• 作成日 : 2025年7月24日

買取資金調達ガイド|M&Aの株式買取や、事業承継の自社株買取などのポイントを解説

円滑な事業承継、M&Aにおいて、株式買取をはじめとする買取は避けて通れない重要なプロセスです。しかし、多くの場合は買取に多額の資金が必要となるため、資金調達が成功の鍵を握ります。

本記事では、M&Aや事業承継における株式買取の資金調達を中心に、具体的な資金調達方法、メリット・デメリット、成功へのステップまで分かりやすく解説します。

買取における資金調達の基本

株式をはじめとする事業資産の買取には、周到な資金計画が求められます。なぜ資金調達が必要で、どのようなタイミングで検討すべきか、基本的な知識を整理しましょう。

そもそも買取とは

買取には、企業の経営権を取得する「株式買取」、特定の事業を譲り受ける「事業買取」、不動産などの「資産買取」があります。特に株式買取は、M&Aや事業承継の核となる手法です。対象によって評価方法や手続き、資金調達の規模も異なります。

買取に資金調達が必要な理由

株式買取や事業買取では、対象の評価額が高額になることが一般的です。特にM&Aにおける株式の過半数取得や、事業承継での自社株集約には、数千万から数十億円超の資金が必要となるケースも少なくありません。そのため、外部からの資金調達が不可欠となり、その巧拙が買取戦略の成否を左右します。

買取資金調達を検討するタイミング

株式買取を含む買取の資金調達は、初期検討段階から意識すべきです。対象企業・事業の選定と並行し、調達可能な手段や金額の概算を把握しましょう。本格的な活動は基本合意後、デューデリジェンスと並行して進めるのが一般的ですが、早期準備が有利な条件獲得や円滑な進行に繋がります。

買取における資金調達の特徴

株式買取が中心となるM&Aや事業承継、そしてその他の買取シーンにおける資金調達の特徴を見ていきましょう。

M&Aにおける株式買取

M&Aでの株式買取は、買い手が対象企業の経営権を取得する一般的な手法です。買い手は事業拡大や新規参入のため、株式取得対価として多額の資金を必要とし、融資(LBOファイナンス等)や出資を検討します。売り手オーナーにとっては創業者利潤の実現や後継者問題の解決が目的です。

また近年では、個人が主体となって比較的小規模な会社や事業を買収するM&Aが増加しています。個人の信用力や自己資金額が審査の大きなウェイトを占めるほか、利用できる融資制度も限られてくる場合があります。買収後の事業計画の実現可能性や、個人の経営能力・経験が特に重視されるため、しっかりとした準備と計画が不可欠です。

事業承継における自社株買取

事業承継では、後継者が先代から自社株を買い取る際や、会社が自己株式として買い取る(金庫株)際に資金が必要です。特に非上場企業の自社株買取資金は高額になりがちで、後継者個人の負担は大きいです。金融機関からの融資、日本政策金融公庫の事業承継関連融資、生命保険の活用などが検討されます。

不動産・動産などの資産買取

企業が事業用の不動産や設備機械などを買い取る際も資金調達が必要です。株式買取とは異なり、対象資産そのものの担保価値が重視される傾向があります。不動産担保ローンや動産担保融資(ABL)、リースなどが活用されます。株式買取のための資金調達とは異なるアプローチが求められる点を理解しておきましょう。

買取における主な資金調達方法

株式買取を中心に、様々な買取シーンで活用できる資金調達方法を解説します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、最適な手段を選びましょう。

自己資金(内部留保・経営者の個人資産)

企業の内部留保や経営者の個人資産は、返済不要で低リスクな資金源です。しかし、大規模な株式買取では全額を賄うのは難しく、運転資金枯渇リスクも考慮し、他の調達方法と組み合わせるのが賢明です。特に株式買取では、一定の自己資金拠出が金融機関からの信頼を得るうえで重要になることがあります。

金融機関からの融資(プロパー融資、制度融資、M&Aローン)

銀行等からの融資は主要な調達手段です。プロパー融資、信用保証協会保証付の制度融資があります。M&Aでは、買収対象企業の資産やキャッシュフローを担保とするLBOファイナンスや、特定のM&Aローンも選択肢です。融資期間は案件規模や企業の信用力により変動します。

日本政策金融公庫からの融資

日本政策金融公庫は、中小企業や事業承継者に対し、長期の低金利の融資制度を提供しています。事業承継支援資金やM&A関連資金は、特に、オーナーから株を買い取る際や個人M&Aでの株式取得資金として有力な選択肢です。民間金融機関を補完する役割を担い、積極的に活用を検討すべき機関と言えます。

第三者割当増資・エクイティファイナンス

株式を新たに発行し、特定の第三者(投資ファンド等)に引き受けてもらうことで、返済不要の自己資本を調達できます。これは買収資金の調達だけでなく、買収する側が自社の信用補完や資本増強のために行うこともあります。ただし、持株比率の希薄化や経営への影響を考慮する必要があります。

社債発行

企業が投資家から直接資金を借り入れる社債は、主に信用力の高い企業が利用しますが、中小企業向けの少人数私募債もあります。株式買取のような大規模資金調達の一環として、多様な資金調達ポートフォリオを組む際に検討されることがあります。ただし、発行手続きやコスト、償還義務が伴います。

生命保険の解約返戻金や契約者貸付

経営者を被保険者とする生命保険の解約返戻金や契約者貸付は、自社株買取資金として事業承継時の納税資金や株式買取資金準備に有効です。計画的な準備が必要で、保険種類や税務に注意し、専門家と相談しましょう。これは特にオーナー経営者にとって、円滑な事業承継を実現するための重要な手段となり得ます。

アセットファイナンス・ファクタリング

保有資産の売却やリースバック、売掛債権のファクタリングは、株式買取資金の直接的な調達というより、付随的に発生する資金需要や財務改善のために補完的に用いられることがあります。これらにより、主要な買取資金調達を円滑に進めるための環境を整える効果が期待できます。

買取における資金調達を成功させるためのステップ

買取、特に株式買取における資金調達を成功に導くための具体的なステップを解説します。

1. 明確な事業計画・買取計画の策定

なぜ株式を買収するのか、それにより何を目指すのか、買収後の事業計画はどうするのか。これらを具体的に示した事業計画・買取計画が資金調達の出発点です。金融機関や投資家はこれを基に判断します。特に株式買取の場合は、取得後のシナジー効果やガバナンス体制なども計画に盛り込むことが望ましいです。

2. 複数の資金調達方法の比較検討

自己資金、融資、出資など、各調達方法のメリット・デメリット、コスト、条件は異なります。自社の状況、株式買取の目的、必要額、許容リスクを総合的に勘案し、複数の方法を比較検討することが肝要です。一つの手段に固執せず、最適な組み合わせを模索しましょう。

3. 金融機関・投資家へのアプローチ

計画が固まり、調達方法の候補が絞れたら、金融機関や投資家へアプローチします。買取の意義、将来性、返済計画の確実性を論理的かつ情熱的に説明します。企業の強みや成長戦略を効果的に伝え、信頼関係を構築することが、株式買取のような大規模な資金調達を円滑に進めるうえで不可欠です。

4. 契約条件の確認と交渉

融資や出資の条件提示を受けたら、金利、返済期間、担保・保証、コベナンツ(財務制限条項)などを細部まで確認します。不利な条件がないか、自社の実情に合っているかを吟味し、必要なら交渉をします。株式買取に関連する契約では、表明保証や株主間契約なども関わってくるため、専門家と連携して慎重に進めましょう。

最適な資金調達方法を選び、買取を成功させましょう

株式買取を伴うM&Aや事業承継、あるいは個人M&Aや資産買取は、企業の成長、存続、そして新たな挑戦において極めて重要な経営判断です。そして、その成否は、買取の目的や規模、自社の状況に照らして、いかに最適な資金調達戦略を策定し、実行できるかに大きく左右されると言っても過言ではありません。

本記事が、皆様の株式買取を中心とした様々な買取シーンにおける資金調達の一助となり、事業のさらなる発展、円滑な事業承継、そして新たな挑戦の成功に貢献できれば幸いです。資金調達は専門的な知識が求められる分野ですので、具体的な計画を進める際には、必ず信頼できる専門家にご相談ください。


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