- 作成日 : 2025年9月9日
会社設立の相談は税理士にすべき?費用相場やメリット・デメリットなどを解説
会社設立を思い立ったとき、「何から手をつければいいのか」「誰に相談すればよいのか」と悩む方は少なくありません。特に、税務や資金面での不安は大きいものです。
この記事では、会社設立にあたって税理士へ相談するメリットや最適なタイミング、気になる費用相場、そして専門家の選び方まで詳しく解説します。
目次
会社設立の相談は税理士にすべき?
会社設立の手続き自体は自分で行うこともできますが、税理士に相談することで、設立後の資金繰りや節税対策まで見据えた最適なスタートを切ることが可能です。専門的な知見を活用し、将来の事業成長の土台を固めるために、税理士への相談はとても有効な選択肢です。
会社設立は、単に書類を提出して終わりではありません。事業計画、資金調達、節税対策、社会保険など、考えるべき専門分野が多岐にわたります。特に税務は、設立時の届出一つで将来の納税額が大きく変わる可能性があるため、最初の段階で専門家のアドバイスを受けることが非常に重要になります。
税理士は税務のプロとして、以下のような視点から会社設立を支援します。
これらの判断を誤ると、不要な税金を支払うことになったり、融資審査で不利になったりするリスクがあります。
会社設立の相談は税理士以外にもできる?
会社設立に関わる専門家は税理士だけではありません。司法書士や行政書士、社会保険労務士(社労士)も関連業務を担いますが、それぞれ専門分野が異なります。
| 専門家 | 主な役割 | 得意な相談内容 |
|---|---|---|
| 税理士 | 税務全般、資金調達、経営相談 | 節税対策、融資相談、事業計画書の作成、設立後の顧問契約 |
| 司法書士 | 登記申請の代理 | 会社設立登記(法務局への申請)の代行、定款の法的チェック |
| 行政書士 | 官公署への提出書類作成 | 定款作成、許認可(建設業、飲食業など)の申請代行 |
| 社会保険労務士 | 労務、社会保険 | 従業員の雇用、社会保険・労働保険の加入手続き、助成金申請 |
このように、登記申請は司法書士の独占業務ですが、税務代理や税務書類の作成は税理士の独占業務です。設立後の経営を円滑に進めるためには、税務と財務の視点を持つ税理士が中心となり、必要に応じて他の専門家と連携するのが最もスムーズな形と言えるでしょう。
会社設立を税理士に相談するメリットは?
会社設立の準備段階から税理士に相談することで、時間的・金銭的に多くのメリットを受けられます。
最適な節税対策を提案してもらえる
税理士は、設立時から実行できる節税の仕組みを提案してくれます。例えば、決算期の決め方、役員報酬の設定、経費にできるものの範囲など、税法の知識がなければ見逃してしまう点を的確にアドバイスしてくれます。これにより、設立初年度から無駄な税金の支払いを防ぐことが可能です。
資金調達(融資)の成功率が高まる
創業期には、日本政策金融公庫などからの融資を検討するケースが多くあります。税理士は、金融機関が重視する点を熟知しており、説得力のある事業計画書の作成を手伝ってくれます。専門家が関与しているという信頼性も、融資審査において有利に働くことがあります。
本業に集中できる
会社設立には、定款作成、登記書類準備、税務署への届出など、煩雑で時間のかかる手続きが多数存在します。これらを専門家である税理士に任せることで、経営者は事業の立ち上げという最も重要な業務に集中できます。
設立後の経営もスムーズに軌道に乗る
多くの税理士は、会社設立手続きの代行だけでなく、その後の顧問契約も視野に入れています。設立当初から事業内容を深く理解してくれているため、記帳代行や決算申告、経営分析といった設立後のサポートもスムーズに移行できます。
有益な人脈や情報を提供してもらえる
税理士は、弁護士や司法書士、金融機関の担当者など、幅広いネットワークを持っています。自社の課題に応じて、最適な専門家や取引先を紹介してもらえる可能性があり、事業の成長を加速させるきっかけになります。
会社設立を税理士に相談するデメリットは?
一方で、税理士に依頼する際にはデメリットも存在します。
費用がかかる
当然ながら、専門家に依頼すれば費用が発生します。自分で手続きを行えば法定費用のみで済みますが、税理士(税理士自身は定款等の作成はできないため、傘下や提携先に司法書士や行政書士がいることを前提とする。以下、同じ)に依頼すると代行手数料が加わります。ただし、電子定款を利用すれば収入印紙代の4万円が不要になるため、自身で紙の定款を作成するより、結果的に費用を抑えられるケースも少なくありません。最近では、顧問契約を前提に設立手数料を無料にする会計事務所も増えています。
税理士との相性が合わない可能性がある
税理士は設立後も長く付き合うパートナーになります。専門知識はもちろんのこと、コミュニケーションの取りやすさや事業への理解度など、相性もとても重要です。もし相性が悪いと、相談しづらかったり、満足のいくアドバイスが得られなかったりする可能性があります。
会社設立の相談はどのタイミングで行うのがベスト?
税理士への相談は、早ければ早いほど多くのメリットを得られます。具体的には、個人事業主からの法人成り(法人化)を検討し始めた段階や、ビジネスプランを練っている段階で相談するのが理想的です。
なぜなら、設立の根本に関わる資本金の額、事業年度、役員構成といった項目は、一度登記してしまうと変更に手間と費用がかかるためです。構想段階で相談すれば、税務的・財務的に最も有利な形で会社を設計できます。
| 相談タイミング | 主な相談内容 |
|---|---|
| 事業構想段階 |
|
| 設立準備中 |
|
| 設立直後 |
|
すでに設立準備を進めている場合でも、登記申請前であれば間に合うことも多いため、できるだけ早い段階で一度相談してみることをお勧めします。
会社設立の相談で税理士に支払う費用相場は?
税理士に支払う費用は、相談料、設立手続き代行手数料、顧問料の3つに大別されます。
| 費用の種類 | 内容 | 費用相場 |
|---|---|---|
| スポット相談料 | 1回ごとの相談費用 | 1時間 5,000円~20,000円 |
| 設立手続き代行手数料 | 定款作成から登記後の届出までの一連の手続きを依頼する費用 | 50,000円~150,000円 |
| 顧問料 | 設立後の税務・会計に関する継続的なサポート費用 | 月額 10,000円~50,000円(企業の売上規模や訪問頻度による) |
会社設立の無料相談で税理士を活用するポイントは?
初回無料相談は、その税理士が自社にとって最適なパートナーかを見極める絶好の機会です。時間を無駄にしないために、事前に準備をして臨みましょう。
- 事業内容を簡潔に説明できるようにしておく
- 現状の課題や不安な点をリストアップしておく
- 会社の基本情報(商号、本店所在地、事業目的など)を仮で決めておく
- 料金体系について
- 会社設立のサポート費用は総額でいくらですか?
- 顧問契約が前提ですか?その場合の顧問料はいくらですか?
- 顧問料には何が含まれ、何がオプション(別途料金)ですか?
- サービス内容と専門性について
- 会社設立の実績は豊富ですか?
- 資金調達(創業融資)のサポート実績はありますか?
- 会計ソフトは何に対応していますか?
- 設立後のサポート体制はどのようになっていますか?
- コミュニケーションについて
- 主な連絡手段は何ですか?
- 担当者は誰になりますか?
- 質問へのレスポンスはどのくらいの速さでいただけますか?
会社設立の相談に強い税理士の選び方は?
長期的なパートナーとなる税理士選びは、会社の将来を左右する重要な決断です。以下の5つのポイントを総合的に判断しましょう。
1. 会社設立と創業支援の実績が豊富か
税理士にも得意分野があります。相続に強い税理士、医療法人に特化した税理士など様々です。ウェブサイトなどで、会社設立や創業融資のサポート実績が豊富かどうかを確認しましょう。
2. 自社の業界・業種に詳しいか
業界特有の会計処理や税務上の慣行があります。自社のビジネスモデルを深く理解し、的確なアドバイスをくれる税理士を選ぶことが重要です。
3. 料金体系が明確でわかりやすいか
「何にいくらかかるのか」が明確に提示されている事務所を選びましょう。後から追加料金を請求されるといったトラブルを避けるためにも、契約前に見積書の内容をしっかり確認することが大切です。
4. コミュニケーションが取りやすく、相性が良いか
専門用語を多用せず、わかりやすい言葉で説明してくれるか。質問しやすい雰囲気か。経営者のビジョンに共感し、親身に相談に乗ってくれるか。無料相談などを通じて、人柄や相性を見極めましょう。
5. ITツールやクラウド会計への対応力があるか
近年、クラウド会計ソフトの導入は業務効率化に不可欠です。新しいITツールにも柔軟に対応できる税理士であれば、バックオフィス業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)もスムーズに進められます。
税理士への相談で、会社設立への第一歩を踏み出そう
この記事では、会社設立にあたって税理士へ相談することの重要性について、多角的に解説しました。
税理士は、単なる手続きの代行者ではなく、事業を成功に導くための重要なパートナーです。適切な税理士をパートナーに選ぶことで、節税や資金調達で有利になるだけでなく、経営者は本業に集中し、事業をより速く成長軌道に乗せることが可能になります。
まずは複数の会計事務所の無料相談を活用し、自社に最適なパートナーを見つけることから始めてみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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