- 更新日 : 2025年1月10日
ファンドから資金調達する仕組みとは?投資・出資の違いやメリットも解説
会社設立を考えている方や個人事業主の中には、ファンドからの資金調達を検討している方もいるでしょう。本記事では、ファンドから資金調達するまでの流れやファンドから資金調達するメリットなどについて解説します。また、投資・出資など似た用語との違いも紹介します。
目次
ファンドから資金調達する仕組みとは?
ファンドとは、基金や資金を意味する言葉です。一般的には、資産または資金を運用する商品や組織のことを指します。ファンドを運用する人はファンドマネージャーと呼ばれ、投資家から集めた資金で株式や債券などの金融商品を運用し、得られた収益を投資家に配分するのがファンドの仕組みです。
投資や出資、融資とはそれぞれ異なる特徴を持ちます。
投資とは
投資とは、企業などに対して、お金を出す行為のことです。広い意味では、出資や融資も投資の1つと捉えられます。
出資とは
出資とは、将来的な利益を見込んで、株式などと引き換えに資金援助する投資方法です。出資を受けた側に返済義務はありません。お金を出資した人は、出資した会社に対する経営についての影響力を持つことになります。
投資と出資は、実質的には違いがないと考えても問題ありません。
融資とは
融資とは、利息を得ることを目的としてお金を貸すことです。資金を調達する側にとっては借入れのことを指します。借入れた場合、元本だけでなく利息の返済義務も負います。
ファンドから資金調達を検討すべきタイミング
ファンドから資金調達が必要になるタイミングには、起業時・事業拡大時・経営難の3つがあります。
起業時には、まとまった資金が必要です。さらに、すでに起業している場合でも新規事業を立ち上げたり、事業を拡大したりするときには事務所の賃貸料や設備代、新たな人材の採用費などが必要になります。
また、経営難のときも資金調達のタイミングです。収益が減っていても、取引先への支払いや人件費などを支払わなければなりません。
ファンドから資金調達するまでの流れ
ファンドから資金調達するまでの流れを解説します。主な流れは以下のとおりです。
- 事業計画を策定する
- ファンドを運営する投資会社に問い合わせる
- 投資会社の審査によって投資が決定する
それぞれの流れを見ていきましょう。
事業計画を策定する
まず、事業計画書を策定します。事業計画書とは、自社の事業の状況や今後の具体的なプランを示す計画書です。自社の決算書の財務状況だけでは融資や出資の判断はできません。相手の判断指針のひとつとして、事業計画書が必要です。
次のようなポイントを押さえて事業計画書を策定しましょう。
- 市場での優位性
- 今後のビジネスプラン
- IPOに向けた道筋 など
ファンドを運営する投資会社に問い合わせる
事業計画書ができたら、ファンドを運営する投資会社に問い合わせを行います。投資会社のホームページから問い合わせが可能です。
問い合わせフォームに従って必要事項を入力し、送信しましょう。入力情報を元にして、投資会社のほうで検討が行われます。投資を進める方向で話が進めば、投資会社から連絡があるでしょう。
投資会社の審査によって投資が決定する
投資会社からの連絡後、投資会社のほうで審査を進めます。審査によって投資が決定する流れです。
審査では経営者・経営陣との面談などを実施し、総合的に判断されます。面談では創業の経緯や事業内容、強み・弱み、資金調達で目指すことなどが確認されるため、あらかじめ自社についての情報を整理し、しっかりと応対できるようにしておきましょう。
また、各種関係先や業界関係者へのヒアリングなども行われます。審査には数ヶ月かかる場合もあるため、あらかじめ理解しておきましょう。
ファンドから資金調達するメリット
ファンドから資金調達するメリットを紹介します。主なメリットは以下の3つです。
- 返済不要の資金調達ができる
- 経営ノウハウが得られる
- 外部からの評価が上がる
返済不要の資金調達ができる
ファンドから調達した資金は、返済不要である点は大きなメリットです。出資金は借入金ではないため、毎月の元本返済や金利支払いはありません。
ファンドから出資を受けられれば企業のキャッシュフローが安定し、盤石な事業基盤構築にもつながります。
経営ノウハウが得られる
経営ノウハウをファンド会社から得られる点も、メリットです。投資ファンドには、経営スキルを有した人材が多数在籍しているため、プロの経営ノウハウを提供してくれます。
また、提携先や経営者の紹介なども想定されるでしょう。豊富な経営ノウハウを持った人物との関係構築は、自社の成長に大きな好影響をもたらすことでしょう。
外部からの評価が上がる
ファンドからの出資により純資産が増えれば、外部から優良な会社として評価されるようになります。その結果、金融機関から融資を受けやすくなるというメリットも享受できます。
また、評価の高いファンド会社からの出資であれば、「あのファンドが投資している会社」と認知されて、外部評価がさらに上がることもあり得るでしょう。
ファンドから資金調達するデメリット
ファンドから資金調達するデメリットは、以下の3つです。
- 定期的に進捗を報告する必要がある
- 意思決定に時間がかかる
- 経営が思い通りにいかない可能性がある
メリットだけでなくデメリットもあるため、しっかりと把握しておきましょう。
定期的に進捗を報告する必要がある
ファンドから出資してもらった場合、定期的にファンド会社へ進捗を報告する必要があります。事業計画通りに事業を進められているか、問題はないかなど、定期的に報告します。計画通りに進んでいない場合、ときには厳しい要求をされることもあり得るため、注意しましょう。
意思決定に時間がかかる
意思決定に時間がかかることもデメリットのひとつです。経営陣の議決権割合によっては、独断で意思決定も可能ですが、株主の意向に沿わない決定であった場合、増資を希望する際に追加資金を出してくれないということも考えられます。
事業を行うにあたって主要株主の意向は無視できず、意思決定に時間がかかることはデメリットとなるでしょう。
経営が思い通りにいかない可能性がある
ファンドからの出資を受けると、経営が思い通りにいかない可能性があります。出資を受けることでファンドが株主となるため、持ち株比率によってはファンドの指名する役員を受け入れたり、会社の意思決定に対して反対意見を表明されたりすることも考えられます。
経営者が思い描いていた通りの経営をできなくなる可能性があることは、十分理解しておきましょう。
ファンドからの資金調達を成功させるポイント
ファンドからの資金調達を成功させるためには、ファンドが投資するかどうかを決める際のポイントを押さえておくことが重要です。チェックされるポイントは、次の4つです。
- 将来性
- 競争優位性
- 決算内容
- 経営者の人間性
将来性があるか
行っている業務に将来性があるかどうかは、重要なポイントです。資金調達を行う際には、革新的な事業家、新たな市場を作る可能性のある事業かどうかなどがチェックされます。
競争優位性があるか
競合優位性があるかどうかも、資金調達に直結するポイントです。他社が真似できないような特徴を持っているかどうかを見られます。独自のノウハウや技術、知的財産権などがあれば、資金調達の可能性も高まります。
決算内容について
決算書や試算表も、評価基準のひとつです。これまでの売上や利益の状況などを貸借対照表や損益計算書でチェックされます。役員報酬が高額な場合や多額の代表者への貸付などがあるとチェック対象となるため、注意しましょう。
経営者の人間性について
経営者個人が、どのような人物かも判断対象です。判断対象としては、次のような項目が挙げられます。
- 実績
- キャリア
- 事業に対する思い
- 成功への執着心
- 人間性
- 財産状況
- 人脈 など
投資を行うに値する人物かどうかが判断されます。また、企業においては経営者を支えるメンバーの存在も不可欠です。メンバーの役割やキャリア、実績も評価ポイントとなるため、注意しましょう。
ファンドから資金調達する仕組みを理解しよう
ファンドから資金調達を検討すべきタイミングとしては、起業時や事業拡大時、経営難のときなどが考えられます。資金調達を成功させるためには、将来性や競争優位性などが加味されるため、自社の事業が魅力的に映るようにしっかりと事業計画を立てておきましょう。
また、ファンドから資金調達したお金は返済不要であるほか、経営ノウハウを得られたり、外部からの評価が上がったりする点はメリットです。ファンドから資金調達するまでの流れを理解して、十分な準備を心がけましょう。
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