- 更新日 : 2025年10月21日
オンラインカジノの法人化は違法?事業化リスクや2025年9月改正内容を解説
オンラインカジノで得た利益の税金対策として「法人化」を検討する方がいるかもしれません。しかし、結論から言うと、日本ではオンラインカジノは賭博にあたり違法行為に該当します。それを事業目的とする会社は公序良俗違反として定款認証や登記が認められないのが通常です。法人化には、賭博罪への抵触や税務上の深刻なリスクが伴います。
この記事では、オンラインカジノの法人化がなぜ不可能なのか、その法的な根拠と税務上の問題点、そして2025年9月に施行される法改正の具体的な内容まで、現在の法制度をふまえてわかりやすく解説します。
目次
オンラインカジノの法人化は違法になる?
日本国内において、オンラインカジノを事業目的として法人を設立することは認められません。海外で合法的に運営されているカジノサイトであっても、日本からアクセスして賭博行為を行うこと自体が刑法の「賭博罪」に該当するためです。したがって、賭博という違法行為を事業目的に掲げた会社の設立は、法的に認められる余地がありません。
オンラインカジノが違法とされる根拠は「賭博罪」
オンラインカジノが違法とされる主な根拠は、刑法第185条に定められている「賭博罪」です。賭博罪が成立するには、以下の要素が揃う必要があります。
- 偶然性:スロットやルーレットの結果など、当事者が確実に予見できない偶然の事象であること。
- 財産上の利益(財物)の得喪:勝者が金銭やそれに準ずる財産を得て、敗者がそれを失うこと。
この2点が揃えば賭博行為と判断されます。また、刑法上はプレイヤーと胴元の双方が処罰対象(双罰性)となる点も特徴です。
オンラインカジノはこれらの要件を満たす典型的な行為であり、たとえプレイヤーの一時的な娯楽目的であったとしても、金銭を賭けている以上、法律上は賭博行為として違法と見なされます。
参考:e-Gov法令検索|刑法
海外で合法でも日本国内からの参加は処罰の対象
「海外で合法ライセンスを取得しているサイトだから安全」という情報を目にすることがありますが、これは誤りです。日本の法律(刑法)では属地主義を採用しており、行為地が国内であれば国内法を適用するのが原則です。日本国内からサイトにアクセスして賭博行為をすれば、国内で賭博をしたものとして処罰対象になり得ます(運営拠点が海外でも同様)。
つまり、プレイヤーが日本国内のパソコンやスマートフォンからアクセスしている以上、賭博行為が行われたのは日本国内と判断されます。
実際に、2016年には海外のオンラインカジノを利用していた複数のプレイヤーが賭博罪の容疑で検挙されています。利用者が検挙されるリスクは常にあります。
法人化で「賭博場開張図利罪」に問われるリスク
個人での利用が刑法第185条の賭博罪(単純賭博罪)にあたるのに対し、法人として組織的に関与することは、より重い罪に問われる可能性があります。たとえば、刑法第186条第2項の「賭博場開張図利罪」です。これは、賭博を行う場所を提供し、利益を図る行為を罰するもので、3月以上5年以下の懲役に処せられます。
法人を設立し、事務所を構え、複数の人間が関与してオンラインカジノから収益を上げるような形態は、賭博を組織的に運営していると見なされ、この重い罪に該当するおそれが十分に考えられるでしょう。
なぜオンラインカジノ目的の会社設立はできない?
オンラインカジノを事業目的とした会社の設立は、法務局での登記手続きの段階で受理されない可能性が極めて高いです。会社の事業目的は、定款に記載する必要がありますが、その内容が日本の法律や公の秩序・善良の風俗(公序良俗)に反する場合、登記は認められません。
定款の「事業目的」が公序良俗に反するため登記できない
会社を設立する際には、その会社の憲法ともいえる「定款」を作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。定款には、会社の商号や本社の所在地と並んで、「事業目的」を必ず記載しなければなりません。
この事業目的に「オンラインカジノの運営」や「オンラインカジノを利用した収益事業」などと記載すれば、それは明確に賭博という違法行為を目的とすることになります。民法第90条では、公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効と定めており、違法な事業を目的とする会社の設立は認められません。そのため、公証人による定款認証や、法務局による設立登記の申請が却下されることになります。
参考:e-Gov法令検索|民法
事業目的を偽っても銀行口座開設や融資が困難に
では、「コンサルティング業」や「インターネット関連事業」といった曖昧な事業目的で定款を作成し、登記を済ませれば問題ないのでしょうか。答えはノーです。事業目的を曖昧にして登記しても、銀行口座開設や与信審査で実態確認が行われます。実際にオンラインカジノ収益と判明すれば口座開設・決済・融資は原則困難です。
金融機関は、マネーロンダリングや犯罪収益の移転防止のため、口座開設時に厳しい審査を行います。事業内容の実態について詳細な説明を求められ、それがオンラインカジノによる収益であると判明すれば、口座開設はまず間違いなく拒否されるでしょう。法人口座がなければ、事業としての活動は事実上不可能です。
オンラインカジノの利益を法人化した場合の税金リスクとは?
オンラインカジノの利益を法人所得として申告し、節税を考える方もいるかもしれませんが、税務上も極めて大きなリスクがあります。違法収益は課税対象ではあるものの、適法な事業所得とは認められないためです。税務調査で発覚すれば、重いペナルティが課されるおそれがあります。
税法上「事業所得」とは認められない
所得税法では、所得を10種類に分類しています。事業所得に該当すれば、経費の範囲が広く認められたり、他の所得との損益通算ができたり、青色申告による特別控除が受けられたりといった税務上のメリットがあります。
しかし、事業所得とは「対価を得て継続的に行う事業から生じる所得」と定義されています。賭博による利益は、役務の提供などの対価として得られるものではなく、偶然の産物です。そのため、継続的に利益を上げていたとしても、税法上の事業所得とは認められません。
出典:No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)|国税庁
「一時所得」と「事業所得」の税計算の違い
オンラインカジノの利益は、原則として「一時所得」に分類されます。一時所得は、以下のように計算されます。
ここで重要なのは、「その収入を得るために支出した金額」には、利益が出たときの賭け金しか含まれず、負けたときの賭け金は含まれないという点です。また、最終的な課税対象額が1/2になるという特徴があります。
一方で事業所得は、総収入から必要経費を差し引いて計算します。もし事業と認められれば、負けた賭け金も経費として計上できるのではないか、と考えるかもしれませんが、前述のとおり、そもそも事業として認められないため、この考えは成り立ちません。
税務調査で指摘され重い追徴課税の対象に
もし、オンラインカジノの利益を法人の所得として申告した場合、税務調査が入ればほぼ確実に否認されます。その結果、個人の一時所得として申告し直すよう指導され、本来納めるべきだった税額との差額に加えて、ペナルティとして以下の追徴課税が課されます。
法人化して不正な申告を行うことは、節税どころか、かえって多額の税金を支払う結果につながる可能性があります。
オンラインカジノの違法性、4割以上が「知らない」という現状
警察庁の調査によると、オンラインカジノを違法だと認識していない人が43.5%にものぼることがわかっています。多くの人が知らず知らずのうちに法を犯している可能性があり、警察は取り締まりを年々強化しているのが実情です。
警察庁の調査が示す認識不足の実態
2025年3月に警察庁が公表した「オンラインカジノに関する実態調査報告書」によると、利用経験の有無を問わず調査対象となった全国の住民のうち、43.5%が「オンラインカジノで賭博をすることが違法行為であることを知らなかった」と回答したのです。
また、利用経験者のうち、約6割(59.6%)が自身のギャンブル依存を自覚し 、半数近く(46.2%)が実際に借金をした経験があると回答しました 。
インターネット広告やSNSを通じて「海外サイトだから合法」「登録するだけでボーナス」といった誤解を招く情報が氾濫しており、違法性の認識が薄れていることが大きな社会問題となっています。しかし、「知らなかった」では法律上、許されることはありません。
検挙数は年々増加、警察は取り締まりを強化
こうした状況を受け、警察はオンラインカジノ関連の犯罪に対する取り締まりを強めています。プレイヤー個人の検挙だけでなく、決済代行業者やアフィリエイター(紹介者)なども常習賭博のほう助(手助け)容疑で摘発される事例も報告されています。法人化して事業として関わろうとすることは、警察の捜査対象となるリスクを自ら高める行為にほかなりません。
【2025年9月施行】ギャンブル等依存症対策基本法の改正
2025年9月25日に施行された改正ギャンブル等依存症対策基本法により、オンラインギャンブルに関する依存症対策やオンラインカジノの広告・誘引行為に対する取締りが強化されています。
とくに、これまでグレーゾーンとされてきた広告や宣伝などの誘引行為が明確に禁止される点が大きなポイントです。
改正の背景と目的
この法改正の背景には、ギャンブル等依存症問題の深刻化があります。とくに、スマートフォンから時間や場所を問わずアクセスできるオンラインギャンブルは、依存症のリスクが高いと指摘されてきました。政府は「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」の中で、オンラインカジノなどの違法なギャンブルに対する対応強化を掲げており、今回の法改正はその具体策の一つです。広告や誘引行為を規制することで、国民が違法なギャンブルにアクセスする機会を減らし、依存症の発生を未然に防ぐことを目的としています。
参考:ギャンブル等依存症対策基本法|e-GOV
参考:ギャンブル等依存症対策推進本部|政策会議
国内外事業者による誘引行為の禁止
オンラインカジノの運営事業者が海外にいる場合でも、その事業者から委託を受けるなどして、日本国内で広告、宣伝、勧誘といった「誘引行為」を行うことを明確に禁止するものです。
具体的には、以下のような行為が規制対象となると考えられます。
- オンラインカジノを紹介するアフィリエイトサイトの運営
- SNSや動画サイトでの登録方法の解説やプレイ実演による誘導
- オンラインカジノへの参加を勧誘するセミナーの開催
参照:オンラインカジノによる賭博は犯罪です!広告・宣伝することも禁止に!|政府広報オンライン
法改正が法人化の議論に与える影響
この法改正は、オンラインカジノの法人化という考えを根底から覆すものです。なぜなら、たとえ賭博行為そのものではなく、その「紹介」や「宣伝」を事業目的としたとしても、その行為自体が明確に法律で禁止されるからです。
アフィリエイト収入などを目的として法人を設立することは、違法行為を事業とする会社を作ることと同義となり、前述の公序良俗違反により定款認証や登記は認められません。今回の改正により、オンラインカジノに関連するあらゆる法人事業は、日本国内では成立し得ないことが明確になったといえるでしょう。
オンラインカジノの利益を正しく申告するには?
法人化は不可能ですが、オンラインカジノで得た利益を申告しないことは脱税にあたります。違法行為による収益であっても課税対象であり、利益が出た場合は、個人として確定申告を行う義務があります。申告方法を正しく理解し、適切に納税しましょう。
「一時所得」として個人で確定申告を行う
オンラインカジノの利益は、税務上では事業所得には該当せず、原則として「一時所得」として扱われます。一時所得の場合、年間の一時所得合計から最高50万円の特別控除を差し引き、残りを1/2した金額が課税対象となります。
計算式は前述のとおりですが、経費として認められるのは利益が出たゲームの賭け金のみで、負けたときの賭け金は差し引けません。
申告をしない場合のペナルティ
確定申告をせず、納税を怠った場合、本来納めるべき税金に加えて「無申告加算税」や「延滞税」といった重いペナルティが課されます。税務署は、銀行の入出金記録や海外からの送金記録などを調査する権限を持っています。「海外のサイトだからバレないだろう」と安易に考えるのは非常に危険です。
税理士に相談するメリットと注意点
もし申告方法に不安がある場合は、税理士に相談することも一つの方法です。税金の専門家として、正しい計算方法や申告手続きについてアドバイスをもらえます。
ただし、相談する際には注意が必要です。オンラインカジノが違法行為であることをふまえ、税理士によっては相談自体を断るケースもあります。相談する際は、「違法性を認識しているが、国民の義務として納税は正しく行いたい」という姿勢で、正直に収益の内容を伝えることが重要です。違法行為の助長ではなく、あくまで納税義務を果たすための相談であることを明確にしましょう。
オンラインカジノの法人化は違法でありリスクが高い
この記事で解説したとおり、オンラインカジノの法人化は賭博罪に抵触する違法行為であり、会社設立も認められません。仮に設立できたとしても、銀行口座の開設や決済の確保は困難で、税務調査による追徴課税のリスクもあり、事業として成立しないのが現実です。
2025年9月の法改正で広告や誘引行為も明確に禁止され、関連事業を行うことのリスクは一層高まりました。安易な法人化は絶対に避けるべきです。得られた利益については、個人として一時所得の確定申告を正しく行い、納税義務を果たしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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