- 作成日 : 2025年10月24日
土地売却で税金がかかる前に!自宅・相続・法人別の節税対策を解説
土地を売却すると、思いがけず高額な税金がかかることがあります。「譲渡所得税」は所有期間や取得費によって大きく変動し、事前の知識がないと損をする可能性もあります。
本記事では、土地売却に関する税金の基本から、マイホーム・相続・未利用地・法人売却など、状況別に使える節税制度を解説します。
目次
土地を売却するとどんな税金がかかる?
土地を売却した場合、利益が出れば「譲渡所得税」が課されるのが基本です。税負担の大きさは取得時期や売却費用によって変わり、「所有期間」による税率の違いが重要です。
譲渡所得にかかるのは所得税・住民税の合計
土地を売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その金額に対して所得税と住民税が課されます。
課税対象となる「譲渡所得」は、次の式で求めます。
取得費には、購入代金、仲介手数料、登録免許税、司法書士報酬などが含まれます。譲渡費用には、売却時に支払う仲介手数料や測量費、契約書の印紙代などが含まれます。
仮に取得費が不明な場合、売却価格の5%を「概算取得費」とすることもできますが、この場合は譲渡所得が大きくなり、結果として税負担も増える可能性が高まります。
この譲渡所得に対し、通常は以下の税率が課されます。
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:所得税の2.1%(=0.315%)
合計すると、約20.315%の税率となります。
所有期間が5年以下かどうかで税率が倍近く異なる
譲渡所得にかかる税率は、「所有期間」によって大きく異なります。 5年を超えて保有していた土地を売ると「長期譲渡所得」となり、上記の税率(約20.315%)が適用されます。一方、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、次のように大幅に税率が上がります。
- 所得税:30.63%
- 住民税:9%
- 復興特別所得税:所得税の2.1%(=0.63%)
- 合計:39.63%
つまり、短期所有の土地を売却すると、約2倍の税負担になることになります。
なお、所有期間の判定は「売却した日」ではなく、「売却した年の1月1日時点」で行われます。たとえば2020年7月に取得した土地を2025年7月に売却したとしても、2025年1月1日時点で所有期間が5年未満であれば「短期譲渡所得」となります。
マイホームを売却する場合の節税策は?
自宅(土地・建物)の売却では、通常の土地売却と異なり、税負担を大きく抑える特例制度が数多く用意されています。ここでは、マイホームを売却する際に使える節税策を紹介します。
居住用財産の3,000万円特別控除
自宅を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける制度です。正式名称は「居住用財産の譲渡所得の特別控除」です。たとえば2,800万円の利益が出た場合、その全額が控除され、譲渡所得税はかかりません。3,000万円を超える利益が出た場合でも、まず3,000万円を控除した残りに対して課税されます。
居住用財産の3,000万円特別控除の主な要件は、①自己の居住の用に供していた家屋とその敷地の譲渡であること(住まなくなってから原則3年目の年末までの譲渡を含む)、②譲渡先が親子・夫婦など特別関係者でないこと、③同一の特例を過去2年以内に受けていないこと、④譲渡時に他人に貸付け等していないこと、⑤確定申告で必要書類を提出すること、です。
3,000万円特別控除を受けた年の「前年・当年・翌年」に居住の用に供した住宅については、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は適用できません。軽減税率の特例とは併用可です。
10年超所有の軽減税率の特例
所有期間が10年を超えるマイホームを売却した場合、税率が優遇される特例です。通常、長期譲渡所得の税率は約20.315%ですが、この特例を使えば譲渡所得6,000万円以下の部分は14.21%(所得税10.21%、住民税4%)となり、大きな減税効果があります。6,000万円を超えた分も通常の税率が適用されるため、特に高額売却の際に有効です。
要件は、①売却年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていること、②親族などへの売却でないこと、③過去2年以内に同特例を利用していないことなどです。3,000万円特別控除との併用も可能で、併せて活用すれば課税所得を圧縮しつつ税率も下げられます。
買い換え時の課税繰り延べ(買換え特例)
売却益に対する課税を将来に繰り延べる特例です。これが「特定の居住用財産の買換え特例」です。売却価格より高いマイホームを新たに取得すれば、売却で得た譲渡益に対して当年は課税されず、将来の売却時まで繰り延べられます。購入額が売却額未満の場合も、その差額にのみ課税され、残りは繰り延べ対象になります。
要件は、①売却代金が1億円以下であること、②買い替え先が国内の居住用不動産であること、③売却前年〜翌年2年後までの一定期間内に取得すること、④旧居・新居とも所有期間10年超であること、などです。注意点として、3,000万円控除や軽減税率特例との併用はできず、いずれかを選択する必要があります。
参考:No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
譲渡損失の損益通算・繰越控除
マイホーム売却で損失が出た場合でも税制上の救済措置があります。それが「譲渡損失の損益通算・繰越控除」です。たとえばローン残債が3,000万円あるのに2,500万円でしか売れなかった場合、500万円の譲渡損失が出ます。この損失は給与など他の所得と相殺(損益通算)でき、控除しきれない場合は翌年以降3年間にわたり繰り越すことが可能です。
適用には、住宅ローンの残高要件や売却対象の住宅が実際に居住していたものであることなど、一定の条件を満たす必要があります。買い替えの有無によって適用パターンが異なるため、ケースごとの確認が重要です。
相続した土地を売却する場合の節税特例は?
相続で取得した土地や建物を売却すると、取得費が低くなる傾向があり、譲渡所得が大きく課税額も重くなりがちです。しかし、「取得費加算の特例」や「相続空き家の3,000万円控除」といった制度を活用すれば、大きな節税が可能になります。
取得費加算の特例|相続税を取得費に上乗せできる
相続税を支払った場合、そのうち一定額を譲渡資産の取得費に加算し、譲渡所得を圧縮できる制度です。
主な条件は以下のとおりです。
- 売却する資産が相続または遺贈による取得であること
- 相続税が実際に課税・納付されていること
- 相続開始の翌日から、相続税の申告期限(10か月後)の翌日以降3年以内に売却していること(=相続からおよそ3年10か月以内)
- 加算できるのは、売却資産に対応する相続税額のみ
- 売却者は相続人本人であること
適用には「取得費加算の明細書」などを確定申告書に添付します。
空き家の3,000万円特別控除|実家の売却に使える制度
相続した空き家を売却する際、最大3,000万円を譲渡所得から控除できる特例です。2027年末までの譲渡が対象です。
主な条件は以下のとおりです。
- 相続した家屋とその敷地であること
- 被相続人が亡くなる直前まで一人暮らしをしていたこと
- 相続後、家屋を誰にも貸さず住んでいないこと
- 昭和56年5月31日以前に建築された旧耐震建物であること
- 売却前に家屋を解体するか、耐震改修を行っていること
- 譲渡価格が1億円以下であること
- 親族などへの譲渡ではないこと
- 市区町村発行の「被相続人居住用家屋等確認書」を取得すること
2023年以降、相続人が3人以上の場合は、1人あたりの控除上限が2,000万円に引き下げられています(合計最大6,000万円まで)。
参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
未利用地や公共事業で土地を売る場合の税制優遇は?
土地を売却する場面でも、利用されていない土地や公共事業による売却には特別な税制優遇があります。低未利用土地には「100万円特別控除」、公共事業による収用などには「5,000万円特別控除」が設けられており、条件を満たせば大きな節税効果が得られます。
低未利用土地の100万円特別控除
都市計画区域内の空き地などを売却する際、最大100万円を譲渡所得から控除できる特例です。令和7年(2025年)12月31日までの期間限定制度です。
主な適用条件は以下のとおりです。
- 売却対象が都市計画区域内の低未利用土地であること(空き地・遊休地など)
- 売却価格が500万円以下(区域によっては800万円以下)であること
- 土地の所有期間が5年超であること
- 買主が親族など特別関係者でないこと
- 売却後に土地が実際に利用される見込みがあること
- 市町村長の発行する「低未利用地等確認書」の取得と確定申告時の添付が必要
譲渡益が100万円以下なら課税対象がゼロになるケースもあり、特に地方や小規模の土地売却で有効です。他の特例(収用や買換え特例など)との併用はできません。
参考:No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
収用による売却の5,000万円特別控除とは
公共事業のために土地が収用・買収される場合、譲渡所得から最大5,000万円を控除できる制度です。
主な適用条件は以下のとおりです。
- 売却資産が個人の固定資産であること(居住用・事業用等)
- 土地収用法や都市計画法等に基づく公共事業による譲渡であること
- 代替資産を取得しない(課税繰延ではなく控除を選択する)こと
- 最初の買取申出日から6か月以内に譲渡契約を締結していること
- 売却した本人またはその相続人が売主であること
- 確定申告時に「公共事業用資産の買取等の証明書」を添付すること
同一の公共事業に対する適用は1回限りで、複数年にまたがる収用でも初年度のみ適用されます。通常の売買とは異なり、売主の意思によらず土地を手放すケースが多いため、大幅な非課税枠が設けられています。
参考:No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例
法人が土地を売却する場合の節税策は?
法人が保有する土地を売却する際にも活用できる制度はありますが、個人の「譲渡所得」とは異なり、法人では「法人税の課税所得」で処理します。そのため、適用できる仕組みや要件は個人と大きく異なります。
固定資産の買換え特例|圧縮記帳で課税を繰り延べる
法人が事業用の土地や建物を譲渡し、譲渡した事業年度の期首から翌事業年度末までに事業用の代替資産を取得した場合、譲渡益に直ちに課税せず、取得した代替資産の帳簿価額を減額する「圧縮記帳」により課税を繰り延べられます。譲渡益が生じていること、代替資産が事業用であること、確定申告で「特定資産の買換えの圧縮記帳」に関する明細を備えることが要件の骨子です。これは法人税法第50条に基づく制度で、資産再投資の平準化に役立ちます。
低未利用土地の100万円特別控除は法人は使えない
都市計画区域内の低未利用地を対象とする「100万円特別控除」は、個人の土地活用促進を目的とした制度です。法人が売却する土地には適用されません。
売却損・評価損の正しい取扱いを押さえる
土地や建物を売却して帳簿価額を下回った場合の「売却損」は、その事業年度の損金に算入できます。建物は減価償却資産であり、売却時点までの償却後簿価との差額が損益となります。一方、保有中の資産について時価下落のみを理由とする「評価損」は原則として損金算入できません。税務上認められるのは、災害や事故による滅失・著しい毀損、用途廃止や取り壊し等による効用喪失に伴う除却損、または収用等に伴う所定の特例適用といった限定的な場合に限られます。会計上の減損処理を行っても、直ちに税務上の損金になるとは限らないため、計上前に事実関係の証拠化と申告書類の整備を進め、必要に応じて専門家に相談してください。
以上を踏まえ、法人の土地売却では、圧縮記帳などの法定特例を正しく選択し、収益・費用の認定時期と帳簿処理の整合性を保つことが、適法に税負担を抑える近道になります。
節税制度を活用して土地売却時の税負担を抑えよう
土地を売却する際は、譲渡所得に対する税金が大きな負担になりますが、各種の節税制度を上手に使えば軽減が可能です。マイホームには3,000万円特別控除や軽減税率、相続土地には取得費加算や空き家特例が、また公共事業や未利用地、法人売却にも個別の特例があります。それぞれ適用条件が細かく定められているため、事前に確認し、適切な制度を選ぶことが重要です。税理士などの専門家にも相談しながら、制度を正確に理解・活用して、不要な税負担を防ぎましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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