- 更新日 : 2021年12月30日
個人事業主が法人化をするベストタイミングは?4つのポイントを解説!
個人事業主として順調に事業が成長し、事業規模が大きくなってくると、法人化を検討し始めるもの。しかし、どのタイミングで法人化すればいいのか、悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、個人事業主が法人化をするタイミングについて4つのポイントから解説していきます。
売上、利益の観点
個人事業主には所得税が課せられます。所得税の税率は5%~45%で、稼げば稼ぐほど税率が高くなっていく仕組みです。一方、普通法人の法人税の税率は、利益が800万円以下は15%、それ以上は23.2%です。これに地方税まで考慮すると法人の税率は36%くらいになります。
つまり、個人事業主として利益を伸ばしていき、ある一定の利益を超えると、法人化した方が税金を抑えることができます。
所得税の税率は900万円を超えると33%となるので、個人事業主としての利益が800万円~900万円くらいになったなら、そのタイミングが、法人化を検討するベストなタイミングと言えるでしょう。
所得税の速算表
参考:所得税の税率(国税庁)
参考:法人税の税率
消費税の観点
売上が1000万円を超えると、その2年後から消費税課税事業者となり消費税を納めなければなりません。これは、個人事業主でも法人でも同じです。この制度を利用して、法人化することにより消費税の納税を先に延ばすことができます。
つまり、個人事業主として事業を始め、年間の売上高が1000万円を超えた場合、本来ならその2年後から消費税の納税義務が発生します。しかし、1000万円を超えたその翌年に法人化することにより、さらに最低2年は消費税の納税が免除されることになります。
もちろん、消費税の納税を免れるためだけに法人化する方はいないと思われますが、節税方法として知っておいて損はないはずです。
社会保険加入の観点
健康保険や厚生年金などの社会保険について個人事業の場合、特定の業種で5名以上雇用している場合を除いて加入義務はありません。一方、法人化すると雇用している人数に関わらず、強制加入になります。
社会保険は、個人事業主が加入する国民健康保険や国民年金よりも手厚い補償となっているため、法人化によって社会保険に加入することはメリットのひとつとして挙げられます。
しかし、従業員分の社会保険料も法人で負担する必要があるため、法人化によって人件費の負担が重くなるというデメリットも生じます。人件費が多くかかる業種の場合は、社会保険の金額的負担も大きくなり、資金面にも大きく影響するのでこの点には注意が必要です。
社会的信用が得られる
一般的に、個人よりも法人の方が信用力は高いと言えます。中には取引先を法人に限定している企業もあるほどです。法人化することで取引先も確保しやすく、活動の幅も広がるのは確かでしょう。
また、金融機関から借入を行う場合にも、個人では審査が厳しく、多くの場合で保証人が求められます。法人化することで信用力が増し、金融機関からの融資や投資家からの出資など、資金調達面でも有利となります。
また採用面においても、個人事業では信用力などの観点から人材が集まりにくいもの。法人化した方が優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。
法人化のメリット・デメリット
個人事業から法人化することで、会計処理や事務処理などの業務が多くなったり、社会保険料の負担が増えたりするなど、業務の面や費用の面で個人事業よりも負担が増える点は否めません。
しかし、規模が大きくなればなるほど、法人化することによる節税メリットは大きく、さらに事業を拡大していくなら、法人化して社会的信用度を高めることも大切です。
個人で事業をしているのであれば、いつ法人化するかを考えながら事業を進めてみてはいかがでしょう。
関連記事
個人事業主が法人化(法人成り)するメリット・デメリットまとめ
よくある質問
売上・利益の観点から、法人化するベストタイミングは?
個人事業主としての利益が800万円~900万円くらいになったら、法人化を検討するベストなタイミングと言えるでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
消費税の観点から、法人化するベストタイミングは?
売上が1000万円を超えた翌年に法人化すれば最低2年は消費税の納税が免除されるため、節税方法として損はないはずです。詳しくはこちらをご覧ください。
社会保険加入の注意点とは?
健康保険や厚生年金などの社会保険について、法人化すると雇用している人数に関わらず強制加入になるので注意が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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