• 更新日 : 2025年8月29日

一人親方が合同会社を設立するには?メリットや手順を解説

一人親方として事業が軌道に乗り、毎日の仕事に手応えを感じている一方で、「このまま個人事業主として働き続けていいのだろうか?」「インボイス制度の開始を機に、今後の働き方を考えたい」「もっと事業を大きくするために、社会的信用を高めたい」といった思いを感じることはありませんか?

そのようなお悩みや展望をお持ちの一人親方にとって、有力な選択肢となるのが「合同会社」の設立です。

この記事では、一人親方が合同会社を設立するメリット・デメリットから、具体的な設立手順などを分かりやすく解説します。

合同会社がおすすめな一人親方

一人親方が合同会社を設立することは、事業の発展と社会的信用の向上を目指す有効な選択肢です。合同会社は2006年に導入された比較的新しい会社形態で、個人事業主から法人への移行を検討する一人親方にとって魅力的な選択肢となっています。

合同会社の設立を検討すべき一人親方には、以下のような特徴があります。

年収が一定水準を超えている場合

年収が1,000万円を超える一人親方は、合同会社設立による節税効果を実感しやすくなります。個人事業主の場合、所得税率は累進課税により高くなりますが、法人税率は基本的に一定であるため、収入が増えるほど法人化のメリットが大きくなります。

事業拡大を計画している場合

将来的に従業員の雇用や事業規模の拡大を予定している一人親方にとって、合同会社は理想的な選択です。法人格があることで、従業員の採用時に社会保険への加入が可能になり、優秀な人材の確保が容易になります。

取引先との信頼関係を重視する場合

建設業界では、元請け企業が下請け業者を選定する際に法人格の有無を重要視する傾向があります。合同会社として法人化することで、大手企業との取引機会が増え、事業の安定性が向上します。

家族経営を考えている場合

配偶者や子供を役員として迎え入れることで、所得分散による節税効果を期待できます。また、事業承継の際も法人格があることで、よりスムーズな引き継ぎが可能になります。

一人親方が合同会社を設立するメリット

合同会社設立には多くのメリットがあり、一人親方にとって魅力的な選択肢となっています。

節税効果の実現

  • 個人事業主の場合、所得税は累進課税により最大45%まで上昇しますが、法人税は中小企業であれば年800万円以下の所得に対して15%の税率が適用されます。年収が高い一人親方ほど、この税率差によるメリットを享受できます。
  • 法人化により、個人事業主では経費として認められなかった支出も経費計上が可能になります。例えば、生命保険料の一部や退職金の積立、社宅家賃の一部などを経費として処理できるため、実質的な節税効果が期待できます。
  • 合同会社の代表社員として自分に給与を支払うことで、給与所得控除を受けることができます。この制度を活用することで、個人事業主時代と比較して所得税負担を軽減できる可能性があります。

社会的信用の向上

  • 合同会社として法人格を取得することで、取引先からの信頼度が大幅に向上します。特に建設業界では、元請け企業が下請け業者を選定する際に法人格の有無を重要視するため、受注機会の拡大が期待できます。
  • 法人格があることで、金融機関からの融資を受けやすくなります。事業資金の調達や設備投資の際に、個人事業主と比較して有利な条件で借入れができる可能性が高まります。

事業承継の円滑化

  • 合同会社では出資持分の譲渡により、比較的簡単に事業承継を行うことができます。個人事業主の場合、事業用資産を個別に承継する必要がありますが、法人格があることで包括的な承継が可能になります。
  • 法人化により、事業用資産を個人資産から分離することで、相続税の計算対象となる資産を減少させることができます。また、生前に持分を段階的に譲渡することで、相続税負担を軽減する効果も期待できます。

一人親方が合同会社を設立するデメリット

合同会社設立には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。

設立・運営コストの発生

  • 合同会社の設立には、登録免許税として最低6万円が必要です。また、定款作成費用や印鑑作成費用、専門家への報酬などを含めると、総額で10万円から20万円程度の初期費用が発生します。
  • 法人として継続的に発生する費用として、法人住民税の均等割(年額7万円程度)、税理士への報酬、決算書類の作成費用などがあります。これらの費用は収益に関係なく発生するため、事業規模が小さい場合は負担が重くなる可能性があります。

事務処理の複雑化

  • 法人として複式簿記による正確な帳簿作成が求められます。個人事業主時代と比較して、会計処理が複雑になり、専門知識が必要となる場面が増加します。
  • 税務署、都道府県税事務所、市町村への法人設立届出書の提出をはじめ、社会保険関係の手続きなど、多くの届出が必要になります。これらの手続きは期限が定められており、適切な管理が求められます。

社会保険加入の義務化

  • 法人化により、厚生年金保険と健康保険への加入が義務となります。これらの保険料は労使折半となるため、従来の国民年金・国民健康保険と比較して負担額が増加する可能性があります。
  • 従業員を雇用する場合、労災保険と雇用保険の適用を受けることになります。これらの保険料は全額事業主負担となるため、人件費の増加要因となります。

一人親方が合同会社を設立する手順

合同会社の設立は、適切な手順を踏むことで比較的スムーズに進めることができます。

1. 事前準備段階

会社の基本事項の決定

まず、会社名(商号)、事業目的、本店所在地、資本金額、決算期などの基本事項を決定します。商号については、同一住所に同一商号の会社が存在しないことを事前に確認する必要があります。

定款の作成

合同会社の憲法とも言える定款を作成します。定款には、商号、事業目的、本店所在地、社員の氏名・住所、出資額などの絶対的記載事項を必ず記載する必要があります。定款は公証人の認証を受ける必要がないため、株式会社と比較して手続きが簡素化されています。

2. 登記申請手続き

必要書類の準備

登記申請には以下の主な書類が必要です。

主な書類名概要
定款会社の基本ルールを定めた書類
代表社員就任承諾書代表社員となることへの承諾書
代表社員,本店所在地及び資本金決定書本店の詳細住所、代表社員、資本金を決定する書類
出資金払込証明書出資金の払込みを証明する書類
印鑑届出書法人実印の届出書

法務局への申請

必要書類を準備したら、本店所在地を管轄する法務局に登記申請を行います。登記申請は窓口への持参、郵送、オンラインでの申請が可能です。登記申請日が会社の設立日となるため、希望する設立日がある場合は計画的に申請を行う必要があります。

3. 設立後の手続き

税務関係の届出

登記完了後、以下の税務関係の届出を行います。

  • 法人設立届出書(税務署、都道府県税事務所、市町村)
  • 青色申告承認申請書(税務署)
  • 給与支払事務所等の開設届出書(税務署)
  • 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(税務署)

社会保険関係の手続き

厚生年金保険と健康保険の加入手続きを年金事務所で行います。また、従業員を雇用する場合は、労働基準監督署とハローワークで労働保険の手続きも必要です。

合同会社と他の形態との違い

一人親方が事業形態を選択する際は、各形態の特徴を理解することが重要です。

個人事業主との比較

税務面での違い

個人事業主は所得税の対象であり、累進課税により税率が上昇します。一方、合同会社は法人税の対象であり、中小企業であれば年800万円以下の所得に対して15%の税率が適用されます。

社会的信用の違い

個人事業主は個人名での取引となりますが、合同会社は法人格を持つため、取引先からの信頼度が向上します。特に建設業界では、元請け企業が法人格を重視する傾向があります。

事業承継の違い

個人事業主の場合、事業用資産を個別に承継する必要がありますが、合同会社では出資持分の譲渡により包括的な承継が可能です。

株式会社との比較

設立費用の違い

株式会社の設立には登録免許税15万円、定款認証手数料5万円、定款の収入印紙代4万円(電子定款の場合は不要)など、合計約25万円の費用が必要です。一方、合同会社は登録免許税6万円と、定款の収入印紙代4万円(電子定款の場合は不要)で設立でき、定款認証も不要のため、設立費用を大幅に抑えることができます。

機関設計の違い

株式会社では株主総会、取締役会などの機関設置が必要ですが、合同会社では社員全員の同意や過半数の同意で運営できるため、意思決定がスピーディーに行えます。

社会的認知度の違い

株式会社の方が一般的に認知度が高く、取引先によっては合同会社よりも株式会社を好む場合があります。ただし、近年は合同会社の認知度も向上しており、実務上の差は縮小傾向にあります。

一人親方の労災保険との関係

特別加入制度の継続

合同会社を設立しても、一人親方の労災保険特別加入制度を継続して利用することが可能です。ただし、法人の代表者として加入することになるため、加入団体への届出変更が必要です。

保険料の取扱い

一人親方の労災保険の保険料は、合同会社の経費として計上することができます。これにより、個人事業主時代と比較して税務上の取扱いが有利になります。

一人親方の合同会社設立を成功させるポイント

合同会社設立を成功させるためには、適切な準備と計画的な実行が不可欠です。

設立タイミングの検討

事業年度の設定

決算期の設定は税務上重要な要素です。建設業界の繁忙期を避けて決算期を設定することで、決算作業に十分な時間を確保できます。また、消費税の免税期間を最大限活用するため、設立時期を慎重に検討する必要があります。

収支予測の実施

法人化により発生する追加コストと節税効果を正確に比較検討することが重要です。税理士などの専門家に相談し、シミュレーションを行うことで、最適な設立時期を判断できます。

専門家の活用

税理士との連携

税務申告の複雑化に対応するため、信頼できる税理士との連携は不可欠です。建設業界に精通した税理士を選ぶことで、業界特有の税務処理についても適切なアドバイスを受けることができます。

司法書士の活用

登記手続きについては司法書士に依頼することで、確実かつスムーズな手続きが可能になります。特に初回の法人設立では、専門家のサポートを受けることで手続きミスを防ぐことができます。

一人親方が合同会社を設立することは、節税効果と社会的信用の向上という大きなメリットをもたらします。ただし、設立・運営コストの発生や事務処理の複雑化というデメリットも存在するため、自身の事業規模と将来展望を踏まえて慎重に判断することが重要です。

適切な準備と専門家のサポートを得ることで、合同会社設立は一人親方の事業発展に大きく貢献する選択肢となるでしょう。特に年収が1,000万円を超え、事業拡大を計画している一人親方にとって、合同会社設立は検討に値する戦略的な選択と言えます。

一人親方に合同会社という選択肢を

この記事では、一人親方が合同会社を設立するメリットや、具体的な手順について解説しました。

合同会社を設立することで、社会的信用度の向上や、所得に応じた大きな節税効果が期待でき、事業の成長を後押しする強力な選択肢となり得ます。その一方で、設立・維持コストや社会保険への加入義務といった側面も理解しておく必要があります。

個人事業主のままでいるか、法人化へ踏み出すべきか、その判断はご自身の事業の状況や将来のビジョンによって異なります。もし手続きの複雑さや、個別の税務判断に不安を感じる場合は、税理士や司法書士などの専門家に相談することも有効な手段です。


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