- 更新日 : 2025年9月9日
資産管理会社設立の相談は誰にすべき?税理士・司法書士などの選び方を解説
資産管理会社の設立を考えるとき、最初の悩みは誰に相談すべきかという点です。この記事では、資産管理会社の設立に最適な相談先の選び方、設立のメリット・デメリット、手続きの流れ、費用までを分かりやすく解説します。個人の資産を法人化して、節税や相続対策を成功させるための知識を身につけましょう。
目次
そもそも資産管理会社とは?
資産管理会社とは、個人が所有する不動産、株式、暗号資産といった資産を管理・運用することを主な目的として設立される法人を指します。プライベートカンパニーやファミリーカンパニーとも呼ばれ、主に資産家や高所得者が節税や相続対策のために活用します。
個人の所得税は、所得が高くなるほど税率も上がる累進課税(最大45%)が適用されます。一方、法人税には資本金規模や所得額に応じて軽減税率が適用される場合があり、実効税率はおおむね30%前後です。そのため、個人の所得を法人の利益として分散させ、トータルの税負担を軽くできる可能性があります。
資産管理会社は、一般的な会社のように商品やサービスを販売して利益を上げるのではありません。役員である個人やその家族が持つ資産から生まれる収益、例えば不動産賃料や株式の配当金などを、会社の収益として受け取ります。そして、その収益から役員報酬を支払ったり経費を計上したりして、個人に残る所得を調整します。これにより、所得税・住民税の負担を最適化し、効率的な資産形成や円滑な資産承継を目指すことが可能になります。
資産管理会社設立の相談は誰にすべき?
資産管理会社設立の相談は、税務面なら税理士、登記手続きなら司法書士が主な相談先です。設立の目的やご自身の状況に合わせて、最適な専門家を選ぶことが成功につながります。
各専門家には法律で定められた独占業務があり、対応できる範囲が異なります。例えば、設立登記の申請代理は司法書士の独占業務で、税務申告の代理は税理士の独占業務です。一人の専門家が全てを担えるわけではないため、それぞれの役割を理解しておく必要があります。
特に、設立の目的が節税や相続対策である以上、最初に相談すべきは税理士と言えるでしょう。税理士は、法人化によって本当に節税メリットがあるのかという最も重要な点をシミュレーションしてくれます。
専門家 | 主な役割 | こんな人におすすめ |
---|---|---|
税理士 | 税務全般のエキスパート
|
|
司法書士 | 会社設立登記の専門家
|
|
行政書士 | 許認可申請・書類作成の専門家
|
|
弁護士 | 法律全般の専門家
|
|
資産管理会社設立の相談先を選ぶポイントは?
資産管理会社設立の相談先を選ぶ際には、以下の3つのポイントを確認することが重要です。
1. 資産管理会社の設立実績が豊富か
通常の事業会社と資産管理会社では、設立の目的や注意すべき税務上のポイントが大きく異なります。ウェブサイトなどで資産管理会社や相続対策に関する実績が豊富かどうかを確認しましょう。
2. コミュニケーションが円滑か
専門用語を分かりやすく説明してくれるか、質問に対して的確に答えてくれるかなど、相性も重要です。無料相談などを活用し、信頼して長く付き合えるパートナーかどうかを見極めましょう。
3. ワンストップでの対応が可能か
税理士と司法書士が提携している事務所など、複数の専門家が連携している窓口であれば、手続きがスムーズに進みます。税務から登記まで一貫してサポートしてもらえるため、手間を大幅に削減できます。
資産管理会社の設立を相談すべき年収や資産の目安は?
では、どのくらいの年収や資産があれば、資産管理会社の設立を検討すべきなのでしょうか。一般的な目安は以下の通りです。
年収・所得の目安
一般的に、個人の課税所得が900万円を超えると、所得税33%に住民税10%が加わり、合計約43%となるため、法人実効税率(約30%)を上回ります。これが法人化を検討する一つのタイミングです。
資産規模の目安
- 不動産
複数の収益不動産を所有しており、家賃収入が年間1,000万円を超える場合 - 金融資産
多額の株式や投資信託を保有しており、配当金や売却益が継続的に発生する場合
資産管理会社を設立するメリット・デメリットは?
資産管理会社の設立を検討する際は、メリットとデメリットを正確に比較することが後悔しないための第一歩です。
- 所得税と法人税の税率差による節税
個人の所得に適用される高い累進課税を避け、法人税率を適用することで税負担を軽減できます。 - 経費として認められる範囲の拡大
役員社宅制度を利用して自宅家賃の一部を経費にしたり、車両を法人名義にしたりするなど、経費計上できる範囲が広がります。 - 相続対策の円滑化
会社の株式として財産を評価することで、不動産などを直接相続するよりも相続税評価額を下げられる可能性があります。また、計画的に株式を贈与することで円滑な資産承継ができます。
- 設立・維持コストの発生
法人設立時の法定費用や専門家への報酬に加え、赤字でも毎年発生する法人住民税の均等割(最低でも年額約7万円)などの維持費がかかります。 - 社会保険への加入義務
役員報酬を支払う場合、社会保険への加入が必須となり、会社と個人で保険料を負担する必要があります。 - 事務的な負担の増加
毎年の決算申告や帳簿の作成、役員変更登記など、個人事業主にはなかった会計・法務手続きが必要です。
資産管理会社の設立手続きは?
資産管理会社の設立は、会社法に定められた手順に沿って進める必要があります。
- 会社の基本事項を決める
会社形態(株式会社か合同会社か)、商号(会社名)、本店所在地、事業目的、資本金、役員構成、事業年度などを決定します。 - 定款を作成し、認証を受ける
会社のルールブックである定款を作成します。株式会社の場合は、公証役場で認証を受ける必要があります(合同会社は不要)。 - 資本金を払い込む
発起人(会社設立者)の個人銀行口座に、定めた資本金を入金します。 - 法務局で設立登記を申請する
本店所在地を管轄する法務局へ、設立登記申請書と必要書類を提出します。この申請日が会社の設立日となります。 - 税務署などに設立後の届出を行う
登記完了後、税務署や都道府県税事務所、年金事務所などへ、法人設立届出書や青色申告の承認申請書などを提出します。
資産管理会社の設立にかかる費用は?
設立にかかる法定費用は、合同会社と株式会社で大きく異なります。コストを抑えたい場合は合同会社が有利です。これに加えて、専門家に依頼する場合は別途報酬が発生します。
法定費用
法律で定められている費用です。電子定款を利用すれば収入印紙代4万円が不要になります。
- 株式会社:約20万円~
- 合同会社:約6万円~
専門家への報酬
- 税理士:5万円~20万円程度
- 司法書士:5万円~15万円程度
多くの場合、専門家に依頼して電子定款を利用した方が、自分で手続きするよりトータルコストを抑えられます。
資産管理会社設立の相談は信頼できる専門家へ
資産管理会社の設立は、単なる節税手法ではなく、ご自身の資産を次の世代へスムーズに承継するための有効な戦略です。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、設立のタイミングやご自身の状況を見極め、信頼できる専門家へ相談することが不可欠です。
設立はゴールではなく、資産管理のスタートです。長期的な視点で付き合えるパートナーを見つけることが何よりも重要です。
この記事で解説したポイントを参考に、まずは一度、資産管理会社の設立に詳しい税理士などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。それが、あなたの資産形成をより確かなものにするための、賢い第一歩となるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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