• 作成日 : 2025年9月3日

法人登記の3つの方法と自分で手続き・専門家への依頼も徹底比較

法人登記を行う際、大きく分けて「自分で手続きする」か「専門家に依頼する」かの2つがあり、申請方法は法務局の窓口、郵送、オンライン(電子申請)の3つがあります。

費用、手間、正確性のどれを優先するかで、最適な方法は異なります。手続きに不安がある場合は、司法書士などの専門家や公的な相談窓口の利用も選択肢となるでしょう。

この記事では、法人登記の具体的な方法、自分で進める手順、専門家への依頼、そして手続きの注意点まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。

法人登記の3つの申請方法とやり方

法人登記を申請するには、「法務局の窓口」「郵送」「オンライン(電子申請)」の3つの方法があります。それぞれのメリット・デメリット、そして具体的なやり方を理解し、ご自身の状況に合った方法を選びましょう。

法務局の窓口で直接申請する方法

この方法の大きなメリットは、担当者に直接書類をチェックしてもらえるため、その場で不備を修正できる安心感があります。手続きに不安な点を質問できるので、とくに初めて法人登記を行う方や、法務局が近くにある方には心強い方法でしょう。

一方で、法務局の開庁時間である平日の日中に時間を確保する必要があり、遠方の場合は移動の手間とコストがかかる点がデメリットといえます。

窓口での申請方法
  • 設立する会社の本店所在地を管轄する法務局を、法務局のWebサイトで検索し、場所と開庁時間を確認します。
  • 完成した登記申請書類一式と、会社の代表印を持参します。
  • 法務局の法人登記担当窓口へ書類を提出します。もし書類に訂正箇所があれば、持参した代表印を使ってその場で訂正できる場合があります。

書類を郵送で申請する方法

郵送申請は、自分の都合のよい時間に発送できるため、日中忙しい方でも手続きを進められるのが利点です。しかし、書類に不備があった場合は電話連絡後に郵送や窓口で補正が必要となり、登記完了までに時間がかかる可能性があります。

本店所在地を管轄する法務局が遠い方や、自分のペースで手続きを進めたい方に向いています。

郵送での申請方法
  • 管轄の法務局の住所を正確に確認します。
  • 申請書類一式をクリアファイルなどにまとめ、封筒に入れます。その際、封筒の表面に「登記申請書在中」と朱書きします。
  • 郵便局から「書留郵便」または「簡易書留」で送付します。重要書類のため追跡可能な方法が安心です。書類が法務局に到着した日が「申請日」となります。

オンライン(電子申請)で申請する方法

オンライン申請は、法務局へ行く必要がなく、24時間いつでもどこからでも手続きができます。とくに、電子定款を利用すれば収入印紙代4万円が不要になり、設立費用を最も抑えられます。このため、効率性とコスト削減を重視する方に向いています。

ただし、マイナンバーカードやICカードリーダライタの準備、専用ソフトの操作に慣れる必要があり、パソコンが苦手な方にはややハードルが高いかもしれません。

オンライン(電子申請)での申請方法
  1. 事前準備
    申請者のマイナンバーカードと、それを読み取るためのICカードリーダライタを準備します。
  2. ソフトの準備
    法務局の「申請用総合ソフト」をダウンロードし、お使いのパソコンにインストールします。
  3. 申請情報作成
    ソフトを起動し、申請者情報登録や申請書の作成を行います。定款などの添付書類はPDF化して添付します。
  4. 電子署名の付与
    マイナンバーカードとICカードリーダライタを使い、申請データに電子署名を付与します。
  5. 送信・納付: 作成した申請データをオンラインで送信します。登録免許税は、インターネットバンキングやモバイルバンキング、ATMを利用して電子納付します。

出典:商業・法人登記のオンライン申請について|法務局

法人登記を自分で行う方法と手順

専門家へ依頼せず、自分で法人登記を行うこともできます。費用を抑えられるのが最大の利点ですが、相応の時間と手間がかかることを理解しておきましょう。

不明な点があれば、管轄の法務局が設けている「登記手続案内」(予約制の場合が多い)で相談することもできます。

会社の基本事項を決める

まず、会社の骨格となる項目を決めます。これらは会社の憲法ともいわれる「定款」に記載する内容です。

  • 商号(会社名):使いたい会社名が法律上のルールに合っているか、同一住所で同じ商号が登記されていないかなどを確認します。
  • 事業目的:どのような事業を行うかを具体的に決めます。将来行う可能性のある事業も記載しておくと、後々の変更手続きが不要になります。事業計画の段階で、商工会議所などの支援機関に相談するのもよいでしょう。
  • 本店所在地:会社の住所を定めます。
  • 資本金会社法上は1円から設立可能ですが、事業開始後の運転資金として適切な額を設定することが大切です。
  • 発起人(出資者)と役員:誰が出資し、誰が経営を担うかを決めます。

定款の作成と公証役場での認証

会社の基本事項が決まったら、定款を作成します。株式会社の場合、作成した定款は公証役場で認証を受ける必要があります。

  • 紙の定款:定款を製本し、4万円の収入印紙を貼って認証を受けます。
  • 電子定款:PDFファイルで作成し、電子署名を付与します。収入印紙代4万円はかかりませんが、ICカードリーダライタなどの機器が必要です。

資本金の払込み

定款認証後、発起人(出資者)の個人口座に、決めた資本金を振り込みます。この時点ではまだ法人口座はないため、個人の口座を使用します。入金が記帳された通帳のページをコピーし、「払込証明書」という書類を作成します。

法務局へ提出する登記申請書類の作成

法務局へ提出する申請書類を準備します。不備がないよう、法務局のWebサイトにある記載例などを参考に慎重に作成しましょう。

  • 登記申請書
  • 登録免許税納付用台紙(収入印紙を貼付)
  • 定款
  • 発起人の同意書
  • 取締役の就任承諾書
  • 印鑑証明書
  • 払込証明書
  • 印鑑届書 など

出典:株式会社設立登記申請書(取締役会を設置しない会社の発起設立)|法務局

法務局への登記申請

書類一式がそろったら、本店所在地を管轄する法務局へ申請します。申請方法は前述の「窓口」「郵送」「オンライン」のいずれかです。法務局が申請書類を受理した日が、会社の設立日となります。

法人登記を専門家に依頼する方法

法人登記の手続きは複雑なため、司法書士などの専門家に依頼するのも一つの有効な方法です。費用はかかりますが、時間と手間を大幅に削減でき、本業の準備に集中できるメリットがあります。

専門家に依頼するメリット

専門家に依頼する最大のメリットは、正確かつ迅速に手続きが完了することです。書類作成や役所とのやり取りにかかる膨大な時間を節約できるため、経営者は本業の準備に集中できます。

また、専門家が書類を作成することで不備による手戻りのリスクが低く、スムーズな登記完了が期待できるでしょう。さらに、多くの専門家は電子定款に対応しているため、自分で紙の定款で申請するよりも結果的に総費用が安くなるケースもあります。

登記だけでなく、設立後の許認可申請や税務についてあわせて相談できる場合もあります。

依頼できる専門家と相談内容

依頼先を選ぶ際は、それぞれの専門家の得意分野を知っておくとスムーズです。

  • 司法書士:法人登記の申請代理は司法書士の独占業務です。手続きを丸ごとお願いしたい、手間なく正確に設立したいという場合に最適な相談先です。
  • 行政書士:建設業や飲食業など、事業に許認可が必要な場合に頼りになります。定款作成の代行も行っており、許認可申請とあわせて依頼すると事業開始までが円滑に進みます。
  • 税理士:登記そのものは行えませんが、設立後の税務や資金調達、助成金申請の相談に乗ってくれます。創業融資を考えている場合は、設立段階から相談しておくとよいでしょう。

多くの事務所では初回無料相談を実施しているため、まずは電話やメールで問い合わせ、サービス内容や費用を確認することから始めましょう。

専門家へ依頼する流れ

依頼する場合の一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 相談と見積もり:司法書士事務所などに問い合わせ、サービス内容や費用を確認します。
  2. 契約:内容に納得できれば、正式に業務を依頼し契約します。
  3. 情報提供と書類準備:会社の基本情報などを伝え、印鑑証明書など自分で用意すべき書類を準備します。
  4. 専門家による手続き代行:司法書士が定款作成・認証、登記申請書類の作成、法務局への申請をすべて行います。
  5. 登記完了と書類の受け取り:登記が完了したら、登記事項証明書や印鑑カードなどを受け取ります。

個人事業主から法人成りする際の登記方法と注意点

個人事業主から法人へ移行する「法人成り」も、基本的な法人登記の方法は新規設立と同じです。ただし、個人事業からの移行ならではの注意点がいくつかあります。

法人成りは、単に法人登記をするだけでなく、個人事業の資産や契約関係を法人へスムーズに移行させる視点が欠かせません。

資産・負債の引き継ぎ

個人事業で使っていた車両や備品、在庫商品、売掛金などの資産を法人に引き継ぐ必要があります。これには「売買契約」や「現物出資」といった方法があり、どの方法を選ぶかによって税金の扱いが変わることがあるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

許認可や契約関係の再手続き

個人事業主として取得した営業許可などの許認可は、法人になった場合、原則として法人名義で再取得が必要です。また、事務所の賃貸借契約や取引先との契約なども、個人名義から法人名義への変更手続きが発生します。事業が滞らないよう、計画的に進めましょう。

自社に最適な法人登記の方法を見つけるために

法人登記の方法は、「自分で手続きする」か「専門家に依頼する」かの選択に始まり、申請手段も窓口・郵送・電子申請とさまざまです。どの方法が適しているかは、ご自身の時間・予算・事業の状況によって変わります。

手続きに慣れていない方や、不安がある方は、司法書士などの専門家に相談することで、スムーズに進められる場合も多くあります。本記事で紹介した各手続きの特徴や流れを参考に、自社にとって最適な法人登記の方法を見つけてください。


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