- 更新日 : 2025年7月18日
自己資金なしの女性が起業するには?利用できる融資制度や審査のポイントを解説
起業したいけれど自己資金がないという不安を抱える女性は少なくありません。ですが近年、初期費用を抑えて始められるビジネスや、公的な融資・支援制度が充実し、自己資金ゼロからでも起業できる環境が整いつつあります。
本記事では、低コストで始めやすい起業ジャンルや、活用できる融資制度・補助金、融資審査のポイントや資金調達手段を解説します。
目次
自己資金なしで始められる女性におすすめの起業ジャンル
起業には資金が必要というイメージがありますが、現代ではインターネットの発達により、初期費用をかけずに始められるビジネスが増えています。自己資金がない場合でも、スモールスタートを工夫すれば挑戦可能です。ここでは、自己資金ゼロでも始めやすい起業分野を紹介します。
オンラインを活用したフリーランス型
オンラインを活用したフリーランス型のビジネスは、自分のパソコンとインターネット環境があればすぐに始められ、比較的初期投資を抑えられる働き方です。スキル次第で高単価案件にも挑戦できます。個人の実績やポートフォリオが重視されるため、実力が評価されやすいのも特徴です。資格や設備がなくても始めることができ、主婦や未経験者にも門戸が開かれています。仕事に慣れてきたら独立開業や法人化も視野に入れることができるため、将来性もあります。
アフィリエイト・ネットショップでの無在庫販売
アフィリエイトは、自分のブログやSNSで商品やサービスを紹介し、そこから発生した成果に応じて報酬を得るモデルです。登録は無料で始められるASP(アフィリエイトサービスプロバイダー)が多く、初心者でも挑戦しやすいのが魅力です。商品を自ら仕入れる必要がないため、在庫リスクもゼロに抑えられます。さらに、ドロップシッピング形式のネットショップでは、受注後に商品の仕入れ・発送を代行してもらえるため、在庫を持たずにショップ運営が可能です。BASEやSTORESといった無料のECサービスを利用すれば、自分だけのネット店舗を低コストで開設できます。SNSと組み合わせて集客力を高めれば、徐々に安定収益も期待できます。
YouTuber・インフルエンサー
YouTuber・インフルエンサーは、YouTubeやInstagram、TikTokといったSNSプラットフォームを活用し、動画投稿や写真・文章でフォロワーを獲得し、広告や企業案件で収益を得るビジネスです。初期費用を抑えて始めることは可能で、基本的な撮影・編集はスマートフォンや無料ソフトでも対応できます。
特定のテーマに特化したコンテンツ(例:子育て、美容、語学、料理など)を継続的に投稿し、共感や関心を集めることで、再生回数やフォロワー数が増え、広告収益やPR依頼が舞い込みます。ただし競争が激しいため、差別化の工夫や継続的な発信力が欠かせません。
オンライン講師・コミュニティ運営
専門的な知識やスキルがある分野があれば、それをオンラインで講座形式にして販売するのも有力な方法です。Zoomなどのビデオ会議ツールを活用すれば、場所を選ばず全国の受講生とつながれます。語学、キャリア支援、趣味講座、資格試験対策など、自分の得意分野を活かして収益化が可能です。また、オンラインサロンやコミュニティを立ち上げ、月額制で情報共有や交流の場を提供するモデルも人気です。信頼性の高いコンテンツを継続的に届けられるかどうかが、会員の満足度と継続率を左右します。初期費用が不要なうえ、知識や経験を活かせるため、専門職の女性や子育てが一段落した方にも向いています。
電子書籍の出版
文章を書くのが得意な方であれば、電子書籍をAmazon Kindleなどで出版する方法もあります。テーマは自身の体験談や専門知識、趣味のノウハウ、ビジネスノートなど、読者のニーズに合った内容であれば何でも構いません。出版費用はかからず、自己流でも作成・販売が可能です。販売価格は自由に設定でき、印税として売上の最大70%が著者に入る仕組みのため、ヒットすれば安定した副収入になります。また、出版実績がブランディングにもつながり、講師業やコンサル業への展開も期待できます。
自己資金なしの女性起業に利用できる融資制度・支援策
起業したいけれど自己資金がないという悩みを抱える方でも、活用できる融資制度や支援策は少なくありません。ここでは、自己資金ゼロからでも申し込める融資制度について紹介します。
日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
政府系金融機関である日本政策金融公庫が提供する「新規開業・スタートアップ支援資金」は、2024年4月に制度改正された最新の創業融資制度です。この制度の最大の特徴は、自己資金がなくても利用できる点にあります。対象は、新たに事業を始める人、または開業からおおむね7年以内の事業者で、融資限度額は7,200万円(うち運転資金は4,800万円)です。
この制度は、かつて存在した「新創業融資制度」の後継にあたり、旧制度で必要とされていた自己資金10%以上という条件が撤廃されています。そのため、自己資金ゼロの方でも申請できます。ただし、認定経営革新等支援機関からの助言・支援を受けていることなど、いくつかの利用条件があります。また、自己資金が全くない場合、審査では事業計画の現実性や実行可能性が厳しく見られます。希望融資額も、自己資金の有無に応じて慎重に設計し、返済計画に無理のない範囲で申請することが求められます。
日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特別貸付」
もう一つ注目されるのが、日本公庫の「挑戦支援資本強化特別貸付」です。これは資本性ローンと呼ばれる特殊な融資形態で、調達した資金が金融機関から「負債」として見なされず、自己資本と同等に扱われる特徴があります。
この制度も自己資金要件なしで利用可能で、最大7,200万円の融資枠が設定されています。最大のメリットは、自己資本比率を高めて見せられるため、今後民間金融機関から追加融資を受けやすくなることです。
ただし、利用には一定のハードルがあります。たとえば、他社にない独自技術やノウハウを有していること、または新規性の高いビジネスモデルであることなど、事業の革新性を証明する必要があります。スタートアップ志向の方や、業界に変革を起こすような事業を考えている方には、ぜひ検討してほしい制度です。
日本政策金融公庫「女性、若者/シニア起業家支援資金」
女性の創業者に特化した支援として、日本公庫が提供する「女性、若者/シニア起業家支援資金」も非常に有用です。この制度は、女性(年齢不問)、35歳未満の若者、または55歳以上のシニアを対象とした創業支援制度です。
対象は、新たに事業を始めるか、開業後おおむね7年以内の人で、融資限度額は7,200万円(うち運転資金は4,800万円)。自己資金の有無は問われません。加えて、設備資金は最長20年、運転資金は最長10年の返済期間が設定され、いずれも最大5年の据置期間が認められています。
長期返済・元金据置といった条件は、起業初期の返済負担を抑える上で非常に心強く、事業が軌道に乗るまでの期間をしっかり確保できる点で魅力的です。女性にとっては、無理なく返済しながら成長を図れる支援制度といえるでしょう。
地方自治体の制度融資(例:東京都「女性・若者・シニア創業サポート事業2.0」)
地方自治体が独自に展開している制度融資も、自己資金ゼロ起業の有力な選択肢です。これらの制度は、自治体と信用保証協会、金融機関が連携して提供しており、低利・無担保・無保証といった条件が設定されているものも多くあります。
たとえば東京都では、2024年4月にスタートした「女性・若者・シニア創業サポート事業2.0」があり、年齢を問わず女性であれば利用可能です。この制度の主な特徴は以下の通りです。
- 自己資金ゼロでも利用可能
- 個人事業主の場合は保証人不要(法人の場合は必要となるケースがある)
- 金利は年1%以内の低利設定
- 元金据置期間あり
- 融資後5年間、地域創業アドバイザーによる経営アドバイスが受けられる
さらに、この制度融資を受けることで、東京都が提供する「創業助成事業」の申請要件を満たせる仕組みとなっており、補助金申請への足がかりにもなります。こうした地元支援の制度は、地域ごとに内容が異なりますが、たとえば横浜市の「創業おうえん資金」なども、最大3,500万円の無担保融資が可能な制度として知られています。
お住まいの地域に自己資金なしで利用できる制度融資があるかどうかは、地元の商工会議所や市町村の創業支援窓口で確認できるため、ぜひ相談してみましょう。
融資審査で重視されるポイント
自己資金がゼロであっても、公的・民間を問わず融資制度の活用は可能です。ただし、融資を受けるためには「審査」を通過しなければなりません。以下では、創業融資の審査で重視される項目を紹介します。
実現可能な事業計画が構築されているか
審査で最も重視されるのが、事業計画書の内容です。単なる理想論や思いつきではなく、実現性のある内容であることが求められます。たとえば、市場調査に基づいたニーズの明確化、商品やサービスの内容、ターゲット層、収益構造、競合との差別化要素など、論理的かつ具体的に記載する必要があります。さらに、見込み顧客リストや見積書、取引予定書などの裏付け資料があると、事業の信頼性が高まり評価されやすくなります。
資金の使途と返済計画が明確か
「融資した資金を何に使い、どのように回収していくのか」が明確であることも、審査を通過するための重要な要素です。運転資金と設備資金の内訳をしっかり記載し、それぞれの用途に対して具体的な見積書を添付するなどの対応が望まれます。また、融資後の売上見込みや利益予測、返済スケジュールも事前にシミュレーションしておきましょう。融資額に対して収益が不釣り合いである場合、「返済能力に疑問がある」と見なされ、減額または不採択となる可能性があります。
自己資金・財務体質の補足資料を準備しているか
自己資金が不要な制度でも、融資申込時には「なぜ自己資金がないのか」「それでも返済可能と判断できる材料があるか」を問われます。例えば、家族からの援助予定がある場合はその証明書、今後の副収入予定や社会的信用力のある保証人がいる場合など、補完資料として提出できるものは事前に準備しておきましょう。仮に自己資金が少額でも、誠実にコツコツ貯めてきた実績があると、融資先にとってはプラス材料になります。
信用情報(クレジットヒストリー)が健全か
金融機関は審査時に、個人信用情報を必ず確認します。過去にクレジットカードやローンの支払い遅延、携帯電話代の滞納などがあると、信用に傷がつき融資審査に大きく影響します。起業前からすべての支払いを期日通りに行い、信用情報をクリーンに保つことが大切です。信用情報はCICやJICCといった信用情報機関で自己開示が可能ですので、不安がある方は事前に確認し、必要があれば専門家に相談することをおすすめします。
起業分野に関連する経験やスキルがあるか
創業融資では、決算書など過去の業績データがないため、申込者の実績やスキルが審査の重要な材料になります。過去に同業種での勤務経験がある、関連資格を保有している、事業に役立つ人脈があるといった具体的な要素は、事業成功の可能性を高める根拠となります。また、事業経験がなくても、起業セミナーに参加している、関連知識を独学で学んでいるなどの学習姿勢を示すことで、前向きな評価につながります。
面談で事業への熱意と誠実さを伝えられるか
融資審査では、書類審査に加えて面談が実施されることが一般的です。日本政策金融公庫や民間の金融機関の担当者との面談では、事業への熱意や計画の理解度、将来のビジョンなどが問われます。他人が用意したような借り物の言葉ではなく、自分の言葉で語ることが信頼につながります。あらかじめ想定問答を準備し、志望動機、事業の強み、資金の用途、リスク対策などについて明確に答えられるようにしておきましょう。
自己資金なしの場合に活用できる資金調達法
自己資金が乏しい状況でも起業を目指す方にとって、融資以外にも資金調達や事業立ち上げを支える方法があります。代表的なのが、フランチャイズ加盟や補助金・助成金の活用です。初期費用を抑えたり、既存のビジネスモデルに乗ることで成功確率を高めたりする効果が期待できます。
フランチャイズ加盟で低リスク起業を目指す
フランチャイズとは、既に確立されたブランドやビジネスモデルを借りて開業する仕組みです。近年は「0円開業」「初期費用0円」などを掲げ、加盟金や保証金を抑えるフランチャイズ本部も登場し、本部が設備投資を一部負担したり、融資先の紹介を行ったりするケースもあります。条件によっては自己資金が少なくても契約可能なプランもあり、店舗ビジネスへの道が開かれます。
ただし、魅力的な条件をうたっていても、「0円開業」はあくまで加盟金や一部の初期費用がゼロであるケースが多い点に注意してください。物件取得費、内装費、運転資金など、実際にかかる総費用を事前に把握し、契約内容は慎重に精査することが必要です。加盟金、保証金、ロイヤルティ、設備購入費などが後から必要となる場合もあるため、総費用を把握しておきましょう。また、フランチャイズ本部から提供されるサポート体制(研修内容、広告支援、経営指導など)も重要な判断材料です。
補助金・助成金で資金負担を軽減する
返済義務のない補助金・助成金は、資金が限られている起業家にとって大きな助けになります。女性起業家向けの制度も年々充実しており、事業スタート時の設備費や人件費を補助してもらえるチャンスがあります。
たとえば、東京都の「若手・女性リーダー応援プログラム助成事業」は、都内の商店街などで開業する女性を対象に、内外装工事費や設備購入費の最大3/4と店舗賃借料の合計最大844万円を助成する制度です。申請には条件がありますが、賃料補助などもあり、自己資金を抑えた開業が可能になります。
また、厚生労働省の「両立支援等助成金」は、育児や介護と仕事を両立する従業員の支援を行う企業に対して支給されます。女性起業家が従業員を雇用し、家庭と仕事のバランスに配慮した職場環境を整えることで、助成金を受け取れる可能性があります。その他にも、人材育成や非正規社員の正規化に取り組んだ場合に支給される「キャリアアップ助成金」など、人に関する助成制度も存在します。
補助金・助成金は公募期間が限られていたり、書類の整備が必要だったりするため、事前準備が重要です。自治体の創業支援センターや商工会議所で相談すれば、対象になりそうな制度を紹介してもらえることもあります。
クラウドファンディングやビジネスコンテストを活用する
近年注目されているのが、クラウドファンディングを活用した資金調達です。インターネット上に事業計画や創業への熱意を掲載し、共感してくれる人々から広く資金を募る方法で、社会性のある事業やユニークなアイデアには多くの支援が集まる可能性があります。プラットフォームによっては、開業前でもプロジェクトを立ち上げられるため、起業資金を自己資金ゼロで集められるチャンスにもなります。
また、各地で開催されている女性起業家向けのビジネスコンテストも見逃せません。優秀なプランには賞金やメンタリング支援、専門家からのサポートが提供されるケースもあり、実績や人脈づくりの場としても有効です。こうした外部リソースを活用することで、限られた資金の中でも着実に事業を立ち上げ、成長させることができます。
自己資金がなくても大丈夫!女性の起業を支える手段を知って踏み出そう
自己資金がなくても起業は不可能ではありません。現代では、インターネットを活用した低リスクビジネスが広がっており、在宅フリーランス、ネットショップ、YouTuber、オンライン講師、電子書籍出版など、初期費用を抑えてスタートできる選択肢が豊富です。
さらに、自己資金ゼロでも申し込める公的融資制度も整備されています。事業計画や信用面の準備を整え、適切な支援制度を組み合わせることで、自己資金がなくても起業へ踏み出すことができます。夢を形にするチャンスは、資金の有無ではなく、準備と情報で広がります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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