- 作成日 : 2025年10月24日
マッチング拠出で節税できる?制度の仕組みや活用法を解説【2025年版】
老後資金の準備を効率的に進めたいと考える会社員にとって、「マッチング拠出」は注目すべき制度のひとつです。企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している従業員が、自らの掛金を上乗せできる仕組みであり、所得控除や運用益の非課税といった節税効果も大きな魅力です。
本記事では、マッチング拠出の基本から最新の法改正までを解説します。
目次
マッチング拠出とは?
マッチング拠出は、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している従業員が、会社の掛金に加えて自らの資金を追加拠出できる制度です。
自分で老後資金を上乗せできる制度
マッチング拠出は、企業型DCの掛金に対して、加入者である従業員が自分のお金を追加で拠出できる仕組みです。企業が用意する年金制度だけでは将来に不安を感じる従業員が、自発的に資金を積み増すことを目的としています。追加した掛金は企業型DC口座内で運用され、60歳以降に年金または一時金として受け取ることができます。所得控除や運用益の非課税など、税制上の優遇も受けられるため、老後資産の準備と節税を両立する制度といえます。
2025年12月施行の改正で拠出条件が緩和
2025年12月の制度改正により、従業員の拠出額が会社拠出額を上回ってはならないというルールが撤廃される方針で、施行は2026年4月1日を予定しています。これにより、会社が月1万円しか掛金を出していなくても、従業員が自ら月5万円以上を追加で拠出することが可能になります。また、企業型DCの拠出限度額も引き上げられ、他の企業年金がない場合は月6万2,000円、、他制度がある場合はその掛金相当額を差し引いた残り枠の範囲で拠出できます。これにより、マッチング拠出の活用範囲が大きく広がります。
利用の可否は企業ごとに異なる
マッチング拠出は企業型DCに付随する任意制度であり、全ての企業で導入されているわけではありません。自社で制度が導入されているかは、就業規則や福利厚生の案内、人事部門への問い合わせで確認する必要があります。導入していない企業の場合は、代替手段としてiDeCo(個人型確定拠出年金)の利用が検討されますが、マッチング拠出を行っている従業員はiDeCoとの併用ができないため、どちらを選ぶかは制度の有無や個人の状況に応じた判断が求められます。
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マッチング拠出で節税できるのはなぜ?
マッチング拠出は、老後資産を積み立てながら税負担も軽減できる優遇制度です。
掛金が全額所得控除の対象となる
マッチング拠出で拠出する従業員の掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象となります。たとえば、毎月1万円、年間12万円を拠出した場合、その金額分だけ課税所得が減額され、税負担が軽くなります。
仮に課税所得が300万円で所得税率10%、住民税率10%とすると、12万円の所得控除により年間約2万4,000円の節税効果があります。所得税は当年、住民税は翌年の税額に反映されます。
拠出限度額の引き上げにより、控除可能な金額がさらに大きくなるケースもあります。
運用益に税金がかからない
マッチング拠出で積み立てた資産は、企業型DC口座内で各自が選んだ投資信託や定期預金などで運用されます。この運用によって得られる利息・配当・値上がり益などはすべて非課税です。
通常の証券口座では、利益に対して約20.315%の税金(所得税+住民税+復興特別所得税)がかかりますが、確定拠出年金制度内での運用益はこの課税がありません。
長期運用であればあるほど非課税効果は大きく、同じ利回りでも課税口座より手元に残る資産額が大きくなります。この「運用益非課税」は、NISAと並ぶ大きな税制優遇です。
受け取り時にも控除が適用される
積み立てた年金資産は、原則60歳以降に受け取ることができ、一時金または年金形式での受け取りが可能です。どちらの方法でも、税制上の優遇措置が適用されます。
一時金で受け取る場合は「退職所得控除」が使えます。勤続年数が長い場合には、算式上2,000万円超の退職所得控除となることもあり課税対象額が大幅に抑えられます。勤続20年超の場合、退職所得控除額は800万円+(勤続年数−20年)×70万円となり、多くの人が実質非課税で受け取れます。
一方、年金として分割で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、年齢や年金額に応じて一定額までが非課税となります。65歳以上なら、年金収入のうち最低でも110万円が非課税となるため、こちらも有効な節税手段です。
2025年の税制改正でマッチング拠出はどう変わる?
2025年度の税制・法制度の改正によって、マッチング拠出の制度には見直しが加えられます。主な変更は2026年4月以降に段階的に適用される予定です。制度内容を先取りして理解し、自分の拠出戦略に役立てましょう。
「会社拠出額以下」という制限が撤廃される
現行制度では、マッチング拠出において従業員が拠出できる金額は「会社の拠出額まで」という上限がありました。たとえば、会社が月1万円を拠出している場合、従業員も同額の1万円までしか上乗せできず、合計2万円までに限られていました。
この制限が、2026年4月1日施行予定の法改正により撤廃されます。以降は、会社の掛金額に関係なく、従業員が自身で拠出できる金額は、制度上の拠出限度額の範囲内で自由に設定できるようになります。
たとえば会社の拠出が1万円でも、本人が5万円まで上乗せして、合計6万円以上を拠出することも可能になります。これにより、会社の制度設計に左右されず、自助努力で老後資金を積み立てやすくなる制度に変わります。
企業型DCの拠出限度額が月6.2万円に引き上げ
改正では、企業型DCの拠出限度額(月額)も現行の5万5,000円から6万2,000円へ引き上げられる予定です。この変更も2026年度に実施される見通しで、上限が7,000円拡大されることで、より多くの金額を税制優遇の枠内で積み立てられるようになります。
ただし、他の企業年金制度(確定給付年金等)を併用している企業では、その掛金相当額を差し引いた残額がDCの拠出枠として設定されるため、実際にマッチング拠出で拠出できる金額は勤務先によって異なります。
この上限引き上げにより、拠出額の増加と同時に所得控除額も増え、結果として節税効果が拡大するため、多くの加入者にとってメリットの大きい変更といえます。
iDeCoの制度変更と併用関係
今回の制度改正にあわせて、iDeCo(個人型確定拠出年金)についても加入可能年齢の上限が65歳未満から70歳未満に引き上げられる予定です。これにより、長く働く人にとっては、老後資金形成の期間が延びるという恩恵があります。
ただし、企業型DCでマッチング拠出を行っている従業員は、原則としてiDeCoを同時に利用できない点はこれまでと同様です。勤務先の企業年金制度によって、マッチング拠出とiDeCoのどちらを活用するかは慎重に検討する必要があります。
マッチング拠出を始めるには?
マッチング拠出を始めるには、自社で制度が導入されているかどうかの確認から始まり、掛金の設定・手続き・拠出開始まで段階的に進めていく必要があります。以下のステップごとに取り組むことで、スムーズに制度を利用開始できます。
ステップ1:自社でマッチング拠出が導入されているか確認する
最初に行うべきは、自身の勤務先がマッチング拠出制度を採用しているかどうかの確認です。企業型確定拠出年金(DC)を導入していても、マッチング拠出がオプションとして追加されていない場合があります。
確認方法としては、就業規則や福利厚生ガイド、企業年金制度のパンフレットなどを参照するほか、人事・総務担当者に「企業型DCでマッチング拠出は利用できますか?」と直接確認するのが確実です。
ステップ2:案内資料や申込書を受け取る
利用可能な企業であれば、マッチング拠出の案内資料や加入申込書が配布されます。会社や運営管理機関からの通知・メール・社内ポータルなどで周知されることが多く、見落としのないように確認しておきましょう。
資料には、掛金の設定方法、申込期限、必要書類の提出先など、実施に必要な情報がまとめられています。不明点がある場合は、案内資料に記載の問い合わせ窓口に確認することをおすすめします。
ステップ3:掛金額を決めて申請する
毎月いくら拠出するかを1,000円単位で決定し、申請書を提出します。掛金は会社拠出分との合計で、拠出限度額(月額最大6万2,000円、2026年施行予定)を超えない範囲で設定します。
掛金は一度決めた後も、年1回程度の見直し期間に変更が可能です。収入やライフイベントに応じて柔軟に調整できる点も活用しましょう。
ステップ4:給与天引きで拠出が開始される
申請手続きが完了すると、翌月または翌々月から給与天引きによる掛金の拠出が開始されます。拠出金は自動的に企業型DC口座へと振り込まれ、従業員自身が選んだ運用商品で積み立てが始まります。
運用商品の選択は、会社が提示するラインナップから選ぶ形式となります。制度や投資知識に不安がある場合は、運営管理機関やファイナンシャルプランナーのサポートを受けるのも一つの方法です。
マッチング拠出とiDeCoはどちらがお得?
マッチング拠出とiDeCoはどちらも老後資金を税制優遇のもとで積み立てられる制度ですが、企業型DC加入者は両者を原則併用できません。以下に主要な比較ポイントを整理します。
マッチング拠出とiDeCoは併用できない
企業型DCに加入している場合、マッチング拠出を行っている人はiDeCoには加入できません。どちらを利用するかは勤務先の制度設計によって事実上決まります。自社にマッチング拠出制度があれば原則それを使い、なければiDeCoが選択肢となります。
拠出額の上限と節税効果の違い
マッチング拠出は企業型DC内での制度であり、会社拠出分とあわせて上限月額6万2,000円(2026年4月1日改正予定)まで積み立て可能です。一方、iDeCoの上限は会社員で企業年金がある場合は月額1万2,000円~2万円程度に制限されています。
2025年の改正により、マッチング拠出における「会社拠出額を超えてはならない」制限が撤廃され、会社の拠出が少なくても加入者が上限いっぱいまで掛金を拠出できるようになります。結果、節税できる金額の幅もマッチング拠出の方が大きくなる傾向です。
手数料やコストの違い
手数料面では、マッチング拠出の方が有利です。企業型DCでは、運営管理手数料などの費用は通常会社が負担します。一方iDeCoでは、加入者自身が口座管理料(例:月額171円〜)や初期手数料(2,829円)を負担する必要があります。金額は小さいものの、長期で考えると差は出てきます。
運用商品や使い勝手の違い
iDeCoは自分で金融機関を選び、幅広い投資信託などから商品を選べるため、自由度は高いです。マッチング拠出は会社が選定したラインナップの中から選ぶため、投資の選択肢はやや限定されます。
一方で、給与天引きで自動的に積み立てられるマッチング拠出は運用が手軽です。iDeCoは自分で拠出額を設定・管理する必要があり、やや手間がかかる面があります。また、iDeCoは転職後も継続できる点がメリットですが、企業型DCは退職時に資産移換が必要です。
参考:iDeCo公式サイト
自社制度を理解し、マッチング拠出を上手に活用しよう
マッチング拠出は、企業型DCを活用しながら老後資金を自ら積み立てるための有力な手段です。制度の制限も緩和され、より多くの掛金を自由に拠出できるようになります。税制上の優遇も充実しており、掛金の全額所得控除や運用益の非課税、退職時の控除など、節税効果も高いのが特徴です。自社で制度が導入されているかを確認し、iDeCoとの違いを理解したうえで、将来に向けた資産形成の一歩として上手に取り入れていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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