- 更新日 : 2025年8月29日
自営業とは?個人事業主や法人との違い、向いている人の特徴まで徹底解説
働き方の多様化が進む現代において、自営業という選択肢に関心を持つ人が増えています。会社に縛られず、自分の裁量で仕事を進められる魅力がある一方で、「個人事業主やフリーランスと何が違うの?」「法人や社長とはどういう関係?」といった疑問を持つ方も少なくありません。
この記事では、自営業の基本的な意味から混同されがちな言葉との違い、自営業に向いている人の特徴までわかりやすく解説します。
自営業とは
自営業とは、特定の企業や組織に雇用されることなく、独立して自身の事業を営むことで生計を立てる働き方全般を指す言葉です。自身のスキルや知識、時間を使って収益を得る人々が該当します。
重要なのは、これが法律で定められた特定の用語ではなく、働き方の状態を示す広い概念であるという点です。飲食店や小売店の経営者から、フリーランスのエンジニアやライターまで、多様な職種が含まれます。
自営業と会社員の違い
会社員との最も大きな違いは、雇用契約の有無です。
会社員は、企業と雇用契約を結び、労働の対価として給与を受け取ります。一方、自営業者は誰とも雇用契約を結んでいません。自分で仕事を見つけ、事業の運営に関わるすべての責任を自身で負い、その結果として得られた売上から経費を差し引いたものが所得となります。労働時間や場所の制約がない代わりに、収入の保証もない点が特徴です。
自営業と個人事業主の違い
自営業は働き方のスタイルを指す広い言葉であり、個人事業主はその中に含まれる税法上の区分のひとつです。自営業という大きな枠の中に、個人事業主や、法人を設立して事業を行う人(一人社長など)が存在するイメージです。したがって、「すべての個人事業主は自営業者である」と言えますが、「すべての自営業者が個人事業主である」とは限りません。
個人事業主とは、法人を設立せず、個人として事業を行うために税務署へ開業届を提出した人のことを指します。この手続きを行うことで、青色申告による税制上の優遇措置を受けられるなどのメリットがあります。つまり、自営業を始めて、税務署に開業届を提出した時点で、法的には個人事業主として扱われることになります。
自営業と法人の違い
自営業(個人事業主)と法人の最も大きな違いは、事業の主体が個人か法人格かという点です。自営業では事業主自身が無限責任を負いますが、株式会社などの法人を設立した場合、事業上の責任は原則として出資額の範囲内に限定される有限責任となります。また、税制面でも、個人事業主は所得税、法人は法人税が適用され、計算方法や税率が異なります。
自営業とフリーランスの違い
自営業とフリーランスは、しばしば同義で使われますが、厳密にはニュアンスが異なります。自営業が事業形態全般を指す広い言葉であるのに対し、フリーランスは特定の企業に属さず、案件ごとに契約を結んで仕事をする働き方に焦点を当てた言葉です。
例えば、店舗を構えてラーメン店を経営している人は自営業者ですが、一般的にフリーランスとは呼ばれません。一方で、フリーランスのWebデザイナーは、働き方としてはフリーランスであり、事業形態としては自営業者(多くは個人事業主)に該当します。
自営業と経営者・社長の違い
経営者とは、事業の経営方針を決定し、運営のかじ取りを行う人のことです。この点では、自営業者も法人の代表者も、どちらも経営者と言えます。
一方、社長は一般的に会社(法人)における役職名です。したがって、自営業者は経営者ではありますが、社長という肩書を名乗るのは厳密には正しくありません。株式会社を設立してその代表になれば、経営者であり、かつ社長となります。
自営業のメリット
自営業には、会社員にはない多くの魅力があります。代表的なメリットを3つ紹介します。
働く時間と場所の自由度が高い
自営業の最大の魅力は、働く時間や場所を自分で決められることです。満員電車での通勤や、決められたオフィスに出社する必要がありません。プライベートの予定に合わせて柔軟に仕事時間を調整したり、自宅やカフェ、旅行先など好きな場所で働いたりすることも可能です。
収入の上限がない
会社員の場合、給与体系によって収入の上限がある程度決まっていますが、自営業の場合、自身のスキルや努力、事業の成果次第で、収入を伸ばせる可能性があります。提供するサービスの価値を高め、多くの顧客から支持を得られれば、会社員時代を大きく上回る収入を得ることも夢ではありません。
定年がなく働き続けられる
多くの企業には定年制度がありますが、自営業には定年がありません。健康で、顧客から求められる価値を提供し続ける限り、年齢に関係なく生涯現役で働き続けることができます。長年培ってきた経験や知識を活かし、自分のペースで仕事を続けられるのは大きなメリットです。
自営業のデメリット
自由で魅力的に見える自営業ですが、当然ながら厳しい側面も存在します。事前にデメリットを理解し、対策を考えておくことが重要です。
収入が不安定になりやすい
自営業の収入は、毎月決まった額が保証されているわけではありません。仕事の受注状況によって、収入は月ごとに大きく変動します。収入がゼロになる可能性もあれば、予想を大きく上回る月もあるなど、不安定さは常に伴います。安定した事業基盤を築くまでは、精神的にも経済的にも厳しい時期があることを覚悟しておく必要があります。
すべての責任を自分で負う
事業に関わる最終的な意思決定と、その結果に対する責任は、すべて自分自身で負わなければなりません。仕事でミスをした際の損害賠償責任や、事業がうまくいかなかった場合の負債など、そのリスクはすべて個人に降りかかります。この重圧に耐えうる精神的な強さが求められます。
社会的信用を得にくい場合がある
会社員と比較して、自営業者は社会的信用度が低いと見なされる傾向があります。特に事業開始直後は、クレジットカードの審査や住宅ローンの契約、賃貸物件の入居審査などで不利になるケースが少なくありません。事業の実績を積み重ねることで信用力は向上しますが、独立当初はこうしたハードルがあることを認識しておくべきです。
経理や税務などの事務作業が発生する
事業で得た収入や支出を管理する経理業務や、年に一度の確定申告といった税務手続きも、基本的にはすべて自分で行う必要があります。本業の傍らでこれらの事務作業を行うのは大きな負担となり得ます。専門的な知識も必要になるため、税理士などの専門家に依頼することも選択肢の一つです。
自営業に向いている人の特徴
自由な働き方に憧れる人は多いですが、誰もが自営業で成功できるわけではありません。ここでは、自営業という働き方がフィットしやすい人の特徴を3つ紹介します。
自己管理能力が高い人
自営業には、出社時間も上司からの指示もありません。そのため、日々のスケジュール管理、タスクの優先順位付け、そして何よりもモチベーションの維持をすべて自分で行う必要があります。誘惑に負けず、自らを律して計画的に仕事を進められる高い自己管理能力は、安定した成果を出すための基盤となります。
専門的なスキルや知識がある人
自営業として独立するということは、自分のスキルを商品として市場で戦うことを意味します。IT、デザイン、ライティング、コンサルティングなど、他者に価値を提供できる明確な専門性が必要です。スキルが高ければ高いほど、高単価な案件を獲得しやすくなり、事業の安定につながります。常に学び続け、スキルを磨く姿勢も欠かせません。
変化を前向きに捉え、楽しめる人
市場の需要や技術のトレンドは常に変化します。自営業者は、そうした外部環境の変化を敏感に察知し、自身のサービスや事業の方向性を柔軟に調整していく必要があります。また、収入が月によって変動することも日常的です。不安定な状況をストレスと捉えるのではなく、変化への対応自体を楽しめるような精神的な強さが求められます。
自営業で人気の職種
自営業と一言で言っても、その職種は多岐にわたります。ここでは、特に需要が高く、自営業として始めやすい人気の職種を紹介します。
IT・Web関連
DX(デジタルトランスフォーメーション)の波に乗り、ITエンジニアやWebデザイナーの需要は依然として高い水準を維持しています。プログラミングやデザインのスキルがあれば、場所を選ばずに働けるリモート案件が豊富にあります。特に、Webサイト制作、アプリケーション開発、UI/UXデザインなどの分野で高い専門性を持つ人材が求められています。
クリエイティブ職
YouTubeやTikTokといった動画プラットフォームの隆盛に伴い、動画編集者の需要が急増しています。また、企業のオウンドメディアやWeb広告市場の拡大により、SEOライターやコピーライターといった書くスキルを持つ専門家も常に必要とされています。これらの職種は、初期投資が比較的少なく始められる点も魅力です。
コンサルティング・士業
特定の分野で深い知識や経験を持つ人は、コンサルタントとして独立する道があります。中小企業診断士、税理士、社会保険労務士といった国家資格を持つ「士業」はもちろん、Webマーケティングや人事戦略など、自身のキャリアで培った専門性を活かして企業の課題解決を支援する働き方です。
店舗経営
オンラインでのビジネスが主流となる中でも、地域に根差した飲食店やセレクトショップといった店舗経営は、自営業の伝統的な形として人気があります。独自のコンセプトやこだわりの商品でファンを掴むことができれば、大きなやりがいと安定した収益を得ることが可能です。ただし、初期投資や運転資金が必要になる点は考慮すべきです。
自営業を始めるための具体的なステップ
自営業を始めるには、いくつかの手続きが必要です。ここでは、個人事業主として開業する場合の一般的な流れを解説します。
事業計画を立てる
まずは、どのような事業で収益を上げていくのか、具体的な計画を立てます。事業内容、ターゲット顧客、収益モデル、資金計画などを明確にすることで、事業の成功確率を高め、進むべき方向性を見失わずに済みます。
開業届を提出する
事業を開始したら、原則として1ヶ月以内に、管轄の税務署へ「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出します。これにより、法的に個人事業主となります。節税効果の高い青色申告を選択したい場合は、同時に「所得税の青色申告承認申請書」も提出しましょう。
国民年金・国民健康保険へ切り替える
会社を退職して自営業者になる場合、厚生年金と会社の健康保険から脱退し、国民年金と国民健康保険に切り替える手続きが必要です。お住まいの市区町村役場の窓口で手続きを行います。
事業用の銀行口座やクレジットカードを準備する
プライベートのお金の流れと事業のお金の流れを明確に分けることは、正確な経理処理の基本です。事業専用の銀行口座やクレジットカードを作成し、事業に関わる入出金はすべてそちらで管理するようにしましょう。
自営業の定義をしっかりと理解しましょう
本記事では、自営業と個人事業主や法人との違い、メリット・デメリット、向いている人の特徴、そして具体的な職種や始め方について解説しました。
自営業は、会社員とは異なり、自身の裁量で自由に働ける魅力的な選択肢です。しかし、その自由には大きな責任が伴います。成功するためには、自身の持つスキルを客観的に評価し、事業を運営していく経営者としての視点を持つことが不可欠です。この記事が、あなたのキャリアを考える上での一つの指針となれば幸いです。
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