• 作成日 : 2025年10月24日

住宅ローン控除で節税するには?条件・手続き・注意点を解説

マイホームの購入は人生の大きな節目ですが、同時に多額の費用を伴う一大イベントでもあります。そうした住宅取得を支援する制度として注目されているのが「住宅ローン減税」です。住宅ローンの年末残高に応じて、最大13年間にわたり所得税や住民税が控除されるこの制度は、条件を満たせば節税効果も期待できます。

本記事では、適用条件や控除額、注意点などを解説します。

住宅ローン減税にはどんな節税効果がある?

住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)とは、住宅ローンを借りてマイホームを取得・新築・増改築した人が、年末時点のローン残高の0.7%相当額を所得税から控除できる税制優遇制度です。一部控除しきれない場合は翌年度の住民税からも差し引かれるしくみになっています。控除期間は入居時期・住宅区分により異なり、新築は原則13年、既存住宅等は10年です。

住宅ローンを利用することで所得税・住民税の負担が長期間軽減されるため、マイホーム取得後の家計を大きく助ける節税効果があります。

住宅ローン減税でいくら税金が安くなる?節税額の目安

住宅ローン減税は、マイホーム取得にともなう金利負担を軽減するための制度で、年末時点のローン残高に応じた金額が所得税や住民税から控除されます。控除額の上限は住宅の性能や世帯属性によって異なり、一定の条件を満たせば大幅な節税が期待できます。ここでは控除額の目安をわかりやすく解説します。

年末残高の0.7%が税額控除される仕組み

住宅ローン減税では、年末時点のローン残高の0.7%がその年の所得税から控除されます。仮に年末の借入残高が3,000万円であれば、0.7%にあたる21万円が所得税から差し引かれます。住民税からの控除は原則、翌年度の所得割額の5%かつ上限9.75万円までです(過去入居の経過措置では7%・13.65万円の場合があります)。

この控除は毎年の年末残高に基づいて計算されるため、ローン返済が進むごとに控除額は徐々に減少していきます。たとえば残高が2,000万円に減れば控除額は14万円、1,000万円まで減れば7万円になります。最大で13年間にわたり減税が続くため、合計では100万円以上の節税につながるケースも一般的です。

借入限度額と住宅性能による控除額の違い

控除の対象となる借入残高には上限が設けられており、その上限額は住宅の性能や世帯の属性によって異なります。以下のような上限が設定されています。

  • 省エネ基準適合住宅:上限3,000万円
  • ZEH水準の省エネ住宅:上限3,500万円
  • 認定長期優良住宅:上限4,500万円

「子育て世帯」または「若者夫婦世帯」に該当する場合は、上記の一般世帯の上限にさらに加算されます。

たとえば、子育て世帯が認定長期優良住宅を取得した場合、最大5,000万円までの借入が控除対象となり、年間35万円(5,000万円×0.7%)の税額控除を受けることが可能です。この控除が13年間続けば、合計最大455万円の節税効果が得られます。

ただし、実際に控除される金額は、納めている所得税と住民税の範囲内に限られるため、収入の少ない方では全額控除されないケースもあります。控除額と自身の納税額とのバランスを見極めることが大切です。

住宅ローン減税を受けるための条件は?

住宅ローン減税を利用するには、住宅の用途・性能、ローンの内容、申請者の所得や居住実態など、多岐にわたる要件を満たす必要があります。誤って対象外とならないよう、条件を確認しておきましょう。

居住用住宅であることと、入居時期に関する条件

住宅ローン減税は、あくまでも本人が住むマイホームを取得した場合に限られます。賃貸用、セカンドハウス、別荘、家族名義の家など、自分自身が居住しない物件は対象外です。また、購入や建築後は速やかに住み始める必要があり、取得から6か月以内に入居し、その年の12月31日まで継続して居住していることが求められます。

この「居住の実態」がないと、住宅の引渡しが完了していても減税は適用されません。転勤で入居が遅れたり、工事が長引いて入居が年をまたいだ場合などは、初年度の控除が受けられなくなることがあるため、入居のタイミングにも注意が必要です。

床面積と所得による要件(40㎡特例も含む)

原則として、住宅ローン減税を受けるための住宅の床面積は50㎡以上が必要です。ただし、2025年12月31日までに建築確認を受けた新築住宅については、合計所得金額が1,000万円以下の人に限り、床面積40㎡以上50㎡未満の物件も対象となる特例措置が延長されています。

この「40㎡特例」は、都市部の狭小住宅や単身・DINKs向け住宅を支援する目的で導入されました。ただし、この特例を利用する場合、控除期間中に所得が1,000万円を超えた年は、その年の控除は適用されません。また、50㎡未満の物件はフラット35などの融資審査にも影響する場合があるため、制度利用と住宅ローンの条件を併せて確認しておくことが重要です。

返済期間10年以上の住宅ローンであること

減税の対象となるのは、返済期間が10年以上の住宅ローンに限られます。一括返済や短期ローン、10年未満で繰上返済を予定している場合などは、制度の対象外となる可能性があります。また、控除期間中に完済してしまうと、その年以降の控除が受けられなくなります。

住宅ローン減税の恩恵を最大限に受けるには、できる限り10年以上の返済期間を設定し、年末時点でローン残高が残っている状態を維持することが前提となります。

所得金額の上限(2,000万円以下)

申請者の合計所得金額が2,000万円を超える年は、その年の住宅ローン控除が適用されません。給与収入のみの場合、おおよそ年収2,195万円を超えると対象外となるため、高所得者層は要注意です。

なお、「合計所得金額」は各種控除前の金額で判断され、他に副収入や不動産所得などがある場合も合算されます。収入構成によっては見落としやすいため、確定申告時などに正確な額を把握しておく必要があります。

中古住宅の耐震要件

住宅ローン減税を受けるためには、住宅が「新耐震基準」に適合していることが条件となります。これは、1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物を指し、地震に対して一定の安全性が確保されていることを意味します。中古住宅の場合も、築年数の制限は撤廃され、この新耐震基準への適合が確認できれば減税の対象となります。適合証明書や住宅性能評価書などによって基準適合を証明する必要があります。

新築住宅の省エネ基準適合要件

2024年以降に建築確認を受けた新築住宅については、省エネ基準(断熱性能等級4・一次エネルギー消費等級4以上)に適合していない住宅は、原則として住宅ローン減税の対象外となっています。

ただし、2023年末までに建築確認を受けた住宅、または2024年6月末までに着工した住宅については、経過措置として借入限度額2,000万円・控除期間10年の枠内で減税を受けられます。それ以外の非適合住宅については控除が認められないため、新築住宅の計画段階から省エネ基準への適合状況を確認しておくことが不可欠です。

これらの条件を満たしてはじめて住宅ローン減税の対象となります。住宅の選定段階から制度の要件を意識し、購入後に適用漏れがないよう手続きを進めることが大切です。

2025年度の税制改正で住宅ローン減税はどう変わった?

2025年度の税制改正では、住宅ローン減税を中心に、子育て世帯や省エネ住宅取得者を支援する既存の優遇措置が引き続き実施されることが決まりました。以下、改正内容を見ていきます。

子育て世帯・若者夫婦世帯への借入限度額の上乗せが継続

2025年(令和7年)入居分についても、子育て世帯および若者夫婦世帯に対する住宅ローン控除の借入限度額上乗せ措置が継続されました。

  • 【子育て世帯】:19歳未満の扶養親族がいる世帯
  • 【若者夫婦世帯】:夫婦いずれかが40歳未満の世帯

この対象となる世帯が取得する住宅の種類に応じて、以下のような借入残高の上限が適用されます。

住宅の区分借入限度額(一般世帯)借入限度額(子育て世帯・若者夫婦世帯など優遇世帯)
認定長期優良住宅・低炭素住宅4,500万円5,000万円
ZEH水準省エネ住宅3,500万円4,500万円
省エネ基準適合住宅3,000万円4,000万円

これにより、最大455万円(5,000万円 × 0.7% × 13年)の控除を受けられる可能性が維持され、住宅取得を支援する手厚い制度となっています。

床面積要件の緩和特例が2025年末まで延長

住宅ローン控除の適用要件である床面積50㎡以上という原則に対し、所得1,000万円以下の世帯に限定して、床面積40㎡以上50㎡未満の住宅も対象とする特例措置の延長が決まりました。

この特例は、以下の条件を満たす場合に適用されます。

  • 対象住宅が2025年12月31日までに建築確認を受けていること
  • 控除を受ける年の合計所得金額が1,000万円以下であること

控除期間中に所得が基準を超えると、その年は適用除外となるため、所得見通しを含めたライフプラン設計が重要です。都市部に多いコンパクト住宅やマンションなど、小規模住宅の購入にも対応できる制度となっています。

参考:国土交通省|住宅ローン減税

住宅ローン減税を受けるための手続きは?

住宅ローン減税は、正しく申請することで長期間にわたり所得税・住民税の負担を軽減できる制度です。ただし、控除を受けるためには年ごとに適切な手続きが必要です。

初年度は確定申告が必須

住宅ローン控除を受ける最初の年(入居初年度)は、給与所得者であっても原則として自分で確定申告を行う必要があります。

確定申告では、次のような書類を用意して税務署に提出します。

  • 金融機関発行の「住宅ローン残高証明書」
  • 市区町村で取得する住民票
  • 不動産登記に関する「登記事項証明書」
  • 売買契約書や建築請負契約書(写し)など

これらを揃え、年末時点のローン残高に応じた控除額を申告することで、所得税からの控除を受けることができます。初めての手続きでは、必要書類が多く戸惑う場合もあるため、入居後はできるだけ早めに書類の準備を進めておくことがポイントです。

2年目以降は年末調整で申請可能

初年度に確定申告を行うと、税務署から翌年以降の控除申告に必要な「住宅借入金等特別控除申告書」が送付されます。これを勤務先に提出すれば、2年目以降は会社の年末調整で控除を受けられるようになります。

以下の2点を、毎年勤務先へ提出します。

  • 税務署から届く「住宅借入金等特別控除申告書」
  • 金融機関から届く「残高証明書」

これにより、確定申告を行わずに控除を継続できるため、給与所得者(会社員・公務員)にとっては手続き簡略化となります。

住宅ローン減税を受けるための注意点とは?

住宅ローン減税はメリットの大きい制度ですが、適用にあたってはいくつかの注意点があります。控除額の上限や繰上げ返済との関係、他の支援制度との併用可否などは、あらかじめ理解しておかないと減税効果を最大限に活かせない可能性があります。ここでは代表的な注意点を解説します。

控除額は実際の納税額が上限になる

住宅ローン減税は「税額控除」であり、あくまで実際に支払っている所得税および住民税から差し引かれる仕組みです。控除額は年末時点の住宅ローン残高の0.7%で計算されますが、その金額がそのまま減税されるとは限りません。

たとえば、ローン残高が3,000万円ある場合、控除額の計算上は21万円になりますが、その年に支払った所得税が15万円しかなければ、その15万円が控除の上限となります。さらに、住民税から差し引ける額にも上限があり、年間最大で約13.65万円までとされています。

つまり、ローン残高が多くても、納税額が少なければ控除しきれないということになります。制度の恩恵を受けるには、自身の収入や税額を把握したうえで、現実的な控除額を見積もることが重要です。

繰上げ返済は控除の減額につながる可能性がある

住宅ローンの繰上げ返済を行うと、ローン残高が減るため、控除額も減少します。繰上げ返済は利息の軽減という点では非常に有効ですが、住宅ローン減税の観点では注意が必要です。

たとえば、控除期間が残っている間に大きく繰上げ返済してしまうと、その後のローン残高が小さくなり、0.7%の計算基準も小さくなってしまいます。その結果、減税額が想定よりも減ってしまうことがあります。

控除を最大限に活用したい場合は、控除期間が終了してから繰上げ返済を行うという判断も選択肢のひとつです。ただし、金利負担やライフプランとの兼ね合いもあるため、慎重な検討が求められます。

他の支援制度との併用も視野に入れる

住宅取得時には、住宅ローン減税以外にもさまざまな支援制度があります。たとえば以下のような制度との併用が可能なケースも多く、より大きな節税や補助を受けられる可能性があります。

  • 住宅取得等資金の贈与税非課税特例
  • 子育てエコホーム支援事業
  • 自治体の住宅取得補助金や固定資産税の軽減措置

これらの制度は、対象となる住宅や世帯の属性(省エネ性能、子育て世帯など)によって適用条件が異なるため、事前に国・自治体の制度情報を確認し、総合的に活用計画を立てることが望ましいです。

住宅ローン減税制度を理解して賢く節税しよう

住宅ローン減税はマイホーム購入者にとって心強い節税制度であり、長期にわたり家計の税負担を軽減してくれます。子育て世帯や環境性能の高い住宅への優遇が維持され、場合によっては数百万円規模の減税効果を享受できる大きなチャンスと言えます。ただし、適用を受けるための条件が細かく定められている点や、制度の適用期限に留意が必要です。最新の税制改正内容を正しく理解し、必要な手続きを踏んで住宅ローンによる節税メリットを最大限に活用しましょう。


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