- 作成日 : 2022年9月22日
資本金を1億円以下に減資するメリットとは?中小企業の優遇税制について解説!
資本金を1億円以下に減資することで中小企業として扱われ、税制上のメリットを得られることがあります。例えば、繰越欠損金を控除扱いできる、所得に軽減税率が適用される、800万円以下の交際費を損金算入できる、法人事業税の外形標準課税が対象外になるなどの優遇措置を受けられます。
1億円以下に減資することで法人税などがどの程度節税できるのか、また、そもそも中小企業とは何なのか、さらに減資することで、どのような税務上の特例を受けられるのかまとめました。中小企業の優遇税制が対象外になる会社についても解説するので、ぜひご覧ください。
目次
そもそも資本金とは?
資本金とは、事業者が準備した運転資金や設備投資資金のことです。2006年に会社法が改正され、資本金1円でも会社を設立できるようになりました。資金がなくても開業できるようになったのはメリットですが、資本金が少なすぎると会社の信用力が低いと判断され、融資を受けにくくなることもあります。
資本金についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。適切な資本金の決め方や払込方法についても解説しています。
資本金1億円以下の企業 = 中小企業
資本金1億円以下の企業は中小企業(中小法人)に分類されます。ただし、資本金が1億円以下であっても、資本金1億円超の大企業の子会社である場合は、中小企業向けの特例措置を受けられません。
ただし、中小企業に向けた政策に関しては、以下の中小企業基本法の基準で対象(中小企業)かどうかを決定します。
業種 | 中小企業基本法による基準 |
---|---|
製造業、その他 | 資本金額もしくは出資総額が3億円以下。もしくは常時使用する従業員が300人以下の法人か個人 |
卸売業 | 資本金額もしくは出資総額が1億円以下。もしくは常時使用する従業員が100人以下の法人か個人 |
小売業 | 資本金額もしくは出資総額が5,000万円以下。もしくは常時使用する従業員が50人以下の法人か個人 |
サービス業 | 資本金額もしくは出資総額が5,000万円以下。もしくは常時使用する従業員が100人以下の法人か個人 |
関連する法律によっても中小企業の基準が異なるので注意が必要です。中小企業基本法の観点では上記のように決まりますが、法人税の観点では資本金1億円以下を超えているかで中小企業かどうかが決まります。
中小企業は税務上の優遇措置を受けられる
法人税の軽減税率が適用されるのは、資本金1億円以下の中小企業です。このように中小企業と区分されることで、さまざまな優遇措置を受けられます。詳しくは次章で紹介します。
資本金を1億円以下に減資するメリットとは?
会社設立後に資本金は増やす、もしくは減らすことが可能です。資本金が1億円以下になるように減資すると、法人税の観点では中小企業となり、税務上優遇されます。
ただし、大法人や相互会社などの100%子会社であるときや投資法人、特定目的会社などは、資本金が1億円以下であっても中小企業とはみなされず、税務上の優遇措置は適用されません。中小企業になることができるのか確認してから減資するようにしましょう。
資本金を1億円以下に減資し、中小企業に分類されるようになったときは、次のメリットを受けられます。
- 軽減税率の適用
- 繰越欠損金の控除
- 欠損金の繰戻還付
- 800万円以下の接待交際費を全額損金算入
- 外形標準課税は対象外
- 中小企業経営強化税制の適用
- 少額減価償却資産の特例
- 同族会社に対して留保金課税が適用されない
それぞれのメリットについて解説します。
軽減税率の適用
法人税の税率は23.2%です。しかし、中小企業の場合は、800万円以下の所得に対しては軽減税率(19%)が適用され、800万円超の部分にのみ23.2%の税率が適用されます。
なお、2023年3月31日までに開始する事業年度に関しては、軽減税率が15%とさらに低くなります。常に最新の情報を入手し、正しく法人税を納税しましょう。
繰越欠損金の控除
赤字が出たときは、最大10年間、繰越欠損金として翌事業年度に繰り越して控除できます。翌事業年度以降が黒字でも、繰越欠損金を活用することで課税所得を減らせるので、法人税の節税につながります。
ただし、繰越欠損金の控除を利用できるのは青色申告書で申告している場合のみです。節税のためにも、青色申告の手続きをしておきましょう。
欠損金の繰戻還付
赤字が出た次の年度が黒字とは限りません。いつまでも経営が軌道に乗らない場合は、繰越欠損金の控除を活用できないこともあるでしょう。
欠損金が生じた場合、翌事業年度以降に繰り越すのではなく、欠損金が生じた事業年度開始の日の前1年以内に開始した事業年度の所得金額に繰り戻し、既に納めた法人税から、欠損金の分だけ還付を受けることもできます。
ただし、この繰戻還付が適用されるためには、青色申告の手続きをしている場合のみです。また、欠損金が生じた前年度も青色申告で確定申告をしている必要があります。中小企業ならではの優遇税制の適用を受けるためにも、青色申告の手続きをしておきましょう。
800万円以下の接待交際費を全額損金算入
中小企業は、800万円までの交際費等を全額損金算入できます。もしくは接待飲食費の50%を損金算入することもできます。両方は利用できないので、より節税できる方法を選択しましょう。
外形標準課税は対象外
外形標準課税とは、公共サービスの利用に対する負担を公平に分担するという考えに基づいて課税される税金です。法人事業税を納付する必要のない赤字の法人であっても、外形標準課税の対象法人(資本金を1億円超)であれば課税されます。しかし、外形標準課税は資本金1億円以下の企業に対しては適用されないので納税義務はありません。
中小企業経営強化税制の適用
一定の設備を取得した場合に、即時償却もしくは取得価額の10%(資本金3000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除を選択することができます。また、即時償却を選択した場合、限度額まで償却費を計上しないときには、償却不足額を翌事業年度に繰り越すことが可能です。
少額減価償却資産の特例
取得価額が30万円未満の減価償却資産を2024年3月31日までの間に取得した場合、年間合計300万円までに限り、即時に全額経費として計上できる「少額減価償却資産の特例」を利用できます。課税所得が多い年度などは、この特例を利用して所得を調整することが可能です。
同族会社に対して留保金課税が適用されない
留保金に対して課税される「留保金課税」は、資本金1億円超の特定同族会社のみに対して適用されます。資本金1億円以下の中小企業に対しては適用されないので、税額を抑えることができます。
なお、特定同族会社とは、1つの株主グループだけで会社の発行済株式の50%超を保有している同族会社のことです。資本金1億円超であっても特定同族会社でない場合も、留保金課税は適用されません。
資本金を1,000万円未満に減資するメリットとは?
資本金を1,000万円未満にすることで、上記に加えて次の優遇税制が適用されます。
それぞれのメリットについて解説します。
法人住民税の均等割が低くなる
法人住民税の均等割額は、自治体によって異なります。自治体によっては資本金1,000万円以下の企業に対して均等割の税額を低く設定していることがあります。
課税売上高が1,000万円以下の場合は消費税が免税になる
資本金が1,000万円未満でなおかつ課税売上高が1,000万円以下の場合、消費税の納税義務が免除されます。ただし、個人事業主は前年の1月1日から6月30日までの課税売上高が1,000万円を超えると、法人は前事業年度の開始日から6カ月間の課税売上高が1,000万円を超えると、その時点から課税事業者となる点に注意しましょう。
税務上の優遇を考慮して資本金を設定しましょう
資本金を1億円以下に減資することで、法人税法による中小企業となり、税務上の優遇制度が適用されることがあります。資本金を設定するときは、優遇制度についても考慮してみましょう。
よくある質問
資本金とは?
事業者が準備した運転資金や設備投資資金のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
資本金を1億円以下にするメリットは?
800万円以下の所得に対して軽減税率が適用されるようになります。また、欠損金の繰越還付を受けられるようになる、800万円以下の接待交際費を全額損金算入できるなどのメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
資本金を1,000万円以下にするメリットは?
法人住民税の法人税割が適用される、また、法人住民税の均等割額が少なくなるなどのメリットがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
資本金の関連記事
新着記事
創業融資を成功させる役員報酬の決め方は?金額や審査のポイント、届出の流れも解説
創業融資の審査において、役員報酬の設定は非常に重要な要素です。単に経営者の生活費を決めるというだけでなく、融資の可否、借入可能額、さらには設立後のキャッシュフロー、税負担、そして経営者自身の生活設計にまで影響を及ぼします。 本記事では、創業…
詳しくみる役員変更の法人登記ガイド|必要書類・役員変更登記申請書のテンプレート・費用も解説
会社の運営において、役員の変更は事業の成長や組織体制の変化に伴い、避けて通れない事象の一つです。そして、役員に変更があった場合、法務局への法人登記申請が法律で義務付けられています。この手続きを怠ると、過料の制裁を受ける可能性があるだけでなく…
詳しくみる創業融資の返済期間は何年がベスト?日本政策金融公庫の制度や返済方法についても解説
創業融資は、事業を軌道に乗せるための重要な選択肢です。創業融資の返済期間を適切に設定することは、事業のキャッシュフローを安定させ、健全な経営を持続させるための鍵となります。 この記事では、創業融資の返済期間に関するあらゆる疑問を解消し、あな…
詳しくみる買取資金調達ガイド|M&Aの株式買取や、事業承継の自社株買取などのポイントを解説
円滑な事業承継、M&Aにおいて、株式買取をはじめとする買取は避けて通れない重要なプロセスです。しかし、多くの場合は買取に多額の資金が必要となるため、資金調達が成功の鍵を握ります。 本記事では、M&Aや事業承継における株式買取…
詳しくみる自己破産後も創業融資は可能?日本政策金融公庫の再チャレンジ支援融資についても解説
「自己破産したら、もう二度と事業は起こせないのだろうか…」過去に自己破産を経験された方にとって、再び起業し、創業融資を受けることは非常に高いハードルに感じられるかもしれません。 しかし、自己破産後であっても、創業融資を受けられる可能性はあり…
詳しくみる創業融資の審査に年収は影響する?種類別の審査ポイントや年収が低い場合の対策も解説
創業融資を申し込むにあたり、「年収は審査にどう影響するのか?」「年収が低いと融資は受けられないのか?」といった不安や疑問を抱く方は少なくありません。 本記事では、創業融資における申込者個人の年収の位置づけ、審査で重視されるポイント、そして年…
詳しくみる