- 作成日 : 2024年7月31日
開業届と失業保険ガイド!バレる?タイミングはいつがいい?
失業保険は、雇用保険の「基本手当」のことです。雇用保険に加入していた人が何らかの理由により離職した場合、失業中の生活を心配なく過ごし、早く再就職するために支給されます。この記事では、再就職中の起業と開業届、失業保険の関係などを考えていきます。
目次
失業保険をもらいながら開業届を出すのは可能?出さないほうがいい?
失業保険を受給しながら、開業届を提出することは可能かを考えていきます。
そもそも失業保険の受給要件とは?
失業保険(雇用保険制度における基本手当)の受給要件の概要を見ていきましょう。
まず、前職の離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が12カ月以上あることが前提となります。次に、失業保険は雇用の内定等がない「失業の状態」にある人に給付されます。
厚生労働省のサイトには「失業の状態」とは、次の条件を全て満たすこととされています。
- 積極的に就職しようとする意思があること
- いつでも就職できる能力(健康・環境など)があること
- 積極的に就職活動をするも、現在職業に就いていないこと
参考:Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)|厚生労働省
したがって、すでに開業届を提出して事業を開始した人は失業の状態には該当しません。大前提として、すでに事業を始めている場合においては失業してはいないため、失業保険の対象にはらないことは明らかです。
事業開始等による受給期間の特例とは?
上記大前提を踏まえつつ、離職後に起業し、その後その事業を休廃業した場合でもさらなる再就職活動にあたって、失業保険が受給できる特例があります。令和4年7月より一定の条件を満たす場合には、起業後の最大3年間は失業保険の受給期間に算入しないという特例です。
詳細については下記をご参照下さい。
参考:離職後に事業を開始等した場合の雇用保険受給期間の特例について|厚生労働省、「雇用保険受給期間の特例を申請できます」
したがって、失業保険をもらいながら開業届を出すことはできませんが、起業がたとえ成功裏に終わらなくても3年間の猶予が与えられたことになります。
失業保険をもらいながら開業届を出すとバレる?
失業保険をもらいながら開業届を提出することは失業保険の制度と矛盾しており、失業保険を受給するのであれば、就職活動と並行した起業の準備に留めるべきなのです。
再就職のための失業保険
失業保険は再就職を支援するという意味で支給されるもので、起業している場合にはその事業を運営することが新たな職業に就いたことになるので失業保険を受ける権利はありません。
開業届を提出したことがハローワークにバレるかどうかという点では、厚生労働省のサイトが参考になります。ここには不正受給は必ず発見されるとあります。デジタル技術の浸透もあり、今後ますますバレる可能性は高くなるでしょう。
失業保険のために開業届を取り消す・取り下げは可能?
一旦、税務署に提出してしまった開業届をなかったことにする方法はあるのでしょうか?
開業届の取り下げ書を提出
決められた用紙はありませんが、一旦提出した届を取り下げるべく、「取り下げ書」を作成して税務署に提出する方法があります。
取り下げ書には、決まったフォーマットがないため、開業届を提出した税務署に確認して作成するのが無難でしょう。
開業と同日付で廃業届を提出
開業届は、正式名を「個人事業の開業・廃止等届出書」といいます。したがって、開業届と同一書式で廃業届を提出するという方法も考えられます。
この場合、開業と同時に廃業するという結果となるため、この方法も開業届を提出した税務署に相談することをおすすめします。
副業と開業届と失業保険の関係性について
失業保険と開業届の関係について述べてきましたが、これに「副業」が加わるとどうなるのでしょうか?
副業と開業届の関係
事業を営む場合にはたとえ副業であろうと開業届は必要です。しかし、次のようなものは事業所得でなく、雑所得に分類されるため開業届は不要です。
- 衣服・雑貨・家電などの売却
- 自家用車などの資産の貸付
- ベビーシッターや家庭教師などの人的サービス
参考:No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合|国税庁
そもそも事業所得は、「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」という判例にも見られるように、他と掛け持ちすることは基本的に難しいものです。事業かどうかの判断に迷ったら税務署に相談しましょう。
引用:裁判例結果詳細 東京高等裁判所昭和56年4月24日 | 裁判所
副業と失業保険の関係
失業保険を受給しながら副業をすることはできるのでしょうか?失業保険を受給するには、アルバイト、副業など名称を問わず、認定日に申告が必要となります。副業などが「就職」の状態かの判断は各ハローワークにて行っており、例えば、ハローワーク新宿では次のとおりです。
「原則、1日の労働時間が4時間以上の場合は「就職・就労」となり、働いた日の基本手当は支給されません。また、1日の労働時間が4時間未満は「内職・手伝い」として収入の明細を申告します。」
結局、どのような形でも実際に仕事をした日には失業保険は受け取れません。雑所得に分類されても、副業により収入を得ている場合は基本的には失業保険の受給は難しいと言えます。
再就職手当と開業届と失業保険の関係性について
再就職のお祝い金とも言える再就職手当について解説します。
そもそも 再就職手当とは?
失業の認定を受け、失業保険を受給していた人が再就職した場合、再就職手当が支給されます。再就職手当は早期の再就職を促すために支給されるもので、原則として再就職までの期間が短いほど支給される手当が大きくなります。
再就職手当と開業届の関係
再就職手当は再就職の事実をもって支給される手当のため、再就職が自営業であれば次の順で手続きすることになります。
- 前職場を退職後、失業保険の手続きをする
- 再就職探しを開業準備と並行しつつ実施し、失業保険を受給する
- 開業届を提出し、再就職手当を受給する
不動産所得と開業届と失業保険の関係性について
次に、不動産所得と開業届、失業保険について考えてみましょう。
不動産所得は「事業的規模」のときのみ開業届が必要
所得税においては不動産所得は事業的規模と、それに満たない業務的規模の二種類があり、開業届が必要となるのは「事業的規模」のときだけです。規模の違いは実質的に判断しますが、概ね次の基準が参考になります。
- 貸間、アパート等で貸与する独立した室数が概ね10室以上
- 独立した家屋は概ね5棟以上
参考:No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分|国税庁
No.1399 新たに不動産の貸付けを始めたときの届出など|国税庁
事業的規模に満たない不動産所得と失業保険
事業的規模に満たない不動産所得がある場合、失業保険についてはハローワークに相談することをおすすめします。「失業の状態」を判定するのはハローワークのため、事業的規模に満たない不動産所得について詳細を説明し、受給要件を確認しましょう。
起業なら失業保険の受給期間の特例を利用しよう
離職後に起業を予定する場合には、雇用保険受給期間の特例を利用できるように開業届を出し、まずは事業に専念するのもよいでしょう。この特例の確認書類には「開業届」の控えを使用できます。
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