- 更新日 : 2025年11月25日
法人化のサポートは誰に相談すべき?無料相談や士業別の違いまで解説
法人化を考え始めたとき、「そもそも誰に相談すればいいんだろう?」と疑問に持つ方は多いでしょう。事業の成功を左右する大切なステップだからこそ、最適なサポート相談先の選定は非常に大切です。税務や手続き、経営戦略まで、目的に応じて税理士や司法書士といった専門家を選ぶ必要があります。
この記事では、個人事業主や経営者が抱える課題を解決するため、法人化における相談先の選び方から具体的なサポート内容、費用、そして後悔しないための注意点までをわかりやすく解説します。
目次
法人化の相談は誰にするべき?目的別の専門家を紹介
法人化の相談先は、事業の目的や課題に応じて選ぶ必要があります。税務・経営面を重視するなら税理士、登記手続きを任せたいなら司法書士が主な相談先となりますが、事業内容によっては他の専門家の力も必要になるでしょう。
それぞれの専門家には法律で定められた独占業務があり、得意とする領域が異なります。自社がどの分野を優先したいかによって、最適な相談先は変わります。以下では、各専門家の業務範囲をふまえ、具体的な相談内容を解説します。
【税理士】税務や経営のアドバイスが欲しい
税理士は、税務と会計の専門家であり、経営全般に関する相談にも広く対応できます。法人化による節税効果の最大化や、設立後の安定経営まで見据えた長期的なパートナーとして、心強い存在です。
税理士には、事業収益に基づいた具体的な節税シミュレーションを依頼できます。「いつ法人化するのが最も有利か」というタイミングを数値で示してくれる点は大きな強みです。
また、融資に不可欠な事業計画書の作成支援や、適切な役員報酬額・資本金の設定など、数字に基づく経営面の相談も得意分野です。法人設立後に必要となる税務署への各種届出や、顧問としての継続的な会計・税務サポートも受けられます。
ただし、法務局への登記申請は司法書士、許認可の申請は行政書士の専門領域となるため、税理士は直接代行できません。多くの場合は提携先の専門家を紹介してくれます。
【司法書士】登記手続きを任せたい
司法書士は、登記手続きの専門家です。法的に不備のない、スムーズかつ確実に会社設立を進めたい場合に最適な相談相手です。
- 相談できること
- 会社設立登記に関する一切の手続き代行
- 法務的な観点からの機関設計に関するアドバイス
- 設立後の登記事項変更手続き
- 専門外となること(他の専門家の領域)
- 具体的な節税対策や税務申告
- 融資のための事業計画書作成
- 社会保険の手続き
司法書士は、会社の基本ルールである定款の作成支援から、法務局への設立登記申請まで、会社設立に必要な法的手続きを一貫して代行できます。特に電子定款を利用すれば、印紙代4万円を節約できるメリットは大きいでしょう。また、取締役会の設置など、会社法に基づいた組織設計に関するアドバイスも受けられます。設立後の役員変更や本店移転といった変更登記手続きも専門分野です。
一方で、法人税の申告や節税対策は税理士、社会保険の手続きは社会保険労務士の領域となり、司法書士は対応できません。
【行政書士】許認可申請が必要
行政書士は、官公庁へ提出する各種書類の作成・申請代理を専門とする国家資格者です。事業の開始に許認可が必要な場合に、その複雑な申請手続きをサポートしてくれる頼れる存在です。
- 相談できること
- 事業に必要な各種許認可の申請手続き代行
- 許認可要件をふまえた定款内容の作成支援
- 専門外となること(他の専門家の領域)
- 会社設立の登記申請代行
- 税務申告や節税対策
- 社会保険の手続き全般
建設業や飲食業、古物商など、事業によっては国や都道府県の許可がなければ始められません。行政書士は、こうした複雑な許認可の要件を確認し、申請書類の作成から提出までをサポートします。許認可の要件をふまえた定款内容の作成を支援してくれるため、「会社を設立したのに許可が下りない」という事態を未然に防げます。
ただし、行政書士は法務局への登記申請を代行することはできません。登記は司法書士の専門領域です。また、税務申告や社会保険の手続きも専門外となります。
【社会保険労務士】従業員の社会保険手続き
社会保険労務士(社労士)は、労働・社会保険に関する手続きの専門家です。法人化すれば役員も社会保険に加入し、従業員を雇う場合は労働保険の手続きが必要になるため、その対応を任せる相談先として適しています。
- 相談できること
- 社会保険・労働保険の新規加入手続き代行
- 労務管理体制の整備(就業規則や雇用契約書の作成)
- 雇用関連の助成金の申請代行
- 専門外となること(他の専門家の領域)
- 会社設立の登記申請
- 法人税の申告
- 許認可申請
法人を設立すると、社長一人でも社会保険への加入が義務となります。社労士は、年金事務所や労働基準監督署への各種届出を代行し、煩雑な手続きをスムーズに進めてくれます。さらに、従業員を雇用する際に必要となる就業規則や雇用契約書の整備、雇用関連助成金の申請支援も担います。
これにより、労務トラブルを防ぎ、返済不要の資金を得られる可能性があります。ただし、会社設立の登記申請は司法書士、法人税の申告は税理士の専門領域であり、社労士はこれらの手続きを代行できません。
法人化による複数の専門分野をまとめて依頼したい場合は?
法人化には、税務、法務、労務など複数の専門知識が必要です。個別に専門家を探すのが難しい場合は、ワンストップで対応してくれる窓口を利用するのが効率的ではないでしょうか。
ワンストップサポートの利用が便利
ワンストップサポートとは、税理士法人やコンサルティング会社などが、司法書士や社労士といった他の専門家と連携して、法人化に必要なあらゆる手続きをまとめて引き受けるサービスです。
窓口を一本化できるため、自分で各専門家を探して個別に依頼する手間が省け、手続き間の連携もスムーズに進むというメリットがあります。
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 相談窓口が一つで済む | 個別に依頼するより費用が高くなる場合がある |
| 各専門家を探す手間が省ける | 提携先の専門家を自由に選べない |
| 手続き間の連携がスムーズ | 内部での連携が不十分だと、かえって非効率になることも |
ワンストップサポートの選び方
ワンストップサポートを選ぶ際は、まず自社が最も重視する課題を明確にし、その分野を中核とする事務所を選ぶのが合理的です。例えば、設立後の税務顧問や資金調達を重視するなら税理士法人が、許認可申請が必須なら行政書士法人が提供するサービスを選ぶとよいでしょう。料金体系やサポート範囲、提携している専門家の質などを事前にしっかり確認することが大切です。
法人化のサポート費用を抑える無料相談窓口はある?
専門家への依頼費用を抑えたい場合や、まずは基本的な情報を収集したい段階では、公的機関が設ける無料相談窓口を活用するのがおすすめです。手続きの代行は行っていませんが、専門的なアドバイスを受けられます。
商工会議所・商工会
地域の事業者を対象に、経営全般の相談を受け付けており、法人化に関する相談も可能です。経営指導員が親身に対応してくれるほか、必要に応じて税理士や中小企業診断士といった専門家を無料で派遣してくれる「専門家派遣制度」を設けている場合もあります。
自社の事業内容や地域の特性をふまえたアドバイスが期待できるでしょう。
法務局
全国の法務局には登記相談コーナーが設置されており、登記申請書の書き方や必要書類など、手続きの形式的な部分について無料で相談できます。自分で登記申請(本人申請)を考えている場合には非常に有用です。
ただし、定款内容の妥当性や事業目的の適法性といった法的な判断に関する相談には対応していません。
参照:登記手続案内|法務局
日本政策金融公庫
主に創業融資に関する専門的な相談窓口ですが、融資の前提となる事業計画書の作成についてアドバイスを受ける過程で、法人化に関する相談も可能です。特に、自己資金だけでは設立後の資金需要(資本金・運転資金)に対応しづらい場合や、法人化のタイミングで創業融資を検討する際に適した窓口です。
法人化のサポートの依頼で後悔しないためのポイント
適切なサポートを受け、法人化を成功させるためには、事前の準備と慎重な専門家選びが重要です。費用だけでなく、専門性や相談のしやすさといった相性も考慮して判断しましょう。
相談前に準備しておくべきこと
専門家への相談を実りあるものにするため、事前に以下の情報をまとめておきましょう。
- 事業内容や収益状況、今後の事業計画:
過去数年分の確定申告書や、今後の売上・利益目標などを具体的に説明できるようにします。 - 会社の基本事項の案:
商号(会社名)、本店所在地、資本金の額、事業目的、役員構成などをあらかじめ複数案考えておくとスムーズです。 - 法人化の目的と質問事項:
なぜ法人化したいのか(節税、信用力向上など)、専門家に何を聞きたいのかをリストアップしておくことで、相談時間を効率的に使えます。
専門家の選び方と確認事項
専門家を選ぶ際は、複数の候補者と面談し、比較検討することが大切です。
- 実績と専門性:
自社の業界や事業規模に近い会社の設立実績が豊富かを確認しましょう。特に、IT、建設、飲食など、業界特有の事情に詳しい専門家は頼りになります。 - コミュニケーションの相性:
専門用語をわかりやすく説明してくれるか、質問しやすい雰囲気かなど、長期的に付き合える相手かを見極めます。レスポンスの速さも重要な判断材料です。 - 料金体系の明確さ:
見積もりの範囲が明確かを確認し、基本料金と追加料金の線引きを把握しておきましょう。「設立手数料0円」と謳っていても、高額な顧問契約が必須の場合もあるため注意が必要です。
最適な法人化サポートを見つけるために
法人化を成功させるには、まず自社の目的と課題を明確にすることがスタートラインです。そのうえで、目的に合った最適な専門家やサポートを選ぶことが不可欠ではないでしょうか。税務面を重視するなら税理士、手続きの正確性を求めるなら司法書士、そして費用を抑えたい場合は公的機関の無料相談を活用するとよいでしょう。
相談前には事業計画や質問事項を整理しておくことで、より具体的で有益なアドバイスを得られます。この記事が、あなたの事業を次のステージへと導く、信頼できるパートナーを見つける一助となれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会社設立の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
法人成りのメリットとデメリットは?個人事業主向けに解説!
起業するときは、はじめから法人を設立する場合と、まずは個人事業でスタートしてあとで法人を設立する場合があります。個人事業から法人を設立することを「法人成り」と呼びます。 個人事業でスタートして事業が軌道に乗ってくると、一度は法人成りを考える…
詳しくみる家賃収入を法人化すべき基準は?メリット・デメリットや手続きを解説
家賃収入がある場合に法人化するかどうか判断する基準は、不動産所得を含めた所得全体の金額です。所得が800万円を超える場合は、法人化を検討しましょう。 本記事では、家賃収入を法人化するタイミングやメリット・デメリット、必要な手続きや注意点を解…
詳しくみるプロ野球選手は法人化すべき?税金のメリットや会社設立の方法を解説
プロ野球選手の法人化は、税金対策や将来のキャリア形成における重要な選択肢のひとつです。ただし、法人化にあたってはメリットやデメリットを把握し、適切なタイミングを見極める必要があります。 本記事では、プロ野球選手が法人化すべきかどうか、そのメ…
詳しくみる美容室を法人化するタイミングは?メリット・デメリットや手続きの流れを解説
美容室の法人化とは、個人事業主として経営している美容室を法人経営に変更することです。法人化は、節税などの観点から、売上が伸びてきたタイミングで検討することもあります。美容室が法人化するメリット・デメリットや手続きなどについて解説します。 美…
詳しくみる【2025年】起業に使える補助金・助成金は?税金の扱いも解説
起業や開業を考えている方にとって、国や自治体が提供する補助金や助成金は心強い味方です。特に返済が原則不要の補助金は、自己資金を抑えながら事業をスタートできるチャンスとなります。 しかし、制度の種類が多く、申請のタイミングや条件もさまざまで、…
詳しくみる法人化でよくある失敗は?後悔しないための判断基準やあえて法人化しない選択肢を解説
法人化は、事業拡大を目指す多くの個人事業主にとって一つの大きな目標です。しかし、その一方で「こんなはずではなかった」と後悔の念を抱く経営者がいるのも事実です。 この記事では、法人化でよくある失敗パターンと、後悔しないための判断基準を詳しく解…
詳しくみる