- 作成日 : 2025年3月7日
整骨院開業に許認可は必要?必要書類・開業準備のまとめ
整骨院を開業するには、行政機関の許認可ではなく届出が必要です。届出を出す際は、施術所開設届や柔道整復師免許証の原本等の必要書類を用意しなければいけません。
今回は、整骨院の開業に必要な書類や開業準備について詳しく解説します。
目次
整骨院は許認可ではなく届出によって開業する
起業する場合、法的な規制がないビジネスであれば自由に開業できますが、一定の業種については行政機関への届出、許可、認可を受けることが必要です。
届出、許可、認可の違いは以下のとおりです。
- 届出:決められた事項を行政機関に通知する手続き
- 許可:要件を満たしている場合に交付される手続き
- 認可:法律上の行為を有効にするために必要な承認
整骨院を開業するには、行政機関に通知する「届出」が必要です。開業届出書や設立届出書等を行政機関に提出すると整骨院を開業できます。届出は必要書類を提出するだけで開業できるため、手続きは「許可」や「認可」に比べると比較的簡単です。
整骨院の開業準備手順1:開設届の提出
接骨院を開業するには、管轄の保健所に開設届を提出することが必要です。ここでは、開設届に必要な各種書類や提出先などの概要について解説します。
目的
開設届とは、整骨院を開設したことを管轄の保健所に申告するための手続きです。開設届の届出が義務付けられているのは、構造設備基準における遵守状況を確認することに加え、その施術所に従事する柔道整復師を保健所に登録するためです。
整骨院を開設した者は、柔道整復師法第19条に基づいて、事業を開始した日から10日以内に厚生労働省令で定められている事項を所在地の都道府県知事に届け出なければいけません。開設届を出さずに運営を続けると、罰金が科される場合があります。
なお、開設時に届け出た事項に変更が生じた場合も同様の手続きが必要です。
必要書類
開設届の届出に必要なのは、以下のような書類です。
施術所開設届は施術所を管轄する保健所、登記簿謄本は管轄法務局の窓口で入手できます。
提出先
開設届は、医療機関の所在地を管轄する保健所に提出します。
保健所は地域住民の健康を支える機関で、都道府県や政令指定都市等に設置されています。管轄の保健所は、厚生労働省「保健所管轄区域案内」で検索すると効率的です。開設届に関する無料相談も受け付けているため、疑問や不明な点がある場合は相談してみましょう。
注意点
保健所に提出する施術所開設届は2部用意する必要があります。施術所開設届を提出したあと、受領委任届出を提出する際に施術所開設届の写しを提出しなければいけません。施術所開設届を提出したら、受領印が押印された控えを渡されるため大事に保管してください。
保健所に開設届を提出する際、必要書類や構造設備基準の不備で受取を拒否されて届出ができない場合があります。また、建築・内装図面の事前確認を義務付ける保健所も多いです。
整骨院の開業準備手順2:受領委任契約に関する届出
健康保険を取り扱うには、受領委任契約に関する届出を提出する必要があります。ここでは、受領委任契約の届出に関して確認していきましょう。
地方厚生局への届出
整骨院で健康保険を取り扱うには、管轄の地方厚生局に受領委任契約に関する届出が必要です。地方厚生局に届け出ると、社会保険や国民健康保険など保険制度における治療費の請求が可能です。
届出には、以下の書類を提出する必要があります。
- 施術所の申出書
- 同意書
- 確約書
- 施術管理者選任証明
- 施術所開設届・変更届の写し
- 柔道整復師の免許証の写し
- 研修修了証の写し
共済組合連盟への届出
国家公務員関係の保険者への保険請求を行うには、共済組合連盟への届出が必要です。共済組合連盟とは、国家公務員等の共済組合を組織化した法人のことです。
共済組合連盟の届出で「共済連盟承諾番号」が付与されると、保険診療における受領委任の取り扱いが可能となります。地方公務員関係の保険者に関しては、地方公務員共済組合協議会に申し出て「地方共済協議承諾番号」を取得することが必要です。
届出には、以下の書類を提出する必要があります。
- 柔道整復療養費の受領委任の取り扱いに関する申出書
- 遵守事項確約書
- 柔道整復師免許証の写し
- 返信用封筒
返信用封筒は、郵便番号・住所・氏名を記載し、切手を貼り付けましょう。
防衛省への届出
自衛官関係の保険者に治療費を請求するためには、防衛省に届け出て「防衛省番号」を取得することが必要です。防衛省への届出は義務ではありませんが、防衛省から治療の承諾を得ることで、保険診療の範囲を広げられるメリットがあります。
届出には、以下の書類を提出する必要があります。
- 申出書
- 確約書
- 柔道整復師免許証の写し
防衛省に提出する必要書類は、毎月20日までに提出することが必要です。届出が受理されると、防衛省から承諾書が送付されます。
労働基準局への届出
整骨院で労災保険の治療を行うには、所轄の労働基準局への届出が必要です。労働基準局に届け出ると、業務上の事故や疾病で受ける治療に対して保険の支払いが受けられます。労災の指定機関に承認されると、指定日から2年ごとに自動更新されます。
届出に必要な書類は整骨院の運営形態で異なりますが、基本的に以下の書類が必要です。
- 申出書
- 委任者選任届
- 確約書
- 指定機関登録報告書
- 施術所開設届の写し
- 柔道整復師免許証の写し
- 施術所の平面図
- 施術所付近の見取り図
整骨院の開業準備手順3:個人事業の開業届の提出
個人事業主として事業を始める際は、個人事業の開業届が必要です。ここでは、個人事業の開業届に必要な書類や提出先など概要を見ていきましょう。
目的
開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)とは、個人事業の開業を税務署に届け出る書類です。
税務署に正式に通知する手続きであり、個人事業主として事業を開業する場合は、所得税法に基づいて提出する義務があります。所得税法では事業開始から1ヶ月以内の提出が求められていますが、開業届の未提出者に対する罰則は設けられていません。
ただし、開業届を出すことで青色申告による確定申告ができます。青色申告の場合、最大65万円の青色申告特別控除を受けられるため、大きな節税効果が期待できます。青色申告特別控除を受けるには、必要書類を税務署に提出することが必要です。
必要書類
個人事業の開業届を提出する際は、個人事業の開業・廃業等届出書が必要です。
個人事業の開業・廃業等届出書は、国税庁サイトにある「個人事業の開業・廃業等届出書(PDFファイル)」からダウンロードして入力・印刷できます。なお、e-Taxから提出する場合は、本人確認書類の提示、または写しの添付は不要です。
提出先
開業届の提出先は、納税地を所轄する税務署です。
提出方法は、パソコンからe-Taxを利用してオンラインから提出可能です。ただし、初めてe-Taxを利用する場合は、利用者識別番号(16桁)を取得する必要があります。なお、書面で届出書を作成し、 直接持参、または郵送でも提出することも可能です。
注意点
開業届は、事業を開始してから1ヶ月以内に提出する必要があります。
提出期限を過ぎても罰則はありませんが、口座作成や資金調達を円滑に進めるためにも早めに提出しましょう。また、提出先である税務署の閉庁日は、土・日曜日・祝日です。提出期限が閉庁日にあたる場合は、その翌日が期限と判断されます。
整骨院の開業に資格は必要?
整骨院を開業するには、国家資格である柔道整復師免許を取得しなければいけません。
柔道整復師免許を取得するためには、文部科学省が指定する4年制大学を卒業、または都道府県知事が指定する専門養成施設に3年以上通う必要があります。大学や専門養成施設の卒業後に、柔道整復師試験に合格することで資格を取得できます。
整骨院を開業するだけであれば、柔道整復師免許の取得だけで問題ありません。ただし、健康保険を取り扱う場合は、施術所で発生する療養費の受領委任を管理する施術管理者になることが必要です。
施術管理者の要件を、次の段落で詳しく解説します。
施術管理者の要件
施術管理者になるには、「実務経験期間」と「施術管理者研修の受講」が必要です。
実務経験期間は、施術所での雇用契約期間のうち、施術管理者・柔道整復師として勤務した期間が実務経験とみなされます。実務経験期間が求められるのは、開業後の業務遂行能力を担保するためです。一定の事項をすべて満たせば、実務経験期間を証明する「実務経験期間証明書」が交付されます。
施術管理者研修は、施術管理者として適切な保険請求を行うために必要な知識を身につけるための研修です。厚生労働省から承認を得た公益財団法人・柔道整復研修試験財団によって開催されています。施術管理者になるには、16時間以上の受講が必要です。
整骨院の開業にかかる期間と費用の目安
整骨院を開業する際は、計画的に準備を進めないと開業の遅れや資金不足を招く恐れがあります。ここでは、整骨院の開業にかかる期間と費用の目安を解説するため、開業準備を進める際の参考にしましょう。
期間
整骨院を開業するには、開業予定日の1年半前から準備する必要があります。
整骨院開業までの主な流れは、以下のとおりです。
- 施術管理者の要件を確認する
- 事業計画・資金計画を立てる
- 開業地域・開業物件を選定する
- 外装・内装の改装工事を行う
- 医療機器・備品等を選定する
- 整骨院の開業申請を進める
- 人材採用・人材を育成する
- 宣伝活動で顧客を獲得する
まず取り組まなければいけないのが、施術管理者の要件確認です。施術管理者になるには、「実務経験期間」と「施術管理者研修の受講」が求められます。2024年4月以降に施術管理者の届出を出す場合、実務経験が通算3年以上必要です。
施術管理者研修も16時間以上の受講が必要なため、計画的に準備を進めましょう。
費用
整骨院の開業に必要な資金には、「初期投資」と「運転資金」があります。
初期投資とは、店舗資金や内外装資金など開業する際にかかる費用のことです。接骨院開業の初期投資には、500万 〜 1,000万円の費用がかかります。
費用の内訳は、以下のとおりです。
店舗資金 | 100万 ~ 150万円 |
---|---|
内外装資金 | 200万 ~ 500万円 |
機械・備品資金 | 150万 ~ 300万円 |
広告宣伝費 | 50万 ~ 100万円 |
柔道整復師の資格を取得する場合、300万 〜 500万円程度の学費が追加で必要です。
運転資金は、家賃や人件費など事業を継続するために必要な費用のことです。整骨院の運転資金には、月々50万 〜 80万円程度の費用がかかります。運転資金が不足すると整骨院を継続できない状況に陥るため、十分な資金を準備することが重要です。
整骨院の開業をスムーズに行うポイント
整骨院の開業には多くの費用や時間がかかります。計画的に準備を進めないと、開業の遅延や資金不足により事業継続が困難になる事態を招く可能性があります。
ここでは、整骨院の開業をスムーズに行うポイントについて確認していきましょう。
経営スキルを身につける
整骨院の開業を成功させるには、高い経営スキルが求められます。
整骨院である以上高い技術力を持つことは技術者の基本ですが、ビジネスとして成り立たせるには経営に関する知識やスキルの修得が必要不可欠です。開業までに、財務会計や人材管理、マーケティング戦略など多岐にわたる経営知識やスキルを身につけましょう。
開業後も常に新しい知見を取り入れ、経営者としての視野を広げることも大切です。
効果的な集客方法を学ぶ
整骨院の店舗運営を成功させるには、効果的な集客方法の知識習得が必須です。
集客方法には、チラシや看板、ホームページ作成、SNS発信等があります。とくに、インターネット集客は現代のマーケティングにおいて欠かせない手法です。デジタルマーケティングの手法を学び、効果的に実践することが求められます。
また、新規顧客を獲得したら既存顧客の離脱を減らすために、リピーターを増やす戦略を考えることも重要です。
開業時の初期投資を抑える
整骨院開業の初期投資には、500万〜1,000万円程度かかるといわれています。
初期投資を最小限に抑えられれば、運転資金を多く確保することが可能です。開業直後は新規顧客の獲得に注力を注ぐため、運転資金を多く確保できれば事業が軌道に乗るまで金銭的な余裕を持って店舗運営できます。
整骨院を開業するにあたってローンや融資を受ける際も、返済計画をしっかり立て、無理のない範囲で運営を続けることが大切です。
整骨院は許認可でなく届出制!開業は計画的に進めよう
整骨院を開業するには、開設届や開業届、受領委任契約に関する届出が必要です。
各種届出には必要書類が必要であるため、事前に確認して準備を進める必要があります。必要書類や構造設備基準に不備があると、受取を拒否される可能性もあります。手続きが二度手間になるだけでなく、開業の遅延にもつながるため開業準備は計画的に進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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