- 更新日 : 2023年10月5日
60歳、65歳のシニア起業が増えている?メリットや成功のコツを解説
健康寿命の伸長に伴い、起業するシニアの方が増えてきているようです。フリーランスなどの仕事を長らくされてきて本格的に起業されるシニアに加えて、企業でキャリアを積み、定年を迎えてから起業するという方も少なくないようです。本記事では、シニア起業の現状につき、シニア起業のメリットや成功させるコツなどとともにお伝えします。
目次
シニア起業が注目されている理由
シニア起業が注目されている理由はいくつかありますが、そのひとつが年金受給額の問題です。厚生労働省の「令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、老齢厚生年金加入者の平均受給額は、令和3年度(2020年度)末時点で月額14万5665円です。また、国民年金の場合、老齢基礎年金の平均受給額は同時点で月額5万6,479円です。特に国民年金の受給額は引退生活を送るには十分であるとはいえず、追加の収入を得る手段として起業を検討する人が増えているようです。
また、高齢者雇用安定法により65歳までの雇用確保が企業に求められているものの、60歳で定年を迎えて雇用が延長された人の多くで収入が減少しており、より多くの収入を求めて起業する人も少なくないようです。
シニア起業のメリット・デメリット
一般的な起業と同様に、シニア起業にもメリットとデメリットがあります。メリットとデメリットをてんびんにかけ、バランスを見極めて起業するかどうかを判断する必要があります。特にこれまでに起業の経験がなく、人生で初めて起業をするといったケースにおいては慎重に検討する必要があります。また、これまでのキャリアやスキルと関係がない、まったく新しい分野で起業するといった場合には、とりわけ慎重に検討する必要があります。
【メリット】自分のペースで仕事ができる
シニア起業の最大のメリットは自分のペースで仕事ができることです。会社勤めの場合、例えば60歳で定年を迎えて再雇用された場合、立場は会社員のままです。会社の就業規則に従い、勤務場所、勤務時間、職務内容などについては会社の指示に従う必要があります。一方、シニア起業であればそうした制約はほとんどなく、自分の好きなことを好きな場所で好きな時に行うことができます。フリーな立場でフリーに仕事ができるのは大きなメリットです。
【メリット】経験やスキル、人脈を活かせる
自分の経験やスキル、および人脈が活かせるのもシニア起業のメリットです。経験やスキル、そして人脈は、シニアが培い、蓄積してきた財産です。シニア起業とは、シニアが持つそうした財産を小分けにして現金化するようなものです。営業や広告宣伝などのマーケティング系のスキルや、資金繰りや資金調達などの財務系のスキル、あるいは製造管理やサプライチェーンマネジメントなどの製造系のスキルなどは、そうしたスキルがない中小企業やスタートアップ企業にとって魅力的でしょう。
【メリット】生きがい・やりがいが持てる
生きがいややりがいが持てるのもシニア起業のメリットです。厚生労働省の『平成24年版 労働経済の分析』によると、男性の55~59歳層および60~64歳層における就業理由では「経済上の理由」が最も多いものの、長期的推移では「経済上の理由」がやや低下し、代わりに「生きがい・社会参加」が上昇傾向にあります。定年退職してまったく何もしないよりも、生きがいや社会参加を求めて仕事をしようという人が増えてきているのです。
【デメリット】収入が不安定
一方のデメリットですが、その最大のものは収入が不安定であることでしょう。シニア起業では誰かに雇用されるわけではありません。定年後再雇用されるケースのように、会社から給与が支払われることもありません。自分の売り上げは自分で作らなければならず、また作れるという保証もありません。売り上げが上下することもあり、収支が赤字になることもあります。会社員のように安定した収入が得られにくいのは大きなデメリットです。
【デメリット】失敗するリスク
また、失敗するリスクがあるのもシニア起業のデメリットです。通常の起業と同様、シニア起業の場合も経営が失敗した場合、その責任を取る必要があります。特に、起業に際して他人から出資してもらった場合や、貸し付けなどのファイナンスをしてもらった場合など、経営が失敗した場合には大きな責任を伴います。経営破綻することの影響は大きく、仕入れ先などの取引先、従業員、金融機関などにも迷惑をかける可能性があります。
【デメリット】体力的な負担
体力的な負担が強いられるのもシニア起業のデメリットです。起業したことがある人はおわかりだと思いますが、一般的に起業には体力が求められます。特にゼロベースで起業する場合は会社設立、事務所設置、従業員の採用、営業先の開拓など、やることが無限にあります。シニア起業の場合も同様にそうしたプロセスをたどることが求められ、相応の体力が要求されるでしょう。また、起業後においても、売り上げや利益を確保するために相応の仕事量が求められます。
シニア起業に向いている業種
ところで、シニア起業に向いている業種は何でしょうか。せっかくシニア起業をするのであれば、これまでの経験、スキル、人脈といった「財産」を活用できる仕事をすべきでしょう。シニア起業に際しては、自分の「財産」の棚卸しを行って財産目録を作り、個別の財産をフルに活かせる仕事を検討してみてもいいかもしれません。
コンサルタント
シニア起業に向いている業種のひとつにコンサルタントがあります。特に特定の分野において豊富な経験とスキルを持つシニアにおすすめです。経営コンサルタント、営業・マーケティングコンサルタント、システム開発などのITコンサルタント、経理や財務などの財務コンサルタント、人材関連のHRコンサルタント、製造系に特化した製造コンサルタント、技術・研究開発などのR&Dコンサルタントなど、多くのシニアが幅広い分野でコンサルタントとして活躍しています。
人材紹介業
人材紹介業もシニア起業に向いている業種です。特に特定の業界において幅広い人脈を持つシニアにおすすめです。HRなど人事関連の仕事の経験がないシニアでも、現職中に培った人脈を活かし、人材紹介業を始めることが可能です。人材紹介業は比較的簡単に参入でき、設備投資や仕入れも必要なく、ランニングコストも低いのが魅力です。エグゼクティブなどの比較的ハイクラスの人材ニーズに対応できれば、相応の収益を獲得することも可能です。
営業代行業
営業代行業もシニア起業に向いている業種です。特にB2Bの製品やサービスの営業スキルや経験を持つシニアにおすすめです。B2Bの製品やサービスの多くは新規営業が難しく、多くの企業が参入の糸口を求めています。企業のそうしたニーズに応えることができれば、相応の収益を獲得することができます。また、営業代行業は比較的簡単に参入でき、ランニングコストも低いのが魅力です。さらに、成功報酬という追加の売り上げを確保することも可能です。
シニア起業に活用できる助成金・資金調達
シニア起業に活用できる助成金や資金調達方法は何でしょうか。シニア起業をする際にそれなりのお金が必要な場合、活用できる助成金や資金調達方法があれば活用したいところです。シニア層が利用しやすい資金調達方法として、日本政策金融公庫の「女性、若者/シニア起業家支援資金」と、東京都の「創業助成事業」をご紹介します。
日本政策金融公庫「女性、若者/シニア起業家支援資金」
日本政策金融公庫の「新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」は、その名の通り女性、若者、シニア起業家を対象とした制度融資です。「新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方のうち、女性または35歳未満か55歳以上」の人が対象です。融資限度額は7200万円(うち運転資金4800万円)で、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が7年以内となっています。技術やノウハウなどに新規性がみられる人には特別利率が適用されます。
東京都「創業助成事業」
東京都内でシニア起業する場合、東京都の「創業助成事業」が利用できる可能性があります。都内での創業を具体的に計画している個人または創業後5年未満の中小企業者等のうち、一定の要件を満たす人を助成対象としており、賃借料、広告費、器具備品購入費
産業財産権出願・導入費、専門家指導費、従業員人件費などの費用に対して、300万円を上限に支給されます。助成率は三分の二以内です。
なお、個人事業主・法人の代表者として通算5年以上の経営経験がある人は助成対象とはならないのでご注意ください。
シニア起業の成功事例
実際にシニア起業するに際し、先にシニア起業で成功をおさめた事例を見て置くことは有意義でしょう。ここでは、シニアで起業して大成功をおさめた二つの有名な事例をご紹介します。
レイ・クロック:マクドナルド
シニア起業の成功事例として最初に挙げるべきは、レイ・クロックによるマクドナルドの起業でしょう。ミルクシェーク製造ミキサーの営業マンをしていたレイ・クロックがカリフォルニア州サンバーナーディノのマクドナルド兄弟のハンバーガーレストランのフランチャイズ権を購入し、フランチャイズ展開を開始したのは彼が52歳の時でした。それまでのクロックはプロのピアノ演奏家、不動産ブローカー、ペーパーカップの営業マンといった職を転々としていたそうです。52歳にしてクロックはチャンスをつかみ、世界最大のハンバーガーチェーンを築き上げました。
ハーランド・サンダース:ケンタッキーフライドチキン
ハーランド・サンダース、通称カーネル・サンダースのシニア起業もサクセスストーリーとして知られています。軍隊を含むさまざまな職を転々としていたサンダースが、地元ケンタッキーでガソリンスタンドを始めたのは彼が40歳の時でした。サンダースは当初、自分のガソリンスタンドへの客寄せのために自ら開発したフライドチキンを販売していました。サンダースのフライドチキンは評判を呼び、やがてフライドチキンを専門に販売するレストランを開店させ、フランチャイズを開始したのは彼が62歳の時でした。今日、KFCは、誰もが知る世界的なの巨大企業に成長しています。。
シニア起業の成功のコツ
マクドナルドのレイ・クロックや、ケンタッキーフライドチキンのハーランド・サンダースほどの大成功をおさめなくても、シニア起業をするのであればそれなりに成功させたいところです。シニア起業を成功させるコツは何でしょうか。
自分の「財産」を活用する
シニア起業を成功させる第一のコツは自分の「財産」を活用することです。ここでいう「財産」とは経済的な財産に加えて、経験、スキル、人脈など、これまでのキャリアで築いてきた「無形資産」のことです。例えば、レイ・クロックは自分の顧客ネットワークを通じ、「カリフォルニアのサンバーナーディノにマクドナルド兄弟が経営するすごいハンバーガーレストランがある」という情報を入手しています。
できるだけコストをかけない
できるだけコストをかけないのもシニア起業を成功させるコツです。特にこれまでに起業経験がないシニアにありがちなのは、起業時にお金を使い過ぎることです。例えば飲食店を開業する場合、店舗取得費用や内外装費用、設備投資などに相当のコストがかかります。そして、多くの飲食店が初期投資を回収できずに経営破綻しています。初期投資を抑え、日々のランニングコストを可能な限り下げることで収支を均衡させ、黒字を確保しやすくなります。
「財産」を十分に活かしてシニア起業を成功させよう
以上、シニア起業の現状につき、シニア起業のメリットや成功させるコツなどとともにお伝えしました。男女ともに健康寿命の伸長が続き、「人生100年時代」が到来しつつあります。そうした中、「健康な限りは何らかの仕事をしよう」、「何らかのビジネスをしよう」と考えるシニアが今後ますます増えてくる可能性が高いでしょう。これからシニア起業を目指す人は、自分が築いてきた「財産」を十分に活かし、シニア起業を成功させてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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