- 作成日 : 2025年10月21日
資金調達は外注できる?依頼できる業務や費用の相場を解説
会社の資金調達のために事業計画の作成や金融機関との交渉には、多くの時間と専門知識が求められます。誰かに依頼したいと考える方もいるでしょう。会社の資金調達は、書類作成や事業計画策定、面談準備などのコンサル支援として外注できます。金融機関の対応は専門家の同席・助言を受けられますが、交渉の代理は弁護士の領域です。経営者本人が主体となり、専門家は後方支援が原則です。
専門家の知識や経験を活用することで、資金調達を有利に進められる可能性があります。しかし、いざ外注を考えても「誰に頼めばいいのか」「費用はどれくらいかかるのか」といった、新たな疑問も生まれるのではないでしょうか。
この記事では、外注できる業務内容から費用相場、そして信頼できる依頼先の選び方まで、具体的なポイントをわかりやすく解説します。
目次
資金調達は外注に依頼できる?
資金調達は、外部の専門家に外注(業務委託)できます。専門的な知識や経験を活用することで、金融機関の評価を得やすい事業計画や資金繰り表を整えられ、資金調達の成功確率を高められます。つまり、経営者が本来の事業に集中するための、有効な手段の一つといえるでしょう。ここでは、どのような専門家に依頼できるのかを解説します。
資金調達の主な外注先
資金調達の主な外注先には、税理士や中小企業診断士、財務コンサルティング会社などがあります。 それぞれの専門家には得意分野があり、自社の状況や調達したい資金の種類によって、最適な相談相手は異なります。
- 税理士・公認会計士:
決算書や試算表といった財務資料のプロであり、とくに銀行融資など、財務データが重視される資金調達に強みを持ちます。 - 中小企業診断士:
経営全般の専門家であり、説得力のある事業計画書の作成や、補助金・助成金の申請支援を得意としています。 - 社会保険労務士(社労士):
労働関係助成金の申請代行は社労士の独占業務です(無資格の代行は不可)。経産省系の補助金は独占ではありませんが、代行の範囲や表示に注意しましょう。 - 財務コンサルティング会社:
資金調達だけでなく、財務戦略全体の立案から実行までを幅広くサポートします。M&Aや出資(エクイティファイナンス)など、より専門的な調達にも対応できる場合があります。 - 社外CFOサービス:
必要な時に必要なだけ、最高財務責任者(CFO)の機能を提供してもらうサービスです。継続的に財務戦略のアドバイスを受けたい場合に適しています。
なぜ資金調達を外注するのか?
経営者が資金調達を外注する主な理由は、「時間不足」「専門知識の不足」「成功確率の向上」の3点に集約されます。 日々の事業運営に追われる中で、クオリティの高い事業計画書をゼロから作成するのは大きな負担となります。また、金融機関がどのような点を評価するのか、といった専門的なノウハウを活用することで、審査通過の確率を高めることが期待できるでしょう。
資金調達を外注するメリット・デメリット
資金調達の外注には、時間削減や成功率向上といった大きなメリットがある一方で、費用発生や業者選びを誤るリスクといったデメリットも存在します。両方を理解した上で、慎重に判断することが求められます。
資金調達を外注するメリット
時間と労力の削減
資金調達を外注する最大のメリットは、経営者が本来の事業に集中できる時間を確保できることでしょう。資金調達には、市場調査、事業計画書の作成、金融機関とのやり取りなど、膨大な時間と労力がかかります。これらの煩雑な作業を専門家に任せることで、経営者はサービス開発や顧客対応といった、事業の核となる活動に専念できます。
専門知識の活用
専門家は、さまざまな資金調達方法の中から、その会社の状況に最も合った選択肢を提案してくれます。たとえば、融資だけでなく補助金も活用できる、あるいは特定の金融機関がこの事業に関心を持つ可能性が高い、といった知見は、経験豊富な専門家ならではの価値といえるでしょう。
成功率の向上
金融機関が納得しやすい事業計画書の作成ノウハウや、面談での的確な受け答えのサポートにより、資金調達の成功率が高まることが期待できます。専門家が介在することで、計画の客観性や信頼性が増し、金融機関に安心感を与える効果も見込めます。
客観的な視点の獲得
外部の専門家が事業を客観的に分析することで、経営者自身では気づかなかった事業の強みや弱み、改善点が見つかることがあります。資金調達という目的だけでなく、事業そのものを見つめ直す良い機会にもなるでしょう。
資金調達を外注するデメリット
費用の発生
当然ながら、専門家に依頼すれば費用が発生します。費用体系は後述しますが、着手金や成功報酬など、決して安くない金額になることもあります。調達したい資金額と、支払う費用とのバランスを慎重に検討しなくてはなりません。あわせて、契約前にサポート範囲・成果物・料金体系の内訳(着手金、成功報酬)などを確認しておくことが重要です。
専門家との相性
担当者との相性が合わないと、円滑なコミュニケーションがとれず、満足のいく結果につながりにくい場合があります。事業の深い部分まで共有するパートナーとなるため、スキルや実績だけでなく、信頼して話せる相手かどうかを見極めることが大切です。
悪質な業者を選ぶリスク
残念ながら、中には高額な費用を請求するだけで、質の低いサービスしか提供しない悪質な業者も存在します。「100%成功する」といった過大な広告を出す業者にはとくに注意が必要です。信頼できる依頼先を見極める目が必要になります。
経営者自身の理解が浅くなる可能性
すべてを専門家に任せきりにしてしまうと、自社の財務状況や事業計画の詳細について、経営者自身の理解が浅くなる恐れがあります。資金調達は経営そのものであり、専門家はあくまでサポーターです。当事者意識を失わないようにしなくてはなりません。
外注に依頼できる業務内容と役割分担
資金調達の外注では、依頼者である経営者と、外注先の専門家との適切な役割分担が、成功に向けたポイントです。ここでは、資金調達の流れに沿って、それぞれの役割を解説します。
STEP1:戦略立案と事業計画の作成
- 外注先の役割:経営者のビジョンや事業の現状をヒアリングし、最適な資金調達方法(融資、補助金など)と調達目標額を提案します。そのうえで、金融機関を納得させるための客観的なデータや市場分析を盛り込み、金融機関目線でも評価されやすい事業計画書にまとめます。
- 依頼者(経営者)の役割:事業にかける想いやビジョン、これまでの経歴、製品やサービスの強みといった、計画の「魂」となる部分を、自身の言葉で専門家に伝えることが最も重要です。 また、過去の試算表や個人の資産状況など、計画の根拠となる正確な情報を提供しなくてはなりません。
STEP2:金融機関への申し込みと交渉
- 外注先の役割:完成した事業計画書の内容を最終チェックし、申し込みに必要な書類一式を確認します。また、どの金融機関のどの支店に申し込むのが最適か、といった選定のアドバイスも行います。
- 依頼者(経営者)の役割:申し込みの主体は、あくまで経営者自身です。申込書には自ら署名・捺印し、金融機関への提出を行います。専門家は、この手続きを円滑に進めるためのサポート役です。
STEP3:融資面談
- 外注先の役割:面談に同席し、経営者の説明を補足します。とくに、収益計画の根拠や財務に関する専門的な質問に対して、第三者の視点から客観的な説明を加えることで、融資担当者の理解を助けます。
- 依頼者(経営者)の役割:調達面談の主役は、経営者自身です。専門家が隣にいても、事業への熱意や将来の展望は、自身の言葉で情熱をもって語ることが求められます。専門家に頼りきりになるのではなく、「なぜこの事業をやりたいのか」「どうやって返済していくのか」を自信を持って説明できるように、事業計画の内容を完全に理解しておきましょう。
資金調達を外注する際の費用や料金体系は?
資金調達を外注する際の費用は、主に「着手金」と「成功報酬」で構成されます。依頼する業務範囲や調達額によって大きく変動するため、契約前に料金体系や追加費用の有無を十分に確認することが大切です。
料金体系の種類:着手金と成功報酬
資金調達を外注した際の料金体系は、主に着手金と成功報酬の組み合わせで設定されています。
- 着手金:業務を依頼する際に、最初に支払う費用。成功・不成功にかかわらず返金されないのが一般的。
- 成功報酬:資金調達が成功した場合に、調達額に応じて支払う費用。調達額の数%(例:3%~5%)といった料率で設定。
業務別の費用相場
依頼する業務内容によって、費用の相場は異なります。
- 相談料: 30分~1時間で5,000円~20,000円程度(初回相談は無料の場合が多い)
- 事業計画書作成のみ:10万円~30万円程度
- 融資申請フルサポート:着手金0円~10万円程度 + 成功報酬(調達額の3%~5%程度)
- 補助金申請サポート:着手金5万円~15万円程度 + 成功報酬(採択額の10%~20%程度)
失敗しない資金調達の外注先の選び方とは?
信頼できる外注先を選ぶには、実績や専門性だけでなく、料金の透明性や担当者との相性も確認することが不可欠です。ここでは、失敗しないための具体的なチェックポイントを解説します。
実績と専門分野を確認する
まず、その専門家が、自社の状況に合った資金調達の実績を豊富に持っているかを確認しましょう。ウェブサイトなどで「融資支援実績〇〇件」「〇〇銀行との取引多数」といった具体的な実績を確認します。また、銀行融資を受けたいのに補助金申請しか経験がないなど、専門分野がずれていないかも重要なポイントです。
料金体系の透明性を確認する
契約を結ぶ前に、必ず書面で見積書を提示してもらい、料金体系について詳細な説明を受けましょう。「成功報酬」の定義(例:融資の決定通知があった時点か、着金した時点か)や、追加費用が発生する可能性の有無など、少しでも疑問に思う点はすべて質問し、クリアにしておくことが後のトラブルを防ぎます。
担当者との相性を確認する
最終的に、事業の深い部分まで話すことになるため、担当者との相性やコミュニケーションのしやすさは非常に大切です。無料相談などを活用し、実際に担当者と話してみることをおすすめします。「親身に話を聞いてくれるか」「専門用語ばかりでなく、わかりやすく説明してくれるか」といった点を確認し、信頼して任せられる相手かどうかを見極めましょう。
資金調達の外注に関する注意点
専門家への外注は心強い一方で、すべてを任せきりにすると経営者としての成長機会を失うことにもなりかねません。金融機関も「経営者本人の理解度や主体性」を重視しているため、「丸投げ」はせず、あくまで二人三脚で進めるという姿勢が求められます。
高確率で成功をうたう業者には注意
資金調達の審査を行うのは、あくまで金融機関や行政機関であり、コンサルタントではありません。「100%融資を通します」といった、成功を保証するような過大な広告を出す業者には注意が必要です。誠実な専門家ほど、リスクについても正直に説明してくれるものです。
丸投げはNG!経営者自身の理解が不可欠
事業計画書の作成を専門家に依頼した場合でも、その内容を自分自身の言葉で説明できなくてはなりません。融資面談で計画について質問された際に、「専門家に任せているので、よくわかりません」と答えてしまっては、融資担当者からの信頼を得ることはできません。専門家から内容について十分な説明を受け、完全に理解しておくことが大切です。
資金調達の外注は信頼できる専門家を選ぶ
資金調達の業務を専門家に外注することは、多忙な経営者にとって有効な選択肢の一つです。専門家の知識や経験を活用することで、資金調達の成功確率を高め、より良い条件を引き出せる可能性が広がります。
ただし、そのためには、自社の課題を理解し、それに合った専門分野を持つ、信頼できるパートナーを見極めることが不可欠です。この記事で解説したポイントを参考に、事業を次のステージへと導く、最良の相談相手を見つけてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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