- 更新日 : 2024年11月28日
個人事業主・自営業・フリーランスの違いは?メリット・デメリットも解説!
事業を始めるにあたって、税金面などでは「個人事業主」「自営業」「フリーランス」のいずれがよいか迷うケースがあります。今回は、個人事業主、自営業、フリーランスとは何かについて解説しながら、それぞれのメリット・デメリットや個人事業主になれないケース、個人事業主をやめた方がいい年収などについて解説します。
目次
個人事業主・自営業・フリーランスの違いとは?
はじめに、個人事業主・自営業・フリーランスの違いについて見ていきましょう。
個人事業主とは
個人事業主とは、個人で事業を行う人のことです。働き方というよりも、税金を課すための区分という面が強い名称です。そのため、個人事業主になるためには、税務署に開業届を提出し、毎年、確定申告を行う必要があります。
法人組織である法人に対して、個人で働く個人事業主という税金面での分け方です。
自営業には個人事業主と法人が含まれる
自営業とは、他の会社組織に所属せず、自己の責任において事業を行う人を指します。自営業と言えば個人で事業を営む個人事業主をイメージしがちですが、法人を設立して経営者になるケースも広義の自営業に該当します。
フリーランスは働き方・契約内容のこと
フリーランスとは、働き方や仕事の受注形態を指す言葉です。フリーという言葉から自営業をイメージしがちですが、フリーランスは複数の企業と自由に契約を交わし、自分のスタイルで事業を行う働き方のことをいいます。
個人事業主のメリット・デメリット
個人事業主は税金面での分け方であるため、税金についてのメリット・デメリットを見ていきましょう。
個人事業主のメリット
- 青色申告の特典が受けられる
- 所得が低い場合は、法人より税率が低い
青色申告を行えば、最大65万円の青色申告特別控除を受けることができ、赤字を3年間繰り越すことができるなどの特典を受けられます。また、法人に比べて、所得が低い場合は税率が低くなるため、節税になります。
個人事業主のデメリット
- 確定申告が必要
- 所得が高い場合は、法人より税率が高い
会社員の場合は、勤め先が税金の計算や手続きをしてくれますが、個人事業主になると自分で税金の計算を行い、確定申告をする必要があります。そのため、事務作業も多くなり、負担も大きくなります。また、法人に比べて、所得が高い場合は税率が高くなるデメリットもあります。
自営業のメリット・デメリット
自営業のメリット・デメリットは、次のようになります。
自営業のメリット
- 頑張り次第で収入が増える
- 定年退職がない
- 自由に働ける
会社員の収入は会社からの給与ですが、歩合給を除いて一般的には毎月定額の収入(所得)を得ることしかできません。これに対して自営業は、自分の力で収入を増やせば上限なく所得を増やすことが可能です。また、定年退職がないため、老後の生活の心配が少なく、自由な時間や場所で働くことができるなどのメリットもあります。
自営業のデメリット
- 収入が安定しない
- ケガや病気の補償がない
自営業のデメリットとして、収入が安定しないことが挙げられます。会社員のように決まった給料を受け取れるわけではないので、独立したら、会社員時代よりも収入が減ったということもあります。また、ケガや病気をした場合に、補償がないデメリットもあります。
フリーランスのメリット・デメリット
フリーランスのメリット・デメリットは、次のようになります。
フリーランスのメリット
- 元手が少ない
- 多くの取引先と仕事ができる
- 好きな場所で仕事ができる
フリーランスといえば、好きな場所で仕事ができるメリットを思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、それ以外にも、元手が少なくてもできるというメリットがあります。
お店のように、商品を販売する場合は、商品を仕入れする必要があり、元手が必要です。しかし、例えば、プログラマーや執筆業のように、自分のスキルで勝負できる人は、少ない元手で仕事を始めることができます。
フリーランスのデメリット
- 事業規模、信用力が小さい
- 収入が安定しない
フリーランスの大きなデメリットは、事業規模や信用力が小さいことです。大手の会社では、法人しか相手にしない所も多く、事業を拡大できないこともあります。
個人事業主とフリーランスはどっちがいい?
個人事業主が働き方ではなく個人で事業を行う「事業の形態」を指すのに対し、フリーランスは企業に所属せず自由に仕事を請け負う「仕事の受注形態」を指します。両者は対等に比較するものではなく、「個人事業主としてフリーランスで働く」こともあり得ます。
個人事業主とフリーランスを選択する手順としては、まず「仕事の受注形態」から判断してみてください。例えば、フリーランスのメリットとして挙げた多くの取引先と自由に契約できる目途があればフリーランスを選択するべきでしょう。その上で、発注先を法人に限定している取引先が多ければ、「事業の形態」として個人事業主ではなく法人化を検討するのも1つの方法です。
個人事業主・自営業・フリーランスの税金や社会保険は?
個人事業主・自営業・フリーランスにとって気になるのが、税金や社会保険のことです。
個人事業主・自営業・フリーランスの税金
個人事業主の場合、4種類の税金が課税されるケースがあります。
- 所得税
個人事業主が得た所得に対して課税される国税です。 - 個人住民税
所得税と同じく、個人事業主が得た所得に対して課税される地方税です。 - 個人事業税
事業で得た所得が一定額を超えた場合に課税される地方税です。 - 消費税
基準期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合や、前年の1月~6月の課税売上高が1,000万円を超えた場合に課税される国税です。インボイス制度の施行に伴い、消費税の課税事業者を選択した人にも納税義務があります。
なお、自営業やフリーランスで法人組織にしている場合は、毎年、法人決算を行い、法人税の申告と納税を行う必要があります。
個人事業主の税金について詳しく知りたい方は、以下のリンクを参照してください。
個人事業主・自営業・フリーランスの社会保険
社会保険については、個人の場合で従業員がいない場合は、加入の義務はありません。法人や従業員が常時5人以上の個人は、強制的に社会保険に加入しなければなりません。従業員が5人未満の個人は、任意加入になります。
個人事業主・自営業・フリーランスの年金
従業員がいない個人の場合、国民年金に加入しなければなりません。国民年金は厚生年金部分の受給加算がないため、将来受け取る年金額が厚生年金に比べて低くなります。受給額不足を補うためには、iDeCo(個人型確定拠出年金)や国民年金基金、小規模企業共済など、年金の上乗せ制度に今から加入しておく必要があります。なお、法人や従業員が常時5人以上の個人は、厚生年金に強制加入となります。
個人事業主・自営業・フリーランスのはじめ方は?
次に、個人事業主・自営業・フリーランスのはじめ方について見ていきましょう。
個人の場合は開業届が必要
個人の場合は、保健所や消防署などの営業許可が必要な場合を除き、好きな時に仕事を始めることができます。ただし、税務署には、開業届が必要になります。
また、開業してから、初めて確定申告をするまでの間は、開業届が仕事を始めた証明になります。融資や補助金・給付金を受ける際に、開業届の提出を求められることもあるので、忘れずに、税務署に提出しておきましょう。
法人の場合は登記も必要
自営業やフリーランスで法人組織にしている場合は、定款の作成や法務局での設立登記が必要です。設立登記の完了後に、税務署などに設立届を提出します。
個人事業主が開業届を出してない場合はどうなる?
個人事業主の場合、開業の事実があった日から1ヶ月以内に、事業所の所在地を所轄する税務署や都道府県・市区町村に「開業届」を提出しなければなりません。開業届の提出は税法で定められており、必ず期限内に提出する必要があります。ただし、提出しなかった場合の罰則規定はなく、提出を促されたり、延滞金等のペナルティを課されたりすることはありません。
しかし、税務上の弊害がなくても開業届を出していないデメリットはあります。例えば、個人事業主が金融機関から運転資金等の融資を受ける際、事業の実態があることを証明する書類として開業届の提出を求められますが、未提出の場合、融資を受けられないことになります。その他にも様々な弊害があるため、開業届は必ず提出するようにしましょう。
個人事業主になれない人とは?
一般的に、個人事業主は誰でもなることができます。個人事業主の場合は、法人を設立する際の商業登記はなく、特別な資格等も必要ありません。営利を目的とし事業を継続して行う意思があれば、本業であれ副業であれ個人事業主として事業を行うことが可能です。
ただし、副業として事業を行うケースで注意が必要なのは「公務員」の方です。本業が公務員である場合、事業規模で副業を行うことは禁止されています。事業規模で行うのが個人事業主のため、結論として公務員は個人事業主にはなれません。
個人事業主をやめた方がいい年収は?
同じ労働時間でも、個人事業主としての所得が、給与所得者と比較して少ないのであれば、個人事業主として働くべきではないでしょう。いずれを選択すべきか判断する大まかな目安としては、「給与所得控除後の給与等の金額」を使って検討する方法があります。
例えば、個人事業主としての所得金額が1,069,000円である場合、給与に置き換えると年収約162万円(総支給額)になります。今と同じ労働時間で162万円以上の給与収入を稼げるのであれば、個人事業主になるべきではないでしょう。
参考:令和6年分 年末調整のしかた|国税庁、令和6年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表
なお、所得税法には「青色申告制度」という税法上の特例制度があります。事業所得から要件に応じて一定額を控除できる「青色申告特別控除」や、事業で赤字が出た場合に3年間繰り越しできる「純損失の繰り越し」など、節税につながる様々なメリットがある制度です。しかし、どれだけ年収が多くても、所得が少ない場合や経常的に赤字の場合、これら税法上の特典を受けるメリットがないため、あえて個人事業主にする必要はないでしょう。
個人事業主・自営業・フリーランスの違いは明確に!
個人で事業を立ち上げるにしても、様々な事業形態やそれぞれのメリット・デメリットがあります。また、似たような事業形態でも、「なれない」ケースや「やめておくべき」ケースがあります。まずは、個人事業主・自営業・フリーランスを1つずつ自身の事業に当てはめ、よりベストな事業形態を選択するようにしましょう。
よくある質問
個人事業主・自営業・フリーランスの違いとは
税金面での分け方や、働き方による分け方など、それぞれに違いがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主・自営業・フリーランスの税金は?
個人の場合は所得税を、法人組織の場合は法人税がかかります。詳しくはこちらをご覧ください。
個人事業主・自営業・フリーランスのはじめ方は?
個人の場合は開業届の提出が、法人の場合は設立登記が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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