報収集の第一歩として、地域の支援制度(融資あっせんや補助金など)について聞いたり、商工会議所や専門家への橋渡しをしてもらえたりする場合があります。

お住まいの自治体の公式Webウェブサイトで「創業支援」と検索してみるとよいでしょう。

金融機関(日本政策金融公庫、銀行、信用金庫など)

法人成りには設立費用や運転資金が必要です。日本政策金融公庫の「新規開業資金」制度や、普段から取引をしている銀行・信用金庫に、融資に関する相談が無料でできます。

事業計画について客観的なアドバイスをもらえる機会にもなりますが、税務や登記の専門的な相談はできません。

出典:創業支援|日本政策金融公庫

有料で法人成りを相談する専門家の選び方と費用

法人成りをスムーズに進めるためには、専門家への相談が欠かせません。特に税金や法律、労務が関わる部分は、プロに任せることで後々のトラブルを防ぎ、結果的にコストを抑えられることも少なくありません。

税理士:節税と経営のパートナー

法人成りを検討するうえで、中心的な相談相手となるのが税理士です。法人化による節税効果を最大限に引き出すためのアドバイスや、設立後の経営まで見据えた長期的なパートナーとしての役割が期待できます。

  • 相談できること:法人成りのタイミング、税額シミュレーション、役員報酬設定、決算期決定、設立後の顧問契約、資金調達の相談など。
  • 費用相場:相談料は初回無料の事務所も多く、有料の場合は30分5,000円程度。設立代行は5万円~で、顧問契約を前提に無料になることもあります。

司法書士:会社設立登記のプロ

司法書士は、法務局への会社設立登記申請を代行する専門家です。法人設立には必ず登記が必要なため、手続きを確実かつスムーズに進めたい場合に依頼します。

  • 相談できること:定款の作成・認証手続きの代行、設立登記申請書類の作成・提出、事業目的に関する法的なアドバイスなど。
  • 費用相場:手数料として5万円~10万円程度。これに加えて、株式会社の場合は約20万円、合同会社の場合は約6万円の登録免許税などの実費がかかります。

行政書士:許認可や多様な書類作成の専門家

建設業や飲食業、古物商など、事業に許認可が必要な場合にその申請を代行します。ドローン飛行許可や補助金申請、外国人の在留資格関連など、業務は多岐にわたります。

  • 相談できること:事業に必要な許認可の調査と申請代行、補助金申請書類の作成、定款作成のサポートなど。
  • 費用相場:設立代行は5万円~10万円程度。許認可申請の代行費用は別途かかります。

社会保険労務士(社労士):労務管理と社会保険の専門家

法人化して従業員を雇用する場合は、従業員が1人でも社会保険への加入が必要になるため、社労士は労務管理の基盤を固めるうえで不可欠な存在です。

  • 相談できること:社会保険・労働保険の加入手続き、就業規則の作成、労務管理に関する助言、雇用関連の助成金申請など。
  • 費用相場:相談料は初回無料から1万円程度。社会保険の新規適用手続きは数万円~、顧問契約は月額2万円~が目安です。

中小企業診断士:経営戦略のコンサルタント

法人成りを経営戦略の一環として捉え、事業の成長を加速させたい場合に頼りになります。経営コンサルティングの国家資格者で、客観的な視点から事業全体を見通したアドバイスが期待できます。

  • 相談できること:法人化をふまえた事業計画の策定支援、資金調達のアドバイス、補助金の活用提案、マーケティング戦略の立案など。
  • 費用相場:相談料は1時間1万円~が相場ですが、公的機関での相談は無料の場合もあります。プロジェクト単位での契約も多く見られます。

弁護士:法的なトラブル予防の専門家

共同経営者がいる場合や、取引先との契約、知的財産権など、将来の法的リスクに備えたい場合に相談します。特に契約書の作成やリーガルチェックで力を発揮します。

  • 相談できること:株主間契約や業務委託契約書などの作成・チェック、知的財産権の保護、事業承継に関する法務相談など。
  • 費用相場:相談料は30分5,000円~1万円以上が一般的。顧問契約は月額3万円~が目安となります。

法人成りの相談に最適なタイミングはいつ?

「いつ相談に行けばいいのか」も悩ましい点ではないでしょうか。法人成りの相談は、検討しているフェーズによって相談すべき内容や相手が変わってきます。

検討段階:そもそも法人化すべきか判断したいとき

個人事業主としての事業が順調に成長し、「このまま続けるべきか、法人化すべきか」と考え始めた最初の段階です。以下のような状況になったら、専門家への相談を検討する適切なタイミングといえるでしょう。

課税所得が800万円を超えそう、または超えたとき

個人の所得税は累進課税のため、一般的に課税所得800万円が法人化を検討する目安といわれます。業種によっても異なりますが、このタイミングで税理士に相談すれば、具体的な税額シミュレーションをもとに、どちらが有利かを客観的に判断してもらえます。

売上が1,000万円を超え、消費税の課税事業者になったとき

売上が1,000万円を超えると、その2年後から消費税を納める義務が生じます。しかし、法人を新しく設立すれば、資本金1,000万円未満などの条件を満たすことで、設立から最大2年間は消費税の納税が免除される可能性があります。

大きな融資や出資を受けたい、または社会的信用を高めたいと考えたとき

金融機関からの融資や外部からの出資を考える場合、個人事業主よりも法人の方が社会的信用度は高く、話が有利に進む傾向があります。また、大企業との取引や、特定の許認可が必要な事業を始める際にも法人格が求められることがあります。

こうした事業拡大を見据え始めたタイミングも、一人で判断する前に、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

準備段階:法人化を決意し、具体的な会社設立準備に入るとき

法人化の意思が固まったら、次は「どのような会社を作るか」という具体的な設計図を描く段階です。自分一人で設立手続きを進めることもできますが、この段階で専門家としっかり打ち合わせすることで、会社経営の設計図を描いておくことができます。

特に、定款の作成や登記申請といった手続きに少しでも不安があれば、定款作成については行政書士や司法書士に、登記申請については司法書士に相談しましょう。会社の根本規則である定款の内容は、安易に決めると将来の事業展開の足かせになりかねません。

資本金の額や決算期といった税金に直結する項目は、税理士に相談するのが賢明です。

設立直後:事業を軌道に乗せることに集中したいとき

無事に会社を設立したら、税務署への届出や社会保険の手続き、日々の経理処理など、やるべきことは山積みです。設立手続きだけを専門家に頼み、その後の運営は自分で行う選択もあります。しかし、以下のような状況であれば、顧問契約を検討するタイミングでもあります。

  • 相談した方がよいケース
    例えば、設立後の手続きが手間になってしまい本業に集中できない、経理や給与計算のルールがわからず困っている、あるいは人を雇ったものの労務管理に不安がある、といった状況に陥ったら、それは専門家に相談するサインです。問題が大きくなる前に、すぐに税理士や社労士に相談しましょう。
  • 顧問契約のメリット
    設立後の顧問契約を結ぶと、日々の会計処理の指導から、節税対策、資金繰りのアドバイス、さらには税務調査の対応まで、継続的なサポートを受けられます。社労士と契約すれば、従業員の入退社手続きや給与計算、助成金の活用提案など、人事・労務面の不安も解消されます。専門家に手間のかかるバックオフィス業務を任せられれば、経営者は安心して事業の成長に集中できるのではないでしょうか。

法人成り相談の前に自分で準備しておくこと

専門家への相談をより有意義なものにするためには、事前にご自身の状況や考えを整理しておくことが不可欠です。丸投げするのではなく、以下の点をまとめてから相談に臨むことで、的確なアドバイスを得やすくなります。

これは、法人成り後の事業計画そのものであり、相談前にじっくり考えることで「法人成りして後悔した」という事態を避けられます。

準備しておくこと具体的な内容と、その必要性
事業の現状把握
  • 事業内容、過去の確定申告書、今後のビジョン

→ 会社の全体像を伝え、的確な助言を得るため

資金計画
  • 用意できる資本金、運転資金の見通し

→ 融資の要否や適切な資本金額の判断材料

希望する会社像
  • 会社名(商号)、事業目的、役員の構成

→ 定款作成・登記申請の必須情報。将来性も考慮

相談したいことリスト
  • 節税、融資、手続き代行などの要望
  • 不安な点、疑問点のリストアップ

→ 相談の目的を明確化し、時間を有効に使うため

法人成りでクラウド会計ソフトを導入するメリット

法人成りの際は、設立後の経理も見据えた会計ソフト選びが大切です。近年主流のクラウド会計ソフトは、会社設立と設立後の業務の両方を効率化します。

例えば「マネーフォワード クラウド会社設立」などの支援サービスを利用することで、Web上の入力だけで設立書類を無料で作成でき、電子定款により印紙代4万円も節約できます。

設立後も、銀行口座との連携による入力自動化や法改正への自動対応で経理の手間を大幅に削減できるため、本業に集中しやすくなるでしょう。

また、IT導入補助金を活用すれば導入コストを抑えられます。

出典:IT補助金2025|中小企業庁

最適な相談先を見つけて後悔のない法人成りを実現する

個人事業主から法人成りの相談は、無料で気軽に話せる公的機関から、専門的な知見で深くサポートしてくれる税理士や司法書士、社労士まで多岐にわたります。

費用をかけずに情報収集したい場合は、公的機関の無料窓口が向いていますが、具体的な手続きや経営判断を伴う相談では、税理士や司法書士といった専門家の活用が効果的です。

相談前には、事業の現状や法人化後の見通し、希望する会社の形などを整理しておくことで、より具体的な提案を受けやすくなります。急ぎの判断に迫られる場面ほど、落ち着いて最適な相談先を見極めたいところです。

制度や手続きは時期や地域によっても異なる場合があるため、不安や疑問があれば、早めに信頼できる相談先に連絡しておくと、安心して法人成りの準備が進められるのではないでしょうか。


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