• 作成日 : 2025年10月24日

ヘリコプター購入で節税できるって本当?仕組み・条件・リスクを解説

ヘリコプターを購入することで節税ができるという一見意外なスキームが、近年一部の高所得者や経営者の間で注目されています。

本記事では、ヘリコプターを事業用資産として活用することにより得られる減価償却の節税効果を中心に、仕組みや向いている人の特徴、メリットとリスクなどを解説します。

ヘリコプターの購入で節税できる理由は?

ヘリコプター購入による節税の基本は、減価償却を活用することです。減価償却によって、購入したヘリコプターの価値を長期間にわたり経費として計上でき、その分課税所得を減少させることで税負担を軽減します。この手法により、企業や個人事業主が節税効果を得る仕組みについて解説します。

減価償却を利用して税負担を軽減

ヘリコプター購入による節税は、主に減価償却費の計上を通じて実現します。減価償却は、資産の購入費用を数年間に分けて経費として計上できる制度であり、ヘリコプターのような高額資産に対しても適用されます。たとえば、5億円で購入したヘリコプターを5年で定額償却する場合、初年度から1億円を経費として計上できます。この経費計上により、課税所得が圧縮され、その分法人税や所得税の支払い額を減少させることができます。

ヘリコプターの耐用年数と償却方法

ヘリコプターの減価償却は、航空機としての耐用年数に基づきます。ヘリコプターの法定耐用年数は原則5年です。この期間にわたって、ヘリコプターの購入額を年ごとに分けて経費として計上します。耐用年数に応じた償却方法は、原則、定率法が適用され、毎年率に応じた減価償却費を計上します。初年度から大きな減価償却額を計上できるため、早期に税負担を軽減することが可能です。

参考:別表第1 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表|東京都主税局

即時償却や加速償却によるさらに大きな節税効果

特定の条件を満たす場合、ヘリコプターの減価償却には即時償却や加速償却の特例が適用されることがあります。中小企業向けとしては、中小企業経営強化税制などの要件を満たす場合に対象設備に限り即時償却等が選択可能です。

これにより、初年度に全額を経費として計上することができ、その年の利益を大幅に圧縮することが可能です。即時償却を利用することで、高い税率が適用される高所得者や企業にとって、短期間で大きな節税効果が得られる点が魅力となります。

ヘリコプターの購入による節税がおすすめな人とは?

ヘリコプターの購入を通じた節税は、誰にでも適した手法ではありません。多額の資金が必要であると同時に、事業との整合性や税務的な正当性が求められるため、導入に向いているのはごく一部の限られた層です。ここでは、ヘリコプター節税が適していると考えられる人物像を解説します。

高所得かつ課税所得の圧縮を図りたい個人・法人

最も適しているのは、年間所得や利益が高く、通常の節税対策では効果が薄い個人事業主や中小企業オーナーです。所得税や法人税の実効税率が高い層にとっては、高額資産の減価償却によって一気に損金算入できる点が大きな魅力となります。利益が集中している年にヘリコプターを導入することで、節税インパクトが最大化される可能性があります。

実際に航空機を事業で活用できる業種・事業者

ヘリコプター節税が認められるには、形式だけでなく実態として事業に必要であることが求められます。そのため、観光業、救急・医療搬送、山間部輸送、空撮・映像制作、農業散布など、航空機を業務上活用できる業種に従事している方は導入に向いています。これらの業種であれば、節税目的だけではなく「業務用設備」としての購入が正当化しやすく、税務リスクを抑えることができます。

十分な資金力と長期的な維持管理が可能な方

ヘリコプターの導入には、数億円規模の初期費用に加え、年間数千万円の維持コストが継続的にかかります。そのため、一時的な節税を目的に無理な投資を行うと、キャッシュフローを悪化させる危険性があります。潤沢な自己資金があり、長期にわたって安定した収益を上げている経営者や資産家であれば、このような高コスト資産を維持する体力があるといえるでしょう。

ヘリコプターの購入・保有による節税のメリットは?

ヘリコプターの購入や保有を通じて得られる節税効果には、減税にとどまらない複数のメリットがあります。高額資産であるヘリコプターの減価償却による税負担軽減に加えて、実際の事業活用や企業イメージ向上など、財務面・事業面双方の利点が考えられます。以下に代表的なメリットを解説します。

減価償却による節税インパクト

ヘリコプター節税の最大の利点は、前述のとおり減価償却を通じて課税所得を圧縮できる点にあります。ヘリコプターは数億円単位の高額資産であるため、その減価償却費も多額になります。たとえば5億円のヘリコプターを5年間で定額償却すれば、毎年1億円を経費として計上可能です。これにより、所得税や法人税の課税対象となる利益を大幅に減らすことができます。

利益が大きく出た年に導入すれば、累進課税制度のもとで適用税率が高くなる高所得層にとっては、節税効果が大きくなります。税額が数千万円単位で減少することもあり、キャッシュフローの改善にもつながる可能性があります。

ヘリコプターの事業活用による収益化

ヘリコプターは単なる節税手段ではなく、事業運営に活用することも可能です。地方間移動や山間部アクセスが必要な業種においては、役員やスタッフの移動手段として導入することで、業務効率化につながることがあります。

また、ヘリコプターの稼働時間に余裕がある場合には、他社へのチャーター提供やレンタル運用を行うことで、副収入の獲得も見込めます。航空運送事業や航空機リース事業として登録すれば、事業としての正当性も担保しやすくなり、節税と収益化の両立を図れるという実務的なメリットが生まれます。

ステータスとブランディング効果の副次的メリット

ヘリコプターを所有・運航すること自体が、企業や個人にとって象徴的な資産となる側面も見逃せません。とくに富裕層や上場企業オーナーなどでは、ヘリコプターの保有が社会的なステータスや信頼性を高める要素として機能することがあります。

社名やブランドロゴを機体に掲出した上で使用すれば、広告媒体としての活用も可能であり、ビジネスのブランディング効果も期待できます。これは金銭的な節税効果とは異なる「企業価値の向上」としての側面であり、間接的ながら経済的効果につながるケースもあります。

ヘリコプターの購入・保有による節税のデメリットは?

ヘリコプター購入による節税には一定の効果が期待できる一方で、その背後には高いリスクと経済的な負担が存在します。維持費の大きさや資金繰り、税務調査における否認リスクなど、慎重に検討すべき要素が多くあります。以下に代表的なリスクを整理して解説します。

維持費用が高額になる

ヘリコプターは購入費用だけでなく、維持管理費もに高額です。燃料代、定期整備費、格納庫の保管料、保険料、さらに操縦士や整備士の人件費などが年間を通じて発生します。仮に減価償却で節税できたとしても、それ以上の維持費が発生すれば利益を圧迫し、結果として財務上の損失につながる可能性もあります。

資金繰りへの影響が大きい

ヘリコプターの取得には数億円という巨額の資金が必要です。ローンで購入すれば利息負担が加わり、手元資金を用いれば運転資金を圧迫します。減価償却で経費計上できるのは会計上の処理であり、実際の現金支出は購入時点で発生します。節税効果ばかりに目を向けて安易に導入すれば、キャッシュフローの悪化や資金ショートのリスクを高めることになりかねません。

売却時の課税で節税効果が相殺される可能性

減価償却を進めたヘリコプターを数年後に売却した場合、帳簿価額との差額が譲渡益となり、課税対象になります。帳簿上は価値が下がっていても、中古市場では高く売れるケースもあり、その差額に多額の課税が発生する恐れがあります。結果として、初期に得られた節税効果が後年に「回収」される形となり、実質的には税の繰延べに過ぎなかったということになりかねません。

税務調査による否認リスクがある

ヘリコプターを事業用として購入したと主張していても、その必要性が薄かったり、業務と関係のない使用実態がある場合、税務署から経費算入を否認される可能性があります。事業規模や内容に照らして不相応な資産購入と判断された場合、詳細な説明を求められ、合理性を欠くと判断されれば、過年度に遡って修正申告や追徴課税が課されることになります。重加算税の対象になるケースもあり、リスクは高いと言えます。

ヘリコプターの購入・保有による節税を検討する際の注意点は?

ヘリコプターを活用した節税には一定の効果が期待できる一方で、導入にあたっては高額な資金、税務上のリスク、制度変更への対応など多くの注意点があります。ここでは、導入前に押さえておくべき要点を解説します。

節税目的だけでの購入はリスクが高い

まず確認すべきは、ヘリコプターが本当に事業上必要な資産かどうかという点です。業務と直接関係のない導入であれば、減価償却の損金算入が税務上否認される可能性があります。節税を目的に高額資産を購入したとみなされれば、追徴課税や重加算税のリスクもあるため、事業との関連性が明確であることが重要です。

投資額と維持費、キャッシュフローを冷静に見積もる

ヘリコプターは購入時点で数億円の資金が必要な上、燃料代、整備費、保険料、保管料などの維持費も年間数千万円に達することがあります。たとえ節税効果があったとしても、資金繰りに余裕がなければ財務負担が重くなります。収益化できる事業計画があるか、維持費をカバーできる運用が可能か、現実的に判断する必要があります。

専門家との相談でリスクを最小化する

高額資産を用いた節税には、税法や会計の専門的知識が不可欠です。税理士や会計士に事前にシミュレーションを依頼し、税負担の軽減効果、将来の譲渡時課税、制度改正の可能性などを総合的に確認しましょう。場合によっては、他のより確実で持続的な節税策が提案されることもあります。

節税効果を最大化するには正確な理解と慎重な判断を

ヘリコプターの購入による節税は、高額資産の減価償却を活用できる強力な手法です。しかし、その効果を正しく得るためには、節税目的だけではなく、実際の事業利用や財務計画と整合していることが重要です。導入には数億円規模の資金と年間の維持費が必要であり、税務否認や制度変更といったリスクも無視できません。節税インパクトだけに目を奪われるのではなく、専門家と連携し、事業性・資金力・将来性を見据えたうえで、導入の是非を慎重に判断しましょう。


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