• 更新日 : 2025年10月21日

みなし解散の通知が届いた!法人登記の継続や清算の手続きとは?

法務局から突然「事業を廃止していない場合は2か月以内に届け出るように」という通知書が届いたら、どう対応すればよいのでしょうか。この通知は、会社の役員変更などの法人登記が長期間行われていないため、「みなし解散」の手続き対象になっていることを知らせるものです。放置すると会社が解散させられてしまう可能性がありますが、期限内に正しい法人登記などの対応をとれば、事業は問題なく継続できます。

この記事では、通知書が届いた場合の具体的な対応策から、必要な法人登記手続きまでをわかりやすく解説します。

みなし解散とは?法人登記の仕組み

「みなし解散」とは、最後の法人登記から12年間(株式会社の場合)なにも変更登記がされていない会社を、法律に基づき解散したとみなす制度です。法務局から通知書が届くのは、この手続きに入る前に「まだ事業を続けているなら、その旨を届け出るか、必要な法人登記をしてください」と最終確認を行うためです。

みなし解散の対象となる会社

みなし解散の対象となるのは、最後に役員変更などの登記がされてから12年が経過した株式会社、または5年が経過した一般社団法人・一般財団法人です。

株式会社の取締役の任期は最長10年であり、任期が満了すれば役員変更の登記が必要です。そのため、少なくとも10年に一度は登記がされるはず、という考えから12年という期間が設定されています。この条件は、会社法第472条に定められています。

たとえ毎年税務申告をしていても、法務局への登記申請がなければ、この手続きの対象になってしまいます。

出典:会社法 第四百七十二条|e-Gov法令検索

通知書が届く理由

法務局は、法人登記の記録だけをみて会社が活動しているかを判断します。そのため、登記情報が更新されないまま一定期間が経過すると、事業がされているかどうか、廃止していないかを確認するため、管轄の法務局から通知書が発送されるのです。

この通知書は、会社を一方的に解散させるためのものではなく、「もし事業を続けているなら、登記を更新してください」という最終確認であり、行動を促すためのものです。

出典:休眠会社・休眠一般法人の整理作業について|法務省

みなし解散の通知から登記までの流れ

毎年、法務大臣による官報公告の後、対象法人に通知が送付され、2ヶ月以内に届出や登記をしないと、法務局の職権で解散登記が行われます。

  1. 官報公告(10月頃): 法務大臣が、休眠会社の整理作業を行うことを官報に公告します。
  2. 法務局からの通知: 対象となる休眠会社の本店所在地宛に、管轄の法務局から通知書が郵送されます。
  3. 2ヶ月の猶予期間: 通知書の発送から2ヶ月以内に、以下のいずれかのアクションを取る必要があります。
    • 「まだ事業を廃止していない」旨の届出を提出する
    • 役員変更など、必要な法人登記を申請する
  4. みなし解散の登記(12月頃): 期間内に届出も登記申請もなかった場合、法務局の権限(職権)で解散の登記がなされます。

参考:令和6年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について|法務省

「休眠会社」と「みなし解散」の法人登記上の違い

「休眠会社」は事業活動を行わず長期間登記も更新していない状態を指し、「みなし解散」は法的に解散の登記が完了した後の状態を指します。両者の違いは、法人格が事業を継続できる状態にあるか、解散後の清算状態にあるかという点です。

項目休眠会社みなし解散された会社
定義最後の登記から12年経過した株式会社法務局により職権で解散登記がされた会社
法的状態法人格は存続しており、事業活動の再開が可能清算会社として解散登記されており、清算手続きのみ可能
必要な対応みなし解散を避けるための届出や登記会社を復活させるための「会社継続」の登記、または清算手続き

みなし解散の通知が届いたらすべき法人登記の手続き

法務局から通知書が届いたら、2ヶ月以内に「事業を続ける」か「このままやめる」かを決めます。事業を続けるなら法務局への届出や登記申請を、やめるなら「清算手続き」が必要になります。

事業を継続する場合は「事業を廃止していない旨の届出」

事業を続ける意思がある場合、まず行うべきことは、通知書に記載された期限内(通常2ヶ月以内)に「事業を廃止していない旨の届出」を法務局へ提出することです。

この届出は、通知書に同封されている様式に記入し、管轄の法務局へ郵送、または持参するだけで完了します。ただし、これは一時的な措置であり、登記義務違反(登記懈怠)の状態は解消されないため、別途、役員変更などの登記が速やかに必要です。

「役員変更登記」の申請

事業を継続する場合は「事業を廃止していない旨の届出」とあわせて、本来行うべきだった「役員変更」などの法人登記を申請します。

必要な登記を済ませることで、「登記を長期間怠っている状態」が解消されます。登録免許税(資本金1億円以下で1万円)などの費用はかかりますが、最も望ましい対応といえるでしょう。

会社を閉める場合は法人登記は放置しても良い?

みなし解散を機に廃業を決めた場合でも、法律に則った正式な「清算手続き」と、それに関連する法人登記(清算結了登記)が必要です。

みなし解散はあくまで法的な整理手続きであり、会社の財産や債務が自動的になくなるわけではありません。代表者には会社財産を清算する義務が残るため、清算人を選任し、清算結了の登記まで行うのが正式な手順です。

みなし解散の法人登記を放置するリスクは?

通知書を無視して2ヶ月が経過すると、会社は法務局によって職権で解散登記され、清算手続きが始まりますこれにより、事業活動に制限がかかるほか、長期間登記を怠っていたことに対する過料を請求されるリスクも高まります。

法人の解散登記が行われる

法務局の権限(職権)によって、「解散登記」が強制的に行われた会社は、登記事項証明書に「登記官の職権による解散」と記録されます。

解散登記がされると、その会社は事業活動ができなくなり、清算手続きに移行します。既存の契約や許認可なども失効する可能性があり、事業の継続が事実上不可能になります。

過料(罰金)が発生するリスク

役員変更登記などを長期間怠っていたこと自体が、法律上の「登記懈怠(とうきけたい)」にあたり、裁判所から代表者個人に対して100万円以下の過料が科されることがあります。

これは、みなし解散の手続きとは別の、登記義務を怠ったことへの制裁です。実際の過料額はケースバイケースですが、数万円から十数万円程度にとどまるのが一般的です。この過料は会社の経費にはできず、代表者個人の負担となります。

出典:会社法 第九百七十六条|e-Gov法令検索

金融機関や取引先からの信用を失うリスク

解散した会社は、清算を目的とする活動しかできなくなり、新たな契約や営業活動は行えません。会社の信用にも関わるため、取引先や金融機関との関係にも影響が出るでしょう。

融資が打ち切られたり、取引口座が制限されたりするなど、金融機関や取引先からの信用を完全に失う可能性もあります。

法人登記は公的な証明書(登記事項証明書)で誰でも確認できます。「解散」と記載されていれば、その会社は正常な取引ができないと判断されるため、事業上のあらゆる場面で支障が出ます。

みなし解散後に事業を継続する場合の法人登記手続き

職権でみなし解散の登記がされた後でも、公告後の解散から3年以内であれば、株主総会の決議により会社継続登記が可能です。

この「3年」という期間が、会社を復活させるための猶予期間です。この期間を過ぎてしまうと、もう会社を継続することはできず、清算手続きを完了させるしか道はなくなります。

会社継続の法人登記の手順

会社継続の法人登記は、一般的に以下の手順で進めます。

  1. 役員の再選任:みなし解散と同時に役員も退任扱いになっているため、まず取締役などを決めます。
  2. 株主総会の開催:「会社を継続する」こと、「新たに役員を選任する」ことについて、株主総会の特別決議で承認を得ます。
  3. 登記申請書類の作成:株主総会議事録や新役員の就任承諾書など、法務局へ提出する書類を作成します。
  4. 法務局へ登記申請:管轄の法務局へ「会社継続」と「役員変更」の法人登記を同時に申請します。

会社継続の登記の必要書類と費用

会社継続の法人登記の申請には、主に以下の書類や費用(登録免許税)が必要です。

主な必要書類
  • 株式会社継続登記申請書
  • 株主総会議事録(会社継続と役員選任の決議)
  • 新役員の就任承諾書
主な費用(登録免許税)
  • 会社継続の登記:3万円
  • 役員変更の登記:1万円(資本金1億円以下の場合)

このほかに、手続きを司法書士に依頼する場合は別途手数料がかかります。

みなし解散を機に会社を閉める場合の法人登記手続き

会社を継続する意思がない場合でも、みなし解散の状態で放置するのは望ましくありません。会社を閉める場合は、正式な「清算手続き」とそれに伴う法人登記を進める必要があります。

なぜ放置せず、清算手続きが必要か

みなし解散の状態は、登記簿上「解散した」と記録されているだけで、法人格がなくなったわけではありません。そのため、税務申告の義務が残っていたり、会社の財産を法的に処分できなかったりします。

会社の財産を株主に分配したり、債務を整理したりするためには、法律に沿った清算手続きが必要です。この手続きの最後に行う「清算結了」の法人登記をもって、会社の法人格は完全に消滅します。

清算手続きの流れ

会社の清算手続きは、清算人を選任することから始まります。通常、解散前の取締役が自動的に「清算人」となります。清算人は、会社の財産を調査・換金して債務を支払い、残った財産を株主に分配します。すべての清算事務が終わったら、株主総会で決算報告の承認を受け、「清算結了」の法人登記を法務局へ申請します。

  1. 清算人の就任登記: 会社の清算業務を行う「清算人」の選任と登記。
  2. 債権者保護手続き: 官報で解散を公告し、債権者に申し出るよう促す(官報公告期間は2ヶ月以上)。
  3. 清算業務売掛金の回収や資産の売却、債務の支払い。
  4. 残余財産の分配: 全ての債務を支払った後、残った財産を株主に分配。
  5. 清算結了の登記: 株主総会で決算報告を承認し、法務局に清算結了の登記を申請する。

清算手続きにかかる費用と期間の目安

費用は登録免許税(合計4万1千円)と官報公告費用(約3〜5万円)で合計8万円程度から、期間は法律で定められた公告期間があるため最低でも2〜3ヶ月はかかります。

  • 費用(実費):
    • 解散及び清算人選任の登記:3万9千円
    • 清算結了の登記:2千円
    • 官報公告費用:約3〜5万円
  • 期間: 債権者保護のための官報公告期間が「2ヶ月以上」と定められている。

法人登記以外に税務署への届出などは必要?

法人登記とは別に、税務署や都道府県税事務所、市町村役場などへ「解散届」や「清算結了届」の提出、そして確定申告が必要です。

会社が解散・清算する際には、法人税消費税などの税務申告が複数回(解散時と清算結了時)必要となります。これらの届出や申告を怠ると、延滞税や行政処分の対象になる可能性があるため、登記手続きと並行して進めることが重要です。

みなし解散に関する法人登記は自分でできる?

みなし解散に関する法人登記は、自分で行うことも、司法書士などの専門家に依頼することも可能です。

自分で手続きを行う最大のメリットは、司法書士へ支払う報酬(数万円〜)を節約できる点にあります。しかし、必要書類の調査や作成に多くの時間がかかる、法務局とのやり取りが煩雑になる、申請内容に不備があればやり直しになるなどのデメリットもあります。

司法書士に法人登記を依頼する費用相場は?

司法書士にみなし解散に関する法人登記を依頼すると、煩雑な手続きを迅速かつ正確に代行してもらえます。費用相場は、手続き内容に応じて異なります。

手続きの内容がよく分からない、平日に法務局へ行く時間がない、書類作成に自信がない、確実かつ迅速に手続きを終えたい、といった場合には専門家への相談をおすすめします。

みなし解散の通知が来たら、まず法人登記の状況確認を

法務局から「事業を廃止していない旨の届出」を促す通知書が届いたら、それは会社の法人登記が長期間更新されていないという警告です。通知書を無視すれば、過料のリスクや会社のみなし解散登記につながります。

しかし、通知が届いた段階で2ヶ月以内に「まだ事業を廃止していない」旨の届出を提出し、役員変更など、必要な法人登記を申請すれば、事業は継続できます。

解散登記後でも3年以内なら、会社を継続登記させることも可能です。この記事を参考に、法人登記の状況確認や役員変更の届け出を忘れず、最適な手続きを行いましょう。


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