- 作成日 : 2025年2月27日
ものづくり補助金は法人化して間もない企業におすすめ!採択事例や計画書作成のポイントを解説
ものづくり補助金は、法人化して日が浅い企業も申請可能です。設立してから5年以内の企業は加点対象となるなどといったメリットがあります。
本記事では個人事業主から法人化した企業などに向けてものづくり補助金のことを解説していますので、事業計画書作成のポイントなどを押さえておきましょう。
目次
法人化して間もない企業にものづくり補助金がおすすめの理由
ものづくり補助金は、法人化して間もない企業にとって魅力的な制度と言われています。この補助金は、中小企業・小規模事業者の革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善を支援することを目的としています。特に「開業5年以内の政策加点」と「小規模事業者への高い補助率」という2つの理由から、法人化して間もない企業にとっておすすめの制度と言えるでしょう。
開業5年以内なら政策加点の対象になる
ものづくり補助金では、創業・第二創業後間もない事業者(設立してから5年以内)に対して政策加点が適用されます。同補助金の加点項目は以下の通りです。
- 成長性加点
- 政策加点
- 災害等加点
- 賃上げ加点等
- 女性活躍等の推進の取り組み
以上の加点制度は、新規企業への支援を重視する政府の方針を反映したものです。法人化して日が浅い企業の場合、市場での地位確立や顧客基盤の構築など多くの課題に直面すると予想されます。そのような状況の中で革新的な取り組みを進める企業を後押しする目的として、制度が設けられています。
審査時に加点がなされることで、採択される可能性がより高まるため、法人化して間もない企業にとってはおすすめの補助金と言えるでしょう。
小規模事業者の補助率が高い
一般的な中小企業の補助率が「1/2」であるのに対し、小規模事業者の場合は「2/3」まで引き上げられます。法人化して間もない企業の場合、小規模事業者に該当することも多いと思われますので、ものづくり補助金を活用する利点が大きいと言えるでしょう。
また、同補助金における「小規模事業者」とは、常勤従業員数が一定数以下である会社または個人事業主のことです。従業員数の要件は、製造業その他・宿泊業・娯楽業では20人以下、卸売業・小売業・サービス業では5人以下となっています。ただし、申請枠によっては、補助金額が一定額を超えたとき、その部分について補助率が引き下げられることに注意しましょう(※数値については2025年1月時点の情報をもとに反映)。
そもそも「ものづくり補助金」とは
ものづくり補助金の正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。中小企業・小規模事業者の生産性向上と競争力強化を支援する制度として位置づけられています。こちらの補助金は、2025年も継続して実施される予定であり、以下にその詳細について解説します。
目的
ものづくり補助金の目的は、中小企業や小規模事業者の「生産性向上」「持続的な賃上げ」、「競争力の強化」です。具体的には以下の取り組みを支援するための補助金を出しています。
- 革新的な製品・サービスの開発(これまでになかった、新たな技術を取り入れたシステムの開発など)
- 生産プロセスの改善(生産工程の全自動化など)
- 新たな市場への進出(海外市場への輸出を始めるなど)
- 働き方改革や各種制度への対応(労働環境の改善、賃上げなど)
これらの支援を通じて、日本経済の活性化と中小企業の持続的成長の促進を目指しているのです。
対象要件
同補助金の対象となるには、まず以下の基本要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定することが必要です。
また、以上の基本要件に加え、3~5年の事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計額が、企業全体の売上高の10%以上となる事業計画を策定することなどの追加要件があります。
この要件は変更されることもありますので、実際に申請を行う際は常に最新情報をチェックするようにしてください。
補助金額と補助率
補助金額や補助率については、申請枠によって異なります。例えば、「製品・サービス高付加価値化枠」の場合、通常類型の補助金額の上限は750万円(従業員数5人以下)、1,000万円(同6~20人)、2,500万円(同21人以上)、補助率は中小企業が「1/2」で小規模事業者および再生事業者が「2/3」です。なお、補助額や補助率についても変更される可能性があるため、最新の情報を忘れずに確認しましょう。ご注意ください。
申請方法
同補助金の申請では、電子申請が必須とされています。まずは公式ホームページで公募要領をチェックしましょう。応募資格や補助対象事業、申請期間などを確認します。また、電子申請に必要な「GビズID」を持っていない場合は、取得しておきましょう。
申請書など、申請に必要な書類を取りそろえていくことになりますが、特に重要なのが「事業計画書の作成」です。公式ホームページに掲載されている事業計画書の参考様式を活用して計画を策定していきましょう。
準備を整えたら、公募期間内に電子システムを介して必要書類をアップロードします。その後、提出された申請書類に基づいて審査が行われ、採択結果が申請者へ通知されます。無事採択されたのを確認したら、続いて交付申請書を提出します。申請が認められたら交付決定通知が発行されます。
法人化して間もない企業が事業計画書を作成するポイント
ものづくり補助金の申請において、事業計画書は採択結果を左右するとても重要な書類です。特に法人化して間もない企業は実績が十分ないため、事業計画書の提示が自社の将来性や事業の実現可能性を示す貴重な機会となります。説得力のある事業計画を立案し、自社のポテンシャルを伝えるかが鍵となるでしょう。
具体的に着目しておきたいポイントを以下で解説していきますので、初めて事業計画書を作るという方はぜひ参考にしてください。
ビジョンや課題を明確にする
まず、経営者の想いやビジョンを具体的に提示しましょう。なぜこの事業を始めたのか、どのようなことを実現したいのか、5年後・10年後にどのような企業になっていたいのかを明確に述べましょう。これにより企業の存在意義と将来性を印象づけることができます。
次に、現在直面している、あるいは直面することが予想される経営課題を提示します。法人化して間もない企業特有の課題、例えば人材確保や資金調達、ブランド構築などに対する問題点を具体的に挙げ、それらをどのように克服していくかを説明します。課題を正確に把握し、積極的に取り組む姿勢を示すことが、成長性のアピールにもつながるでしょう。
市場や成長性の分析
法人化して間もない企業が信用を得るうえでは、綿密に行われた市場分析の結果を示すことが重要です。実績が足りないという状況でも、自社を取り巻く環境について客観的に把握できていれば今後の動向についてある程度予測しやすくなります。また、その結果から自社の成長性を説得的にアピールすることもできるでしょう。
そのためにも具体的な数値で示すことを意識することが重要です。業界レポートや公的機関の統計データを活用し、市場の現状と将来予測を明確に提示します。「○○業界の市場規模は現在○○億円。年率○○%で成長しており、5年後には○○億円に達すると予測されている。」などと具体的な数字を用いることで説得力がより増すでしょう。
また、ターゲットとする顧客像を明確にすることも重要です。法人化して間もない企業が全方位的なアプローチをしていくのは現実的ではありません。効率的に利益を出すためにも、自社の製品やサービスを必要としている顧客層を特定し、その特徴(年齢、性別など)を詳しく描写しましょう。
自社の強み・競争優位性の提示
実績がまだ少ない段階ではあるものの、潜在的な可能性を具体的かつ説得力のある形で提示する必要があります。そこで、まずは保有技術やノウハウを具体的に説明しましょう。例えば、「当社が開発した○○は、従来の○○と比べて○○%の効率向上を実現する」といった具体的な数値や比較を用いて説明します。技術の独自性や革新性を強調し、なぜそれが市場で競争力を持つのかといった細かい部分まで説明できると相手を惹きつけることができるでしょう。
競合状況を把握して自社の差別化要素を提示するのも効果的です。自社の製品・サービスがどのように競合と異なり、顧客に対しどのような独自の価値を提供するのかを具体的に説明できるように準備をしましょう。
具体的な実行計画の説明
事業計画書全編を通して、具体的かつ実現可能な実行計画を提示することが不可欠です。目標が立派な内容であっても、そこに到達するまでの道のりが抽象的な要素があると「本当に目標を果たすことはできるのか」「結局のところ、どのような取り組みを始めるのかよくわからない」といった良からぬ流れになります。結果的には、マイナスの印象を持たれる可能性が高いでしょう。このようなことにならないよう、以下のポイントを入念に考えたうえで、具体性と実現可能性を意識するように作成を進めていきましょう。
- 開発スケジュールや生産計画
- 人材・設備・資金などの調達方法
- 技術的な課題とその解決方法
- 想定されるリスク(市場変動、技術革新、競合参入など)とその対応策
作成の際は「わかりやすい表現」と「視覚的な工夫」にも配慮しましょう。複雑な情報については図表を用いて説明するなど、第三者でも理解できるような形に仕上げていきます。
収支計画を数値で表す
具体的な数値を用いた収支計画の提示は、事業の実現可能性と持続性を示すうえで大きな役割を果たします。
例えば、売上・利益目標を「初年度売上〇〇円、利益〇〇円を目標とし、5年後には売上〇〇円、利益〇〇円の達成を目指す。」などと数値を使って具体的に示します。また、ここには数値の根拠も載せておきましょう。
ただ、法人化して間もない企業の場合、実績となる数値が取れないことがあるため、予測の数値に頼らざるを得ない状態です。そのため、1円単位で細かく金額を予想するよりも、実現可能性の高い範囲を示すことが重要と言えるでしょう。起こり得るパターンをいくつか想定し、そのときの売上や利益などの最低ラインと最高ラインの値を出すことがポイントです。
法人化して間もない企業のものづくり補助金採択事例
ものづくり補助金事業公式ホームページでは、過去の成果事例の紹介がされています。
その中から、法人化してから間もない時期に採択された企業の事例をいくつか紹介します。
自社に近い事例を見つけることで、成功への糸口をつかめるでしょう。
採択企業の例 | 詳細 |
---|---|
株式会社epocトレーディング |
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Bird fab studio株式会社 |
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株式会社ブリング・夢屋 |
|
ものづくり補助金は法人化していなくても申請できる?
ものづくり補助金は、法人化していない個人事業主でも申請可能です。公募要領でも個人事業主の申請を想定した情報が明記されているため、業種を問わず申請ができます。
個人事業主が申請する際の注意点
法人と個人事業主とでは添付書類が異なる点には注意しましょう。必須の添付書類の一つとして「決算書等」が掲げられていますが、個人事業主だと「確定申告書等」の添付が必要です。また、従業員数の確認資料として法人だと「法人事業概況説明書の写し」の提出が求められていますが、個人事業主には「所得税青色申告決算書の写し」または「所得税白色申告収支内訳書の写し」の提出が求められています。なお、事業計画書は申請者が個人事業主であっても必ず作成しないといけません。
法人化して間もない企業こそものづくり補助金を活用しよう
ものづくり補助金は、法人化して間もない企業や規模の小さな事業者にとっての利点が多い制度です。
「会社を立ち上げて日が浅い」「まだ数年しか経っていない」というケースでは事業計画の策定に頭を悩ませることもあるかと思いますが、創業・第二創業後間もない事業者(※設立してから5年以内)だと審査に少し有利になるなどの恩恵も受けられます。
そのため、革新的なアイデアを形にするための取り組みを始めようとする方は、ものづくり補助金の活用も検討してみてはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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