• 作成日 : 2025年7月23日

法人化したらクレジットカードは作るべき?おすすめの法人カードの選び方も解説

法人化に伴い、経費の管理方法や資金繰りなど、個人事業主の時とは異なる視点での対応が求められます。特に、日々の支払いに欠かせないクレジットカードの扱いは、法人化を機に見直すべき重要なポイントの一つです。

この記事では、法人化に伴うクレジットカードの変更点、法人カードのメリット・デメリット、そして自社に最適なカードを選ぶための具体的なポイントについて分かりやすく解説します。

法人化したらクレジットカードは作るべき?

法人成りや会社設立をすると、これまで個人名義で利用していたクレジットカードの扱いはどうなるのでしょうか。結論から言うと、法人としての事業経費の支払いは、法人名義のクレジットカード(以下、法人カード)で行うのが原則です。

法人カードの名義は法人名(または屋号と代表者名)となり、利用代金の引き落とし口座も法人口座を指定するのが一般的です。

法人カードは個人カードと比較して、主に以下の点が異なります。

  • 利用限度額
    一般的に個人カードよりも高めに設定される傾向があります。
  • 付帯サービス
    ビジネスに特化したサービス(会計ソフト連携、出張サポート、福利厚生サービスなど)が充実しています。
  • 経費管理機能
    社員用追加カードの発行や、経費の一元管理がしやすい仕組みが備わっています。

個人事業主の時に使っていた個人カードをそのまま事業経費の支払いに使い続けることは、公私混同を招き、税務処理も煩雑になるため避けるほうが良いでしょう。法人化のタイミングで、速やかに法人カードの導入を検討しましょう。

法人化のタイミングでクレジットカードを導入するメリット

法人カードを導入することは、単に支払いが便利になるだけでなく、企業経営全体に多くのメリットをもたらします。

経費管理の効率化と透明性向上

法人カードを利用する最大のメリットの一つは、経費管理の大幅な効率化です。社員に追加カードを発行すれば、誰がいつ何にいくら使ったのかが一目瞭然となり、経費の立替や精算業務の手間を削減できます。また、利用明細は会計ソフトと連携可能な場合が多く、仕訳作業の自動化も進められます。これにより、経理担当者の負担が軽減されるだけでなく、人的ミスの防止や経費の透明性向上にも繋がり、健全な企業経営に貢献します。

キャッシュフローの改善

法人カードの利用は、キャッシュフローの改善にも役立ちます。支払いから引き落としまでに猶予期間があるため、実質的な支払いサイトを延長する効果があります。特に高額な支払いが発生する場合や、急な出費が必要になった際に、手元資金を温存しつつ対応できるのは大きな利点です。資金繰りに余裕を持たせることで、より安定した経営基盤を築くことができます。

社会的信用の向上

法人カードを保有していることは、対外的な信用度を高める一因となります。特に設立間もない企業や中小企業にとって、クレジットカード会社の審査を通過したという事実は、一定の支払い能力や事業の継続性があると見なされる材料になり得ます。取引先との会食や出張時の支払いなど、ビジネスシーンにおいて法人カードを提示することは、スマートな印象を与え、企業としての信頼感を醸成する助けとなるでしょう。

振込手数料の削減と手間軽減

取引先への支払いを銀行振込で行う場合、都度、振込手数料が発生し、手続きにも手間がかかります。法人カードで支払えるものはカード払いに切り替えることで、これらの手数料や手間を削減できます。

ガバナンスの強化

法人カードの利用ルールを社内で明確にすることで、経費利用の適切性を保ち、内部統制の強化にも繋がります。不正利用の抑止効果も期待できるでしょう。

法人化のタイミングでクレジットカードを導入するデメリット

多くのメリットがある法人カードですが、導入にあたってはいくつかのデメリットや注意点も理解しておく必要があります。これらを事前に把握し、対策を講じることで、よりスムーズな運用が可能になります。

年会費が発生する場合がある

法人カードの中には、年会費が必要なものが多く存在します。年会費はカードのグレードや付帯サービスの内容によって異なり、無料のものから数万円、あるいはそれ以上かかる場合もあります。年会費の負担がデメリットと感じられる場合は、年会費無料のカードや、年会費以上の価値がある付帯サービスやポイント還元が期待できるカードを慎重に選ぶことが重要です。費用対効果を十分に比較検討しましょう。

審査基準が個人カードと異なる

法人カードの審査は、個人カードの審査とは基準が異なります。法人の場合は、設立年数、事業実績、財務状況などが総合的に評価されます。そのため、「起業したばかりでクレジットカードが作れないのでは…」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。特に設立間もない企業や、赤字決算が続いている企業は、審査に通りにくい場合があります。合同会社の場合でも、株式会社と同様に法人の経営実態が審査対象となりますが、法人の形態自体が直接的に不利になることは少ないでしょう。

合同会社でも審査基準は株式会社と同様

合同会社の場合でも、株式会社と同様に法人の経営実態が審査対象となります。法人の形態自体が直接的に不利になることは少ないですが、設立したばかりの合同会社であれば、事業計画の明確さや代表者の信用情報などがより重視される傾向にあります。

私的利用は厳禁

法人カードは、あくまで事業経費の支払いのために発行されるものです。そのため、代表者や従業員が私的な目的で法人カードを利用することは原則として認められません。万が一、私的利用があった場合は、経費として計上できないため、会計処理が複雑になります。税務調査で指摘を受けるリスクもあるため、社内で利用ルールを明確にし、私的利用を厳しく禁止することが重要です。

法人設立時におすすめのクレジットカードの選び方

ここでは、法人カード選びで失敗しないために押さえておくべき重要なポイントを解説します。

年会費と付帯サービスのバランス

前述の通り、法人カードには年会費がかかるものが多いです。年会費の金額だけでなく、その年会費に見合うだけの付帯サービスがあるかどうかが重要な比較ポイントです。例えば、出張が多い企業であれば空港ラウンジサービスや旅行傷害保険が充実しているカード、接待が多い企業であればレストラン優待が付いているカードなどが候補になります。自社の利用シーンを具体的に想定し、本当に必要なサービスを見極めましょう。

利用限度額

法人カードの利用限度額は、事業規模や業種、月々の経費額によって必要な金額が異なります。高額な仕入れや設備投資、広告費の支払いなどがある場合は、十分な利用限度額が設定されているカードを選ぶ必要があります。カード会社やカードの種類によって限度額は大きく異なるため、申し込み前に確認が必要です。また、将来的な事業拡大を見越して、限度額の増額が可能かどうかもチェックしておくと良いでしょう。

ポイント還元率やマイル付与率

経費の支払いを通じてポイントやマイルを効率的に貯めたい場合は、還元率や付与率の高いカードを選びましょう。ポイントの使い道や有効期限も確認が必要です。特定の店舗やサービスで還元率がアップする特典が付いている場合もあるため、自社の経費支出の内訳と照らし合わせて、最もメリットの大きい法人カードを選択することが重要です。

追加カードの発行枚数

従業員にも法人カードを持たせて経費精算を効率化したい場合は、追加カードの発行可能枚数や年会費を確認しましょう。企業規模によっては、多くの従業員に追加カードを発行する必要があるかもしれません。また、追加カードごとに利用限度額を設定できるか、利用明細が個別に確認できるかなど、管理のしやすさも重要なポイントです。

国際ブランドの利便性

利用可能な国際ブランド(Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Clubなど)も、法人カード選びの重要な判断基準の一つです。国内利用が中心であればどのブランドでも大きな問題はありませんが、海外出張や海外からの仕入れが多い場合は、世界的に加盟店数の多いVisaやMastercardが便利です。American ExpressやDiners Clubは、ステータス性が高く、独自の付帯サービスが充実している傾向があります。

会計ソフトとの連携機能

経理業務の効率化を重視するなら、利用している会計ソフトと連携できる法人カードを選ぶのがおすすめです。カードの利用明細データを自動で取り込み、仕訳作業を簡略化できるため、経理担当者の負担を大幅に軽減できます。多くのクラウド会計ソフトが主要な法人カードとの連携機能を提供しているので、導入前に確認しておきましょう。

法人設立直後や1年未満の会社でもクレジットカードを作れる?

「起業したばかりで実績がないから法人カードは作れないのでは…」という不安は、多くの経営者が抱える悩みです。確かに、法人カードの審査では企業の経営状況が重視されますが、設立直後や設立1年未満の企業、新規参入企業でも発行可能な法人カードは存在します。詳細は以下の記事もご参照ください。

法人設立後にクレジットカードを活用するポイント

法人カードを導入しただけで満足せず、そのメリットを最大限に引き出すためには、適切な運用が不可欠です。社内でのルール作りから不正利用対策まで、効果的な活用ポイントを押さえておきましょう。

社内ルールの整備と周知徹底

法人カードを複数人で利用する場合は、明確な社内ルールを整備し、従業員に周知徹底することが重要です。例えば、利用可能な経費の範囲、利用上限額、経費精算の手順、紛失・盗難時の対応などを具体的に定めます。これにより、不正利用や私的利用を防ぎ、経費管理の透明性を高めることができます。定期的な研修やマニュアルの配布なども有効です。

利用明細の定期的な確認

法人カードの利用明細は、毎月必ず確認するようにしましょう。誰がいつ、何に利用したのかを把握することで、無駄な支出の発見や不正利用の早期発見に繋がります。会計ソフトと連携している場合でも、明細内容と実際の経費に相違がないかを確認する作業は重要です。定期的なチェック体制を確立し、経費の適正化を図りましょう。

不正利用対策

法人カードの紛失や盗難、スキミングなどによる不正利用のリスクにも備える必要があります。カード会社が提供する不正利用検知システムや、カード利用時の通知サービスなどを活用しましょう。また、従業員に対して、カード情報の適切な管理方法を指導することも重要です。万が一不正利用が疑われる場合は、速やかにカード会社に連絡し、指示を仰ぎましょう。

法人化したらクレジットカードの導入を検討しましょう

法人化は、事業を新たなステージへと進める大きな転換期です。このタイミングで法人カードを導入することは、経費管理の効率化、キャッシュフローの改善、社会的信用の向上など、企業経営に多くのメリットをもたらします。

自社の事業規模や業種、利用目的に合ったクレジットカードを選び、適切な運用ルールを定めることで、その効果を最大限に引き出すことができます。本記事で解説したポイントを参考に、ぜひ貴社に最適な一枚を見つけ、法人経営のさらなる発展にお役立てください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事