- 作成日 : 2025年10月24日
リフォームで節税するには?得する制度や注意点を解説
自宅のリフォームには、快適な暮らしや資産価値の向上といった利点に加え、税制面でも大きなメリットがあります。一定の条件を満たすことで、所得税や固定資産税の減税、さらには家族からの資金援助に対する贈与税の非課税制度など、複数の節税措置を活用することができます。
本記事では、リフォームによる節税策を解説します。
目次
リフォームすると税金は安くなる?
リフォームには住宅の快適性向上だけでなく、税制上の優遇措置を受けられるという大きなメリットがあります。国の定める改修工事(耐震・省エネ・バリアフリー等)に限り、所得税控除・固定資産税の減額・贈与税の非課税などが適用される可能性があります。ここでは主な減税制度を3つに分けて紹介します。
所得税が軽減されるリフォーム控除制度
自宅のリフォームにおいては、条件を満たせば所得税からの控除が可能です。ローンを利用した場合の「住宅ローン控除」、自己資金で行う省エネ・耐震・バリアフリー改修などへの「投資型減税」があります。工事費用や住宅の床面積、性能基準など所定の要件を満たす必要があり、確定申告によって控除を申請します。
固定資産税が一時的に減額されるケースがある
リフォーム工事が耐震性や省エネ性能、バリアフリー性の向上に資するものである場合、工事後の翌年度の固定資産税が1/2または1/3減額されます。対象となるのは、床面積120㎡までの部分で、工事費用や築年数などの条件を満たしていることが必要です。自治体への申請により減額が適用されます。
リフォーム資金の贈与が非課税になる特例を活用できる
親や祖父母からリフォーム資金の援助を受ける場合、「住宅取得等資金の贈与税非課税特例」が使えます。省エネ等住宅なら最大1,000万円、一般住宅でも最大500万円までが非課税となり、大きな節税効果があります。贈与と工事のタイミング、受贈者の年齢などの条件を満たす必要があり、申告によって適用されます。
リフォームで受けられる所得税の控除は?
自宅のリフォームにかかる費用は、要件を満たすことで所得税の控除対象になります。大きく分けて、住宅ローンを利用した場合の「住宅ローン減税」と、自己資金で特定の改修を行った際の「投資型減税(税額控除)」があり、それぞれ制度の内容や控除額、申請方法が異なります。ここでは両制度の特徴と要件について詳しく説明します。
ローンを使ったリフォームに適用される「住宅ローン減税」
住宅ローンを利用してリフォームを行った場合でも、所定の条件を満たせば「住宅借入金等特別控除(いわゆる住宅ローン控除)」を受けることができます。これは、新築や購入時と同様、年末時点のローン残高に一定割合(原則0.7%)を乗じた金額が所得税から控除される仕組みです。
リフォームへの適用には、以下のような条件があります。
- リフォーム内容が増改築、耐震改修、省エネ改修などであること
- 工事費用が100万円を超えること
- 工事後の住宅の床面積が50㎡以上であること
- 借入期間が10年以上のローンを利用していること
- 合計所得金額が2,000万円以下であること
控除期間は通常10年間ですが、リフォーム内容や住宅性能によっては13年間まで延長されるケースもあります。例えば、認定長期優良住宅やZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)など省エネ性能の高い住宅にリフォームした場合は、借入限度額の引き上げや控除期間の延長など、さらなる優遇措置も受けられます。
制度の適用を受けるには、工事完了後の住宅に実際に居住し、翌年の確定申告で住宅ローン控除の適用申請を行う必要があります。源泉徴収のみでは控除は反映されません。
参考:No.1212 一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
自己資金で行うリフォームでも使える「投資型減税」
ローンを使わずに自己資金でリフォームを行う場合でも、特定の改修工事に対しては「住宅特定改修工事特別税額控除」という投資型の所得税控除が利用可能です。この制度では、工事費用の一定割合(通常10%)が、直接所得税額から差し引かれます。
対象となる主なリフォーム工事と控除の概要は以下のとおりです。
- 省エネ改修
断熱材の追加や二重サッシ設置など。工事費用が60万円以上であることが必要。控除額は最大25万円。 - バリアフリー改修
手すりの設置、段差の解消、廊下の拡幅など。工事費用が50万円以上で、改修対象の住宅に高齢者または要介護者が居住していること。控除額は最大20万円。 - 耐震改修
1981年以前に建築された住宅を、現行の耐震基準に適合させる工事。費用の10%、最大25万円まで控除されます。
申請には、以下の書類が必要になります。
- 増改築等工事証明書(建築士など専門家が発行)
- 工事費用の領収書
- 改修後の住宅の図面
- 登記事項証明書など、居住の事実を証明する書類
この制度も年末調整では対応できず、必ず確定申告での手続きが必要です。工事内容や住宅の状況によっては、複数の控除制度を併用できる場合もあるため、リフォーム前に税理士や専門機関に確認しておくと安心です。
参考:No.1219 省エネ改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)|国税庁
No.1220 バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)|国税庁
リフォームで固定資産税を減額できるケースは?
住宅リフォームを行うと、所得税の控除だけでなく、固定資産税の一時的な減額も受けられる可能性があります。耐震、省エネ、バリアフリーといった性能向上を目的とした改修工事には、税制上の軽減措置が設けられており、所定の条件を満たすことで翌年度の固定資産税が軽減されます。ここでは、それぞれの工事別に減額内容と適用条件を解説します。
耐震改修による固定資産税の減額措置
旧耐震基準の住宅を対象に耐震改修を行うと、固定資産税が翌年度に限り半額になります。この制度は、1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された住宅を現行の耐震基準に適合させるための工事に適用されます。改修後には、耐震基準に適合していることを証明する書類(建築士等による証明書や検査済証)が必要となり、それをもとに自治体に減額申請を行います。
減額対象となるのは、住宅の床面積120㎡までの部分です。たとえば、床面積100㎡の戸建住宅で工事を実施した場合、その年の固定資産税額が仮に10万円だとすれば、翌年度は5万円に軽減されることになります。減額期間は1年間ですが、対象住宅の築年数や工事完了日によっては、地域によってさらに優遇措置が設けられている場合もあります。
この耐震改修による減税措置の適用期限は、2025年現在、2026年3月31日までに工事を完了していることが条件です。
省エネ・バリアフリー改修による減額措置
省エネやバリアフリーを目的とした住宅リフォームについても、固定資産税の減額措置が用意されています。こちらは耐震改修と異なり、固定資産税の1/3が翌年度に限り減額される制度です。対象となるのは、以下のような工事です。
- 二重サッシの設置(断熱性能向上)
- 壁や屋根への断熱材追加
- 高効率給湯器の導入
- 廊下の拡幅
- 段差の解消
- 手すりの設置
- トイレや浴室の改修
これらの工事については、一定額以上の費用がかかっていることが条件となります。省エネ改修の場合は60万円以上、バリアフリー改修では50万円以上が必要です。また、工事の対象となる住宅には、バリアフリー改修の場合、高齢者や要介護者等の居住が求められる場合があります。
この減額制度の対象となる床面積も、住宅部分の120㎡までに限定されています。仮に固定資産税が12万円であれば、4万円が軽減される計算になります。
なお、この省エネ・バリアフリー改修による減額措置も、2026年3月31日までに工事を完了していることが条件です。制度を利用するには、リフォーム工事完了後に市区町村の役所へ所定の申請書と必要書類を提出し、減額の承認を受ける必要があります。
リフォーム資金の贈与の非課税枠は?
家族からの援助で自宅のリフォームを検討している場合、「住宅取得等資金の贈与税非課税の特例」を活用することで、多額の資金を非課税で受け取ることが可能です。ここでは、制度の概要と活用条件を解説します。
最大1,000万円まで贈与税が非課税になる制度の仕組み
直系尊属(父母や祖父母など)から、自宅のリフォーム資金として贈与を受けた場合、要件を満たせば贈与税が非課税になります。これが「住宅取得等資金の贈与税非課税の特例」です。通常、贈与を受けた場合は贈与税の対象となりますが、この制度を使えば一定金額までは非課税とされます。
非課税となる金額は、リフォームする住宅の性能により異なります。2025年現在、次のような上限が設定されています。
- 省エネ等住宅(一定の省エネ・耐震性能を有する住宅):最大1,000万円
- その他の住宅:最大500万円
省エネ改修を伴う大規模リフォームにおいて、両親から800万円の資金援助を受けた場合、その全額が非課税となります。さらに、この制度とは別に毎年110万円の基礎控除も利用できるため、計画的に活用することで相続対策にもつながります。
この非課税特例は、過去に同じ制度を利用していないことが要件となる場合が多く、原則として複数回利用することはできません。適用可能かどうかは最新の制度を確認する必要があります。
適用を受けるための条件と注意点
この非課税特例を利用するには、いくつかの条件をすべて満たす必要があります。主な要件は以下のとおりです。
- 受贈者(贈与を受ける人)の年齢
贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上(※2022年以降の法改正により、従来の20歳以上から引き下げ)であること。 - 所得制限
贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下であること。 - リフォーム工事の内容
工事が国の定める基準に適合していること(省エネ、耐震、バリアフリーなど)。また、住宅の床面積が50㎡以上240㎡以下であること。 - 贈与と工事契約の時期
贈与を受ける年の1月1日から12月31日までに、リフォーム工事の契約・着手・引き渡しのいずれかが完了していること。 - 贈与者の範囲
贈与を行うのは、あくまで直系尊属(父母や祖父母など)に限られます。兄弟姉妹や他の親戚からの贈与は対象外です。 - 申告手続き
所得税の控除制度とは異なり、この贈与税非課税制度は税務署への「贈与税の申告」が必要です。たとえ非課税でも、申告をしなければ制度の適用は受けられません。
また、この非課税制度の適用期限にも注意が必要です。2025年時点では、令和7年(2025年)12月31日までに贈与が実行されていることが条件となっています。制度の延長があるかどうかはその年の税制改正次第であり、利用を検討している場合は、早めに計画を立てて贈与とリフォーム契約を進めることが推奨されます。
リフォームの税制優遇を活用して賢く節税しよう
自宅のリフォームに関連する節税制度は多岐にわたりますが、それぞれの要件を満たせば大きな税負担の軽減につながります。住宅ローン減税やリフォーム減税、固定資産税の減額措置、住宅資金贈与の非課税特例などを上手に活用して、賢く税金を節約しましょう。税制改正で多くの優遇措置が延長されているため、適用期限内に制度を利用することが大切です。正しい知識を身につけて、リフォームによる節税メリットを享受しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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