• 作成日 : 2025年9月16日

託児所を開業するには?資格や届出は不要?自宅での始め方や助成金の活用方法も解説

共働き世帯の増加や働き方の多様化を背景に、託児所の需要は年々高まっています。イベント会場や商業施設、企業内など、様々な場所で子どもの一時預かりサービスが求められており、託児所の開業を検討する方も増えています。

しかし、いざ開業を考えると、どのような準備が必要なのか、資格はいるのか、資金はどれくらいかかるのかといった疑問が次々と浮かぶでしょう。

この記事では、託児所の開業形態や必要な資格、資金計画、活用できる助成金、行政への手続き、そして成功のポイントまで、具体的なステップを分かりやすく解説します。

そもそも託児所とは

託児所という言葉に法律上の明確な定義はありませんが、一般的には一時的に子どもを預かる施設の総称として使われています。

児童福祉法にもとづき、自治体の厳しい設置基準をクリアして長時間の保育を提供する認可保育園と比べて、託児所は自由な運営が可能です。利用時間や日数、保育内容を柔軟に設定できるため、多様なニーズに応えるサービスを提供できる点が特徴です。

参考:児童福祉法|e-Gov 法令検索

託児所の開業形態

託児所の開業スタイルは様々です。ここでは代表的な3つの形態を紹介します。

自宅で託児所を開業する

自宅の一部を利用して開業するスタイルです。物件取得のコストを大幅に抑えられ、アットホームな雰囲気で子どもたちと向き合えるのが大きな魅力です。ただし、生活スペースと保育スペースを明確に区別し、子どもの安全を確保するための環境整備が不可欠です。また、騒音など近隣住民への配慮も求められます。

夜間の託児所を開業する

夜間に働く保護者にとって、夜間託児所は需要が高いとされています。子どもの生活リズムへの配慮や、日中の保育とは異なる防犯、安全対策が求められます。地域の需要を正確に把握し、万全な安全体制を構築することが運営のポイントです。

会社に託児所を作る

従業員の福利厚生を目的として、企業が事業所内に託児所を設置するケースです。一般的に、内閣府の企業主導型保育事業という助成制度を活用します。この制度を利用すれば、施設の整備費や運営費に対して手厚い助成が受けられるため、優秀な人材の確保や定着に繋がります。設置には一定の基準を満たす必要があります。

託児所を開業するための具体的な準備と流れ

理想の託児所のイメージが固まったら、開業に向けた準備に取り掛かりましょう。事業の土台となる計画をしっかりと立て、着実にステップを踏むことが成功への道筋です。

1. コンセプトと事業計画を練る

事業の根幹となるコンセプトを明確にします。どのような子どもを対象に、どのような特色を持つ保育を提供するのかを具体的に定めます。その上で、以下の内容を盛り込んだ事業計画書を作成します。これは融資や助成金の申請にも不可欠です。

  • 保育理念、コンセプト
  • 提供サービスの詳細
  • ターゲット層と市場調査
  • 料金設定
  • 収支計画、資金計画
  • 人員計画

2. 開業形態を決める

個人事業主として始めるか、株式会社やNPO法人などを設立するかを決定します。個人事業主は手続きが簡単で小規模な開業に向いています。一方、法人は社会的信用度が高く、資金調達や助成金申請で有利になる場合があります。将来的な事業拡大を視野に入れるなら法人設立も有効な選択肢です。

3. 資金を調達する

事業計画に基づき、開業資金と運転資金を準備します。自己資金に加え、日本政策金融公庫の創業融資などを活用する方法があります。後述する助成金や補助金も積極的に情報収集しましょう。

4. 物件を選定し契約する

コンセプトに合った物件を探します。子どもたちの安全が最優先されるため、日当たりや周辺環境、避難経路の確保などを重視します。また、保護者が送迎しやすい立地であることも大切なポイントです。物件の用途が保育施設として適切か、消防法などの規制をクリアできるかを事前に確認しましょう。

5. 施設の内装工事と備品の準備を行う

子どもの安全を第一に考えた内装工事を行います。床材をクッション性の高いものにしたり、指はさみ防止の対策を施したり、コンセントカバーを設置したりするなど、細やかな配慮が必要です。併せて、おもちゃや絵本、ベビーベッド、衛生用品、事務用品などの備品を揃えます。

6. スタッフを採用し育成する

事業計画に沿って必要なスタッフを採用します。保育理念に共感し、子どもたちに愛情を持って接することができる人材を見極めることが重要です。採用後は、保育方針や安全管理、緊急時対応についての研修を徹底します。

7. 集客活動を行う

施設のオープンに向けて、利用者を募集します。ホームページやSNSでの情報発信、地域の情報誌への掲載、近隣へのチラシ配布など、様々な方法で託児所の魅力を伝えましょう。見学会や体験保育イベントの開催も効果的です。

8. 行政への届出を行う

1日に預かる乳幼児の数が1人以上の託児所を開業する場合、事業を開始した日から1ヶ月以内に、施設の所在する都道府県知事(市や特別区の場合は市長・区長)へ認可外保育施設設置届出書を提出することが義務付けられています。この届出により、自治体からの指導監督を受け、定期的な運営状況の報告などを行うことになります。

参考:各種様式(認可外保育施設(ベビーホテル・その他・事業所内)設置者用)|届出・報告について|東京都福祉局

託児所の開業に必要な資格と人員基準

託児所の開業にあたり、法律上必須とされる資格や、遵守すべき人員基準が存在します。

託児所開業で求められる資格

法律上、託児所の開設者自身に保育士資格などを義務付ける規定はありませんが、自治体によっては届出時の要件や研修を定めている場合があります。

また、質の高い保育を提供し、保護者からの信頼を得て他の施設との差別化を図る上で、以下のような資格を持つスタッフがいると大きな強みになります。

  • 保育士
  • 看護師
  • 子育て支援員研修修了者
  • チャイルドマインダー

職員の配置基準

託児所、つまり認可外保育施設では、預かる子どもの人数に応じて配置すべき保育スタッフの基準が定められています。原則として、保育に従事する職員のうち3分の1以上が保育士または看護師の資格保有者でなければなりません。

また、職員の総数も、子どもの年齢や人数に応じて基準を満たす必要があります。自治体によっては准看護士・幼稚園教諭など追加した資格要件を課すケースもあるため、指導監督基準を必ず確認しましょう。

託児所の開業に必要な資金

開業にはまとまった資金が必要ですが、公的な支援制度を上手に活用することで負担を軽減できます。

初期費用と運転資金の目安

開業にかかる費用は、施設の規模や立地によって大きく変動します。

  • 初期費用
    物件取得費、内装工事費、備品購入費、広告宣伝費など。自宅での小規模な開業であれば数百万円から可能ですが、テナントを借りて設備を整える場合は1,000万円以上かかることもあります。
  • 運転資金
    人件費、家賃、水道光熱費消耗品費など。少なくとも3ヶ月から6ヶ月分の運転資金を用意しておくと、経営が安定するまでの期間を安心して乗り越えられます。

活用できる助成金・補助金

託児所開業で活用できる代表的な制度が、企業主導型保育事業の助成金です。条件を満たせば、整備費や運営費への助成が受けられます。

参考:企業主導型 保育事業助成金の概要及び支給額等

その他にも、各自治体が独自に設けている補助金制度が存在する場合があります。施設の改修費用の一部補助や、運営費の支援など内容は様々です。開業を計画している地域の自治体のホームページを確認したり、直接窓口で相談したりして、活用できる制度を探しましょう。

託児所の開業に成功するためのポイント

託児所を継続的に運営し、地域から選ばれる存在になるためには、以下の点が重要です。

徹底した安全管理

保護者が最も重視するのは子どもの安全です。事故防止マニュアルの作成、職員への周知徹底、定期的な避難訓練の実施など、ハード・ソフト両面での安全対策が不可欠です。万が一の事故に備え、賠償責任保険には必ず加入しましょう。

保護者との信頼関係の構築

日々の送迎時の丁寧なコミュニケーションはもちろん、連絡帳やアプリなどを活用して子どもの様子をこまめに伝えることが信頼に繋がります。保護者面談や季節のイベントなどを通じて、相談しやすい関係を築くことも大切です。

明確な強みと継続的な情報発信

英語やリトミック、食育など、他の施設にはない独自の強みを打ち出すことで、選ばれる理由が生まれます。そして、その魅力をホームページやSNSなどで継続的に発信し、地域社会に認知してもらう努力が利用者の確保に繋がります。

入念な事業計画で託児所の開業を成功に導きましょう

託児所の開業は、社会のニーズに応え、子どもたちの成長を支える、非常にやりがいのある事業です。成功のためには、明確なコンセプトに基づいた事業計画が土台となります。

自宅での開業や企業内設置、夜間対応など、ご自身のビジョンに合った形態を選び、必要な準備を着実に進めましょう。資格なしでも開業は可能ですが、常に保育の質を高める意識を持つことが大切です。また、開業や運営に関する助成金や補助金を賢く活用すれば、資金面の負担を軽減できます。

定められた手続きを遵守し、安全管理を徹底することで、子どもたち、保護者、そして地域社会から信頼される託児所を目指してください。本記事が、あなたの目標実現に向けた大切な一歩となれば幸いです。


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