• 更新日 : 2025年8月29日

不動産会社の起業は一人でできる?必要な準備や費用を解説

不動産業界での独立起業は、多くの人にとって魅力的な選択肢です。しかし、不動産会社を一人で起業することは可能なのでしょうか。

この記事では、不動産会社の一人起業について、必要な準備から費用、メリット・デメリットまで詳しく解説します。

不動産会社の起業は一人でもできる?

不動産会社の一人起業の可能性と法的要件について詳しく解説し、どのような条件を満たせば実現できるのかを明確にします。

一人起業の可能性

不動産会社の一人起業は法的に可能です。宅地建物取引業法では、会社の規模に関する制限がないため、個人事業主としても株式会社としても不動産業を営むことができます。重要なのは、適切な許可を取得し、法的要件を満たすことです。

特に地域密着型の不動産業や、特定分野に特化したサービスを提供する場合、一人起業でも十分に競争力を持つことができます。

必要な資格と許可

宅地建物取引士

宅地建物取引士の資格が不動産会社設立の前提条件となります。宅地建物取引士の資格がなければ、宅地建物取引業の免許を取得することができません。また、実務経験も重要な要素となるため、不動産業界での経験を積むことが推奨されます。

宅地建物取引業免許

宅地建物取引業免許の取得が必須となります。この免許は都道府県知事または国土交通大臣から付与され、一つの都道府県内でのみ営業(事務所を設置)する場合は都道府県知事免許、複数の都道府県にまたがって営業(事務所を設置)する場合は国土交通大臣免許が必要です。

営業保証金の供託または保証協会への加入

営業保証金の供託または保証協会への加入も法的要件です。営業保証金として本店1,000万円、支店500万円の供託が必要ですが、不動産保証協会に加入することで大幅に減額できます。

事業形態の選択

個人事業主

個人事業主として開始する方法では、初期費用を抑えて事業をスタートできます。開業手続きが比較的簡単で、会計処理も複雑ではありません。ただし、信用力や事業拡大の観点では法人化にメリットがあります。

法人設立

法人設立による起業では、信用力の向上と税制上のメリットを享受できます。取引先からの信頼を得やすく、金融機関からの融資も受けやすくなります。一方で、設立費用や維持費用がかかることを考慮する必要があります。

どちらの形態を選択するかは、初期資金、事業計画、将来のビジョンを総合的に検討して決定することが重要です。

不動産会社の一人起業に必要な準備

不動産会社の一人起業を成功させるには、資格取得から事業計画策定まで、体系的な準備が必要です。

資格と経験の準備

宅地建物取引士試験の合格が第一歩となります。試験は年1回実施され、合格率は15~17%程度と決して易しくありません。法令上の制限、権利関係、宅建業法、税・その他の4分野から出題されるため、体系的な学習が必要です。

実務経験の積み重ねも重要な準備要素です。不動産会社での勤務経験を通じて、営業手法、契約実務、市場動向の把握などを学ぶことができます。最低でも2~3年の実務経験があると、独立後の事業運営がスムーズになります。

継続教育への参加により、最新の法改正や業界動向に対応できる知識を身につけます。宅地建物取引士は5年ごとの法定講習受講が義務付けられており、常に最新の知識を保持する必要があります。

事業計画の策定

ターゲット市場の明確化により、効果的な事業戦略を立てることができます。住宅売買、賃貸仲介、投資用不動産、商業不動産など、どの分野に特化するかを決定し、その市場の特性を詳しく分析しましょう。

競合分析の実施では、同じエリアで営業している他社の強みや弱み、価格設定、サービス内容を調査します。差別化できるポイントを見つけ、独自の価値提案を構築することが重要です。

収支計画の作成により、事業の実現可能性を検証します。初年度から3年程度の売上予測、必要経費、利益計画を詳細に策定し、資金繰りの見通しを立てましょう。

営業基盤の構築

人脈の構築は不動産業成功の重要な要素です。同業者、金融機関、建設会社、司法書士、税理士などとのネットワークを築くことで、情報収集や紹介案件の獲得につながります。

マーケティング戦略の立案では、どのようにして顧客を獲得するかを具体的に計画します。ウェブサイトの構築、SNS活用、地域密着型の営業活動、既存人脈の活用など、複数のチャネルを検討しましょう。

営業ツールの準備として、会社案内、物件資料のテンプレート、契約書類一式、営業用名刺などを整備します。プロフェッショナルな印象を与える高品質な営業ツールが信頼獲得につながります。

システム・設備の準備

不動産業務システムの導入により、効率的な業務運営が可能になります。物件管理システム、顧客管理システム、契約書作成システムなど、業務に必要なITツールを選定し、導入準備を進めましょう。

事務所の確保も重要な準備事項です。顧客との面談スペース、書類保管場所、適切な立地条件を考慮して事務所を選定します。自宅兼事務所も選択肢の一つですが、顧客対応を考慮すると専用の事務所が望ましいでしょう。

必要な設備として、パソコン、プリンター、電話、ファックス、コピー機、金庫などを準備します。また、インターネット環境の整備も現代の不動産業には不可欠です。

不動産会社の一人起業にかかる費用

不動産会社の起業には、法的要件を満たすための費用から日常運営費まで、様々な費用が発生します。

初期費用

宅地建物取引業免許取得費用として、申請手数料が都道府県知事免許の場合は33,000円、国土交通大臣の場合は90,000円が必要です。また、免許申請に必要な各種証明書の取得費用も数千円程度かかります。

営業保証金または保証協会への加入費用が大きな負担となります。営業保証金を供託する場合は1,000万円が必要ですが、不動産保証協会に加入し弁済業務保証金分担金60万円を納付することで営業保証金の代わりとすることができます。法人設立を選択する場合の会社設立費用として、株式会社では約25万円、合同会社では約10万円が必要になります。これには定款認証費用、登録免許税、定款の収入印紙代などが含まれます。

事務所の初期費用では、敷金・礼金、仲介手数料、前賃料などで賃料の6~8ヶ月分程度が必要です。月額賃料10万円の事務所であれば、60~80万円程度の初期費用を見込んでおきましょう。

設備・システム費用

不動産業務システムの導入費用は、システムの種類や機能によって大きく異なります。クラウド型のシステムであれば月額数千円から数万円、パッケージ型では数十万円から数百万円の費用がかかります。

事務用品・設備の購入費用として、パソコン、プリンター、電話機、デスク、椅子、書庫などで50~100万円程度を見込んでおく必要があります。

看板・広告宣伝費も重要な初期投資です。事務所の看板、ウェブサイト制作、名刺・パンフレット作成などで30~50万円程度が一般的です。

運転資金

月次運営費として、事務所賃料、光熱費、通信費、保険料、システム利用料などの固定費を把握しておく必要があります。これらの合計で月額20~40万円程度が一般的です。

人件費は一人起業では発生しませんが、将来的に従業員を雇用する場合に備えて計画しておくことが重要です。営業アシスタント1名の雇用で月額20~30万円程度の人件費が発生します。

営業活動費として、交通費、接待交際費、広告宣伝費などの変動費も考慮する必要があります。月額5~15万円程度を見込んでおくと良いでしょう。

総費用の目安

最低限必要な初期費用は、保証協会加入を前提として300~500万円程度となります。これには免許取得費用、保証協会加入費、事務所初期費用、基本的な設備費用が含まれます。

ある程度充実した設備と運転資金を考慮すると、500~700万円程度の資金準備が現実的です。この水準であれば、開業から軌道に乗るまでの期間をカバーできます。

余裕を持った事業運営を目指す場合は、700~1,000万円程度の資金があると安心です。予期せぬ出費や事業拡大の機会にも対応できる資金力を確保できます。

不動産会社の一人起業のメリット

不動産会社を一人で起業することには、大企業や既存の不動産会社にはない独特のメリットがあります。

経営の自由度

意思決定の迅速性が一人起業の最大のメリットです。顧客のニーズに対してすぐに対応でき、市場の変化に素早く適応することができます。大企業では稟議や承認に時間がかかる案件も、一人起業なら即座に判断・実行できます。

事業方針の自由な設定により、自分の理想とする不動産業を追求できます。地域密着型、高級物件専門、投資用不動産特化など、自分の得意分野や興味のある分野に集中することができます。

営業時間や営業方法の自由な設定も可能です。顧客の都合に合わせた柔軟な対応や、独自の営業スタイルの確立により、差別化を図ることができます。

収益性の向上

仲介手数料の100%受取により、高い収益性を実現できます。大手不動産会社の営業担当者は歩合制でも会社に大部分を持っていかれますが、一人起業なら成果がそのまま収入に反映されます。

固定費の最小化により、利益率を高めることができます。大きなオフィスや多数の従業員を抱える必要がないため、売上に対する利益率を高く保つことが可能です。

複数の収益源の確保も可能です。仲介業務だけでなく、コンサルティング、不動産投資、管理業務など、多角的な事業展開により収益の安定化と拡大を図ることができます。

顧客との関係構築

直接的な顧客対応により、深い信頼関係を築くことができます。営業担当者が頻繁に変わることがないため、長期にわたって顧客との良好な関係を維持できます。

個人のブランド化により、地域での認知度と信頼度を高めることができます。「○○さんにお願いすれば安心」という評判を築くことで、口コミや紹介による新規顧客獲得が期待できます。

きめ細かなサービス提供により、顧客満足度を高めることができます。大手企業では対応が難しい個別の要望にも柔軟に対応し、差別化されたサービスを提供できます。

将来性と拡張性

事業拡大の自由度が高く、成功した場合の拡張性は無限大です。従業員の雇用、支店の開設、関連事業への進出など、自分のペースで事業を発展させることができます。

専門性の向上により、その分野での第一人者になることも可能です。特定の物件タイプや地域に特化することで、専門家としての地位を確立できます。

事業承継や売却の選択肢もあります。成功した事業は次世代に承継したり、他社に売却したりすることで、将来的な資産形成につなげることができます。

不動産会社の一人起業のデメリット

一人起業には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。これらを理解した上で起業を検討することが重要です。

業務負担の集中

すべての業務を一人で担当する必要があるため、業務負担が非常に大きくなります。営業活動、契約事務、経理処理、顧客対応など、多岐にわたる業務をこなさなければなりません。

休暇の取得が困難になる場合があります。顧客からの急な連絡や緊急事態への対応が必要なため、長期間の休暇を取ることが難しくなる可能性があります。

専門性の限界も課題となります。法務、税務、建築など、不動産取引に関わる専門分野すべてに精通することは困難で、外部専門家への依存が必要になる場合があります。

信用力の課題

大手企業と比較した信用力の不足により、一部の顧客や取引先から敬遠される可能性があります。特に高額物件の取引では、会社の規模や知名度が重視される場合があります。

金融機関からの融資を受けにくい場合があります。事業実績が少ない初期段階では、設備投資や運転資金の調達が困難になる可能性があります。

大口顧客の獲得が困難な場合があります。法人顧客や投資家は、組織的な対応力や継続性を重視するため、一人起業の不動産会社との取引を避ける傾向があります。

リスク管理の課題

病気や怪我による業務停止リスクがあります。一人で事業を運営している場合、健康上の問題が直接的に事業停止につながる可能性があります。

市場変動の影響を受けやすい傾向があります。不動産市場の急激な変化や経済不況時には、大企業と比較して事業継続が困難になる場合があります。

法的責任の重さも考慮すべき点です。不動産取引では高額な取引が多く、万が一のトラブルや損害賠償請求に対して個人で対応しなければならないリスクがあります。

成長の限界

一人でできる業務量には限界があるため、事業規模の拡大に制約があります。取り扱い件数の増加には従業員の雇用や組織化が必要になります。

複数案件の同時進行が困難になる場合があります。大型案件や複雑な取引が重なった場合、十分な対応ができなくなる可能性があります。

長期的な事業継続への不安もあります。後継者の確保や事業承継の準備が困難で、将来的な事業継続に課題を抱える可能性があります。

不動産会社一人起業の成功へ

不動産会社の一人起業は、適切な準備と戦略により、十分に成功可能な事業モデルです。重要なのは、自分の強みを活かせる分野で差別化を図り、継続的な成長を目指すことです。

まず、十分な資格と経験の蓄積が成功の基盤となります。宅地建物取引士の資格取得はもちろん、実務経験を通じて営業スキル、交渉力、市場知識を身につけることが重要です。

次に、明確な事業戦略の策定により、競合他社との差別化を図ります。地域特化、物件タイプの専門化、独自のサービス提供など、自分だけの強みを構築しましょう。

資金計画の適切な策定により、安定した事業運営を実現します。初期費用だけでなく、軌道に乗るまでの運転資金を十分に確保することが重要です。

継続的な学習と成長への取り組みにより、変化する市場環境に対応し続けることができます。法改正、市場動向、新しい技術の活用など、常に最新の知識とスキルを身につける姿勢が成功につながります。


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