• 更新日 : 2025年10月30日

個人事業主・フリーランスの事業計画書の書き方は?無料テンプレートをもとに記入例や作成方法を解説

個人事業主・フリーランスとして開業する場合、事業計画書を作成することで事業内容が明確になり、融資や補助金の審査通過率を高めるなどのメリットが期待できます。

この記事では、個人事業主・フリーランス向けに、事業計画書に盛り込むべき項目から融資審査を通過するためのポイントまで、無料テンプレートや具体的な記入例を交えて解説します。

目次

個人事業主・フリーランスも事業計画書の作成が必要?

個人事業主やフリーランスとして開業するだけであれば、事業計画書の作成は必須ではありません。しかし事業計画書は、金融機関からの融資や補助金・助成金の申請時に必要なだけでなく、自身の事業アイデアを客観的に見つめ直し、事業の方向性を明確にするための重要なツールとなります。

特に、以下のようなケースでは事業計画書の作成が重要です。

  • 融資を受けたい場合
    日本政策金融公庫や民間の銀行から事業資金を借り入れる際、事業の将来性や返済能力を客観的に証明するための資料として、事業計画書の提出が必要です。事業計画の具体性や実現可能性は融資判断において重要な要素です。
  • 補助金・助成金を申請する場合
    国や地方自治体が提供する補助金や助成金を活用する際にも、事業計画書の提出を求められることがあります。事業の社会的意義や地域経済への貢献度、計画の実現可能性をアピールする上で重要な書類となります。
  • 事業の構想を具体化して関係者と共有する場合
    頭の中にあるビジネスアイデアを言語化・数値化することで、事業の全体像が明確になります。共同経営者や従業員、取引先といった関係者と事業のビジョンを共有し、協力を得るための共通言語としても機能します。

参考:事業計画書はなぜ必要か|起業マニュアル|J-Net21 [中小企業ビジネス支援サイト]

個人事業主・フリーランスが事業計画書を作成するメリットは?

個人事業主・フリーランスが事業計画書を作成することで、多くのメリットをもたらします。

事業の方向性が明確になる

主観的な視点だけでなく、市場や競合という客観的な視点を取り入れることで、事業の立ち位置が明確になります。事業の強み・弱み、機会・脅威(SWOT分析)を把握することで、事業を成功させるための具体的な戦略が立てられ、日々の業務で判断に迷った際の指針となります。

資金調達や補助金申請で有利になる

金融機関の融資担当者は、「この事業に将来性はあるか」「貸したお金をきちんと返済できるか」を厳しく審査します。情熱だけでなく、客観的なデータに基づいた市場分析や、根拠のある収支計画が示された事業計画書は、相手を納得させるための強力な武器となります。これは、補助金の審査においても同様です。

周囲からの信頼と協力を得やすくなる

事業計画書は、あなたのビジネスを他者に説明するための書類です。家族に事業内容を説明して理解を得たり、スキルを持つ友人に協力を仰いだりする際にも、安心感と信頼感を与え、スムーズな交渉につながります。

個人事業主・フリーランスの事業計画書の書き方・記入例

事業計画書 フリーランス|作成例+テンプレート

事業計画書には決まった形式はありませんが、説得力を持たせるためには、以下の項目を盛り込むのが一般的です。

  1. 創業の動機・目的
  2. 経営者の職歴・事業実績
  3. 取扱商品・サービス
  4. 取引先・取引関係
  5. 従業員
  6. 借入の状況
  7. 必要な資金と調達方法
  8. 事業の見通し

ここでは、各項目の書き方とポイントを記入例と共に解説します。

1. 創業の動機・目的

創業の動機・目的には、なぜこの事業を始めようと思ったのか、事業を通じて何を成し遂げたいのかを記載します。自身の経験から感じた課題意識や、その事業を通じて社会や顧客にどのような価値を提供したいのか、一貫性のあるストーリーとして説明することで、共感と信頼を得ることができます。

記入例

大手カフェチェーンに5年間勤務する中で、効率化された接客ではお客様一人ひとりと向き合う時間に限りがあることにもどかしさを感じていました。一方で、リモートワークの普及により、地域住民が自宅や職場の近くで気軽に立ち寄れ、心から安らげる「第三の場所(サードプレイス)」への需要が高まっていると実感しています。自身のバリスタとしての経験を活かし、高品質なコーヒーはもちろん、人と人とが自然につながる温かい空間を提供することで、地域コミュニティの活性化に貢献したいと考え、創業を決意いたしました。

2. 経営者の職歴・事業実績

経営者の職歴・事業実績には、事業に関連する職務経歴や保有資格を具体的に示し、事業を成功させる能力と経験があることをアピールします。

事業主自身の経験やスキルは、事業の実現性を裏付ける重要な項目です。過去の職務経歴、役職、具体的な業務内容、そこで得たスキルや実績を書き出します。関連する資格や受賞歴などもあれば記入しましょう。

記入例
  • 株式会社〇〇(大手カフェチェーン)にて5年間勤務。うち3年間は店長として、店舗運営全般(売上管理、スタッフ採用・育成、在庫管理、販促企画)を経験。
  • 担当店舗の売上を2年連続で前年比120%達成
  • 保有資格:コーヒーマイスター、食品衛生責任者、防火管理者

3. 取扱商品・サービス

取扱商品・サービスには、提供する商品やサービスの内容、特徴、強み(セールスポイント)を記載します。競合と比較した際の優位性(価格、品質、独自性など)を具体的に示し、その商品・サービスが顧客のどのようなニーズを満たすのかを分かりやすく記入しましょう。

記入例

項目内容
取扱商品・サービス
  • 自家焙煎スペシャルティコーヒー(常時5種類)
  • 地元の食材を使った手作りケーキ
  • モーニングセット、ランチプレート
セールスポイント
  • 世界各地から厳選した高品質な生豆を店内で自家焙煎。鮮度の高いコーヒーを提供。
  • 地元の〇〇農園の卵と牛乳を使用した、濃厚な味わいのチーズケーキが看板商品。
  • Wi-Fi、電源を全席に完備し、リモートワークにも対応。
販売ターゲット
  • 30代〜50代のコーヒー愛好家
  • 近隣で働くビジネスパーソン、リモートワーカー
  • 地域に住む主婦層

4. 取引先・取引関係

取引先・取引関係では、どのような顧客を想定しているのか、どのように商品を提供するのかを記載します。

販売先がすでに確保できている場合は、その企業名や取引内容を記載することで、計画の実現性が高いと評価されます。仕入先についても、複数の候補を挙げるなど、安定供給に向けた準備ができていることを示しましょう。

記入例

取引先の種別取引先名所在地取引内容
販売先一般個人東京都〇〇区店頭での飲食提供およびコーヒー豆の販売
仕入先〇〇コーヒービーンズ東京都〇〇区コーヒー生豆の仕入れ
仕入先〇〇農園東京都〇〇区野菜、卵、牛乳の仕入れ
外注先〇〇税理士事務所東京都〇〇区経理・記帳代行

5. 従業員

従業員には、従業員の数やその内訳を記載します。個人事業主・フリーランスの場合、役員欄の記載は不要です。

個人事業主として一人で始める場合でも、将来的に従業員を雇用する可能性がある場合はその計画を記載します。家族が事業を手伝う場合は「家族従業員」として記載します。

記入例
  • 常勤役員の人数:0人
  • 従業員数:2人(うち家族従業員0人、パート・アルバイト2人)
  • 人員計画:開業時は平日・週末それぞれ1名ずつのパートタイマーを雇用。開業後1年を目処に、売上状況に応じて正社員を1名採用予定。

6. 借入の状況

借入の状況には、住宅ローン・マイカーローン・教育ローン・カードローンなど、事業以外の借入も記載します。借入の種類や借入残高、年間返済額などを記載しましょう。

ノンバンクでのキャッシングの借入がある場合も、必ず正直に申告することが求められます。返済余力がある場合には、事前に繰上返済を行うことで返済比率を改善でき、審査に有利に働くことがあります。

記入例

借入先使用目的借入残高年間返済額
〇〇銀行住宅ローン1,500万円84万円
株式会社〇〇自動車ローン50万円24万円

7. 必要な資金と調達方法

必要な資金と調達方法には、開業から事業が軌道に乗るまでに必要となる資金の内訳と、その調達方法を明確に示します。特に自己資金の割合は融資審査において重視されるため、計画的に準備してきた経緯を説明できるようにしておきましょう。

必要な資金の例
  • 設備資金:店舗内外装工事費、厨房機器・焙煎機購入費など
  • 運転資金:商品仕入費、広告宣伝費、その他諸経費など
調達方法の例
  • 自己資金:事業のために貯めてきた資金
  • 借入金:日本政策金融公庫、制度融資、親族からの借入など

8. 事業の見通し

事業の見通しには、開業当初と事業が軌道に乗った後の、具体的な売上・経費・利益の見込みを数値で示します。

売上高の根拠(客単価×客数×回転率×営業日数など)を明確にし、希望的観測ではなく客観的データに基づいていることを示すことが重要です。さらに、経費を差し引いた利益から融資金の返済が十分可能であることを数値で示すことで、計画の信頼性を高めることができます。

売上高の算出根拠の例
  • 平日:客単価1,000円 × 20席 × 回転率1.5 × 22日 = 660,000円
  • 土日祝:客単価1,200円 × 20席 × 回転率2.0 × 8日 = 384,000円
  • 月間売上高 合計:1,044,000円
勘定科目開業当初(月平均)軌道に乗った後(1年後目安)
売上高1,044,000円1,350,000円
売上原価(仕入高)313,000円405,000円
売上総利益731,000円945,000円
経費
人件費250,000円350,000円
家賃150,000円150,000円
水道光熱費50,000円60,000円
広告宣伝費30,000円30,000円
支払利息20,000円20,000円
その他80,000円100,000円
(経費合計)580,000円710,000円
営業利益151,000円235,000円

個人事業主・フリーランス向けの事業計画書テンプレート【無料ダウンロード】

事業計画書を作成する際には、さまざまな項目を盛り込まなければなりません。そこで、事業計画書のテンプレートやひな形を活用すると便利です。

マネーフォワード クラウド会社設立では、フリーランス向け事業計画書のひな形、テンプレートをご用意しております。

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その他の事業計画書

無料登録後のページにある「会社設立ナビ」にて、飲食店向け事業計画書を含む、40種類以上の事業計画書をダウンロードしていただきますので、ぜひお気軽にご利用ください。

個人事業主・フリーランスの融資審査で見られるポイント

融資審査で金融機関の担当者が特に注目するチェック項目は共通しています。これらの視点を理解し、それぞれに説得力のある内容を事業計画書に盛り込むことが、審査通過のポイントとなります。

事業の実現性

事業によって実際に収益を生み出せるかが最も重要視されます。売上予測や収支計画の数字に無理がなく、その算出根拠が明確に示されているか、事業の成長性や継続性があるかが厳しくチェックされます。

開業動機と創業者の経験の関連

「なぜこの事業をやりたいのか」という情熱と、それを裏付ける過去の職歴や経験が一貫しているかが問われます。関連性の高い経験は、事業計画の実現可能性を大きく高める要素と見なされます。

自己資金の比率

事業のためにどれだけの自己資金を準備したかは、事業への本気度を示す重要な指標です。一般的に、開業資金総額の3分の1程度を自己資金で用意することが望ましいとされています。自己資金と融資金のバランスが、堅実な資金計画の証となります。

取引先や販売戦略の具体性

「誰に売るのか(販売先)」「どこから仕入れるのか(仕入先)」をできるだけ具体的に記載することで、事業計画の信頼性は大きく高まります。既に契約や取引の打診がある場合や、明確な見込み客が存在する場合は、その旨を明記することで、事業が机上の空論ではないことを証明できます。

個人事業主・フリーランスが説得力のある事業計画書を作成するポイント

個人事業主・フリーランスが説得力のある事業計画書を作成するには、以下のポイントを意識することが重要です。

5W2Hで事業内容を具体化する

事業計画を立てる際は、5W2Hのフレームワークで情報を整理すると、具体的な内容になります。

  • Why(なぜ・動機):なぜその事業を始めるのか
  • What(何を):どの商品・サービスを提供するか、そのニーズはあるのか
  • Who(だれ):ターゲットとなる層は誰か、安定した仕入先はあるか
  • How(どのように):どのように商品・サービスを提供するか
  • Where(どこで):どの市場・地域で展開するか
  • When(いつ):開業のタイミングは適切か
  • How much(いくらで):価格設定や必要資金・コストはどの程度か

根拠のある客観的な数値を用いる

事業計画書に記載する数値の説得力は、その根拠となるデータの信頼性によって決まります。

データの参照元の例
  • 公的機関の統計データ
    国や自治体が公開する信頼性の高いデータです。地域の人口や市場規模を調べる際に役立ちます。
    例:e-Stat(政府統計の総合窓口)中小企業庁(中小企業白書)
  • 業界団体の調査レポート
    各業界の団体が、市場のトレンドや消費動向に関するレポートを公開している場合があります。「〇〇(業界名) 協会」などで検索してみましょう。
  • 類似モデルとなる競合店の調査
    自分の事業と似ているお店を実際に見に行き、価格帯、客層、混雑具合などを調査します。
  • 見積書
    内装工事や設備導入にかかる費用は、業者から正式な見積書を取り寄せます。これにより、必要な資金を正確に算出できます。

専門用語を避け、平易な言葉で説明する

融資担当者や審査員が必ずしも業界の専門家とは限らないため、専門用語や業界特有の常識を多用せず、誰が読んでも理解できるように、平易な言葉で説明することが大切です。必要な場合は補足説明を加え、事業内容や計画の意図が明確に伝わるよう心がけましょう。

事業のリスクと対策を明記する

どのような事業にもリスクは存在するため、事業計画は現実的かつ客観的に策定することが重要です。「売上が想定通りに伸びなかった場合」「仕入価格が高騰した場合」など、想定されるリスクを事前に洗い出し、それに対する具体的な対応策を併記することで、リスク管理能力の高さを示し、計画の信頼性を高めることができます。

個人事業主・フリーランスも事業計画書を作成しよう

個人事業主・フリーランスで新たに事業を始める際、事業計画書の作成は必須ではありません。しかし、金融機関から資金を調達する際に提出が求められる点や、開業する事業を客観的に分析できることを考慮し、作成しておくのがおすすめです。

事業計画書には、創業の動機・目的、取扱商品・サービス、事業の見通しなどを盛り込みます。ひな形やフォーマットを活用し、さっそく事業計画書を作成してみましょう。


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