- 更新日 : 2024年4月22日
介護業の事業計画書の書き方は?ひな形を基に記入例や考え方を解説
介護施設を運営する社会福祉法人や医療法人、株式会社を設立する際には事業計画書を作成しましょう。この記事ではこれから介護業で法人設立を考えられている方のために、事業計画書の書き方や考え方をご説明します。
すぐに使える介護業の事業計画書テンプレートもご用意しておりますので、そちらも参考にしながら事業計画書を作成してみましょう。
目次
介護業の事業計画書を作成する目的とは?
事業計画書を作成する目的は「自らの事業の全体像を明らかにする」「その実現のための具体的な計画を示す」という2点が挙げられます。融資や出資を受けるなどの際に事業計画書を用いて事業の内容を説明しなければならないので、資金調達をするためには不可欠な書類となります。
また事業計画書は今後経営していくうえでの指針となります。計画がしっかり立てられていないと、行き当たりばったりの経営になってしまい失敗するリスクが高くなってしまうでしょう。事業計画書で創業時の想いや事業の内容、見通しを明確にしておくことで、事業がうまくいっているかどうかという現在の立ち位置や今後の課題なども明らかになります。経営が行き詰まったとき、悩んだときも、事業計画書を見返すことで初心に立ち返ることができるため、ブレが少ない経営が可能となります。
介護業向け事業計画書のひな形、テンプレート
介護事業を始めるにあたって事業計画書の作成は必須といえます。しかし、特に初めて開業される方にとっては「どのような書式で作ればいいかわからない」「何を書けばいいかわからない」というお悩みもあるかと思います。そこで、すぐに使える無料テンプレートをご用意しました。以下のリンクからダウンロードいただけます。
介護業の事業計画書の書き方
ここからは上記でご紹介したテンプレートを基に、事業計画書に盛り込んでおくべき内容を項目ごとにご紹介します。
創業の動機・目的
「なぜ創業するのか?」「事業を通じて何を成し遂げたいのか?」といった想いを書きましょう。ただ単に「介護にニーズがあるから」「人の役に立ちたいから」というだけでは説得力がありません。例えば「○○という体験があった」「そこから△△という課題、ニーズがあると感じた」「事業を通じて□□を実現したい」というストーリーで書くことで融資担当者やステークホルダーの心に響きやすくなります。
経営者の職歴・事業実績
経営者のこれまでの経歴を記載します。履歴書の職歴欄のようなイメージで、「○年◯月 〇〇介護センター ◯年勤務 運営や新人介護士の育成に携わる。」というように簡潔に年次と職歴、経験を書きます。特に開業する事業と関連する経験・実績がある場合はアピール材料となるため、もれなく記載しましょう。
取り扱い商品・サービス
事業所や介護施設で提供するサービスの内容について記載します。「取り扱い商品・サービスの内容」の項目では「健康維持・リハビリサービス(介護予防や早期回復を目的とするリハビリサービス)」というように簡潔にサービス名を記載し、必要に応じて補足説明を添えましょう。
「セールスポイント 販売ターゲット・戦略」の項目では事業の特徴(強み・他社との違い)やサービスの対象となる顧客層、集客の方法について記載します。
「競合・市場などの分析」の項目ではライバルとなる他の事業所や介護施設の状況、創業地周辺の市場状況について調査したうえで記載しましょう。
やはりこちらも「どのようなサービスを提供するか?」「どのような人(年代や性別、抱えているニーズや悩みなど)の利用を前提としているのか?」「競合と比較してどのような強みがあるのか?」「どのような戦略で事業を展開していくか?」がわかるよう意識しましょう。
取引先・取引関係
すでに取引がある、もしくは今後取引関係ができると見込まれる個人や企業の情報を記載する項目です。「販売先」「仕入先」「外注先」に分けて記載します。介護業は一般の高齢者の方が利用され、報酬は介護保険から支払われるため、「一般個人(自己負担)」「一般個人(介護保険)」のように書けば問題ありません。また、売上のシェアや掛取引の割合、回収の条件なども記載しましょう。
仕入先、外注先に関しては固有名詞(会社名や事業者名)を記載して同様に支払いのシェアや掛取引の割合、支払い条件を明記します。
従業員
常勤役員、3か月以上継続雇用をする従業員、家族従業員、パート従業員の人数を記載します。なお、法人でない場合は常勤役員の人数は記載不要です。
借入の状況
借入先名、借入の種別、借入残高、年間返済額を記載します。事業用の借入はもちろん、住宅や自動車、教育、カードローンなどプライベートな借入についても明記しておきましょう。特に借入状況については融資の審査項目の一つとなるため、うそや間違いがないよう正確に申告することが大切です。
必要な資金と調達方法
開業および事業を継続するにあたって必要となる資金とその内訳、資金調達方法について記載します。必要資金は「設備資金」と「運転資金」に分けてそれぞれ内訳と金額、合計額を記載します。
調達の方法についても、自己資金、親族や友人、日本政策金融公庫、その他金融機関など、調達先別に調達金額を明らかにしたうえで合計額を記載しましょう。なお、後述する事業の見通しと整合性がある金額を記載することが大切です。運転資金の目安は通常3か月~4か月分ほどの原価や経費額までの金額を目安にして書くとよいでしょう。調達する資金は自己資金が少なくとも1/3程度あることが望ましいとされています。
事業の見通し
開業当初と1年後もしくは事業が軌道に乗った後に見込まれる売上高や売上原価、経費、利益を記載します。また、この見通しを出すにあたった根拠も明確にしておきましょう。「平均単価30,000円×利用者数延べ130人=390万円(売上高)」「原価率 7%」「人件費:代表30万円+従業員30万円×6人+アルバイト10万円×3人=240万円、家賃:30万円」というように具体的な数字を記載することで、説得力が増します。
介護業の事業計画書の事業(利益)の見通しの考え方
特に融資や出資の審査の際には事業の見通しがシビアに見られます。儲からない事業に融資や投資するのは非常にリスクが高い行為であり、事業が儲からないと融資元や出資元が損をしてしまうからです。
事業を開始した直後はなかなか黒字を出すのが難しいかもしれません。しかし、半年から1年後には黒字に転換できるような経営戦略や見通しを立てましょう。ただし、絵空事やどんぶり勘定にならないよう、根拠も明確にする必要があります。
また、見通しは少し厳しめに立てておかれることをおすすめします。「これくらい稼げるだろう」「経費はこれくらいで収まるだろう」と甘めの見通しを立ててしまうと融資担当者や投資家から「本当に大丈夫か?」と疑念を持たれかねません。また、何よりも見通しの甘さは経営の失敗にもつながります。思ったよりも売上が立たなかった、経費が想定よりも多くかかった結果、資金がショートしてしまうというケースも十分ありえることです。
社会情勢の変化や競合の状況、災害や感染症など、外的要因で利益は大きく左右されます。特に新型コロナ禍では利用者が減少して売上が低下した、あるいは感染症対策で経費がかさんで利益率が大きく低下した事業所や介護施設も少なくありませんでした。こうした不測の事態に備えるためにも、根拠を持ち、厳しめの見通しを立てておきましょう。
事業計画書の考え方や書き方についてはこちらの記事でさらに詳しく紹介していますので、ぜひ今回の記事と併せて読まれることをおすすめします。
介護業での創業は事業計画書からはじまる
事業計画書は資金調達をするうえで、そして何より今後事業を円滑にまわしていくうえで必須の書類です。事業の内容や戦略、必要な資金や調達方法、事業の見通し、ご自身の想いを明らかにして、それを元に経営していけば失敗するリスクを軽減できます。
介護事業所や介護施設を開業される際には、まず事業計画書を作成してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
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