• 作成日 : 2025年10月24日

駐車場経営で固定資産税はどう変わる?知らないと損する節税ポイントを解説

土地を駐車場にすれば、使っていない土地を有効活用でき、税金も安くなるというイメージを持っていませんか?しかし、駐車場への転用によって固定資産税が増えるケースも少なくありません。

本記事では、駐車場経営における固定資産税の仕組みや節税方法、相続や設備投資をした場合の取り扱いを解説します。

土地を駐車場にすると固定資産税は安くなる?

駐車場経営を考えている人の中には、「土地を有効活用すれば固定資産税も安くなるのでは」と期待する方も少なくありません。しかし、駐車場にしただけで固定資産税が軽減されることはなく、むしろ住宅用地より税負担が増すケースが多く見られます。住宅を取り壊して更地化した場合や空き家の放置が続いた場合は、優遇措置が失われて税額が増加するリスクがあります。

住宅用地特例により住宅のある土地は税が軽減される

住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税と都市計画税が軽減されます。2025年9月時点の制度では、小規模住宅用地(住宅1戸につき200㎡以下の部分)であれば、課税標準額が評価額の6分の1となり、都市計画税も3分の1に軽減されます。たとえば評価額1,200万円の土地でも、特例が適用されれば課税標準額は200万円に抑えられ、固定資産税(税率1.4%)は年額28,000円にとどまります。

この制度が適用されるか否かで税負担は大きく異なります。仮に住宅を取り壊して更地にし、駐車場に転用した場合、同じ評価額でも課税標準額は1,200万円そのままとなり、税額は年額168,000円に跳ね上がります。結果として、住宅用地特例の有無で最大6倍もの差が生じることになります。

参考:固定資産税・都市計画税(土地・家屋)|主税局

駐車場用地は更地扱いとなり特例の対象外に

月極駐車場やコインパーキングとして土地を運用した場合、その土地は「住宅用地」ではなく「非住宅用地(更地)」とみなされます。このため、住宅用地特例の対象外となり、課税標準額は評価額の100%で計算されます。標準税率1.4%が満額で課され、税額は大きくなります。

以前は住宅が建っていた土地を駐車場として利用するケースでは、前述のように税額が急増します。「空き家を解体して駐車場にすれば節税できる」というのは誤解で、むしろ税負担は増える傾向にある点に注意が必要です。また、現行制度では駐車場経営に対する直接的な税制優遇措置は設けられておらず、土地活用による節税は慎重な検討が求められます。

空き家への優遇措置も法改正で見直されている

以前は、老朽化した空き家でも「住宅が建っている」という事実があれば住宅用地特例の対象となり、固定資産税が軽減されていました。しかし2023年12月施行の改正空家法により、住宅の形をなしていない「特定空き家」や「管理不全空き家」と判断された場合、住宅用地としての扱いが取り消される制度が導入されました。

この改正を受け、特定空き家に認定されると、住宅用地特例が解除され、固定資産税が6倍近くに増額されるリスクがあります。空き家放置に対する規制が近年強化傾向にあるため、空き家を残しての節税は困難となります。むしろ、不要な家屋は早めに処分し、土地活用の方針を明確にした上で、代替的な節税手段を検討することが望ましいといえます。

駐車場経営の固定資産税を節税する方法は?

駐車場経営では、住宅用地のような手厚い税優遇がないため、固定資産税の負担が重く感じられるケースも少なくありません。しかし、制度を正しく理解し、土地の使い方や設備投資の方法を工夫することで、税額の引き下げは可能です。ここでは、有効な節税方法を解説します。

居住建物を併設して住宅用地特例を適用させる

最も効果的な節税策は、土地を「住宅用地」として扱えるようにすることです。駐車場敷地の一部に居住用の建物を設けることで、建物が建つ土地に「住宅用地特例」が適用されます。200㎡以下の部分は評価額が6分の1に、超過分は3分の1に軽減され、固定資産税と都市計画税が大幅に減額されます(標準税率は1.4%)。

適用には用途・建築認可・自治体の判断が必要ですが、居住可能なコンテナハウスを設置することで住宅用地と判断され、土地の税負担が軽減される可能性があります。建物自体には別途固定資産税が課されますが、評価額が土地より低いため、トータルで見れば節税効果が期待できます。より本格的な活用として、アパートや賃貸住宅を併設することで、家賃収入と節税の両立も可能です。ただし、建築には初期投資が必要なうえ、駐車可能台数が減るというデメリットもあるため、収支計画の精査が重要です。

設備投資を抑えて償却資産税の対象外にする

舗装や精算機、ゲートといった設備を設置すると、それらは「償却資産」として課税対象になります。評価額合計が150万円以上となると、固定資産税(償却資産税)が毎年1.4%課税されます。

節税のためには、150万円未満に設備投資を抑えることが有効です。砂利敷きで簡易な区画のみを設定した月極駐車場なら、設備評価額が150万円未満に収まる可能性があります。その場合、償却資産税の課税対象外となることがあります。精算機を設置せず、月額契約やスマホ決済にすることで、初期コストと税負担の両方を軽減できます。駐車場の集客力と税金コストのバランスを見極めることが重要です。

一括償却資産制度を利用して設備を経費化する

150万円以上の設備投資が避けられない場合は、税務上の減価償却制度を上手に活用する方法もあります。取得価額10万円以上20万円未満の設備であれば、「一括償却資産」として3年間で均等償却が可能です。たとえば1台10万円の精算機を20台(計200万円)購入した場合、各年66万6,666円ずつ経費計上できます。この処理により所得税・住民税課税所得が減り、間接的に節税が図れます。
また、この一括償却資産は、償却資産税が非課税とされるものなので節税の観点からも有利な取り扱いとなります。
なお、10万円未満の備品については即時償却が可能で、固定資産登録自体を不要とする扱いも可能です。固定資産税の削減は難しい場合でも、所得税・法人税への影響を考慮すれば、実質的な税負担を軽減できます。

一部を緑地化して自治体の税優遇制度を活用する

自治体によっては、一定面積以上の緑化を施した土地に対して、固定資産税や都市計画税を軽減する制度を設けています。東京都では、敷地緑化義務制度の達成に応じた減税や、緑地保存地区における税軽減措置が活用できます。

駐車場の一角に芝生や植栽帯を設けることで、景観向上とともに税軽減や補助金交付の対象になる可能性があります。ただし、緑地面積を増やしすぎると駐車台数が減り、収益が下がる恐れもあります。利用率が低い敷地や角地のデッドスペースなどに活用するのが効果的です。制度の詳細は各自治体によって異なるため、事前に確認することが必要です。

参考:特別緑地保全地区|東京都都市整備局

相続税対策として駐車場を活用できる?

相続対策として土地を駐車場にすることは、要件を満たせば相続税評価額を圧縮できる有効な手段です。「貸付事業用宅地等」の特例を利用すれば、200㎡までの評価額を50%減額できる可能性がありますが、適用には厳格な条件があり注意が必要です。

小規模宅地等の特例により評価額を50%減額できる

駐車場が「貸付事業用宅地等」に該当すれば、相続税評価額の50%が減額される特例が適用されます。この制度は「小規模宅地等の特例」の一部です。対象面積は最大200㎡までで、たとえば評価額が6,000万円の土地であっても、特例適用により評価額を3,000万円に減額可能です。税率や控除額にもよりますが、これにより相続税が数百万円単位で軽減されるケースもあります。

参考:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

相続前からの事業継続と申告期限までの保有が要件

特例の適用には、「相続開始前から貸付事業に使われていること」「相続人がその土地を申告期限(原則10か月以内)まで保有し続け、かつ貸付事業を継続していること」が必要です。また、相続開始前3年以内に始めた事業は、原則として対象外です。これにより、駐車場を急ごしらえで開設しても特例を受けられないケースが多く、事前の計画が重要となります。

構築物のない青空駐車場は対象外となる可能性が高い

制度上、土地にアスファルト舗装や精算機、フェンスなどの構築物がない場合、「貸付事業」として認められないことがあります。単に更地を時間貸しにしているだけでは、実質的な使用実態が乏しいと判断されることもあります。また、親族に無償で貸していた場合や、相場より著しく安い賃料で貸していた場合には、「相当の対価による貸付」と見なされず、特例が適用されないリスクが高まります。

コインパーキング事業者と提携する「一括借上げ方式」は節税になる?

土地オーナーが駐車場経営に参入する際、自ら運営する方法以外に、コインパーキング事業者と提携し「一括借上げ方式」で土地を貸し出す選択肢があります。この方式は経営リスクが低く、安定した収益を得られる反面、税務上の取扱いや収益性への影響を正しく理解しておく必要があります。

一括借上げ方式とは「土地を貸すだけ」の経営スタイル

一括借上げ方式とは、土地オーナーが土地をコインパーキング事業者に一定期間・一定賃料で貸し出し、事業運営はすべて借主である業者側が行う仕組みです。土地所有者は初期投資や維持管理の負担なく、毎月固定の賃料収入を得られるのが特徴です。賃料は立地や広さにより異なりますが、駐車場の売上とは連動せず、契約期間中は安定収入が期待できます。

この方式は「土地の賃貸」として扱われ、所得区分上は不動産所得になります。したがって、青色申告特別控除や必要経費の計上も可能です。また、経営実務の負担がないため、高齢者や相続後の遺族でも比較的管理しやすい点がメリットです。

税務上は「償却資産税の課税主体が業者側」になる

自ら駐車場経営を行うと、アスファルト舗装やゲート・精算機などの設備に対して、償却資産税が課される場合があります。しかし一括借上げ方式では、それら設備は事業者側の所有物であり、課税主体も業者側になります。

つまり、土地オーナーは償却資産税の申告や納税義務を負いません。これにより固定資産税(=土地に対する税)以外の税負担が軽減され、手取り収入が安定します。ただし、建物を併設していない場合は住宅用地特例が使えず、更地扱いとなるため、土地そのものの固定資産税は一般税率(評価額×1.4%)が適用される点には注意が必要です。

デメリットは収益性の上限と契約条件の制約

一括借上げは「安定性」が魅力ですが、駐車場の稼働率が高くても収入が増えることはありません。あくまで固定賃料であるため、自己運営より収益の上限が決まっているのがデメリットです。また、契約期間中の中途解約が難しい場合もあり、土地を別用途に転用したい場合にはハードルになることがあります。

さらに、契約内容によっては原状回復義務が土地オーナーに課されるケースもあり、終了時に費用負担が生じるリスクも無視できません。提携契約時には、賃料設定だけでなく、修繕・解約・更新条件などを丁寧に確認することが重要です。

コインパーキング事業者との一括借上げ提携は、低リスク・少ない手間で安定収益を狙える方法として有効ですが、節税の観点では住宅用地特例が使えない点や、長期的な収益性の制約にも注意が必要です。

節税も収益も意識して駐車場活用を考えよう

駐車場にすれば固定資産税が安くなる、という認識は誤解です。住宅用地特例が外れることで、税負担はむしろ増加する傾向にあります。とはいえ、居住建物の併設や設備投資の調整、相続税の小規模宅地等の特例、さらには緑化による自治体の減税制度など、正しい知識と工夫次第で節税は十分に可能です。収益性だけでなく、税制面・将来的な相続まで見据えて、専門家と相談しながら賢く土地活用を進めていきましょう。


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