• 更新日 : 2025年9月3日

会社設立の費用相場はいくら?株式会社と合同会社の違いを徹底比較

会社設立にかかる費用の相場は、株式会社で約20万円〜22万円、合同会社で約6万円〜10万円が目安です。これはご自身で手続きを進めた場合の最低限の法定費用であり、電子定款を利用するか、専門家に依頼するかどうか、また資本金をいくらにするかで総額は大きく変動します。

この記事では、会社形態ごとの詳しい費用内訳、自分で設立する場合と専門家に依頼する場合の比較、費用を安く抑えるコツまで、わかりやすく解説します。

会社設立の費用相場は会社形態で大きく変わる

会社を設立する際にかかる費用は、株式会社と合同会社のどちらを選ぶかによって大きく異なります。まずは、それぞれの形態でどのくらいの費用がかかるのか、具体的な相場をみていきましょう。

株式会社の設立費用は約20万円から

株式会社を設立する場合、ご自身ですべての手続きを行うと、最低でも約20万円の法定費用がかかります。これは、定款の認証手数料や法務局での登記に必要な登録免許税などを合計した金額です。

後述する電子定款を利用すれば、定款に貼る収入印紙代の4万円が不要になり、費用を約18万円まで抑えることもできます。

これに加えて資本金や、必要であれば専門家への依頼費用も準備することになります。

合同会社の設立費用は約6万円から

合同会社を設立する場合、ご自身で手続きを行うと、最低で約6万円の法定費用がかかります。合同会社は株式会社と異なり、定款の認証が不要なため、その分の手数料がかかりません。

株式会社と同様に、電子定款を利用すれば収入印紙代の4万円が不要になるため、法定費用は登録免許税の6万円のみで設立が可能です。

設立時のコストを大幅に抑えられる点が、合同会社の大きな魅力といえるでしょう。

【比較表】株式会社と合同会社の法定費用一覧

株式会社と合同会社の設立にかかる法定費用を比較すると、とくに、定款認証の有無と登録免許税の金額が大きな違いとなります。

費用の種類株式会社合同会社備考
収入印紙代40,000円40,000円電子定款の場合は0円
定款認証手数料30,000円~50,000円0円資本金の額により変動
定款の謄本手数料約2,000円(1枚250円。おおむね8枚)0円認証が不要なため0円
登録免許税150,000円
(または資本金額の0.7%、高い方)
60,000円
(または資本金額の0.7%、高い方)
会社設立登記に必要
紙の定款の合計約222,000円~約100,000円~
電子定款の合計約182,000円~約60,000円~

※2025年7月時点の情報です。
※株式会社の定款認証手数料は、資本金100万円未満で3万円、100万円以上300万円未満で4万円、300万円以上で5万円と定められています。なお、要件を満たす場合には1.5万円に軽減されることもあります(2024年改正)。

出典:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁
出典:会社の定款手数料の改定|日本公証人連合会

会社設立の費用相場の詳しい内訳

会社設立の費用は、主に「法定費用」「資本金」「専門家への依頼費用」の3つで構成されます。とくに法定費用は、会社を登記するために必ず支払う必要のあるお金です。どのような費用が、なぜ必要なのかを正しく理解しておきましょう。

必ずかかる法定費用

法定費用は、国や公証役場に支払う手数料であり、誰が手続きをしても同じ金額がかかります。 主な法定費用は以下のとおりです。

  • 登録免許税
    法務局で会社設立の登記を行う際にかかる税金です。株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円が必要です。資本金の額によっては、これより高くなることもあります。
  • 定款の認証手数料
    株式会社の設立で必要な手続きです。作成した会社のルールブックである「定款」が、法的に正しいものであることを公証役場で証明してもらうために支払います。合同会社の場合はこの認証手続きが不要です。
  • 収入印紙代
    紙の定款を作成した場合に、印紙税法にもとづき必要となる費用です。4万円の収入印紙を定款に貼り付けます。後述する電子定款で作成すれば、この費用はかかりません。

資本金はいくら準備するべき?1円でもよい?

法律上、資本金は1円からでも会社を設立できます。「1円で会社設立ができる」という言葉を目にすることもありますが、これはあくまで法律上の最低額です。

資本金は、会社の体力や信用度を示す指標の一つであり、設立当初の運転資金としても機能します。資本金が極端に少ないと、金融機関からの融資審査で不利になったり、取引先から信用を得にくかったりする可能性があります。

事業を始めてから売上が安定するまでの3ヶ月~半年程度の運転資金(オフィスの家賃、人件費、仕入れ費など)を目安に、ある程度の金額を準備しておくのが現実的でしょう。

行政書士などの専門家へ依頼する場合の報酬

会社設立の手続きは複雑で、多くの書類作成が必要です。これらの手続きを司法書士や行政書士、税理士などの専門家に依頼することもできます。

専門家に依頼する場合、法定費用とは別に5万円~15万円程度の報酬がかかるのが一般的です。ただし、専門家によっては電子定款に対応しているため、ご自身で紙の定款で設立するよりも総額が安くなるケースもあります。

また、設立後の顧問契約とセットにすることで、設立手数料を割り引いたり無料にしたりする専門家も少なくありません。時間と手間を節約し、正確な手続きをしたい場合には有効な選択肢となります。

会社設立の費用相場より安く抑える3つの方法

会社設立にかかる初期コストは、できるだけ抑えたいと考える方が多いのではないでしょうか。やり方次第では、法定費用の一部を節約したり、専門家への依頼費用を実質無料にしたりすることもできます。ここでは、設立費用を安く抑えるための具体的な方法を3つ紹介します。

自分で設立手続きを行う

専門家に依頼せず、すべての手続きを自分で行うことで、当然ながら専門家への報酬はかかりません。これが「株式会社 設立費用 自分で」や「合同会社 設立費用 自分で」といった方法です。

法務局のWebサイトには、書類のひな形や記載例が用意されています。時間をかけて調べながら進めれば、ご自身での手続きも不可能ではありません。ただし、書類の不備で何度も法務局へ足を運ぶことになったり、本来の事業準備にかける時間が削られたりするデメリットも考慮しておく必要があります。

電子定款を利用して印紙代4万円を節約する

最も効果的な節約方法は、電子定款を利用することです。PDF化した定款に電子署名を行う電子定款は、印紙税法上の「課税文書」にあたらないため、紙定款で必要な4万円の収入印紙代が不要になります。

これは株式会社、合同会社のどちらでも使える方法です。ただし、ご自身で電子定款を作成するには、ICカードリーダライタや電子署名のためのソフトウェア(Adobe Acrobatなど)を準備する必要があり、数万円の初期投資がかかることもあります。

多くの専門家は電子定款に対応しているため、専門家への依頼を検討する価値は十分にあるでしょう。

会社設立支援サービスを活用する

近年では、会計ソフト会社や金融機関が提供する会社設立支援サービスが増えています。

これらのサービスを利用すると、画面の案内に従って情報を入力するだけで、必要な書類を簡単に作成できます。サービスによっては、提携する司法書士への依頼費用が無料になったり、電子定款の作成を代行してくれたりするものもあります。

手間と費用の両方を削減できる可能性があり、とくに初めて会社を設立する方にとっては心強い味方になるのではないでしょうか。

費用だけで決めない株式会社と合同会社の選び方

設立費用が安いという理由だけで合同会社を選ぶと、将来的に事業拡大を目指す際に不都合が生じるケースもあります。費用だけでなく、それぞれの会社形態が持つメリット・デメリットをふまえて、ご自身の事業計画に合った形態を選ぶことが大切です。

社会的信用力と資金調達のしやすさ

一般的に、株式会社の方が合同会社よりも社会的信用力は高いとされています。これは、株式会社の設立には厳格な手続きが求められ、情報開示の義務(決算公告)があるためです。

そのため、大企業との取引や金融機関からの融資、外部からの出資を考えている場合は、株式会社の方が有利に働く傾向があります。将来的に上場(IPO)を目指すのであれば、株式会社で設立することが必要です。

設立後のランニングコストの違い

会社は設立して終わりではなく、運営していくためのランニングコストがかかります。この点でも、株式会社と合同会社には違いがあります。

  • 役員の任期
    株式会社の役員(取締役)には任期があり、最長でも10年です。任期満了のたびに役員変更の登記が必要で、その際に登録免許税(1万円または3万円)がかかります。
    一方、合同会社の社員には任期がないため、この登記費用は原則として発生しません。
  • 決算公告の義務
    株式会社は、毎年の決算を官報や新聞、Webサイトなどで公開する「決算公告」が義務付けられています。官報に掲載する場合、最低でも約6万円の費用がかかります。
    合同会社にはこの決算公告の義務がありません。こうした「合同会社 ランニングコスト」の低さも、合同会社が選ばれる理由の一つです。

意思決定の柔軟性とスピード

会社の重要な方針を決める際のルールも異なります。株式会社では、出資額に応じた議決権を持つ株主が「株主総会」で意思決定を行います。

一方、合同会社は原則として出資者である「社員」全員の同意によって意思決定を行います。出資額に関係なく、1人1票の権利を持つのが基本です。そのため、小規模で運営する場合には迅速な意思決定ができますが、社員同士で意見が対立すると経営が停滞してしまうリスクもはらんでいます。

会社設立の費用を準備する際の注意点

設立費用そのものだけでなく、設立前後の「見えないコスト」や、設立後の「運転資金」まで見据えて資金計画を立てることが、事業をスムーズに軌道に乗せるためのポイントです。費用を準備する段階で、とくに注意しておきたい点について解説します。

設立費用は経費(創立費・開業費)として計上できる

会社設立にかかった費用は、会計上「創立費」や「開業費」という勘定科目で経費として計上できます。創立費は定款作成費用や設立登記の登録免許税など、設立のためにかかった費用です。開業費は、設立から営業開始までにかかった広告宣伝費や名刺作成代などを指します。

これらは繰延資産として計上し、任意のタイミングで償却(費用化)できます。赤字のうちは償却せず、利益が出た年度に償却することで、法人税の負担を軽減する効果が期待できます。領収書は必ず保管しておきましょう。

設立費用以外に必要な運転資金も忘れずに

会社を設立しても、すぐに売上が立つとは限りません。売上が入金されるまでの間、会社の経営を支えるのが「運転資金」です。

法定費用や資本金の準備に目が行きがちですが、事業が軌道に乗るまでの数ヶ月分の経費(オフィスの賃料、水道光熱費通信費、人件費、仕入れ代金など)を自己資金として用意しておくことが、安定した経営の土台となります。日本政策金融公庫の調査では、創業時の自己資金の平均額は300万円前後というデータもあり、一つの目安になるでしょう。

出典:2024年度新規開業実態調査10P|日本政策金融公庫

自治体の補助金・助成金も調べてみる

国や地方自治体は、新たなビジネスを応援するための補助金や助成金制度を数多く用意しています。これらの制度をうまく活用できれば、設立費用や初期の運転資金の負担を軽くすることが可能です。

たとえば、特定の地域で創業する場合や、ITなどの特定分野で起業する場合に利用できる制度があります。返済不要の補助金もあれば、低金利で融資を受けられる制度もあります。中小企業庁が運営する支援ポータルサイト「J-Net21」や、本店を置く予定の市区町村のWebサイトなどで、利用できる制度がないか調べてみることをおすすめします。

会社設立の費用相場を理解し事業に合った準備を進める

会社設立には、株式会社で約18万円~、合同会社で約6万円~の費用がかかります。この費用の内訳は、定款の印紙代や認証手数料、登記のための登録免許税といった法定費用が中心です。

株式会社は社会的信用度が高い一方、設立費用やランニングコストは合同会社に比べて高くなる傾向にあります。合同会社は、費用を抑えてスピーディーに法人格を得たい場合に適しています。

ご自身の事業規模や将来の展望、かけられる予算を総合的に判断し、最適な会社形態を選び、計画的に準備を進めていきましょう。


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