• 作成日 : 2025年9月16日

土木工事に建設業許可は必要?許可なしの範囲から土木一式ととび・土工の違いまで

土木工事を請け負う事業を始めるにあたって「どのような場合に許可が必要なのか」「許可なしで受注できる工事の範囲はどこまでか」といった疑問はつきものです。建設業法が定めるルールは複雑で、正確に理解しないまま事業を進めてしまうと、意図せず法令違反を犯す危険性もあります。

この記事では、土木工事に関わる建設業許可の基本から、間違いやすい許可の種類、特に土木一式工事の許可取得について分かりやすく解説します。

土木工事に建設業許可は必要?

すべての土木工事に許可が必要なわけではありません。建設業法第3条では、請負代金が一定規模を超える工事は許可を要すると定められています。

土木工事業に許可が必要な理由

土木工事業に許可制度があるのは、工事の品質を保ち、公共の安全を守るためです。道路やダムといったインフラ整備は社会への影響が大きく、一定の技術力や経営力を持つ事業者のみが施工できるよう、発注者を保護する目的があります。許可は、事業者の信頼性を客観的に示す証明書でもあります。

許可なしで請け負える土木工事の範囲

建設業法では、軽微な建設工事に限り、許可なしで請け負うことが認められています。基準は次のとおりです。金額判定は税込で、注文者支給の材料の市場価格(運送費含む)も合算し、実質一体の複数契約は原則合算します。

  • 建築一式工事以外:1件の請負代金が500万円未満(消費税等込)
  • 建築一式工事:1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積150㎡未満の木造住宅工事

無許可で工事を行った場合のリスク

許可が必要な規模の工事を無許可で行うと、建設業法に抵触すると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金を受ける場合があります。法令違反が発覚すれば、社会的信用を失い、金融機関からの融資や公共工事への入札参加が難しくなるなど、事業の継続に深刻な影響が出ます。

参考:建設業法|e-Gov 法令検索

土木工事に関する建設業許可の種類

建設業許可は、2種類の一式工事と27種類の専門工事、合計29種類に分かれています。事業者は受注する工事内容に対応した業種で許可を取得する必要があります。

建設業許可の種類一覧

建設業許可には多岐にわたる種類があります。土木関連の主な専門工事として、とび・土工・コンクリート工事、石工事、鋼構造物工事、ほ装工事、水道施設工事などが挙げられます。自社の事業内容と建設業許可の一覧を照らし合わせ、どの許可が必要か確認することが大切です。

土木一式工事と土木工事業の違い

土木一式工事と土木工事業は、似た言葉ですが意味が異なります。

  • 土木一式工事
    建設業許可の29業種のうちの一つで、複数の専門工事を総合的な企画・指導・調整の下で施工する工事を意味します。
  • 土木工事業
    道路・橋梁・河川・ダムなどの土木施設を造る事業分野全般を指す一般的な用語で、法律上の業種名ではありません。

つまり、土木工事業を営む会社が、元請として大規模で複雑な工事(例:道路新設工事や河川改修工事など)を統括管理する場合に必要となるのが「土木一式工事」の建設業許可です。

土木一式工事ととび・土工の違い

建設業許可における「土木一式工事」と「とび・土工・コンクリート工事」は、似ているようで役割が大きく異なります。混同しやすいポイントなので、整理して理解しておくことが重要です。

  • 土木一式工事
    複数の専門工事を組み合わせて総合的に管理する大規模・複雑な工事を対象とします。道路新設工事や河川改修工事など、元請業者として工事全体を企画・指導・調整しながら統括する場合に必要な許可です。
  • とび・土工・コンクリート工事
    個別の専門工事を直接施工する場合に必要な許可です。例えば、大規模な道路建設の一部として、掘削・盛土・仮設・くい打ち・コンクリート打設など、特定の工程だけを専門的に請け負うケースが該当します。

土木一式工事の許可を持っていても、専門工事を単独で税込500万円以上請け負うことはできません。その場合は、とび・土工・コンクリート工事業など該当する専門工事業の許可を別途取得する必要があります。

土木一式工事の建設業許可を取得する方法

土木一式工事の許可は、元請として大規模なプロジェクトを担う企業にとって、事業拡大の重要な一歩です。許可取得には、法令で定められた体制整備・技術者配置・財務基盤などの要件を満たす必要があります。

許可を取得するための主な要件

土木一式工事の建設業許可を得るには、主に以下の5つの要件を満たす必要があります。

  1. 経営業務の管理を適正に行う体制
    申請者(法人等)の常勤役員等に、経営業務の管理を適正に行うに足りる能力があること
  2. 専任技術者の配置(営業所ごと)
    許可業種に応じた国家資格や実務経験を満たす専任技術者を、営業所ごとに配置されていること
  3. 誠実性
    請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれがないこと
  4. 財産的基礎
    一般建設業許可に関しては、建設業法第7条第4号で「財産的基礎又は金銭的信用を有すること」が要件とされ、具体的には国土交通省の運用基準で次のいずれかを満たすこととされています。なお、特定建設業許可はより厳格な基準が設定されています。

    1. 自己資本が500万円以上あること
    2. 500万円以上の資金調達能力を有すること(預金残高証明や融資証明で確認)
    3. 許可を受けて継続して5年以上営業していること
  5. 欠格要件非該当
    役員などが法律で定められた欠格要件に当てはまらないこと

一般建設業許可と特定建設業許可の違い

建設業許可には一般建設業許可と特定建設業許可の2種類があります。

区分は、元請として受注した1件の工事における「下請契約総額」で判定します。2025年2月1日施行の政令改正により金額要件が引き上げられ、発注者から直接請け負った1件の工事につき、下請契約の総額が5,000万円(建築工事業の場合は8,000万円)未満であれば一般建設業許可、それ以上になる場合は特定建設業許可が必要です。まずは一般建設業許可の取得を目指す事業者が多いです。

許可申請の流れと必要書類

許可申請は、営業所の所在地を管轄する都道府県知事(一の都道府県の区域内のみに営業所を設けて営業しようとする場合)または国土交通大臣(二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて営業しようとする場合)に対して行います。

申請の主な流れ
  1. 申請要件を満たしているか確認する
  2. 申請書や添付書類を作成・収集する
  3. 担当窓口に申請書類を提出する
  4. 行政庁による審査を受ける
  5. 許可通知書を受け取る

申請には、許可申請書、役員の身分証明書、専任技術者の資格者証の写し、工事経歴書、財務諸表など、多数の書類を準備する必要があります。

土木工事の許認可で事業の信頼性を高めよう

土木工事における許認可は、単なる手続きではなく、事業の信頼性と成長を支える土台です。請負代金が一定規模を超える工事を請け負うには建設業許可が必須であり、無許可営業は重大な罰則の対象となります。

特に土木一式工事の許可は、複数の専門工事を統括する大規模な工事を担う場合に必要となります。とび・土工などの専門工事業許可との違いを正しく理解し、自社が手掛ける工事の種類と規模に見合った許可を取得することが、法令遵守はもちろん、発注者からの信頼獲得や事業拡大に繋がります。

許可取得の要件は複雑なため、不明な点があれば行政書士のような専門家の支援を得るのも一つの方法です。


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