- 作成日 : 2025年9月16日
タワマン節税とは?2024年改正後の仕組みやリスクを解説
タワーマンションを活用した節税、いわゆる「タワマン節税」は、相続税対策としてかつて多くの富裕層に利用されてきました。しかし、2024年の税制改正により評価ルールが見直され、従来ほどの節税効果は期待できなくなりました。本記事では、タワマン節税の仕組み、メリット、法改正の影響やリスクについて解説します。
目次
タワマン節税とは
タワーマンション節税(タワマン節税)は、相続税対策として広く注目されてきた手法です。現金などと異なり、不動産は評価方法により相続税評価額が低くなるため、実際の資産価値に比べて課税額を抑えることができます。タワーマンションでは、高層階ほど市場価格と評価額の差が大きく、相続税を圧縮する効果が得られるとされてきました。
現金を不動産に置き換えて課税対象額を下げる
現金や預貯金は相続税の評価額が額面通りである一方、不動産は評価基準が異なり、一般的に時価よりも低く算定されます。そのため、現金を高額な不動産に換えることで、同じ1億円の資産でも課税対象額を減らすことが可能です。この評価差を活用するのがタワマン節税の基本です。
高層階の評価額は低くなる傾向
タワーマンションの高層階は、眺望や希少性により市場価格が高額になりますが、評価額は固定資産税評価や路線価に基づくため、相対的に低くなります。結果として、数千万円の評価額で済むこともあり、富裕層を中心に広く活用されてきました。
タワマン節税の仕組みとメリット
不動産の相続税評価額は「土地評価額 + 建物評価額」で構成されており、この評価額が低くなるほど相続税の課税対象が減り、結果として節税につながります。タワーマンションはその構造や評価方法の特性から、相続税評価額が市場価格より大きく下がる傾向にあり、富裕層を中心に相続対策として活用されてきました。以下では、その仕組みと節税効果について解説します。
土地評価が低くなる理由
タワーマンションでは、1棟全体の土地評価額(主に路線価に基づく)を、全戸数で等分して各住戸に割り当てます。そのため、1戸あたりの土地持分が小さくなり、土地の相続税評価額が大きく圧縮されます。
もともと路線価は時価のおよそ8割程度に設定されており、それをさらに戸数で按分することで、1室ごとの土地評価額は小さくなります。戸建住宅に比べると、同じ立地でもタワマンの評価額は圧倒的に低くなりやすく、土地部分だけで相当な節税効果が生じるのが特徴です。
建物評価が低くなる理由
建物部分の評価額は、市場価格ではなく固定資産税評価額をもとに算出されます。この評価額は自治体が建物の構造や材質、築年数などに応じて機械的に設定するもので、実際の取引価格や眺望といった付加価値は反映されません。
とくにタワーマンションの高層階は、実際の売買価格が高額になりますが、評価方法は全階共通の基準で行われるため、高層階でも相続税評価額が低く算定されることがありました。この評価差によって建物部分の課税額も大幅に軽減されます。
評価差とローン活用による効果
土地・建物の評価額を合計しても市場価格の2~4割程度にとどまる例もあり、相続財産の圧縮効果は大きなものになります。さらに、タワーマンションの購入にあたり借入金を利用すれば、その債務残高は遺産から控除されます。
つまり、市場価値では1億円相当の物件でも、評価額は4,000万円、借入が8,000万円であれば、差引評価額はマイナスになる計算も可能です。資産は低く評価され、負債は全額控除されることから、現金などと比べて有利な節税効果が得られるのです。
2024年の税制改正とタワマン節税への影響
2024年1月1日以降に相続・贈与で取得したマンションには、新たな評価方法が適用されることになりました。タワマン節税によって生じていた相続税評価額と市場価格の大きな差を見直し、制度の公平性を保つことを目的とした改正です。ここでは、背景と新しい評価方法、今後の節税効果について解説します。
改正の背景と目的
タワーマンション節税は合法ながら、富裕層が過度な節税を行う手段として問題視されていました。評価額が市場価格の3割程度まで抑えられるケースもあり、公平な課税の観点から見直しの声が高まりました。
2022年には、金融機関からの借入を活用したタワマン節税に対し、国税当局が実勢価格で課税するという異例の対応を取り、納税者が提訴されました。最高裁判決では、行き過ぎた節税目的の不動産取得が「実質的な租税負担の公平に反する」として、国税当局の主張を認める判断が示されました。この判決を受け、国税庁は評価ルールの見直しに踏み切りました。
新しい評価方法の内容
新ルールでは、マンションの相続税評価額について「評価水準」が時価の6割(60%)未満にならないよう補正されます。これは、従来の評価額と市場価格を比較し、その乖離が大きい場合には評価額を引き上げる仕組みです。
さらに、「評価乖離率」と呼ばれる数値をもとに、築年数・総階数・所在階・敷地持分割合といった要素を加味して評価額を調整します。築浅で高層階、戸数の多いタワーマンションほど評価が大きく引き上げられる設計となっており、従来もっとも節税効果が高かったタイプの物件が見直しの対象となっています。
改正後の節税効果と今後
この改正により、タワマン節税の効果は大きく制限されることになりました。専門家の試算によると、都内の高層マンション(市場価格1億6,000万円)の例では、従来2,500万円程度だった相続税評価額が、新ルール適用後には約4,855万円まで上昇するケースもあると指摘されています。
ただし、それでも現預金に比べれば、不動産の相続税評価は依然として有利である点は変わっていません。とはいえ、改正前のような極端な評価差を前提とした節税効果は見込めず、「タワマンを買えば大幅に得をする」という考え方は通用しづらくなっています。今後は節税目的での不動産購入を検討する際には、制度改正の内容を十分に理解し、慎重にシミュレーションを行うことが求められます。
タワマン節税のリスクと注意点
タワマン節税は2024年の制度改正によって効果が縮小しましたが、依然として活用されるケースもあります。ただし、利用にあたってはいくつかのリスクや注意点が存在し、節税目的だけで安易にタワーマンションを購入するのは避けるべきです。ここでは、経済面・税務面における注意点を解説します。
高額な投資コストと資産価値の変動
タワーマンションの購入には、多額の資金やローンの手当てが必要です。加えて、不動産取得税や仲介手数料、登記費用といった初期費用もかかります。購入後は、毎月の管理費や修繕積立金、固定資産税といった維持コストが継続的に発生します。
また、タワーマンションの資産価値は将来的に下落するリスクも無視できません。高層階の物件は購入時の価格が割高になりやすく、売却時に市場価格が下がっていれば、節税による効果以上に損失を被る可能性もあります。不動産は流動性が低いため、急いで現金化できない点にも注意が必要です。相続税の納税資金として不動産をあてにする場合は、計画的に準備しておくことが求められます。
税務調査リスクと租税回避とみなされる懸念
制度改正によってタワマン節税の適用範囲は狭まりましたが、それでも節税意図が強く見える取引に対しては税務署が調査を行う可能性があります。たとえ通達に従って評価額を計算していたとしても、全体の状況から「租税回避」と判断されれば、否認されるおそれがあります。
過去には、借入を活用したタワマン節税について、最高裁が国税の主張を認めた判例もありました。とくに富裕層による駆け込み的な購入が集中するような場合、税務署の注視が強まることも予想されます。節税策を講じる際は、あくまで正当な資産運用の一環として、税理士などの専門家の助言を得ながら、慎重に進めることが安全です。
タワマン節税以外に検討できる節税方法
タワーマンション節税は有効な相続税対策の一つですが、すべての人にとって最適とは限りません。資産構成や所得状況、家族構成によっては、他の節税策の方が効果的な場合もあります。ここでは、代表的な選択肢を紹介します。
法人化による所得税の圧縮
高所得の個人事業主やフリーランスであれば、事業の法人化を検討することで節税効果が期待できます。個人の所得税は累進課税制度により、所得が高くなるほど税率が上昇し、最大で55%に達します。一方、中小企業に適用される法人税率は15〜23%前後と一定であるため、一定以上の所得がある場合は法人の方が有利になる傾向があります。
また、法人化することで役員報酬や経費計上の幅が広がり、自分や家族に支払う報酬も経費として処理できるようになります。このような仕組みを活用すれば、所得の分散と課税対象の圧縮が可能となります。事業収入が安定してきたタイミングで、専門家に試算を依頼し、法人化のタイミングを検討するとよいでしょう。
生前贈与と生命保険の非課税枠
相続税の対策として、毎年の生前贈与を活用する方法もあります。年間110万円以下の贈与は非課税となるため、長期的に続けることで将来の課税対象資産を効率よく減らすことができます。
もう一つの有効な手段が、生命保険を活用した非課税枠の利用です。被相続人が生命保険に加入し、相続人が死亡保険金を受け取る場合、「500万円×法定相続人の数」までが非課税となります。たとえば相続人が3人いれば、最大1,500万円までの保険金に対して相続税がかからず、非常に効果的な節税策となります。
このほかにも、自宅土地の評価を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」や、認知症リスクへの備えとして注目される家族信託などもあります。
タワマン節税は制度理解と慎重な判断で活用しよう
タワマン節税は一時的に大きな節税効果が注目されましたが、2024年の評価方法の見直しにより、効果は限定的になっています。市場価格との過度な乖離は是正され、従来のような過信は禁物です。現在では、タワーマンションを用いた節税には、費用・資産価値・税務リスクを慎重に見極める姿勢が求められます。必要に応じて法人化や贈与、保険の非課税枠など他の対策も併せて検討し、自身の資産や家族構成に合った最適な方法を選びましょう。
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