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  • 更新日 : 2021年6月11日

収入・売上なし、赤字でも開業届の提出・確定申告はすべき?

収入・売上なし、赤字でも開業届の提出・確定申告はすべき?

職種によっては、初期は時間や費用ばかりかかり、収入や売上になるまで時間がかかる場合もあるでしょう。設備投資のための出費が多く、事業を始めたものの赤字というケースもあるはずです。

以上のようなケースでは、実際に所得があるわけではないため、開業届を出すべきかどうか迷う人も多いと思います。開業届は、収入や売上がなくても、あるいは赤字でも出さなければならないものなのでしょうか。

この記事では、収入や売上が0円、また収入があっても赤字の場合の、開業届と確定申告について解説します。

開業届が必要な人とは

開業届は収入や売上に応じて提出するべきものなのか、まずは開業届が必要な場合について整理してみましょう。

開業届が必要な場合

開業等にともない開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)が必要になるのは、以下のようなケースです。

  • 新たに事業を開始した場合
  • 事業所や事務所を開設した場合

事業を開始した場合とは

開業届が必要な事業とは、事業所得、不動産所得、山林所得、のいずれかの所得が生じる事業です。一般的に事業とは、対価を得る取引で、取引が反復して行われ、かつ独立したものを表します。

例えば、雑貨店やカフェの開業は、必要なものを仕入れてサービスや商品として提供することを反復して行うことになりますし、事業として独立していますので、開業届が必要な事業に該当します。

このように考えると、個人の運送業や美容院、個人で開業した医師や税理士、弁護士なども開業届が必要な事業者になるでしょう。

一方、ものを仕入れて販売するのではなく、不要な生活用品を売ったというような一時的な取引は事業にはあたりません。

事業所等を開設した場合とは

開業届が必要な事業所等とは、事業に関わる事業所や事務所のことです。例えば、以下のようなケースで事業所等の開設による開業届が必要と考えられます。

  • カフェの新設にともない事業を開始した
  • 事務所を賃貸していたが事業拡大にともない事業所を新設した

収入・売上なし、赤字でも開業届は提出するべき?

開業届が必要なケースを説明しましたが、ここで改めて、収入や売上なしでも、あるいは赤字でも開業届は出すべきなのか考えてみましょう。

事業開始等の事実があれば届け出る

開業届を提出する必要があるのは、事業を開始した時、あるいは事業所等の開設があった時と説明しました。開業届の提出に、事業から生じる収入の有無、所得額は条件になっていませんので、事業開始、事業所等の開設、いずれかに該当する場合は、すみやかに提出するべきです。

ただし、働き方によっては副業になるケースもあります。会社員が本業で、フリーで副業として仕事をしている場合などです。副業であっても事業的規模で行っているのであれば開業と言えるかもしれませんが、隙間時間の小遣い稼ぎ程度のものなら独立した事業でも事業と認められず、雑所得に分類されることもあるので注意しましょう。副業の場合、開業届は必要ありません。
(ただし、事業の規模や金額などの基準は明確に定められているわけでないため、事業になるかどうかは、最終的には事業者や税務署長の判断になります)

また、事業開始について判断する場合、収入の判断基準についても注意する必要があります。収入は現金として入ってきた時に認識するのではなく、原則、収入の権利が確定した時点で認識するためです。

収入が確定した時点とは、商品を引き渡した時点などです。あとから対価を受け取る約束でも、引き渡した時点で収入になるため、事業開始のタイミング次第では金銭による売上がなくても収入はあるというケースも存在します。このような場合であっても、事業を開始しているなら開業届は提出しなければなりません。

開業届の提出時期

開業届は、開業等があってから原則1カ月以内(土日祝にあたる場合は次の平日)に提出することが定められています。前述したように、収入や売上は条件にありませんので、開業や事務所開設があれば速やかに提出します。

収入・売上なし、赤字でも開業届を提出するメリット

収入や売上がないケースや、収入はあるものの赤字の場合でも、開業届が必要な事業の開設などにあたる場合は、開業届が必要です。収入・売上なし、赤字でも開業届を提出することにメリットはあるのでしょうか。この項では、開業届を提出する3つのメリットを紹介します。

金融機関からの融資など資金調達面でメリットがある

開業届を提出することのメリットは、金融機関から融資を受けやすくなる可能性があることです。通常、ビジネスローンなどを利用する場合、本人確認書類のほか、印鑑証明書、確定申告書控えなどの収入証明書、事業関連の書類が求められることがあります。

開業届の控えの提出が求められることがあれば、事業を行っているという客観的な証明が可能です。実際に融資を受けられるかどうかは状況や金融機関の判断に委ねられますが、開業という客観的な証明があった方が融資を受けやすくなる可能性があります。

金融機関での融資は借金になりますが、設備投資など事業投資にもお金を回すことができ、赤字を改善できる可能性があるのがメリットです。

助成金や補助金などのメリットがある

開業届を提出していれば、個人事業主として対象になる助成金や補助金を受けることができます。小規模事業者(個人事業主含む)が申請できる助成金や補助金は、例えば以下のようなものです。

・小規模事業者持続化補助金(一般型)
小規模事業者を対象としたもので、制度変更に対応するため販路開拓等の経費の一部を補助する

・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
中小企業や小規模事業者を対象に、制度変更に対応するための設備投資等を支援する

・IT導入補助金
中小企業や小規模事業者を対象に、ITツール導入のための経費の一部を補助する

ほかにも、新型コロナウイルスの影響で事業収入が一定以上減少した個人事業主やフリーランスを対象にした「持続化給付金」などの助成金もあります。

このように、開業届なしに仕事をするより、たとえ赤字であっても個人事業主として仕事をしたほうが利用できる制度の範囲も広まり、メリットがあります。

個人とは別に事業用の口座をもてる

開業届を提出すれば、個人名義の銀行口座とは別に、屋号で銀行口座を開設できます。個人用と事業用で明確に銀行口座を分けることが可能です。

収入・売上なし、赤字でも確定申告は必要?

最後に、開業届に関連して、収入や売上なし、赤字の場合での確定申告について解説します。

開始した事業以外の収入がない場合

収入が、開業届で出した事業のみである場合、以下の計算でプラスが出れば確定申告が必要です。

【計算式】
各種所得の合計額-所得控除課税所得
課税所得×所得税率-控除額=所得税額
所得税額-配当控除額=再差引所得税額

再差引所得税額 > 0円 → 確定申告が必要

収入がなくても売上がある場合(売上の事実があっても金銭を受領していない場合)は、上記の計算により確定申告が必要なケースもありますが、赤字の場合は0円を下回るため確定申告は必要ありません。

ただし、金融機関の融資申込時や上述した補助金・助成金の申請時には、確定申告書及び青色申告決算書又は収支内訳書などが必要になるケースがほとんどですので、赤字であっても確定申告することをおすすめします。

開始した事業以外の収入がある場合

開業届を出した事業以外の所得がある場合は、ほかの所得も含めて確定申告の必要性を判断します。

例えば、事業所得以外に給与所得があるケースを考えてみましょう。ほかに給与所得がある場合は、以下のいずれかに該当する場合、確定申告をしなければなりません。

  • 年末調整をされなかった給与収入+給与所得と退職所得以外の所得合計>20万円
  • 給与所得の収入-※所得控除の合計が150万円以下のケースで、給与所得と退職所得以外の所得合計が20万円超
    ※この場合の所得控除には、基礎控除寄附金控除医療費控除雑損控除は含まれません

赤字でも確定申告すれば還付を受けられることがある

事業が赤字であれば、確定申告は必要ないと説明しました。しかし、事業所得以外に、給与所得があり源泉徴収で所得税を先に納めている場合は、確定申告によって納め過ぎた分が還付されることもあります。(還付申告)

青色申告なら欠損金の繰越も可能

個人事業主で青色申告を選択している人なら、赤字(欠損金)の繰越ができます。赤字を繰越した場合、翌年以降の所得から赤字分を控除することが可能です。事業を廃止または一部を譲渡する場合などは、所得税の還付も受けられます。

いずれの場合であっても、確定申告は必要です。白色申告は、欠損金の繰越がないため、赤字の場合、確定申告は必要ありません。

条件に該当するなら収入・売上なし、赤字でも開業届は提出すべき

収入や売上なし、事業が赤字であったとしても、事業開始、事業所等の新設など、開業届提出の条件に該当する場合は、開業届を提出しなければなりません。提出期限は開始日から原則1カ月以内なので、早めに提出するようにしましょう。

ただし、確定申告については、収入・売上なし、あるいは赤字であれば提出しなくても問題ないケースもあります。確定申告のメリット、デメリットも踏まえ、適切に申告を行うようにしましょう。

【参考】

国税庁|[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続

国税庁|No.2090 新たに事業を始めたときの届出など

国税庁|No.6109 事業者とは

国税庁|No.6109 事業者が事業として行うものとは

国税庁|個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき

国税庁|[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

国税庁|No.2091 個人事業者の納税地等に異動があった場合の届出関係

国税庁|No.2200 収入金額とその計算

よくある質問

開業届が必要な人とは?

新たに事業を開始した場合や、事業所や事務所を開設した場合に開業届が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。

収入・売上なし、赤字でも開業届は提出するべき?

開業届の提出に事業から生じる収入の有無・所得額は条件にありませんので、事業開始・事業所等の開設のいずれかに該当する場合はすみやかに提出するべきです。詳しくはこちらをご覧ください。

収入・売上なし、赤字でも開業届を提出するメリットは?

金融機関からの融資など資金調達や、助成金・補助金を受けられること、個人とは別に事業用の口座をもてることなどがあります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

マネーフォワード クラウド開業届で開業手続きをかんたんに

監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。